エルデンリングって何だよ   作:ポチ&タマ

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第54話 同胞狩り

 客間に通される。

 六畳一間ほどのこじんまりとした部屋だが調度品は一通り揃っており、小部屋ながらもアンティークな家具やレイアウトに気品を感じる。

 部屋の色は相変わらず目に優しくない紅色。眼精疲労を感じつつも部屋の中を細かく確認していると、テーブルの上に一通の封書が。

 古騎士イシュトバーンを討伐してほしい旨と、赤印でマークされた地図が入っていた。

 ⋯⋯先のベルナールさんの発言といい、この手紙といい、何のつもりだ? 

 

「古騎士イシュトバーンか」

 

「知り合いですか?」

 

「直接の面識はないがな。破砕戦争を生き延びた古参の褪せ人だ」

 

 ミニラニ様の言葉に、脳内の辞書を引っ張り出す。

 破砕戦争はエルデンリングが砕けてから、散らばった破片を集めるためデミゴッドたちが起こした大戦争。共にデミゴッド最強格であるラダーン将軍とマレニアが、ケイリッドの奥地にあるエオニアで決闘が行われ、これが破砕戦争の結末を決定づけた。

 古騎士イシュトバーンがどちらの勢力についていたのか分からないが、その戦争に参加し生き延びたのなら、相当な実力を有するのだろう。

 そんな強者を討てと。⋯⋯タニスさんは何を考えているんだ? 

 

「部屋の手紙、読んでくれたかな。あれは火山館から君への依頼だ。勿論、それなりの礼もしよう。よろしく頼むよ」

 

 タニスさんに件の手紙について尋ねると、そんな言葉が返ってきた。

 いやいや、何でもないように言うけど、何で褪せ人狩りなんてせにゃならんのですか? 

 

「そこに疑問を抱くか。これも黄金樹の洗脳によるものか……」

 

 えっ、黄金樹には洗脳効果があるの? 

 セルフチェックした時、洗脳なんてされてなかったけど。デバフが掛かっていたら何かしらの色が視えるから一目瞭然だ。

 条件を満たすと自動で洗脳デバフが掛かる仕組みなのか。

 黄金樹に対して少し警戒と不信感を抱くが、ミニラニ様の「黄金樹にそんな効果はないが。何か勘違いしていないか……?」という言葉にすぐさま融解した。

 

「我らは黄金樹に弓引く者。すなわち、黄金樹に与する褪せ人たちは明確な敵である。若い褪せ人は大した弊害ではないが、古くから活動を続ける褪せ人は別だ。奴らは狡猾でしぶとく、鋭い牙を持っている。我らの妨げとなる者たちだ」

 

 そして、貴公を更なる英雄へと至らせる贄でもある。奴らの躯を糧にし、英雄の道を昇り詰めるがよい。

 そう言葉を続けたタニス様は「──だが」と声を落としす。

 

「もし、同胞狩りに躊躇があるなら、今すぐこの館を出て行きたまえ。⋯⋯我らは、黄金樹に弓引くのだ。惰弱者に用はない。手を汚す覚悟も必要なのだ。言葉ではなく成果で、結論を示したまえ」

 

 足を組み「もう言うことは無い」と言外に示すタニスさん。

 彼女たちの方針に一定の理解を得た俺は、とりあえず地図に示された場所へ向かうことにした。

 

 

 

 1

 

 

 

 地図に示されていた場所は、リムグレイブとリエーニエの堺付近。

 近くの祝福に腰掛けた俺は、早速ミーティングを開いた。

 出席者は俺、メリナ、ボック、ミニラニ様、アレクトーの五人。

 祝福を中心に円陣を組むと、早速手を上げる。

 

「ではこれより、火山館に所属する上での方針を決めたいと思います。まず現状確認から」

 

 火山館はデミゴッドの一人、ライカードの居城であるが、現在彼の姿は確認出来ていない。

 火山館は反黄金樹勢力であり、黄金樹に組する褪せ人を敵視・排除している。

 火山館のメンバー総数は不明。円卓と同じように館は寄合所として利用されており、メンバーは世界各地に散っている可能性あり。

 火山館の主人はタニス。ライカードとの関係は不明。

 火山館で活動する上で、黄金樹勢力の褪せ人を排除しなければならない。

 

「このくらいか。さて、何か質問がある人ー⋯⋯じゃあ、メリナ」

 

「もぐもぐ……そもそも、火山館に属する必要性は、あるのかしら」

 

 お昼ご飯も兼ねているため、その手には香ばしく焼き上がった【勇者の肉塊】が握られている。

 ちなみにメリナたちが食べている【勇者の肉塊】は通常のソレではなく、【黄金のロア】と【アルテリアの葉】を粉末状にすり潰し、まぶしてから高温で揚げたものだ。最近編み出した調理法で、なんとファミ〇キのような味と触感に近づけたのである。

 食べると喋るを交互に行っているメリナの指摘に、もっともだと頷き返す。

 

「火山館がライカードの勢力だとしたら、ライカードを討つのに大きな障害になるだろ。あの様子じゃ平和的話し合いで解決、とはいかないだろうし」

 

 黄金樹に与する褪せ人死すべし、を前面に謳っているんだし、きっと大ルーンを求めてやってきたなんていったら即敵視されていたと思う。

 なので、まずは味方として懐に入り込み情報収集。然るべきタイミングで接触を図ろう、という狙いだ。

 脳筋プレイがデフォの俺にしては中々の上策ではなかろうか。深謀遠慮な閃きに我が事ながら驚愕を禁じ得ない。

 

「なるほどな……確かに、我が王がライカードの大ルーンを狙っていると知れば、火山館は敵に回っただろうな。特に、あのタニスという女、裏で手を回すのが得意な策士とみた」

 

 細かく千切った【勇者の肉塊 ファミ〇キver】を上品に食べているミニラニ様が小さく頷く。人形の体なのに飲食可能なのね……。

 

「あの騎士様も、すごく強そうでしたね……」

 

 神妙な声で呟くボックは【黄金のロア】と【キノコ】、【夜霧のヘルバ】のサラダをモリモリ食べている。肉も食べるけど、どちらかというと野菜系が好きなのだ。オリジナルドレッシングは鋭意開発中です。

 タニスさんの隣にいたボディーガードを思い出す。赤銅色の甲冑には混沌とした生命力が宿っているのを感じた。赤、青、黄色、緑など様々な色を混ぜ合わせたような、そんなカオスチックな生命力だ。

 一目で歴戦の強者だと分かる佇まいに、混沌の生命力。一人の武人として是非とも、手合わせ願いたいと思ったわ。

 

「それにしても、褪せ人ってエルデンリングを求めてるんだよな。それって結局、黄金樹勢力扱いになるのか?」

 

「いえ、全員が全員そうとは限りません。黄金樹の祝福を得ながら、己の目的のために旅をする褪せ人もおります。黄金樹を信仰する褪せ人の多くは、古の者のようですが」

 

「ほー、皆が皆エルデンリングを求めてる訳じゃないのか。黄金樹勢力ねぇ……」

 

 腹ごしらえが終わり、改めて定めるべき方針を決める。

 それは、火山館からの依頼通りに黄金樹勢力の褪せ人を討つか否か。

 火山館に属するのなら指示通りターゲットを抹殺した方がいいのだろうが、無益な殺傷を控えている俺にとっては容易に快諾出来る話ではない。

 しかし、今後の活動を踏まえるなら依頼は受けるべき……何かアドバイスとかありますかね? 

 

「私は依頼を受けてもいいと思うわ」

 

「そういや、メリナはいいのか? 反黄金樹勢力とかメリナ的にアウトじゃ」

 

 黄金樹を目指しているメリナにとって、火山館は相容れない存在なのではないかと、今更ながら思ったのだが。

 当の本人は涼し気な顔で肩を竦めている。

 

「あくまでも私に課せられた使命を果たすため、黄金樹の麓に行く必要があって別に黄金樹勢力というわけではないし。別にいいんじゃないかしら。それに、遅かれ早かれ、エルデの王になるのは雷斗だもの」

 

「お、おう」

 

 ストレートに好意をぶつけられて思わず鼻白む。

 よく臆面もなく言えるよな、そういうセリフ。いや、まあ、嬉しいけどさ……。

 

「我が王よ、お前はエルデの王となるのだ。他者を慮るのもお前の魅力ではあるが、然るべき時に然るべき決断を下すのも王というもの。お前の心の赴くままに進が良い、我が王よ」

 

「……うっす」

 

 まるで家臣のような忠言を口にするミニラニ様。

 しかし、言っていることはよく分かるため神妙に頷く。

 忠言感謝ッ! 

 

「貴方様の気が赴くがままに」

 

「オイラも、わが王についていきます!」

 

 片膝をつき頭を垂れるアレクトーと、信頼に満ちた目でこちらを見上げるボック。

 結局、決断を下すのは俺ってことね。

 

「……相手の人となりを見てから決めるか」

 

 極悪人である可能性もあるし、そうなら悩まずに済むんだけどなぁ。

 

 

 

 2

 

 

 

 指定された場所に向かうと、褪せ人と思わしき人物を見つけた。

 鱗で装飾された鎧を着込み、手には斬馬刀。

 日課の鍛錬だろうか。上段に構えた姿勢から一気に振り下ろし、地面に水平となる位置でピタッと止める。

 流れる水のように淀みなく、それでいて力強さを感じる真向う斬り。それを何度も、ほぼ同じ姿勢、同じ位置、同じ速度で再現している。なんという練度……! 

 名前を聞かなくても分かる。この人物が古騎士イシュトバーンだ……ッ! 

 

「──そこな褪せ人よ。何用か」

 

 渋い男の声。斬馬刀を下ろしたイシュトバーンさんだが、いつでも構えに移れる姿勢であることから、警戒を解いていないことが分かる。

 

「イシュトバーンさんですね。黄金樹に与する褪せ人の一人」

 

「吾が黄金樹に、だと?」

 

 鋭い視線に殺気が乗る。

 斬馬刀を握る手に力が込められたのが、端から見ていて分かった。

 

「吾を奴らのような愚物と同列視することは、まかりならん」

 

「えっと、黄金樹勢力ではない?」

 

「然り。吾は黄金樹を──二本指を葬る者。彼奴らに引導を与える存在だ」

 

 まさかの黄金樹アンチ勢だった。

 想定外の事態に思わず頭を掻く。

 えーっと、この場合どうすればいいんだ? 

 

「して、汝は何者だ?」

 

「火山館の者です」

 

「火山館⋯⋯反黄金樹を謳う狂人どもの住処か。⋯⋯にしては、汝は憎しみに囚われているようには見えんが」

 

 確かに火山館の人たち──とはいえタニスさんとベルナールさんしか知らないが──は黄金樹ないしはその裏で糸を引く二本指に並ならぬ敵意を抱いている。

 彼らの操り人形になることが我慢ならないとの話で、分からなくはないが、俺はそこまで嫌悪感はない。最終的に決めるのは俺だし。

 

「利害の一致で属しているだけで、そこまで黄金樹憎しではないので」

 

 ところで、何でイシュトバーンさんは黄金樹アンチになったんですかね。火山館のターゲットになるくらいだから、元々は黄金樹側の人間だったのでは? 

 素朴な疑問に少しの間沈黙するイシュトバーンさんだが「これも先達の務めか⋯」と重い口を開いてくれた。

 

「いいだろう。吾が黄金樹を、その裏で糸を引く二本指に敵意を抱く理由を教えよう。吾のような過ちを犯さぬことを願って」




アンケートのご協力ありがとうございます。
圧倒的にエロが見たい、とのことなので。ストックが尽きたら本作を通常公開したいと思います。
エロシーンが出来上がったら、それとは別にR18作で新規投稿しますので、よろしくお願いします。
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