異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第67話『だから、私はまた行かねばならないのです』

楽しい釣りも終わり、私たちは再び聖都へ向けて旅を始めた。

 

そして聖都に着いてからは、私とカーネリアン君、そしてリアムさんとフィンさん、キャロンさんに別れてそれぞれ行動する事になった。

 

リアムさん達は例の大司教に報告へ行くらしく、私とカーネリアン君は買い出しである。

 

どうやっても森では手に入らない物を市場で買い足してゆく。

 

「どうだい。お嬢ちゃん。綺麗だろう? 最高のネックレスさ」

 

「確かに綺麗ですけど。あまりお金は持ってませんので」

 

「それなら三日間ここで働かないか? そしたらそのままあげるよ?」

 

「いえ。私、一緒に旅をしている人が居ますので」

 

「なら二日だ! いや、一日。一日でも良い!! 一日だけここで売り子をしてくれないか? そうすれば売り上げが絶対に上がるんだ!」

 

「それはとても楽しそうですけど、今回は遠慮しますね」

 

「どうしても駄目か!?」

 

「オッサン。いい加減にしろよ。んな手伝いはしねぇって言ってんだろ?」

 

「くぅー。惜しいな。こんな可愛い子を……っと、やべぇ。二人とも、顔を隠せ!」

 

「え?」

 

「良いから早くしろ!!」

 

店のオジサンと話をしていた私とカーネリアン君だったが、不意にオジサンが何かに怯えた様な顔をしてフードを被る様に言ってきた。

 

確かに私とカーネリアン君の服にはフードが付いているが、これは雨とかが降ってきた時に頭を守る用なんだけど……なんて思いながら言われた通りに被る。

 

そして、それからすぐに私は後ろから何かにぶつかり、横に弾き飛ばされた。

 

「君!!」

 

「っ!」

 

「店の前に居るな。邪魔だ」

 

「フェ、フェイームーク様。彼らはまだ子供ですので」

 

「なんだ。お前。俺様に逆らうつもりか? 未来の大司教様に」

 

「い、いえ!! その様な事は!!」

 

「フン。なら良いがな。しかし、気分は害した。おい店主。一番いいアクセサリーを寄こせ」

 

「い、一番よい物ですか。ではこちらになります」

 

店主さんは先ほど私に見せてくれたネックレスを偉そうに立っている男の人に見せて笑う。

 

その顔はどこか引きつっていて、とても楽しそうには見えなかった。

 

なんで、そんな風に笑うのだろう。

 

私は不思議に思い、原因と思われる男の人を見たが、何も分からない。

 

「フン。所詮三流の店では三流の品しか無いか。まぁ、良い。急な事だからな。いずれ彼女には最高の品を送るとしよう。今晩はこれで十分だな」

 

「は、ハハー。ありがたき幸せ」

 

「うむ」

 

「そ、それでですね。フェイームーク様。代金の方なのですが」

 

「代金? 代金だと? お前、俺様から金を奪うと言ったか?」

 

「っ! も、申し訳ございません! しかし、私も代金を頂けませんと明日生きてゆく事も難しいのです!」

 

「それがどうした。俺様に何か関係があるのか?」

 

「そ、それは」

 

「フン。光聖教に逆らう愚か者め。お前たち。この男の首を刎ねよ」

 

「「ハッ」」

 

「そ、そんな! お許しください!」

 

「今更その様な言葉が通るものか。愚か者め。お前は俺様に逆らった。それだけで死罪は確定だ。しかし、感謝しろ。今日の俺様は機嫌がいい。拷問はしないでやろう。苦しまずに終わらせてやる」

 

「お許しください! フェイームーク様!」

 

「おい。お前たち。この男を早く黙らせろ。俺様は忙しいのだ。急ぎ戻って聖女様をお迎えする準備をせねばならん」

 

「ハッ」

 

「すぐにも」

 

「っ! や、止めてくれ! 私が何をしたというんだ!」

 

「ヘッ。今フェイームーク様が言ってただろうが」

 

「天に逆らった罰だ。空の向こうで後悔しな!」

 

オジサンの前で、腰に差していた剣を抜く男の人たちを見て、私は完全に我慢の限界だった。

 

私の中にいるお姉ちゃんだって、急げ急げって叫んでる。

 

そうだ。こんな酷い事許しちゃいけない!!

 

「駄目だ……! リリィ……!」

 

「もう止めてください! その様な非道は!!」

 

「あン?」

 

「んだ。テメェは」

 

「私は……!」

 

私は私の手を握って、どこかへ連れて行こうとしているカーネリアン君を振り切って、フードを脱いだ。

 

そして、内側から溢れてくるお姉ちゃんの気配を全身に纏わせて、オジサンに酷い事をする男の人たちを見据える。

 

「私は、聖人の一人として、この地に来ました。聖人の一人、アメリア!」

 

お姉ちゃんの代わりに名を名乗り、そして右手を翳す。

 

そして、お姉ちゃんから伝わる激情をそのままに言葉を続けた。

 

「遥か東の果てで、闇を封印し、この地に帰って来ましたが、まさかこの様な光景を見るとは思いませんでした」

 

「まさか、アメリア様って」

 

「俺は見た事がある。あのお姿は確かにアメリア様だ」

 

「証だってある。聖人のアメリア様が世界を救って再び聖都へ来たんだ!」

 

大勢の人の声を聞きながら、私は決して視線を逸らさずに一番偉そうにしていた男の人を見た。

 

私にはこんなに味方が居るんだぞと示して、オジサンから手を引いてもらう為に。

 

しかし、男の人は何故か私に視線を返したまま笑みを深めるばかりだった。

 

「まさか……いや、本当にまさかのまさかだ」

 

「……フェイムーク様?」

 

「お前たち。準備をしろ。我が花嫁が帰還したのだ。婚礼の儀式を行わねばならん」

 

「なっ! 何の話ですか!?」

 

「父上から聞いておりませんでしたか? 聖女アメリア。貴女は旅が終わった際に私の妻となる約束の筈だ」

 

「その話は断っただろ!」

 

「俺様と聖女の話に割り込むとは、不敬だな。何者だ。お前。名を名乗れ」

 

「カーネリアン! 俺だって聖人だ」

 

「こんなガキが? フン。そうか。同じ聖人として共に旅をして近くに聖女を感じたか。だが、所詮お前はただ天によって無作為に選ばれた存在にすぎない。聖女とは器が違うのだ。控えよ! 聖女に相応しい人間は俺様しか居らん!!」

 

「勝手な事ばっかり言って……」

 

「逆らうか。ならば終わりが待つばかりだが、それでも良いのか?」

 

「やれるもんならやってみろ!!」

 

「生意気だな。ここで己の分というものを分からせてやっても良いが、こんなガキに時間を使うのは勿体ない」

 

男の人はカーネリアン君から私に再び視線を戻し、笑う。

 

自分勝手で、我儘な姿を隠そうともしない笑顔で。

 

「聖女アメリア。闇を封じる旅は終わりました。であるならば、すぐにでも大教会へ来ていただきたい」

 

「お断りします。私にはまだやらねばならない事があります」

 

「やらねばならない事? 何ですか。それは」

 

「闇を封じても、まだ世界は完全に平和となった訳ではありません。苦しむ人はまだいる。だから、私はまた行かねばならないのです」

 

「くだらん!!」

 

「っ」

 

「聖女アメリア! 一人の人間が持てる時間は有限なのです。人類の救済など、その様な事を貴女がする必要は無い。己の身は己で守らせれば良いのです。それよりも私の子を産むという役目を果たす方がより重要だ。妻として私に尽くし、母として我が子に尽くせばよい!」

 

「そんな事……」

 

「断るおつもりか? 素直に従った方が良いと思いますがね」

 

男の人は先ほど以上に嫌な笑顔に変わると、すぐ後ろに立っていた男の人に合図をした。

 

そして、合図をされた人はニヤニヤと笑顔を浮かべて剣を抜き、そのままオジサンに向かって振り下ろす。

 

「がっ」

 

「へっ、汚ねぇな」

 

「な! 何をするんですか!!?」

 

「聖女殿が首を縦に振らんからな。振りやすくしてやったまでよ。さて、聖女殿はまだ決断されぬか。では二人目の犠牲が必要かな」

 

男の人はまた別の人に合図をしようとした。

 

同じ事をさせる訳にはいかない。

 

私は急いで声を上げた。

 

「止めてください!! 付いてゆきますから」

 

「っ、リ……いや、アメリア」

 

「カーネリアン君。リアムさん達の所へ。私は何とかします」

 

「そんな」

 

「お願いします。どの道ここではどうにも出来ない」

 

私は何とかカーネリアン君を逃がして、偉そうな男の人の所へ向かった。

 

そして、せめて治癒をさせて欲しいと言い、オジサンの傷を治す。

 

「……す、すまない。俺なんかの為に」

 

「いえ。気にしないで下さい。大した事はありませんから」

 

私はオジサンに笑いかけて傷を治し、立ち上がって男の人を見上げた。

 

「さぁ! 行こうじゃ無いか! 聖女アメリア!! 楽しい新生活の始まりだ!」

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