異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第75話『……どうすれば分かってもらえるでしょうか』

麻酔毒の対策を手に入れた私たちは、いよいよ陰魔の里へと向かって歩き出したのだが。

 

その道の途中で、あからさまに怪しい人たちに出会い、私たちはその足を止めるのだった。

 

「もし。旅人さん。ここから先には何も無いよ。行かない方が良いよ」

 

「そうですか」

 

しかし、私たちは老人のフリをした、その明らかに怪しい人の言葉を無視して先へ進む。

 

「ちょー! 聞こえていなかったのかい!? ここから先は危ないんだよ!」

 

「聞こえていますよ。ですが、それはそれとして、こちらに用がありますから」

 

「チィ! なんて強固な意思なんだ! その猪突猛進さはまるで、囚われの姫様を助けようと進む配管工のようじゃ無いか! 全てジャンプで解決する気か!?」

 

「この意味不明な物言い! お前! 陰魔だな!?」

 

「そのふてぶてしい言葉遣いは、エルフか!?」

 

不意に私の後ろを歩いていたエルフさんと、私たちを通さない様に通せんぼをしていた陰魔さんが互いに、道の端へと跳んでぶつかりあった。

 

とは言っても、互いに手を握り合いながら言葉で争っているだけの様だ。

 

手は出ていない。

 

「またお前らか!? エルフ! その汚らわしい体で我が里を汚すな!!」

 

「お前たちが余計な事をしなければ、こんな陰気臭い場所になど来るワケ無かろう!!」

 

「何をー!? 私たちが何をしたというんだ! 言いがかりだ!」

 

「水の精霊から既に話は聞いているんだ! お前たち、同人誌なる物を作る為に森の奥にある大樹を切ろうとしたな!?」

 

「ギクゥ!?」

 

エルフさんの言葉に、陰魔さんは明らかに動揺して、エルフさんから急いで離れた。

 

間違いなく何かを知っているようだ。

 

「陰魔さん! 同人誌とは何ですか!? 何をしようとしているんですか!?」

 

私は深く被っていたフードを取って、陰魔さんを見据える。

 

皆さんのアドバイスで顔を隠していた私だったが、ちゃんと交渉するなら顔は見せた方が良いと思ったのだが、陰魔さんの反応は私が思っていた物とはまるで違う物だった。

 

「姫様……? いや、違う。顔は似ているが、魔力が違う。気配も! 君は、誰だ」

 

「私はアメリアお姉ちゃんの妹。リリィです」

 

「妹!? では、姫様は」

 

「闇を封印して、空の果てに行きました」

 

「そんな……そんな、そんなぁぁああ!! なんで! なんでそんな事になるんだ!!? あり得ない!!」

 

「それは、この世界の人を救おうとして」

 

「世界が闇に覆われて!! 困るのなんて、人間だけだ!! 私たちは困らない、精霊も、魔族も魔物も獣人も!! だって、私たちはずっと闇の中で生活してきたんだから!! 姫様だってそうだ!! 闇の中で生きてきた。それが私たちの生きていく場所だったんだ!! それを、なんで人間の為に、命を捨ててまで光を選ばなきゃならないんだ!」

 

陰魔さんの叫びに、私たちは何も言えずにいたが、エルフさんは前に一歩出て冷たく言い放つ。

 

「お前たちも姫様が旅をしていた時、止めなかっただろう。ならば同じことだ」

 

「違う!! 私たちは違う!! 私たちは姫様が魔王を復活させると信じていた。だからこそ、その旅路で遊んでいられたんだ。こんな、こんな事になるくらいなら! あのまま眠らせたままの方が良かった!!」

 

「陰魔!」

 

「っ! お前たち、絶対に許さないぞ。絶対にだ」

 

陰魔さんは憎しみのこもった目で私たちを見つめた後、暗く重い霧の中にその身を溶かしていったのだった。

 

 

 

そして、私たちはすっかり霧に覆われた森の中で立ち往生してしまった。

 

一応毒対策に光の魔術は使っているが、先が見えない以上、これからどうする事も出来ない。

 

何せ帰り道も見えないのだ。

 

無理に進んでも迷子になってしまうだけだろう。

 

「……どうすれば分かってもらえるでしょうか」

 

「難しいわね」

 

「前に奴らとぶつかった時に分かったが、陰魔は相当思い込みが強い。俺たち人間がアメリアの仇だと信じて、そう思い込めば俺たち人間を滅ぼすまで戦うんじゃねぇのか?」

 

「あぁ、リアムの言う通りだ。陰魔の性格を考えればそうなる可能性は高いだろう」

 

「つまり、俺たちが最初の獲物って訳か。厄介な事になったもんだ」

 

「……ごめんなさい。フィンさん」

 

「っ! あっ、いや、リリィちゃんが悪いわけじゃ無いんだよ! ただ、そう巡り合わせが悪いって言うか、何と言うか」

 

「バカ! 言い方を考えろ!」

 

「いでっ! っ、悪かったよ。リアム。それに、本当にごめん。リリィちゃん」

 

「いえ。私が迂闊に陰魔さんの里へ行こうなんて言ったのが原因ですから。それに隠しておけって言われたのに、フードも取っちゃいましたし」

 

「まぁまぁ。フードはいつかバレた事だし。陰魔の里へ行こうって言ったのはアタシも同じだしね。リリィだけが背負う問題じゃ無いよ。それに。元はと言えば、エルフとドライアードの問題だしね」

 

「む」

 

「ごめんなさい。人間の皆さん」

 

「すまん」

 

「いえいえ! 協力するって決めたんですから。これは私とエルフさん、ドライアードさんの問題でっ! あいてっ!」

 

「バカタレ。俺たち全員の問題だ。間違えるな」

 

「……リアムさん。ありがとうございます」

 

「しかしこうなった以上はまず脱出するのが大事だろ。カーネリアン。どうだ?」

 

「んー。駄目だな。全く風が通ってない」

 

「そうか。なら、俺とリアムが前歩いて、後ろをエルフとキャロンに任せるか?」

 

「いや、まずここを脱出するのなら、後方からの方をより警戒するべきだ。俺とフィンは前後に別れて、後ろにエルフ。前にキャロンを配置するべきだろう。カーネリアンは常に索敵。リリィはいざという時に癒しの魔術を頼む」

 

「はい」

 

「まー。それしか無いかな」

 

「問題ないぜ」

 

「俺は索敵とリリィを護れば良いんだろ?」

 

「仕方ない。エルフの魔術を見せてやるとするかぁ」

 

「私もドライアード代表として頑張ります!」

 

「よし。という訳で、さっさと脱出を……」

 

リアムさんが脱出しようと呟いた瞬間、何か重い音が響き、地面が揺れる。

 

それはまるで足音の様であり、一歩一歩踏みしめながら歩く大型の何かが近づいてきている様だった。

 

「これは……?」

 

「何かデカい奴が近づいて来てるな。下か? いや、違う。上か!」

 

「どうするリアム!」

 

「どうもこうもない。上から敵が来てるってんなら、どの道下へ急ぐ! お前ら逃げる準備をしろ!!」

 

「分かったわ! リリィちゃん。焦らないで大丈夫だから、リアムの背中に付いて行って!」

 

「は、はい!」

 

私は緊張しながら、キャロンさんの言葉に頷き、リアムさんの姿を探す。

 

そして、リアムさんのすぐ近くまで寄っていったのだが、何やら様子がおかしい。

 

「おい! リアム!!」

 

「あぁ。分かってる」

 

後ろから聞こえてきたフィンさんの声に、リアムさんは緊張した様子で空中へと視線を向けた。

 

なんだ? 何が起こっているんだ?

 

「どうしたのよ! リアム! 早く逃げないと!!」

 

「待て! 待て! 焦るな。状況を冷静に判断しろ」

 

「冷静にって! そんな事言ってる場合じゃないわよ! もう何かがすぐ近くまで来てるのよ!?」

 

キャロンさんの言葉通り、私たちのすぐ後ろでは遥か上空で霧が動いており、その何かが接近している事を示していた。

 

しかし、そんな状況であってもリアムさんは集中して周囲を見て、最悪の一言を呟いた。

 

「マズいな。囲まれている」

 

「え?」

 

その抜けた声は誰の声だっただろうか。

 

多分私だった様に思う。

 

そして、私はリアムさんの視線を追い、前から現れた巨大な何かに目線を向けるのだった。

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