異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第37話『怖いのはすぐに終わりますよ。そしたら今度は色々な世界を見に行きましょう。ね?』

翌朝。私はすっかり病気も治ったオリヴィアちゃんとお別れをして、リアムさん達と一緒に山へ向かおうとしたのだが……一つ問題が発生した。

 

オリヴィアちゃんが私にしがみ付いたまま離れないのだ。

 

「あの。オリヴィアちゃん。手を……」

 

首を横に振るオリヴィアちゃん。

 

私は大きく息を吐きながら、どうするべきかとリアムさんに視線を向ける。

 

リアムさんはそれはもう大きな溜息を吐きながら、オリヴィアちゃんに冷たい言葉を言い放った。

 

「ガキは家で寝てろ。俺たちは遊び歩いてる訳じゃねぇんだ」

 

「っ! 子供なら、そっちにも、いる!」

 

そう言いながらオリヴィアちゃんが指さしたのはレーニちゃんだった。

 

「レーニは子供じゃない」

 

「子供!」

 

「子供じゃない」

 

「子供!!」

 

「やかましい。ガキ同士騒ぐな」

 

リアムさんが怒り、止まる様に言った事で二人の争いは一度止まったが、レーニちゃんが私にしがみ付いた事で争いは無言のまま睨み合いへ発展した。

 

「時間に余裕がある訳じゃねぇんだぞ」

 

「あの。リアムさん。しょうがないので、私はここに残って説得します」

 

「アホ言うな。お前に説得なんて真似が出来るか。お前の説得が終わるころには、世界が終わってる」

 

「あぅ」

 

「アメリアを虐めるな!」

 

「アメリア様に意地悪いうな!」

 

「チッ。このガキ共。誰のせいでこうなってると思ってるんだ」

 

リアムさんは機嫌悪そうに舌打ちをして、レーニちゃんとオリヴィアちゃんも不機嫌そうな顔をする。

 

「申し訳ございません。オリヴィアちゃん」

 

「……っ! わたし、ずっと一人だったから何でも出来る! お料理も、お掃除も、何でも!」

 

「はい。それはとても素晴らしいと思います。ですが、私たちの旅はとても危険なんです。その旅にオリヴィアちゃんを連れて行く事は出来ません」

 

「そんな……私、いい子にするよ?」

 

「無理をしていい子にならなくても、オリヴィアちゃんがいい子なのはよく分かっていますよ。でも、だからこそ、貴女を失いたくないのです」

 

「……アメリア様」

 

私はオリヴィアちゃんを抱きしめて、ベッドまで運び座ってもらう。

 

そして辛そうに顔を歪めたオリヴィアちゃんの頬に手を当てた。

 

「私たちの旅はそれほど時間のかかる物ではありません。もう半分以上終わってますしね。なので、全て終わったらまたこの場所に、オリヴィアちゃんの前に帰って来ます。そうしたら一緒に旅をしましょう。まだオリヴィアちゃんが見た事のない美しい世界を一緒に見て回りましょう。約束です」

 

「……アメリア様……やくそく」

 

「ありがとうございます。オリヴィアちゃん」

 

私は俯くオリヴィアちゃんの頭を撫でて、最後に抱き寄せた。

 

そしてオリヴィアちゃんから離れ、今度はレーニちゃんに向き合う。

 

「レーニちゃん」

 

「なに? アメリア」

 

「レーニちゃんも、ここで一度お別れしましょう」

 

「え!? な、なんで。レーニ。いっぱい魔術使えるよ。リアムなんかより役に立つよ」

 

「仮にそうなのだとしても、レーニちゃんも子供ですから。申し訳ございません」

 

「うっ、うぅ……」

 

「大丈夫。怖いのはすぐに終わりますよ。そしたら今度は色々な世界を見に行きましょう。ね?」

 

「……うん」

 

「じゃあ、レーニちゃんには一つお願い事をしても良いですか?」

 

「おねがい?」

 

「はい。レーニちゃんにはここで、オリヴィアちゃんや村の人を護って貰いたいんです」

 

「人間を護ると、アメリアは嬉しいの?」

 

「はい。とても」

 

「……分かった。じゃあレーニ。頑張って人を護るね」

 

「ありがとうございます。でも無理はしないで下さい。時にはみんなで逃げる事も大事ですからね」

 

私はレーニちゃんも抱きしめて、オリヴィアちゃんの隣に座って貰った。

 

最初は睨む様な視線を交わしていた二人だったが、やがて、しょうがないとでも言わんばかりの溜息を吐くと、互いに手を握り合う。

 

そして言葉も交わした。

 

「しょうがないから、レーニがオリヴィアを護ってあげる」

 

「しょうがないから、私がレーニのご飯を作ってあげる」

 

「「アメリア(様)が帰って来るまでの間ね!」」

 

多分上手くやれそうだなと思いながら私は立ち上がった。

 

そして二人に別れを告げて、村を後にするのだった。

 

 

 

村を出てすぐに始まった山への上り坂を歩きながら、私はふと気になる事があり、リアムさん達に聞いてみる事にした。

 

「そういえば、皆さんはこの旅が終わったら次は何をするんですか?」

 

「突然なんだ」

 

「あ、いえ。オリヴィアちゃん達と話していて、何となく気になりまして」

 

「フン。聞くだけ無駄だ。凡俗なんぞ、適当に生きて、適当に死ぬだけだ」

 

「おうおう随分な言い草じゃねぇか。そういうリアムには高尚な未来でもあるってんのか!?」

 

「別に高尚なモンでも無いが、お前らよりはマシな未来がある」

 

「ほー。じゃあ聞かせて貰おうか」

 

「まずは、今回の旅の報酬を大司教の奴からたんまり奪い取る」

 

「いきなりゲスな話から始まったが?」

 

「その報酬を使って、世界中の捨てられたガキ共を集め、忠実な手駒として教育し、俺の為に働かせるんだ」

 

「これ以上ないくらい俗な夢じゃねぇか!」

 

私はその夢を聞いて、思わず小さく笑ってしまった。

 

「何を笑っているんだ。お前は」

 

「そうだよ。アメリアちゃん。コイツろくでもない奴だよ?」

 

「いえ。リアムさんは素直じゃないな。と思いまして」

 

「素直じゃない?」

 

「おい。アメリア。それ以上口を開くな」

 

「いや、聞かせてもらいましょ。フィン! リアムの奴を止めて!」

 

「あいあい」

 

「おい! 離せ!」

 

「いやー。わりぃな。俺、女の子には逆らわない主義者なんだ」

 

「この……!」

 

「はい。リアムは押さえたよ。さぁ、これで話しても大丈夫」

 

「あー。はい。えっとですね」

 

「口を開くな!! アメリア!!」

 

私はリアムさんにごめんなさいと言いながら、思いついた事を口にした。

 

「いや。そのですね。聖都でリアムさんが昔孤児だったと言っていたじゃないですか。それで、リアムさんが自分みたいな子供を助けたいのかな。と思いまして」

 

「「あー」」

 

フィンさんとキャロンさんは納得した様に声を漏らした後、リアムさんを解放した。

 

「フン。俺がそんな甘っちょろい人間か! お前じゃ無いんだ。アメリア」

 

「あっ、そ、そうですよね」

 

「当然だ」

 

「はいはい。分かった分かった」

 

「なるほどねー。リアムってばそういう感じだったんだぁ」

 

「黙れ!!」

 

また喧嘩を始めてしまったリアムさん達を放っておいて、私は難しい顔をしていたカー君に視線を向ける。

 

「カー君は何か夢は無いのですか?」

 

「俺? 俺は、何も、無いんだ。旅が終わったら、またあの家に帰って、一人だ」

 

カー君はキュッと自分の服を掴んで俯いてしまった。

 

そんなカー君を見ているのが辛くて、私はカー君の手を取りながら話しかけようとした。

 

しかし、それよりも早く、リアムさんが口を開く。

 

「カーネリアン」

 

「っ! な、なんだよ」

 

「お前の前に居る女をよく見てみろ。ソイツがお前を一人放置する様な奴に見えるか?」

 

「……」

 

「お前が何だかんだと強がっても、無理矢理手を引いて光の下に連れて行く。アメリアはそういう女だ」

 

「……姉ちゃん」

 

「はい」

 

「俺……旅が終わっても、一緒に居て、良いかなぁ」

 

「当然です。私たちが人である以上、いつか別れは来ますが、それを無理に早める必要はないと私は考えます。ですから、カー君が望むのならば、これからも一緒に居ましょう」

 

「姉ちゃん!!」

 

私はカー君を抱きしめて、背中を撫でる。

 

そして、フィンさんやキャロンさん。それから不機嫌そうにしながらも、どこか安心した様に息を吐くリアムさんを見て笑う。

 

「あー。じゃあ私も旅が終わってからアメリアちゃんと続きしようかな。アメリアちゃんのご飯美味しいし」

 

「良いんですか!?」

 

「当然! キャロンお姉さんにお任せよ!」

 

「フン。キャロンが居たんじゃ、食事代が高くついてしょうがねぇだろ」

 

「はぁー!? どういう意味よ! リアム!」

 

「そのままの意味だろ。いつもいつも一人でバクバク喰いやがって!」

 

「アンタらの手が遅いのが悪いんでしょー!?」

 

「はいはい。落ち着いて。落ち着いて。子供たちが見てるよ」

 

「「お前は、黙ってろ!!」」

 

私たちはワイワイといつもの騒がしさを取り戻し、再び旅を始めるのだった。

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