異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第91話『私もレッドリザードくんは大親友なので、近くに居る方が安心出来ます』

メーラスくんたちドラゴンさんと、ドワーフさん達と一緒に夜の間中騒ぎ、気が付いたら眠っていた私だったが、朝になった時、手の甲が朱く光っている事に気づいた。

 

どうやら火の精霊とも上位契約が出来たらしい。

 

水の精霊、風の精霊に続き、三つ目だ。

 

お姉ちゃんを完全に取り戻す為には、あと一つ。

 

私は僅かに笑みを浮かべながら、目を閉じた。

 

しかし、かなり遅い時間まで飲んでいた影響か、頭がガンガンと痛い。

 

私は呻きながら、頭を手で押さえていたのが、誰かの優しい手が私の手のひらに触れた。

 

「……リリィ」

 

「お姉、ちゃん?」

 

「癒しの力を使いますね」

 

「……うん。ありがとう」

 

私は温かい感触に、ゆっくりと息を吐きながら、痛みが消える様にと祈る。

 

心配はさせたくないから。

 

「リリィ」

 

「なぁに? お姉ちゃん」

 

「やっぱり。もう旅は止めませんか? オリヴィアちゃんだけ見つけて、それで、帰りましょう。私たちの家に」

 

「駄目だよ」

 

「リリィ……」

 

「こんな中途半端な形じゃ、駄目だ。最後まで、行かないと、どっちにしても、共倒れになる。そうでしょ?」

 

「そう、ですね」

 

私は頑張って目を開き、笑いかけるが、お姉ちゃんは辛そうに目を伏せるばかりだった。

 

こんな顔をさせてしまう事が申し訳ない。

 

でも、あの空の上で、私は決めたのだ。

 

この旅は何があっても最後まで行くって。

 

「だから、さ! 私は大丈夫」

 

「……リリィ」

 

「ありがと。お姉ちゃん。元気になったよ!」

 

私は笑いながら立ち上がる。

 

そして、不安そうに瞳を揺らしているお姉ちゃんの手を取り、テクテクと歩く。

 

「リリィ? どこへ行くんですか?」

 

「世界が見渡せる場所!」

 

私は宴会場から離れた場所に向かい、そこから世界を見渡す。

 

お姉ちゃんから手を離し、両手を広げれば心地の良い風を感じる事が出来て、痛みが少しだけ落ち着いた気がした。

 

「リリィ。危ないですよ」

 

「大丈夫だよ。いざとなったら風の精霊に助けてもらうしさ」

 

昔から変わらない。

 

お姉ちゃんは心配性で、私が何か危険な事をすると、危ない危ないとすぐに駆け寄ってくるのだ。

 

だから、私が山の斜面ギリギリの所に立つだけで、すぐ近くまで寄ってきて、体を支えてきた。

 

「お姉ちゃんは心配性だなぁ」

 

「心配しますよ。私はリリィのお姉ちゃんですから」

 

「そっか」

 

私は困った様に笑うお姉ちゃんに笑い返した。

 

そして、その場に座り、遠くを眺める。

 

「ここからなら、家が見えるかな」

 

「それは難しいですね。方角が違いますし」

 

「えぇ!? そうなの!?」

 

「はい。ここからだと、あちらに山が見えていると思いますが、あの山の向こうですね」

 

「ん~? よく分からない。どこー?」

 

「あそこですよ」

 

「ふえー?」

 

「もー。しょうがないですねぇ。リリィは」

 

甘える様にお姉ちゃんに寄りかかりながら、分からないよぉと繰り返すと、お姉ちゃんはクスクスと笑いながら抱きしめてくれる。

 

その温かさを感じながら私は目を閉じて、リアムさん達が起きてくるまで、のんびりと二人の時間を楽しむのだった。

 

 

 

リアムさんが目を覚ましてから、私たちはオリヴィアちゃんという子を追って、獣人が居る森を目指す事になった。

 

メーラスくんは私が何処かへ行くと聞いて、酷く嫌がっていたが、森の中へ行く以上、翼を広げたら小さな町より大きくなってしまうメーラスくんと一緒に行く訳には行かない。

 

そこで、私は何とか説得して、ここで待っていてもらう事になった。

 

いつかまた帰ってくるからと。

 

『約束だぞ』

 

「はい。分かってますよ」

 

そしてメーラスくんとも別れ、私たちは山を下り、森の中へと突入した。

 

森の中は薄暗く、どこかジメっとしている。

 

木が大きくて、日の光が僅かにしか入らないからかとも思っていたが、それでも夜ほど暗いわけじゃない。

 

むしろ、空から差し込む光がキラキラと煌めいていて、外を歩いている時よりも明るい様な感覚すらあった。

 

「不思議な光景ですね。他の場所より光がキラキラしている気がします」

 

「まぁ、この辺りは魔力が多いからね。それが空気中に散って、光に反応して光ってるのよ」

 

「詳しいなキャロン」

 

「まぁね。私、魔導具の開発も手伝ってたからさ。魔力の反応とかも結構勉強したのよ」

 

「なるほどな」

 

「まったく分からんが、分からないって事が分かったぜ」

 

「フィン、アンタね」

 

「まぁ良いだろ。キャロンにはキャロンの得意な事が、俺には俺の得意な事があるんだからさ」

 

「それはそうだな。フィンにしては良い事を言う」

 

「おいおいリアム。そういう言い方はどうなんだ?」

 

「そういう言い方も何も無いだろう。そのままの意味だ」

 

「コイツ……自分も戦闘の時くらいしか役に立ってない癖に」

 

「それはお前も同じだろうが。フィン」

 

「同じだからお前も同じだって言ってんだよ」

 

「お前と一緒にするな」

 

「言ってる事無茶苦茶だぞ!」

 

私はフィンさんとリアムさんのやり取りを聞きながら笑う。

 

二人とも真面目な顔をして子供の様な言い合いをしているから、それがおかしくて、おかしくて。

 

いつまでも笑っているのだった。

 

そして、ひとしきり笑った後、また森の中を進んでいたのだが、思っていたよりも整備されていない道を歩くというのは体力を奪われるものであり、私は大きな木の根っこを越えた所で、体力が尽きて、そのまま地面にへばってしまった。

 

「リリィ。大丈夫ですか?」

 

「だい、じょぶ。なんだけど、ちょっと、つかれた、かな」

 

はぁはぁと荒い呼吸を繰り返しながら、私は心配そうに声を掛けてきたお姉ちゃんに微笑む。

 

しかし、流れ続ける汗は止める事が出来ず、足も腕も動きそうには無かった。

 

「まだまだ子供だからな。こういう道を歩くのも大変だろう。無理もない。今日はここで休むか」

 

リアムさんの言葉に、私は大樹に寄りかかりながら、何とか息を整えて、謝る。

 

「リ、アムさん。ごめんなさい。わたし」

 

「気にするな。カーネリアンもアメリアも頭の中身が少ない分、無駄に元気だからな。比べる気持ちは分かるが、お前が普通だ」

 

「リアムさん!!?」

 

「兄ちゃん!?」

 

「お姉ちゃん、カーネリアン君、ごめんなさい」

 

「良いんですよ! 気にしないでください! 今、冷たいお水持ってきますからね!」

 

「そうそう! 俺も取ってくるから! ゆっくり休めよ!」

 

「魔術で出した方が速くない?」

 

「いえ。森の中では何が起こるか分かりませんし。魔力は温存した方が良いと思います。獣人さんの領域に近い場所ですが、魔物が全くいないというワケではありませんから」

 

「そういう事なら、俺が護衛で残るよ」

 

「なら、俺がアメリア達の護衛で水場まで行く」

 

「分かりました。じゃあ、リリィ。待っていてくださいね。何かあったらフィンさんに言ってください。フィンさんも、リリィをお願いします」

 

「おう。任せておきな」

 

「お願いします」

 

私は木に寄りかかったまま、何とかお姉ちゃんに返事をして、深く息を吐いた。

 

いつもよりも苦しい。

 

吐いている息が熱くて、自分が中から熱せられている様な気すらする。

 

「きゅい」

 

「……れっど、リザードくん?」

 

「きゅ」

 

「ありがとう。心配してくれるんだね」

 

「リリィちゃん。大丈夫かい? それに、レッドリザードも、そのままで大丈夫? アメリアちゃんはいつも傍に置いてたけど」

 

「はい。私もレッドリザードくんは大親友なので、近くに居る方が安心出来ます」

 

「そっか」

 

フィンさんは柔らかく笑うと、私の頭を撫でて、そのまま近くに座った。

 

そして、私はレッドリザードくんが頬を舐める感触を感じながら、眠る様に目を閉じるのだった。

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