異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第30話『争いを止める為なら私は何でもしますよ』

私の声に応えて、森の奥から神獣たちの声が聞こえる様になってきた。

 

そして、地を揺らす足音もだ。

 

「な、ななな、なんて事をしたんだ。姫様!!」

 

「かの神獣をここへ呼び出すなんて! あの厄介系むっつり処女厨がここへ来たら、大変な事になりますよ!!? 今、ここにはエルフが居る!!」

 

「そうですね。ですが、私は大切なお友達であるレーニちゃんを傷つけたこの状況が許せません。争いを止める為なら私は何でもしますよ」

 

「「くぅっ! これは愛!!」」

 

悶絶しているイシュラさんとロージさんを放置して、私はリアムさんに助けを求めた。

 

そして、リアムさんは容易く籠を破壊し、私はリアムさんの手の上に乗り、そのまま肩の上に乗せて貰った。

 

「状況が飲み込めん。何が来る?」

 

「ユニコーンです」

 

「ユニコーン?」

 

「伝説の神獣さ。しかしとんでもない物を呼んだな。これでは戦争どころじゃ無いぞ」

 

「えぇ。そうですね。ですが、これで目の前の敵より、大きな脅威に対して協力する事が出来るのではないですか?」

 

「まぁ、そうだね。おい。陰魔共。アメリア姫様がお怒りだ。この事態を収集するぞ」

 

私たちの会話に合わせて自然な形で現れたエルフの長は、遠く、森の彼方で輝く赤い光に目を細めた。

 

「ふむ。だが、アメリア姫。どうやら薬が効きすぎているようだ。赤いぞ」

 

「あら……?」

 

「赤という事は?」

 

「NTR-Dシステムが発動しているという事だ」

 

「NTR-Dシステム?」

 

陰魔さんの言葉にキャロンさんが首を傾げながら私に視線を合わせた。

 

私は遠くで輝く赤い光を見ながら、ユニコーンの生態を語る。

 

「ユニコーンは貞淑で清廉な人を好む生物です」

 

「まぁ要するに処女厨という事だ。人に勝手な夢を見て、それが違うと分かれば暴走する厄介な生物だな」

 

「それはお前も同じだろ。エルフ」

 

「そっくりそのまま言葉を返そうか陰魔」

 

「とにかく。人によって色々と感想はあると思いますが、ユニコーンは貞淑さを重んじる為、それを破る様な行為を許しません」

 

「そう。故にNTR-D。つまりは、ネトラレ……デストロイヤー。ユニコーンは好みの女の子を見つけると勝手に纏わりついて、その子が誰かと恋仲になると発狂して襲ってくるんだよ」

 

「なんという厄介な……」

 

「だろう? だから忌み嫌われているんだが、それを姫様がわざわざ呼んだという事さ。ちなみに赤い光を放ってる時は最大限に怒っている時だ。ですよね。姫様」

 

「はい。ご説明ありがとうございます。それと、私が呼んだ以上は私が何とかします。しかし、その為にも皆さんの協力が必要です。良いですか? 陰魔さん。エルフさん」

 

「分かってますよ。姫様」

 

「しょうがない。今回は陰魔とも協力しよう。それで? 具体的にどう止める?」

 

「はい。まずは体に戻りまして、広範囲に魔力を「あ」……えと、どうしました? 陰魔さん」

 

「いやー。ハハハ。すまない。姫様の体には多重に魔術を掛けてな。魂が体に戻っても、すぐは動かない様になっているんだ」

 

「何をやってるんだ、陰魔ァ!」

 

「しょうがないだろう!? 体すら奪われた時に、こんな事もあろうかとって言う為の準備だったんだから!!」

 

私は頭を抱えながら、どうするかを改めて考える。

 

体にさえ戻れば、ユニコーンはすぐに落ち着かせる事が出来るし、一瞬ユニコーンを止める為に、エルフさんと陰魔さんに協力してもらおうと思っていたが、そういうワケにはいかなくなってしまった。

 

いや、それを察していたからこそユニコーンはあれほどまでに怒っているのだろうか?

 

……もしかして、本当に私の危機だと勘違いしている?

 

「私、もしかして……とんでもない事をしてしまったかもしれません」

 

「今更ですよ。姫様」

 

「何を言うか。もとはと言えばお前ら陰魔が余計な事をしたからだろうが!」

 

「冒険に悪役は付き物だろ!? 強大な敵を前にして人と人は絆を深めるんだ!! 無論適度なところで姫様と仲間の愛情友情パワーの前に我らは敗北する予定だったのだ!」

 

「勝手な事を!」

 

「陰魔の悪評ばら撒いてるお前らに言われたくないな!! どうせなら格好いい悪役として歴史に残るチャンスだったのに! お前らが介入してきたから姫様がこんな危険な手段をとったんだろうが!」

 

「こっちのせいにするな!!」

 

再び言い争いを始めたエルフさんと陰魔さんの二組に私は、どうするべきかと頭を抱えながら迫りくる赤い塊を見据えた。

 

ただでさえ厄介なユニコーンが複数体。止める手段は……。

 

「アメリアちゃん。例えば説得とか出来ないかな?」

 

「説得。説得ですか……。そうですね。どの道、この状況では、他に手段はなさそうです」

 

私はフィンさんの言葉に頷きながら、皆で作戦を考える事にした。

 

とは言っても、迫りくるユニコーンの群れに突っ込んで話を聞いてもらうくらいしか無いのだけれど。

 

「しかし、向こうは走ってるからな。お前みたいなチビが前に行っても止まらんぞ」

 

「そうですね」

 

「なら、ならさ。囮作戦はどうかな。さっきみたいに」

 

「バカ。カーネリアン。アレは敵が曲がりなりにも理性と知性がある相手だったから成り立っただけだ。今度の奴は」

 

「あ、いえ。それは良い作戦かもしれません! ……。レーニちゃん!」

 

「うん。なに?」

 

「私を連れてユニコーンの上に!」

 

「分かった」

 

「おい! 待てアメリア!!」

 

後ろから聞こえてくるリアムさんの声を無視して、私はレーニちゃんの手に乗りながら空を飛んだ。

 

そして、眼下に見えるユニコーンを見据えながら、ユニコーンたちのボスを探す。

 

「見えた! あの子が、この子たちの中心!!」

 

遠くから流れてくる陰魔さんやエルフさん達の声を聞きながら私は走るユニコーンの群れに向かって飛んだ。

 

「アメリア!?」

 

レーニちゃんの手をかわし、私は遠くから自分の体を呼び寄せて、ユニコーンの中心、角が割れて左右に広がっているボスの前に落とす。

 

「あぁ! 角割れの前に姫様が!!」

 

「無茶だ!」

 

そして私の体はそのままユニコーンの群れに跳ね飛ばされて空高く舞い上がった。

 

私はその舞い上がった体の中に飛び込んで、魂と体を繋いでゆく。

 

想定通り、ユニコーンという大きな魔力の塊にぶつかった事で、私の体に掛かっていた魔術はその殆どが破壊された様だった。

 

後は、ユニコーンの全体に私は無事だと知らせる為に薄く魔力を放つ。

 

火、水、風、土。それら全ての魔力が混ざった魔力を……金色の魔力を私が落ちた地面からユニコーンの群れ、全体に放ってゆくのだった。

 

魔力を受けて、私が無事だと分かったのか。ユニコーンの光が赤からオーロラに似た鮮やかな光へと変わっていった。

 

「ユニコーンの怒りが消えてゆく」

 

「なんだ。この光は、どういうんだ?」

 

「里の全体が光に包まれてゆく……だというのに、恐怖は感じない。むしろ温かさを感じる様な」

 

「姫様はどうなった!! 姫様は!?」

 

「ババ様。姫様死んじゃったの?」

 

私は仰向けになりながら、自分に癒しの力を使う事にした。

 

我ながら無茶をしたものだ。

 

しかし、ユニコーンの力だろうか。人の話している声や心が周囲に反響していくのを感じる。

 

「姫様!」

 

「アメリア!!」

 

そして空からは泣いているレーニちゃんが降ってきて、私の体に抱き着くのだった。

 

「あぁ。ごめんなさい。レーニちゃん。心配を掛けましたね」

 

「ううん。良い。アメリアが無事なら。それで」

 

私はユニコーンに魔力を分けてもらいながら、癒しの魔術を使って自分を癒した後、地面を通じて里全体に癒しの力を使ってゆく。

 

「何の光!?」

 

「これは人の心の光だ!」

 

流石はユニコーンの魔力と言うべきだろうか。

 

里にいたエルフさんと陰魔さんのみんなはすぐに全ての傷が癒えた様だった。

 

「おぉ……! これが姫様の」

 

「神話は真であったか」

 

「その者、とんでもねー可愛さで空飛んで、金色の野で、微笑むべし――!」

 

ユニコーンの魔力とレーニちゃんの魔術を借りて私は空から皆の無事を確かめて深く息を吐いた。

 

相変わらず陰魔さん達が何を言っているのか分からないが、無事そうで何よりだ。

 

「これで、一件落着。ですね」

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