異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証- 作:とーふ@毎日なんか書いてる
レーニちゃんと別れてから、私は保っていた意識が途切れそのまま倒れてしまった。
何とか地面とぶつかる前にリアムさんに助けてもらった様だが、正直覚えていない。
でも、朝目を覚ました時、周りにはリアムさん達が居て、すぐ隣でオリヴィアちゃんが手を繋いでいてくれた為、私は安心して体を起こす事が出来たのだった。
という訳で、全てが終わった私たちはこれからの世界を始める為に、ぞれぞれの居場所へと帰ってゆくのだった。
旅してきた道を逆に進み、世界に光を届けた影響で、お姉ちゃんや私の事情を知っている方たちと話をし、一歩一歩進んでゆく。
これからを始める為に。
全ての始まりの場所へ。
そして、私たちは長く歩いた先にようやく人間の住む町、商業都市ダキンに到着した。
「……着いちゃったか」
「キャロン」
「じゃあ、また……っていうのも難しいだろうから。さよなら。って言っておくわ」
「良いのか?」
「良いも悪いも無いわよ。私たちは同じ使命で集まっただけ。前の心残りがあったからもう一度旅に出たけど、三度目は無いわ」
「……そうか」
キャロンさんの言葉にリアムさんやフィンさん、カーネリアン君は穏やかに笑う。
そして、それは私とオリヴィアちゃんも同じだ。
もう二度と会わないかもしれないけど、これは悲しみの別れじゃない。
「アンタたちも聞いたんでしょ? アメリアの声」
「あぁ」
「私も同じよ。あの子は前に進み始めた。いつもと変わらない笑顔でね」
「……」
「だから、私も進むわ。忘れられない事もあるけど、悲しみを抱えてでも進む強さを私は教えて貰ったから」
「そうか」
「という訳で、お別れ! ま、私は多分ずっとダキンに居るからさ。会いたくなったらまた会いに来なさいよ。ご飯くらいは奢ってあげるわ」
「あぁ、じゃあな。キャロン」
「いつかまた空の果てで」
「キャロン姉ちゃん! また!」
リアムさん達の言葉を聞いてから、私はキャロンさんに頭を下げた。
「キャロンさん。色々とありがとうございました」
「リリィ。元気でやんなさいよ」
「はい」
「私より先に死んだら許さないからね」
「努力します」
「ん」
キャロンさんと抱き合って、私は最期の別れを告げるのだった。
キャロンさんと別れ、ダキンを出てからそれほどしないで、次なる別れが私たちにやってきた。
そう。カーネリアン君である。
「じゃ、俺もそろそろ行くよ」
「なんだ? 今度は一緒に行くとかウジウジ言わねぇんだな」
「うん。俺、夢が出来たから」
「夢?」
「草原に行って、父ちゃんや母ちゃんが見てた世界を見に行く。それで、いつか飛行機で空の果てに居るアメリア姉ちゃんにも会いに行くよ」
「……そうか」
「ま。俺が行くよりリアム兄ちゃん達が行く方が早いかもしれないけどさ!」
「このガキ。生意気な事言いやがって!」
「へへ!」
「無理はするなよ。カーネリアン」
「分かってるよ。兄ちゃんたちもな。それにリリィとオリヴィアも」
「あぁ」
「はい。気を付けます」
「うん」
「じゃ! そういう訳だからさ。またどっかで会えたらその時はよろしくな!!」
カーネリアン君は笑顔で大きく手を振って、森の奥へと走っていった。
おそらくはカーネリアン君の家がある場所へと。
そして、また旅立つのだろう。夢が眠る場所、草原に。
カーネリアン君と別れてからまた少し歩いて、私たちはある町にたどり着いた。
そこはフィンさんと初めて会った町だ。
「あー。何だかんだ近かったな」
「世界の果てに比べればな」
「……そうだなぁ」
フィンさんは遠くの空へと顔を向けながら、声を漏らす。
「あぁ。そういえば忘れてたな」
「あん?」
「リリィちゃん。オリヴィアちゃん! 君たちは将来とんでもない美人になるだろう。そうなれば厄介な虫が大量に寄ってくるはずだ。そこで、どうだろうか! 俺と一緒に暮らさないか? 守り抜くぜ? どんな時も」
「折角ですが……」
「ごめんなさい」
「ふ……駄目だったか」
フィンさんは腰に手を当てながら笑う。
そんなフィンさんにリアムさんは呆れた様な声を出しながら、その背中を強く叩くのだった。
「お前は何も変わらないな。フィン」
「そりゃあそうだ。これが俺の信念だからな」
「こんなガキに色ボケる事がか?」
「あぁ」
フィンさんは穏やかに笑い、私たちに視線を合わせる様にしゃがみ込んだ。
「リリィちゃん。オリヴィアちゃん。君たちはまだ子供だ。これから先の人生、色々な事があるだろう」
「……はい」
「そんな時、自分が納得できる選択肢を選んで欲しい。世界や誰かの意思ではなく、自分で決めるんだ。出来るかい?」
「はい」
「出来ます!」
「良かった。じゃあ、俺ともここでお別れだ。とは言っても、住んでいる場所はそれほど遠くないからね。何か困った事があればすぐに来ると良い。どんな事でも協力するよ」
「ありがとうございます。フィンさん」
「ありがとうございます」
「いや、良いさ」
フィンさんは最後に私たちと手を握り、立ち上がってからリアムさんを見た。
「そういえばお前はどうするんだ? リアム」
「さて、どうするかね。まだ何も決まってないが……まぁ、適当に生きてゆくさ」
「そっか。なら、特にいう言葉はねぇな」
「俺もねぇよ」
「ハッ。お前らしい」
そして、リアムさんとフィンさんは互いに拳をぶつけ合ってから、別れを告げた。
フィンさんと別れてからまた歩いてきた道を進み、私たちは遂に始まりの場所へとたどり着いた。
それほど長い時間出かけていた訳では無いのに、酷く懐かしい感覚がする。
「じゃあ、リアムさんともここでお別れですかね」
「そうだな。家はすぐ目の前だ。ここからならお前たちだけでも行けるだろう」
「はい」
「……」
「リアムさん? どうかしましたか?」
私は無言で見つめてくるリアムさんに首を傾げながら問う。
「リリィ。考え直す気はねぇか」
「……何をでしょう」
「胡麻化すな。俺が気づかないとでも思ったか」
「まぁ、少し思ってました」
「舐めるな。前はそれで後悔した。二度目はない」
「……はい」
「リリィ様? 何の話ですか?」
「あー。えっと。なんと言いますか」
私はオリヴィアちゃんの言葉になんと返せばいいか分からず困っていたのだが、そこにリアムさんからとんでもない暴露をされる。
「オリヴィア。リリィはな。もうそれほど遠くない未来に、死ぬ」
「……え」
「寿命って訳じゃないんだろうがな。精霊の力を受け入れた影響か」
「まぁ、そうですね」
「似たもの姉妹だよ。お前たちは……本当に」
リアムさんの苦しそうな声を聞いて、私はごめんなさいと呟いた。
「リリィ様、そんな……どうにか、出来ないのですか?」
「うーん。ちょっと難しいですね」
「そ、んな」
「大丈夫ですよ。オリヴィアちゃん。私が死ぬ前には、必要な物は全てオリヴィアちゃんに残してゆきますからね」
「違う……そうじゃなくて」
「リリィ!」
「え!? あ、はい!」
「十年は絶対に持たせろ」
「えぇ!? いや、十年は流石に」
「やかましい。良いからやれ。出来ないなんて言い訳を俺は認めない」
「えぇー」
あんまりにも横暴なリアムさんの言葉に私は思わず声を漏らすが、リアムさんの鋭い瞳に口を両手で塞ぐ。
「お前ら姉妹に引っ掻き回されたままってのは腹が立つ。どうにかして生きて、生き抜け」
「でも」
「やかましい。もし十年生きられたら俺が何とかしてやる。アメリアとお前がまたアホみたいに笑ってこの世界に居られる様にしてやる……だから、死ぬな」
あぁ……。
私はリアムさんの強い視線に射抜かれながら、キュッと自分の手を握りしめた。
絶対に言わない様にと決めていた言葉が溢れそうになる。
死にたくない。
なんて、甘えた言葉が……。
でも、駄目だ。
それを言ってしまえば、きっとリアムさんやオリヴィアちゃんが苦しむことになる。
だから、私は……。
「分かりました」
「……」
「我儘なリアムさんの為に、生きますよ。十年。必ず」
「約束だからな」
「はい」
リアムさんの手を握りながら笑うのだ。
そして、リアムさんとも別れてから私とオリヴィアちゃんはお姉ちゃんやお婆ちゃんと住んでいた家に向かい、扉を開いた。
「ようやく帰ってきましたね」
「……えと、お邪魔します」
「オリヴィアちゃん。違いますよ」
「え?」
「今日からここはオリヴィアちゃんの家でもあるんですから。ただいま。が正しいです」
私の言葉にオリヴィアちゃんは目を見開いてから、小さく笑って言う。
「……ただいま」
「おかえりなさい」