異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第62話『そうだ。どんな困難が待ち受けているとしても逃げるわけにはいかない。私はお姉ちゃんの妹なんだから』

魔導具の店でドタバタと騒ぎを起こし、他のお店にも注目されてしまった私だったが、それから大きなトラブルに巻き込まれる様な事はなく、ただ、以前この町に来たお姉ちゃんに助けられた人に感謝されるくらいで終わる。

 

しかし、それも一人や二人ならば問題無いが、大通りを埋め尽くすほどに迫って来るとあっては問題だ。

 

という訳で私はフィンさんに抱えられながら、通りから屋根の上に跳び、そのまま普通の人では追う事が難しい道を走って逃げ出すのだった。

 

そして、そのまま屋根の上で私たちはこれからの行動について相談する。

 

何せ、先ほどの様に大きく騒がれてはまともに行動する事も出来ないのだ。

 

出来るならさっさと町を離れてしまった方が良いかもしれない。

 

そう考えたのだが、どうもリアムさん達の意見は違うようだった。

 

「このまますぐに離れるか。まぁ、その方が正解なんだろうがな」

 

「問題はキャロンか」

 

「キャロンさん? ですか?」

 

「あぁ。俺たちと一緒に世界の果てへ行った女だよ。酒癖の悪い奴でな。何かあればすぐに酒を飲んで、アメリアに治して貰ってた奴だ」

 

「なるほど」

 

何か自堕落な感じの人なのだろうか。

 

いや、でも世界の果てまで闇を封印しに行っているくらいだし。良い人なのだろう。

 

良い人だけど、お酒が好きって感じなのかな。

 

「俺はキャロン姉ちゃんにも会った方が良いと思う」

 

「……カーネリアン」

 

「キャロン姉ちゃんとは、何かあっさり別れちゃったけど、キャロン姉ちゃんが悲しんでないかって、そんなワケないと思うんだ。上手く言えないけど、会わなきゃいけない。そんな気がする」

 

「分かった。あー。リリィ。悪いが、キャロンに会う事にした。構わないか?」

 

「はい。私は特に反対する理由も賛成する理由もありませんから。皆さんの決定に従いますよ。私より皆さんの方が、キャロンさんの事はよく分かっているでしょうし。必要だと言うのであれば、必要な事なのだと想います」

 

私は自分を見つめる三組の瞳にそう返し、「それに」と付け加えた。

 

「もしお姉ちゃんがここに居たら、とりあえず会ってみましょうと言ったと思います。とりあえず会ってみて、もし何か失礼な事をしてしまったら謝りましょうと、多分言ったと思います。ですから」

 

「……そうだな。確かにアメリアならそう言っただろうな」

 

「ふふっ、確かに」

 

「姉ちゃんっぽいや」

 

「では皆さん意見も一致したという事で、キャロンさんに会いに行きましょうか!」

 

かくして私たちはキャロンさんなる人物がいると思われる場所へ行く事になったのである。

 

 

 

町の入り口近くにある大通りで多くの人に囲まれた私たちは、地上に降りては同じ事の繰り返しだと、屋根の上から降りずにそのまま屋根の上を移動して、目的の場所を目指して駆けた。

 

そして、目的の場所である酒場へ到着すると、少しの迷いと共にリアムさんを先頭として酒場へと入る。

 

しかし、お店の中の様子は、外からは考えられない程に荒れていた。

 

「あー。お客さん。すまねぇが今日はアレな日なんだ。悪いが、また明日にしてくれるか?」

 

「アレ?」

 

「あー。なんだお前さん達は旅人か。じゃあ、ちゃんと説明しないと駄目か」

 

「頼めるか」

 

「分かった。なら少し長い話になるから、ちょっと待ってくれ。片付けてから飲み物でも用意する」

 

「あ! それなら片付けは私たちがやります!」

 

「そうか? すまねぇな」

 

私は手をピッと上げて、荒れている店内を片付ける役を請け負い、リアムさん達と一緒に掃除をする。

 

勝手に引き受けてしまったが、やはり聖人に選ばれるだけあり、皆さん当たり前の様に手伝ってくれた。

 

なんて良い人達なのだろう。

 

そして、みんなでやればすぐに終わる。という事で、店主さんが全員分の飲み物を用意してくれる頃には、店はそれなりに片付いていた。

 

「さて。どこから話すか」

 

「出来れば初めから聞かせて貰えるか?」

 

「そうだな。始まりは……確か十年くらい前の事だ。小汚い小娘が一人、カウンターで生意気にも仕事を寄こせと言ってきたのが始まりだった。その小娘の名前はキャロン」

 

「っ!」

 

「その反応じゃあ知ってるか。まぁ、有名だからな。魔術師としての実力も、聖人に選ばれたっていう肩書も、見た目の良さもな。だが、そういう目立つ人間は何かとトラブルを呼び込むモンでな。人攫いだ。どこぞの貴族だ。薄汚ぇ商人だ。英雄を自称する奴だぁー。色々な奴がアイツに声を掛けていったよ。だが、アイツはそういう連中を全部跳ねのけて、自分を示し、いつしかこの酒場の用心棒なんて言われる様になってな。俺は給仕として雇ったハズなんだが、あの小娘、与えられた仕事もやらねぇで、暴れてばかりだった。その癖働いてるんだからと勝手に店の飯を食ってな。ロクなモンじゃなかったよ」

 

愚痴を言っている様で、店主さんはずっと笑顔を浮かべていた。

 

なんだかんだと言いながら、キャロンさんと過ごす日常が楽しかったのだろう。

 

「そんなアイツがな。いつもの様に、他所から来た、アイツの強さを知らねぇ奴とぶつかってな。店でまたバカみたいに暴れた後な。突然旅に出たいなんて言い始めたんだよ。んで、事情を聞けば、聖人としてやらなきゃいけない事があるだなんて言うじゃねぇか。今まで聖人として世界を救うなんて絶対に嫌だって言ってたアイツがだ」

 

「……キャロンは何か言ってたか」

 

「別に。大した事は言って無かったさ。ただ、誰かが押し付けてきた使命とかじゃなくて、助けたい子がいる。見捨てられない子がいるって言ってたな。あぁ、そうちょうどそこにいるお嬢ちゃんみたいな……って、まさか。君、あの時のお嬢ちゃんか?」

 

私は何と答えたら良いか分からないが、小さく頷いて、肯定を示す。

 

「そうか。無事だったか。旅が終わったと返ってきたキャロンは酷く落ち込んでいてな。毎日の様に酒を飲んでは暴れてたよ。それでてっきり俺は君がどうにかなってしまったのかと思っていたんだが……そうか、無事だったか。良かった」

 

「いえ」

 

店主さんは酷く嬉しそうにしながら私たちを見渡し、何度も頷いていた。

 

そして、安心した様に深い息を吐くと、改めて口を開いた。

 

「君たちが無事だったという事なら、申し訳ないが、キャロンと少し話をしてやってくれないか? 気分が変わるのなら、またどこか旅に出ても良い。ほら。君たちのお陰でもう世界は平和になったんだろう? 闇は消えたとキャロンも言っていたし」

 

「そうだな。キャロンがそれで良いなら、俺たちも問題はない」

 

「そうか! なら、悪いがキャロンと話をしてやってくれ。キャロンは上の階にいるよ。まぁ、喧嘩か何かでこんな事になってるんだろうが、言い合いぶつかり合いをすればそんな問題は解決するさ! 壊さなければどれだけ暴れても良いからよ。どうせ今日は客も来ないしな! わははは!!」

 

店主さんは楽しそうに笑いながら、上の階へ行く為の鍵を渡してくれた。

 

しかし、店主さんの気分に反して、私たちの気持ちはどんどんと落ちていく。

 

何故ならキャロンさんが暴れている原因はお姉ちゃんだというのに、ここにいる私はお姉ちゃんではない。

 

余計に厄介な事にならなければ良いけどと思ったが、そればかりは実際に会ってみなければわからない。

 

という訳で、私たちは上の階にいるというキャロンさんの元へ向かうのだった。

 

そうだ。どんな困難が待ち受けているとしても逃げるわけにはいかない。私はお姉ちゃんの妹なんだから。

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