異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証- 作:とーふ@毎日なんか書いてる
キャロンさんも仲間に加わり、私たちは商業都市ダキンを出て、聖都を目指してまた旅を再開した。
のだけけれど……リアムさん達は聖都に行く事にあまり乗り気では無いようだった。
「聖都はそんなに危ない場所なのですか?」
「いや、アルマの聖剣がある以上どこよりも場所としては安全だよ。ただ……なぁ」
「そうね。問題は大司教よね」
「そうだなぁ」
「リアム兄ちゃん。アイツと知り合いなんだろ? 何とかならないのか?」
「何とかならん事もない。が、それをすると聖都に二度と近づけなくなるな」
リアムさんは腰に差していた剣を手に取って、神妙な顔で頷く。
その行動はつまり、その剣でその大司教という人をアレしてしまうという事だろうか。
なんと恐ろしい!
「え? え? その様な危険な人が聖都には居るのですか? リアムさんが手を下さねばならないほどの人が!」
「あぁ」
「そ、そんな。世界で一番安全な場所なんですよね?」
「リリィちゃんの言う通りだ。間違いないね」
「あの伝説のアルマが居た場所なんですよね?」
「そうね。ついでに言うなら、シャーラペトラが居た場所でもあるわ」
「そんな場所に、そんな怖い人が居るんですか!?」
「うん。そうだよ。リリィ」
「……」
まさかまさかの事態である。
その様な人がいるのでは、お姉ちゃんが帰ってきてからも何かと危ないのではないだろうか。
いや、待て。
危ない危ないとは言っても、私やお姉ちゃんが関係ない可能性もある。
「あの。一応確認なんですけど。何がどの様に危ないのでしょうか? 私やお姉ちゃん。それに皆さんが関係あったりはしますか?」
「関係か。いや、俺たちは無いな」
「あっ、そうなんですね」
良かったと言おうとして、それよりも早くリアムさんが残酷な事実を告げる。
「関係しているのはお前とアメリアだけだ」
「えぇ!? 私と、お姉ちゃん!!?」
「あぁ。そうだ。お前たちが聖都に近づいた場合、とてもよくない事が起きる。その原因は大司教という奴だ」
「そ、そんな……」
まさかそんな事になっていたとは。
でも、なんで私とお姉ちゃんが危険なのだろう?
狙われているという事?
でも、そんな覚えは……いや、まさか。
まさか!! お姉ちゃんが可愛すぎて、大司教とかいう人に目を付けられたのでは!?
いや、あり得ないか。
偉い人がそんな事する訳無いよね。
いやでも、それなら偉い人と私たちに何の関係があるんだって話で……。
「むむむ」
「あー。リリィ? あまり深く考えなくても良いわよ? 大司教にはリアムだけで会う事になったから。リリィに何も怖い事は無いからね」
「そうですか?」
「えぇ。報告だけ終わったら、もう聖都に近づかなければ良いし。何かあっても私たちが居るから。貴女もアメリアも絶対に大丈夫」
「そういう事でしたら……考えるのは止めておきます」
「そうね。それが良いわ」
キャロンさんの話を聞き、私は小さく頷いた。
怖いものには近づかない。それはお姉ちゃんもよく言っていた事だ。
なら、私もそうしよう。
そして、聖都での行動を話し終わり、私たちは夕食の準備を始めていた。
今日は森の途中で野宿だ。
という訳で、リアムさんとフィンさんとカーネリアン君は寝床の準備やたき火用の枝やら何やらを拾いに行っている。
そして私はキャロンさんと一緒に食事の準備だ。
しかし……。
「キャロンさん。料理上手なんですね。お姉ちゃんみたいです」
「そう? まぁ、沢山練習したからね」
「そうなんですね! じゃあ私も練習しないとなぁ」
「あら。リリィも料理が上手になりたいの?」
「はい! お姉ちゃんみたいに!」
「……そう。それは素敵な目標だわ」
キャロンさんは穏やかに笑って、私の夢を褒めてくれる。
お姉ちゃんもそうだったが、やはり褒める人というのは偉大だ。
私のやる気を無限大に増やしてくれる。
「むふー。いよーし。頑張るぞー!」
「ふふ」
そして私は、キャロンさんと一緒に料理の練習をしつつ、今日の夕食を完成させた。
昨日まではとりあえず肉を焼いて、食べる! という様な物だったのに、今日の夕食はなんとシチューだ。
驚きである。
「んー! おいしい!! まるでお姉ちゃんが作ったみたいな味です!」
「練習したからね」
「……そうか」
「何よ。リアム」
「いや、何でも無いさ。ただ、何となくこの場所に居ると思い出してな」
「あー。激辛の肉と激甘のシチューか? あれは酷かった」
「なんですか? その激辛のお肉と激甘のシチューというのは」
私はふとお皿を見ながら気になる言葉を投げたリアムさん達に問うた。
そして、そんな私の問いにリアムさんは酷く懐かしい事を思い出す様にお皿を見ながら呟く。
「アメリアと一緒に旅をしていた時の事だ。俺たちが飯の味で喧嘩になってな。それに怒ったアメリアが極端な味の飯を出してきたのさ」
「あー。なるほど。お姉ちゃんならやりそうですね」
「家でもやった事あるの?」
「はい。似たような話ですが、ありますよ。あ、いや。似てないのかな。んー。でも、料理でお姉ちゃんが怒った話だから同じ話ですかね」
私は昔の話をゆっくりと思い出しながら口にする。
「昔は私、好き嫌いが結構ありまして。しかもそれがその日の気分とかで変わっていたんですね。まぁ、今思えば、お姉ちゃんに構って貰いたくて、我儘を言っていただけだったんですが、それである日お姉ちゃんが酷く怒ってしまったんです」
目を閉じて、頭の中でお姉ちゃんとの会話を思い出す。
『リリィ。ご飯はちゃんと食べないとだめですよ』
『やだー! リリィ。苦いの嫌いだもん! これ食べてると、口の中、ずっとずっと苦いんだもん。もう食べたくない!!』
『……そうですか。じゃあ分かりました。リリィはもう食べなくて良いです』
『え? お姉ちゃん?』
「私が我儘を言うと、お姉ちゃんは大抵しっかりと食べなさいとか。お姉ちゃんも一緒に食べてあげるからね。と言ってくれるんですが、その日は、もう食べなくて良いと食器を下げてしまったんです。私、何だかそれが怖くて、このままお姉ちゃんに見捨てられてしまうと怖くて、必死に食べると言っていました」
『食べる! 食べるから!!』
『本当ですか? 無理はしなくても良いんですよ?』
『無理なんかしてないよ。ちゃんと頑張れる! だから、嫌いにならないで。リリィ食べられるから! ほら……! お、いしいよ?』
『……リリィ。ありがとうございます。食べてくれて。でも、明日からはもっと美味しくなる様に料理しますね』
「結局、私はその出された物を全部食べたんですが、無理をしていたのが丸わかりだったからか、次の日からお肉に混ざったり、味が変わったりとしていきました。でも、あの日以来、私はお姉ちゃんのご飯を残そうと思った事は無いですね。何か怖くて」
「なんかアメリアらしい話ね。多分本人はそこまで深く考えてないんでしょうけど、周りがあの子の行動にあわあわしちゃうのよね」
「味付け問題もそんな感じだったしな」
「そう言えば、あの問題はどうやって解決したんだっけか」
「んー。どうだったっけ」
「あ、そうだよ。魚釣りだ! 魚釣りで解決したんだ!」
魚釣りとカーネリアン君が言った事で、私は思わず顔を上げてカーネリアン君を見た。
そして、憧れのソレに手を伸ばすのだった。
「魚釣りですか!? 私もやってみたいです!!」