異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証- 作:とーふ@毎日なんか書いてる
戦いは終わった。
私とお姉ちゃんは陰魔さんの里へ行ってから、お祭りの中央に置かれ、様々な陰魔さんに話しかけられながら、笑っていた。
「おぉ、新時代の象徴。握手をさせて下さい」
「あー、いえ。どうもです」
「ありがたい。これで百年はネタに困りません」
「そ、それはどうも」
私は意味も分からないのに、ペコペコと頭を下げながら、感謝を告げた。
お姉ちゃんはそんな私を見て、ニコニコと笑っている。
「む。お姉ちゃん。何笑ってるの?」
『何でもないですよ』
「何でもないって事は無いんじゃないの?」
『何でもないったら、何でも無いですよー』
「ぷー。正直に言って! じゃないとくすぐっちゃうから! こちょこちょこちょ!」
『あははは。ほんとに、本当に、なんでも、無いんです! あはははは』
私はお姉ちゃんに飛び掛かり、魔力を手に纏って、くすぐる。
本来触れないハズの体もこれで干渉する事が出来るのだ。
感触はなんか微妙な感じだけど、それでもお姉ちゃんに触れているという事実が嬉しい。
「アメリリ良いよね」
「いい……」
「とりあえず同人誌作ったわ。これがアメリリ姉妹モノ。これがアメリリ義理姉妹モノ。これがアメリリ疑似姉妹モノ」
「全部同じじゃないですか!?」
「違いますよー」
「これだから素人は駄目だ! もっとよく見ろ!」
いくつかの本を指さしながら力説している陰魔さんを何となく見て、私は頭に何か引っ掛かる様な感覚を覚えた。
どーじんし。
同人誌?
同人誌!!
「そうだ! 同人誌の事、忘れてた!!」
『どーじんし?』
「そうだよ! お姉ちゃん! 陰魔さんが同人誌を作る為に森の大切な大樹を切ろうとしたって、ドライアードさんが怒ってて、私たち、仲直りをして貰おうと思って、ここまで来たんだよ!」
『あら。そうだったんですね』
ぽやぽやとお姉ちゃんは穏やかに笑っている。
そして、私は思いだした事を解決しようと、陰魔さんの代表的な人を呼んでもらい、同時にエルフさんとドライアードさんも呼んだ。
「ふむ。そうですか。例の大樹の件ですか。では、先にこちらから……申し訳!! ありませんでしたァァアア!!」
集まって貰った陰魔さん達は、エルフさんとドライアードさんの前で勢いよく頭を下げた。
そんな姿を見て、エルフさんは鼻を鳴らし、ドライアードさんは私の肩に乗りながら、私の髪を軽く引っ張っていた。
なんだろう。ドライアードさん。もう興味無くなっちゃったのかな。
「あの。ドライアードさん?」
「なんですか? 姫様の妹、リリィ」
「いえ。その、陰魔さん達が謝罪されてますが」
「あぁ、そうですね。ジメジメキノコも謝罪という行為が出来たのですね。私、ビックリしました。良いですよ。許してやるです」
「はぁ? 別にお前たちになど謝っていないが? 何を勘違いしてるんだ。この小動物は」
「そうそう。我らはあくまで我々の問題に巻き込んでしまった事を、姫様とその妹君に謝っているだけに過ぎん。小動物もビッ〇にも興味ないわ」
「陰キャはこれだから。素直に謝罪くらい出来ないのかね」
「黙れ、ビッ〇」
「黙るのは君の方だろう? まったく。君たちはいつまでも成長しないな。そんな事では陰魔と呼ばれてしまうぞ」
「種族名を蔑称の様に言うな!」
「じゃあ、やっぱりジメジメキノコに名前変えますです?」
ドタバタと、ワイワイと騒ぎ始めたエルフさんと陰魔さんとドライアードさんを見ながら私は溜息を吐いた。
そしてそんな私の背中を軽く叩いて、リアムさんが慰めてくれる。
なんて良い人なんだろうか。
『あら? あらあらあら? もしかして、もしかするのでしょうか?』
「どうしたの。アメリアちゃん」
『いえいえ。リリィにも遂に春が来たんだなと思いまして』
「は? そりゃどういう意味だ。アメリア」
『隠さなくても良いんですよ。リアムさんってば、リリィの事を大事に想ってくれているんでしょう?』
「なっ!?」
「え!?」
私は驚きに声を上げ、リアムさんも同じ様に声を上げた。
いや、正直私はそんな風にリアムさんを見た事が無かったから、お姉ちゃんにそう言われて動揺したのだ。
『うーん。これで私は心おきなく空の向こうへ旅立てますよ』
「え!? いやっ! ちがっ! 待って! 私はお姉ちゃんだけ居ればそれで良いの! リアムさんの事が好きとかそういう事は全然無いから!!」
お姉ちゃんが消えてしまうと私は必死になってお姉ちゃんに縋りつきながら叫ぶ。
しかし、相変わらずお姉ちゃんに触れる事は出来ず、手は通り過ぎるばかりだ。
「落ち着け。リリィ。アメリアも趣味の悪い冗談を言うな」
『あー。いや。冗談のつもりは無かったのですが、ごめんなさい。リリィ。私はまだここに居ますよ。リリィが望むならいつまでだってリリィの傍に居ます』
「ほんと?」
『えぇ。私が今まで一度だってリリィに嘘を吐いた事がありましたか?』
「うん。いっぱいあった」
『え』
「薬草は入ってないって言って、何度もお肉の中に入ってたし。夜は家の外に危ない魔物が居るから早く寝ないといけないって言われてたけど、一度もそんな魔物見た事無かったし。今日はもう眠いので一緒に寝ましょうって言ったのに、一人で夜遅くに起きて本を読んでたりしてたよね?」
『う、うん。そうですね。確かにしていた様な気がします。しかし、今回は、今回は本当ですよ! 間違いありません! リリィを残して一人空の彼方へ行くことはしませんよ!』
「ほんと?」
『えぇ。信じてください!』
「分かった信じるよ」
『ほっ……よかった』
「うん。信じる。だって嘘だったら、私もすぐに追えば良いもんね。大丈夫。怖いけど、ナイフで刺せばすぐにお姉ちゃんに追いつける。うん。大丈夫。私、大丈夫だよ?」
『えと、リリィ?』
私はにこやかに笑って、お姉ちゃんに告げたが、お姉ちゃんは何か焦っている様な様子だった。
嘘じゃないって言ってるなら、何も焦る事なんか無いと思うけれど。
「おい。アメリア。適当な事を言うからこうなるんだぞ」
『う、うぅ』
「そうそう。ちゃんと責任とって、リリィちゃんが幸せになって、アメリアちゃん無しでも大丈夫になるまで見守らないとね」
『フィンさん!』
「でも、地上に居ても、体なしじゃあ、困るわよね?」
「なら、俺らが手伝えば良いじゃん。な。キャロン姉ちゃん! アメリア姉ちゃん!」
『皆さん……うぅ、厳しい』
「お姉ちゃん。自分で言った事だよ。自分でちゃんと責任とって。私、信じてるからね」
私は涙を振り払って、笑う。
昔からそうだ。
お姉ちゃんは私が泣いていると、すぐにいい加減な事を言って、私を慰めようとするのだ。
だから、それを利用した。
『はぁ。しょうがないですねぇ』
そして、私にお願いされればお姉ちゃんはいつだって、しょうがないな。と言いながら笑って頷いてくれるのだ。
ずっと、ずっとこの瞬間を待っていた。
お姉ちゃんと当たり前の様に話が出来て、そして、私が私を人質に取れる瞬間を。
これで、お姉ちゃんが突然消える事は無くなった。
後は、お姉ちゃんの体をどうやって取り戻すかだ。けど、こっちはゆっくりと考えて行けば良いだろう。
きっと方法はいくらでもあるから。
だって、今日だけで、影の巨人が現れたり、大樹の巨人が現れたり、何か白い建物みたいな巨人が現れたりしたのだ。
それにあの戦いで吹き飛んだ森だってすぐに全部直ってしまった。
こんな何でもできる凄い世界なら、お姉ちゃんの体くらいすぐに取り戻せるだろう。
お姉ちゃんの心は頷いてくれた。
なら、後もう一歩。もう一歩頑張るだけなのだ。
よし。がんばろー!