勇気の女神にオンナにされた   作:min(みならい)

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リーモ、片目に倒される

◆♀◆ 17、サンキュー、きげんをうったえる ◆♂◆

 

「お願いします。1日だけ。1日だけ解放してください」

 ピンク髪の美女が訴える。膝をついて手を差し上げた。

「魔王陛下に会わないといけないんです。明日までに」

「だめ」青と黒のあいだの髪をした娘が、その手をさえぎった。

「そんなー」

「こちらから使者は出してある」背の高い若殿が言った。「結果を待ちたまえ、セイレーンの魔将よ」

 

 ここは、石造りの塔の中。

 ナダラカンミナットの領主館。その敷地内に建っている、塔の1階である。

 塔は石造りだが、床は土間。石でない。土のまま。

 窓はない。暖炉もない。出口は正面扉ひとつだけ。外から閂(かんぬき)掛けれるタイプ。

 ──つまり。

 ピンク髪の美女・サンキューは、領主館に幽閉されているのであった。

 

「3日以内に戻ると、うちの陛下に言っちゃったんですよ」

「それは聞いた」とレーネ。「とにかくだめ」

「この通り!」

 絨毯に膝をついたサンキュー。嘆願(たんがん)のポーズ。

 差し伸べた手はレーネにブロックされ、ガンバには届かない。「だめ」

「そんなー」

「・・・。」

 リーモは、乳を見ていた。ピンクの頭が動くたびに、揺れるおっぱいを・・・。

 サンキューなら帰って来ると思うけど・・・ぷるんぷるんして柔らかそう。などと、思考がとっ散らかっておる。

「どうなっても知りませんよ、ホントに」

 ピンク髪のサンキュー、ガクンと肩落とす。あ、また揺れた。

「ご機嫌を損ねたら、何するかわからない人ですから」

「その場合は、私がお相手する」

「いやいや。あなた、津波は止めれませんよね?」

「・・・。」レーネが黙った。

「セイラッキルーネ閣下。今朝は時間がない。これで失礼する」ガンバが話を打ち切った。「だがこれだけは言っておく。我々は、脅しには屈しない、とな」

「・・・考えが変わることを祈ってます。できれば、今日中に」

「変わるのはそっちだ。変われ、サンキュー。できるものなら」

 レーネはクールに決めて、くるっと振り向いて外に出──

「あのこれ、レモン茶いでっ!」

「ぶぎゃっ」

 ──ようとしたレーネの顔面に、リーモのおでこがぶつかった。

 レーネ、鼻押さえる。リーモ、よろけながら小袋を差し出す。

「レモン茶。ゼナルジーコさんが、サンキューはこれが好きだって」

「預かる」ガンバが取り上げた。

「あ」

「中身は調べさせてもらうぞ」

「・・・あ、はい」

「他に何かあるか、ナッタレーニェ」

「あ、はい、あのえっと、サンキュー、なんか困ってることない?」

「ないです。ありがと、リーモ」サンキューはほほえんだ。「あ、でも、ぜいたくを言えば・・・」

「なにかな」とガンバ。

「水浴びがしたいですね。冷たい海水でお願いします」

 

「・・・鼻血出るかと思った」

「ごめん。頭突きしちゃったよ」

 レーネ、ぼやく。リーモ、おでこさする。

 朝日輝く庭を歩いて、領主館に入る。女中に迎えられ、控え室に。

「四半刻ほどで会議が始まります。ただいま、軽食をお持ちします」

「ありがとう」

「・・・前に来たことあるね、この部屋」

 リーモは見回した。広い窓。空が青い。

「ガンバが客と会う部屋なんだよ。もっぱら私に使ってくれてる」

「へえ」

 ぜいたく! ・・・このひと嫁さんにするの、大変かもな。いまさらビビるリーモであった。

「・・・反乱軍ってさぁ」

「なに」

「強いの?」

「ガレーは多いね。海軍の拠点だから、ミガシナンショは」

 

 『反乱軍迫る』の報が届いたのは、半刻(約1時間)前のことであった。

 レーネに伝令が来て、リーモも声を掛けられて、領主館に顔を出したのだ。

 思ったより、領主館は落ち着いておった。「ついに来たか」という、そんな空気。

 

「ワイロンバ事件以降、軍のガレーをこっちへ呼び寄せてたんだ。その命令を無視する艦がいてね」

「だめじゃん」

「まあね。でも、おかげで反乱はバレバレだったってわけ」

「そっか」リーモ、外を見る。塔のある方向。「サンキュー、元気そうで、よかったよ」

「そうだね」

 

 サンキューと会っておきたいと希望したら、すんなり通った。

 その代わり、防衛に協力することになったのだが・・・

 

「お待たせいたしました」軽食がやってきた。

「酒はダメよ」

「あい」

 レーネに葡萄酒をあっちやられて、リーモは平気な顔をした。・・・つもりである。

「・・・あんた、酒乱の気あるよね?」

「ないよ」

「おっ父、酒で暴れたりする?」

「しない。おっ父、酒、めっちゃ強い」リーモ、甘いクッキー、ひょいパクする。「サクサク・・・おっ母恐いし」

「へえ」レーネ、麦ぺったん(肉)にかぶりつく。彼女は肉が好き。「恐いんだ」

「うん。サクサク・・・食事のときに、騒ぐと、めっちゃ怒る。サクサク」

「ふふふ」

 レーネはレモン水をごくごく呑んだ。

「オレー」

「なに?」

「死なないでよ」

「大丈夫。めg」

「『女神さまいるから』はナシ。怪我もしないで」

「・・・あい」

「はーぁ!」

「なに?」

「私さ、守ってる相手が死ぬの、嫌なんだよ」

「俺だって嫌だよ」

「ちっ」レーネ、にやける。レモン水呑む。「いっちょまえに」

「レーネも」リーモも同じの呑む。甘酸っぱかった。「ゼナルジーコの宿に、ちゃんと帰ってきてね」

「うん」

 

 ・・・今回、ふたりは、別々の作戦に向かうことになったのだった。

 

◆♀◆ 18、戦のはじまり ◆♂◆

 

「なんとしても、大勝しなければならぬ」

 波の音しぶく、船の上。

 後部・艦長席にて、話し合う男どもがいた。

 反乱軍の首領、カボンゴチデル・アワイランバ。壮年の軍人。

 そして、副官のクドコットー。老年の造船技師である。

「明日はない。今日勝つか、死ぬかだ」と、アワイランバが言うと、

「閣下こそ、新たな時代の海の大王となるべき御方・・・」などと、クドコットーは抜かしおった。

「・・・。」

 アワイランバ。苦い顔をする。

 造船技師であるクドコットーは、本来なら戦に出る立場ではない。特例だ。『副官』との立場も形だけ。なのに口数が多いのだ。

「・・・まさか、あのオセゾックが死ぬとはな。人間、先はわからんものだ」

「援軍さえ到着すれば、“騙し討ちの王”なぞ居らずとも・・・」

「甘いわ。大王が死んだのだぞ。いまごろは王位争いに夢中だわ」

「そんな、まさか・・・!」

 これは、アワイランバが正解であった。

 オセゾック大王と内通して引き入れた援軍は、『大王死す』の伝令によって、国境の山々を手前に引き返していた。もはや、ナダラカンに姿を現わすことはない。

「陸と海から挟み打ちにする──との、目算は潰えた(ついえた)。私が勝つしかなくなったのだ」

「で、では・・・“片目”も、裏切ったのでしょうか?」

「北の王都は山奥だ。海賊にできることはない」

「ならば、海軍に問題はございませんな!」クドコットーは笑顔になった。「勝ちは揺らぎませんでしょう!」

「・・・。」

 アワイランバは、ゆく先を睨んだ。

 大型ガレー“エトピリカⅡ世”は、朝の海上を飛ぶがごとくに滑走している。柔らかな波に上がるしぶきは舷側を越えることがない。乗り心地のいい船だった。戦闘艦とは思えないほどに。

「なんとしても、ナダラカンの首を取らねばならぬ」

 金の王笏でイライラと手を叩いて、アワイランバはつぶやく。

「さもなくば、今夜の港も覚束ぬ(おぼつかぬ)・・・」

 

「ここは新王の、今夜の港ぞ! 堅く守りまいらせよ。新王の安らぎは、我らにかかっておるのだ!」

 こちらは、陸の上。市街地を守る城壁の上である。

 大声を張り上げて指揮をする戦士が、壁の上を行ったり来たりしておる。

「さあ、さあ! 新たな王の下で、豊かな暮らしをしたいなら、いま、守りを固めるのだ!」

 そんな戦士の下に、青白い顔をした伝令が走ってきた。「イカイナイン閣下!」

「・・・なんだ」

「ナダラカンの軍、およそ2万が、出陣いたしました!」

「2万だと!」戦士は動揺する。「こちらは3千人だぞ」

「2万でございます。さらに、」

「まだあるのか」

「ブローノンテッリのハルダック王子率いる北国の軍が、当領地北方より侵入しました。およそ5百人」

「ブローノンテッリ・・・と、申すからには・・・」

「はい。敵です。『恩義に従い、反乱の賊軍を討つ』と称しておる由(よし)」

「ぬう! ・・・大王の援軍は? ナダラカンを脅かすという話であったはず」

「影も形もございません」

「ぬうう!」

 戦士は、城壁から背後の街並みを眺めた。

 朝日に輝く港町。岩山にへばりつく、坂道だらけの街。深々と海水をたたえた港。歩くに厳しく船には優しい祖国の姿。

「ミガシナンショが・・・滅ぶだと・・・?」

「はい?」

「いや、なんでもないのだ」戦士は首を振った。「ご苦労。休むがよい」

「は!」

「者ども、急げ! 敵は近いぞ、のろのろするな! 槍を運べ、矢を束ねよ。新王の帰還まで、この港を守り抜くのだ!」

 

「──というわけでな。こちらは、時間を稼ぐだけでよいのだ」

 こちらは、ナダラカン海軍旗艦“アホウドリ”の艦長席。

 席には、艦長のジナグンコ。前回の海戦でご一緒した艦長さんだが、リーモはあまりなじみがない。

 その隣に、黄金の王笏を持ったガンバ。しゃべっているのは彼である。

 ガンバの隣にリーモ。聞き役は彼/女であった。

「北国の王子も来てくれたしな」

「ハルダック?」

「ああ。すべてがこちらに有利に進んでいる」

「そっか」

 リーモは、豚飼い領の大柄な若者のことを思い出した。

 来てくれて嬉し・・・くはない。レーネに求婚してきた男である。『こっち来んな!』っちゅうのが本音であった。

「・・・よかったね」

「まったくだ。『ハルダックと5百人』の一報が、どんなに嬉しかったか」

「けど、5百人って、少なくない?」

「重要なのは、王子が来てくれたということさ、リーモくん」

「うん?」

「もしも、大王の残党が活発であったら、後継ぎがこっちに来る余裕はなかろう?」

「うん」

「だが彼は来てくれた。順風満帆というわけさ」

「・・・うん?」

 解説はそれで終わりであった。ガンバは艦長と話を始めてしもうた。

 カランカラン・・・竹筒アーマー(浮きになるやつである)を鳴らして、左右を眺めるリーモである。

「じゅんぷうまんぱんか」

 おっ父も使う言葉だから、意味はわかっとる。帆がパンパンって意味だろ?

 んで調子に乗って、後で「いかん!」って言い出すんだよね。

「大丈夫なのかな」

「大丈夫ですよ、巫女さま」近くの漕ぎ手が笑った。

 ほんとかなぁ・・・。

 大型ガレー“アホウドリ”は、走り始めた。なめらかに港を出る。

 “アホウドリ”につづいて、大型ガレーが1隻、小型ガレーが3隻、発進した。

 遠ざかる港は、見送りでいっぱい。まるで巣の防衛に飛び出したミツバチのよう。互いの身体に乗っかって「がんばれー」だの「勇者さまはどこー?」だの、好きなことを言うておる。

 艦隊にも港にも、リーモの愛する女勇者ユリアーニェの姿はなかった。

 

「お頭! ユリアーニェがガレーに乗ってますぜ!」

「なに?」

 ──そしてこちらは、西の海上。

 女勇者ユリアーニェの故郷、ユークランベ沖。

 緊急の報告を受けた海賊船長は、濁った右目に眼帯をして、甲板へと走り出た。

「あそこでさァ」

 指差されたのは、岬のたもと。

 朝日にぼんやり照らされた岬。その下で、牙を剥いている岩礁。その岩礁ギリギリのところに、錨(いかり)を下ろした小型ガレー。

「なんだありゃ? クレーンか?」

 船尾に、木製クレーンが付いておる。そこからロープが海中へ。ロープの周囲に、3人の海兵が泳いでおる。

「網でも引いてんじゃねえんで?」

「漁やってる場合かよ。なに引き揚げてんだ?」

「さあ。潜ってみますか?」

「やめとけ。接近はすんな。あいつ1隻だけか?」

「へい。“ウツボ”と“クロガシラ”が回り込んで、『敵艦なし』の合図は来てまさァ」

 片目はひとつしかない目を細めて船を見極める。

「“カンムリウミスズメ”か。女勇者と仲のいい艦だな──おい! “ミノカサゴ”を呼べ!」

「へい」

 合図が出され、小型ガレーが近付いてきた。船首にトゲトゲの魚の像がついており、とても目立つ。甲板にはこれまた目立つダークエルフの男どもが、12人。奴隷ではない。弓を携えての乗船である。

「あの船に矢は届くか」と片目が聞けば、

「届かすだけなら」とダークエルフが答える。

「よし、やれ! てめえらの身分はこの戦いにかかってんだ。手柄を立てて見せろ!」

「閣下のご命令とあらば」

 ダークエルフの弓兵ども。揺れる船の上で弓を引き、一斉に矢を放った。

 高い山を描いた矢は、カンムリウミスズメの甲板へと降り注ぐ──

 

《我らは防壁! 丸天井!》

 

 ──鳴り響く声が、その矢を阻んだ。

 海中から岩が飛び出し、壁となり、さらに反り返って丸天井となったのである。

 被害なし。だが、泳いでいた海兵はあわてて潜り、作業は中断されている。

「よし。てめェらはこのまま、距離を保って矢を浴びせてろ」

「ブチ噛まさなくてよろしいんで?」とミノカサゴの艦長。

「馬鹿野郎ォ、ユリアーニェの《声》で、船ェへし折られっちまうぞ」

 片目は笑い飛ばした。

「奴らが何やってんだかわかんねえが、勇者がいるんだ。重要な任務にちがいねえ。できるだけ時間を稼げ」

「へい! なるだけ手間取らせてみせまさァ」

「よーし」片目はうなずき、自分の船を振り向いた。「おい、俺たちァ先に行くぞ」

「頃合いを見るんじゃなかったんで?」

「いまが頃合いだ! とっとと出しゃァがれ!」

 

「サンキュー、遅い!」

 ──最後のこちらは、遥かな遠洋にぽつんと浮かぶ、小さな珊瑚礁。

 鮮やかな色合いの珊瑚に囲まれて、波のただなかに立つお城。いかにも不自然な、岩の城の中である。

 足音も高く歩いてきたのは、滄溟たる(そうめいたる)髪の美女。

 セイレーンの娘たちをかき分けるようにして、カツカツカツカツッ・・・と、珊瑚で飾られた宝箱のところに行き、開ける。中から、透明な水晶玉を取り出した。

「誰かの眼(まなこ)に映るなら、この水晶にも映るべし。我はそなたの目を盗む──『盗視』」

 呪文を唱える。

 すると、なんとしたことか!

 水晶玉の中に、ピンク髪した美女の姿が、浮かび上がったではないか!

「あ、サンキューだ」

「こら。覗いてはならぬ。死刑にするぞ」

「やだー!」美女の手元を覗いていたセイレーン。ビタンビタンと足ヒレを鳴らして逃げ回り、しなやかな手で自分の両目をふさいだ。「見てません」

「よろしい」

 滄溟たる髪の美女は水晶玉に目を戻す。

 ピンク髪の美女。大きな桶に漬かって、ボケーと宙を眺めておる。桶には泡立つ水が満ちており、美女は、セイレーンの足ヒレでもって、その水をばしゃばしゃ波打たせておる。いまにも水の音が聞こえてきそう。だが音はしない。映像だけ。

 腕まくりした女中が、その大桶に水を注いだ。ピンクは『ありがとう』とお礼を言うて(声は聞こえんが)、ほほえんだ・・・

「なにをくつろいでおる!!!」

 美女、キレた。

 周囲のセイレーンが「きゃー」と引き潮のごとく逃げてゆく。

「これ」

「きゃー」「きゃー」

「シャチと幽霊艦隊に『ついて来い』と伝えておけ」

「はーい」「はーい」「シャチきらーい」

 水晶玉を胸元に入れた美女。さっきより速く、さっきより高く足音響かせて、広間を出た。

 廊下を歩き、両開きの扉を開ける。

 外は、大海原であった。

「神馬よ出でよ! ツノックローヒギン!」

「ブロオォォ!」馬のいななく声がした。「ヒヒィン」

 ばしゃばしゃばしゃらん、ばしゃらんらん!

 波を蹴立てて現われたのは、巨大な黒馬。足先だけが見事に銀色の、威風堂々たる馬である。

 青い海の上に──沈むこともなく! 立ち止まる。

「サンキューが裏切った」

「ブホ・・・」馬、ギョロ目で美女を見る。

「そうだ。連れ戻して、お仕置きをする。ついでに、ナダラカンを沈める」

 美女はひらりと舞い上がった。羽毛のように軽々と、巨馬にまたがる。

「ブロロッ!」

「うむ。3日待つ約束であったな。だが、守る必要はあるまい──言い出した本人が守らぬのだから!」

 

 ──このようにして、戦は始まったのである。

 

◆♀◆ 19、午前の戦い ◆♂◆

 

 ガンバのナダラカン艦隊は、敵を待ち受けた。

 午前の半ばあたりに、敵の姿が現れる。アワイランバの反乱艦隊。矢尻のごとき隊列で、突っ込んできた。

 双方の陣容は・・・

 

  ナダラカン軍(旗艦“アホウドリ”) ・・・大型ガレー2隻、小型ガレー3隻。

  反乱軍(旗艦“エトピリカⅡ世”) ・・・大型ガレー3隻、小型ガレー7隻。

 

「また数で負けてら」リーモはつぶやく。

「口にするんじゃない」ガンバにたしなめられた。「みんなわかっとるんだ」

「あい」

「エトピリカⅡ世は、あれは、新造艦ですな」とジナグンコ艦長。「別な名が付く予定だった艦だ」

「完成しとらんという理由で、引き渡しを渋っとったやつか?」

「はい、司令官。新式の艦ですから、間違いありませぬ」

「新型を、いきなり旗艦か」

「安全より、遺恨を取ったということですな」

「そうだな・・・」

 ガンバは少し感慨にふけった。その感慨を、リーモにも説明する。「魔王に沈められたんだ。エトピリカはな」

「そうなんだ」

「前回の、幽霊艦隊の旗艦がな。そのエトピリカだった。ミガシナンショの船乗りには、屈辱だったろう」

「ええ」ジナグンコ艦長、言葉少なにうなずく。

 リーモはアホウドリの船首を見た。そこに、大きなアホウドリがいる。木製の船首像である。船の名札というわけだ。

 ちなみに、海賊どもに船を鹵獲されると、船首像はサメだのウツボだのになる。それを海軍が奪還すれば、海鳥が戻ってくるわけである。魔王は無頓着(むとんちゃく)で、交換も修理もしない。

「どんな船だったかな」ガンバが話を戻した。

「カンムリウミスズメの艦長が試験航海を担当したのですが、『重い、鈍い。旅客船のごとし』と評しておりました」

「そうか。では、最初の計画通りにやろう」

「かしこまりました。──櫂を取れ!」

 

 ナダラカン海軍は、左右に分かれた。

 左翼、陸に近いほうに、旗艦“アホウドリ”と小型艦“ヤマガラス”。

 右翼、沖のほうに、大型艦“ミズナギドリ”と小型艦“ウミネコ”“ウミウ”である。

 あたかも獣が牙を剥くがごとく、衝角を敵に向けての、八の字の陣。

 敵は──アホウドリに殺到してきた!

 アホウドリと同格の大型が3隻、さらに小型が7隻! こっちは、大1・小1の2隻きりだのに!

「うわあ」リーモびびる。

「釣れましたな」ジナグンコ艦長、片頬で笑った。「前進! “手のひら岩”の左を抜けよ」

 アホウドリ、なんと無謀!

 カウンター突撃を開始しよった!

 海上に突き出した大きな岩の左をすり抜けて、アホウドリは敵艦隊の背後へ向かった!

 リーモさらにびびる! 小型艦ヤマガラスも、心なしかびびっとる!

 もちろん、うかうかと通過を許す敵ではない!

「仕留めよ!」

 敵旗艦の艦長席で、立ち上がって叫ぶアワイロンバの姿が見えた。

「ナダラカンの若殿に、ミガシナンショの操船を見せてしんぜよ!」

 機敏な小型艦2隻がこれに応えた。

 岩を抜けたところでアホウドリを待ち構え、見事にタイミングを合わせて、衝角突撃を──

 

 ドン! ゴン!

 

 ──しようとしたところで、海中の岩に激突した。船腹を突き上げられ、横に傾き・・・・・・・・・転覆した!

「ばかな! “手のひら岩”に、暗礁などなかったはず・・・!」

 海に投げ出されながら、小型艦の艦長が叫ぶ。

「なかったとも」ガンバ、ニヤリとする。「掟破りの女勇者さまが、《声》を使うまではな」

「あー・・・」

 リーモ、合点が行った。レーネがこっそり暗礁を造ったわけだ。

 地元の海に詳しいからこそ引っ掛かる、イヤ~な罠である。

「ひどい」

「巫女さまは、船乗りの気持ちがおわかりで」ジナグンコ艦長が、ちょっとおどけた。

「ま・・・まあ、すぐ片付けてもらうさ。レーネがこっちに来たらな?」ガンバは小さくなった。

 

 この罠が効いた。海岸沿いを飛び回るアホウドリに、敵艦隊は突撃ができなくなったのだ。

 どこに暗礁があるかわからぬ。疑心暗鬼となり、動きが鈍くなる。そこにアホウドリが突っ込んだ。小型艦の鼻面を突いて、ぐるりと回転させ──結局、転覆させた。

 これで敵の小型艦は3隻が沈没。残り4隻となった。

 

「よし。沖へ出る。帆を張れ」とジナグンコ艦長。

「リーモ。私に掴まれ」とガンバ。「盾を上げておけよ」

「あい」

 アホウドリは翼を広げ、風に乗って逃げ回る。

 怒り狂う敵は、アホウドリの航跡をなぞるように追いかけてきた。船首に弓兵を並べて、撃ってくる。

 船尾にある艦長席には、当然のように矢が降ってきた。白兵戦担当の槍兵が盾でもって艦長を守る。数人が傷つきつつ、艦長・ガンバ・リーモを守った。なんか申し訳ない。

 アホウドリも撃ち返す。逃げ撃ちゆえに勢いはある。敵艦は矢に向かって突っ込む形になるので。が、被害は少ない。船首から下がれば済むので。

 こうして撃ち合いつつ、アホウドリはぐるーっと円を描く。まるで、釣り針が刺さったまま悠然と泳ぐ大きな魚のよう。優位にあるはずの漁師を引きずり回し、焦らせ、疲労させる。あたかもそのようにアホウドリは敵艦隊を引きずり回した。

 そして。

 いつの間にか、右前方に味方右翼が出現した!

「よしよし」ジナグンコ艦長が褒める。「折れた翼で、よく合わせた」

 右舷を晒す敵に、ミズナギドリが突っ込んだ。すれ違いながら衝角を突きつける。刺すというより『こすりつける』といった形になったが、敵小型艦の右舷の櫂をへし折った。はね飛ぶ櫂に腹や顎を強打された漕ぎ手はたまったもんではない。多くが傷つき、速力を大幅に失った。

 ウミウとウミネコも続いた。敵小型艦をさらに1隻、脱落させる。

 残り、大型3、小型2。

「上出来だ!」ガンバは御機嫌である。「あとは、日暮れまで時間を稼ぐのみ。我が軍の練度なら、難しいことはない!」

「・・・。」

 ほんとかなぁ・・・リーモ、ふたたび首をかしげる。

 そんな上手く行くのかなあ? なーんか、忘れてる気がするんだよね。

 

◆♀◆ 20、リーモ、片目に倒される ◆♂◆

 

「おのれ! ナダラカンめ」

 アワイランバ。歯ぎしりする。

 小型ガレーを、2隻にまで減らされた。ナダラカンは3隻だ。小型艦の数では、逆転されてしまった!

 大型艦は3隻とも健在なのだが・・・

 旗艦であるエトピリカⅡ世が、問題であった。

 遅い!

「なるべく直進してくだされ。速度に乗れば、どの艦よりも速いはずで・・・」

 クドコットーがうるさい。

 たしかに、直進すれば速い。順風満帆であれば、エトピリカⅡ世はこの戦いで最速であろう。

 だがそんな速度、この時代の海戦では、役に立たぬ。衝角と接舷戦闘をメインとする、沿岸中心の海戦では。

 陸を使い、岩礁を使い、うねうねと走り回って優位を取り合う。衝角が決まればそれで終わり。決まらずとも、漕ぎ手にダメージを入れれば勝ち。最後はぶつかり合っての接舷戦闘で首の取り合い──そんな海戦では。

 しばらく怒りを噛みしめたアワイランバ。ふっと、肩の力を抜く。

「やむを得ぬ。速度を落とせ」

「しかし、閣下」クドコットーが口を出してくる。「今日の日をもって決戦とする方針では?」

「その通りだ。──いったん速度を落とせ! 漕ぎ手を休ませろ。それから、帆をたたんでおけ」

「は!」

「閣下。一度速度を落とせば、加速には時間がかかります。ここは漕ぎ手に無理をさせてでも、速度を維持──」

「黙れ!」

 アワイランバは一喝した。剣の柄に手をかける。

「私の命令を妨害するな。それは反乱だ。首を斬ることになるぞ」

「・・・!?」

「父の代からの重臣に、そんなことはさせてくれるな。──よいな?」

「は、はい・・・」

 クドコットー。艦隊の整備や建造を取り仕切り、旅客船から軍艦まで、さまざまな船を進水させてきた男。技師としては有能であった。だが副官としては無能──いや、有害であった。

 この戦に勝ったら、隠居させよう。褒美をやり、旅客船に専念させよう。アワイランバはそう決めて、心を落ち着かせた。

 エトピリカⅡは速度をゆるめ、アホウドリの追跡を味方に任せた。

「なに、わかっておる。クドコットーよ。この艦が帆走を得意とすることはな」

「は・・・ええ、ええ、そうでございます」

「太陽を見よ」

「は?」

「まもなく昼だ。ナダラカンでは、風が止まる時刻だ」

「・・・?」

「奴らには漕がせておけばよい。その間にこちらは休み、風が止まったら、仕掛けるのだ」

「はぁ・・・しかし、エトピリカⅡ世の力を引き出すためには、走り続けるのが一番で・・・」

 まだ言うとる。

 くどい。

 俺が海賊なら、おまえを海に投げ込むところだ。

 ──そう思った矢先であった。

 海賊の大型ガレーが、姿を現わしたのは。

「西に“マダラエイ”!」

「来たか!」

 アワイランバは立ち上がった。

 浮かぶ艦影は、大型ガレー1隻のみ。小型3隻も連れてくるという話であったが、その姿はない。

「単艦か? 西で遭遇でもあったか?」

「艦長。そういえば、カンムリウミスズメの姿がありませぬ」戦場の記録を取る文官が助言してくれた。

「そうか。あれとぶつかったか。──まあよい。時は来た。アホウドリを西へ追い込め!」

「どうなさるおつもりで?」

「もちろん、決戦をするのだよ」

 

 アホウドリに不利な出来事が続けざまに起こった。

 まず、凪。アホウドリが広げていた帆が力を失い、速度が落ちる。

 疲労。ずっと逃げ回っていたため、漕ぎ手の疲労が目立ち始めた。

 ミズナギドリの脱落。奮闘していた大型艦であったが、『浸水がひどい。もう動けない』と言ってきた。

 そして、海賊大型ガレー艦の参戦である。

 

「囲まれました」

「これはいかんな」

 ガンバは王笏を握り締める。

 速度が落ちたところで、敵の小型ガレーに体当たりされた。そいつをかわすうちに、エトピリカⅡ世に左舷を狙われる。そちらに衝角を向けて対抗しようとしたところで、右舷に海賊のガレーがぬうっと現われて──

「衝角来るぞー!」「掴まれー!」

「うわー」

 

 ごおおおん!

 

 巨大な太鼓を叩くような音がした。

 アホウドリが、左に傾く。 

 さらに、左舷にエトピリカⅡ世が接舷! こんどは右に押し戻される!

 ざんぶざんぶと海が叫び、白いしぶきが降り注ぐ!

 体重の軽いリーモ。ぽーん、ぽーんとはね上げられ、空中に。艦長席の背もたれに手を伸ばす。必死に掴んで、なんとか甲板に戻ってきた。我ながらよくやったと思う!

「ガンバットリャンニの首を取れい!」

 アワイランバが吼えた。左舷に、ミガシナンショの海兵が乗り移ってくる。

 ガンバは王笏をしまい、槍を手に、こう叫び返した。

「叩き落とせ! 反乱の賊軍に、秋の潮を味合わせてやれ!」

 戦闘が始まった。

 右舷からも、いまや衝角で結合されてしまった海賊艦マダラエイから、人相の悪い海賊どもが飛び込んでくる。船首の細い突き出しを綱渡りして、あるいは三角帆に猿のごとくぶら下がって──何人かは海に落っこちながら、襲って来よる!

「リーモ!」左舷に向かいながら、ガンバ。「声をくれ!」

「あい」

 リーモ、味方の背中に手を向けて、『勇気を授ける』。

 

《みんながんばれ!!!》

 

 アホウドリの士気が、上がった!

 ──上がりすぎた。

「うおおお!」「ナダラカン! ナダラカァーン!」

 海兵ども、絶叫しながらエトピリカⅡに殺到してゆく。また右舷では、立ち上がった漕ぎ手どもが海賊どもと取っ組み合い始めた。海賊は得物が短い。槍ではなく小さな曲刀である。漕ぎ手もとっさの武器は棍棒や小剣であったから、勢いがつくとそのまま取っ組み合いになりがちで──そのまま海に落っこちてしまいがちであった。

 ガンバは雄叫びを上げてアワイランバと対決しておる。

 ジナグンコ艦長まで、槍をしごいて敵の老人の胸を貫いておった。

「・・・あれ?」

「声が鳴り響いておる」勇気の女神さま、満足げに言うてから、慌てて「──敵来たり」

「え」

 リーモ、慌てて腰の小剣を抜く。カランカラン。竹筒アーマーがへっぽこな音立てた。

「よォ、お嬢ちゃん。どっかで見た顔だなァ?」

「・・・片目」

 

 なんと。それは、海賊“片目”、ヒーウシナッキ!

 かつてリーモを誘拐したあの海賊船のヌシ!

 接舷戦闘の混乱の中で、リーモはそいつと1対1になってしもうた!

 

「魔王サマのおかげでよォ、船乗りに戻るのは、苦労したぜェ」

 片目は、曲刀を抜いた。

 リーモの小剣より短い。刃渡りは1尺(約30cm)。船乗りが好むやつ。おっ父が手入れしとるの、見たことある。

「・・・。」

 大変まずい。

 俺の周囲、誰もいないんだけど。

 どうしよう? えーと、とにかく、時間を稼ぐか。

「おっ父に聞いた」

「あァ?」

「あんたは、昔から、仲間を集めるのがうまかったって」

「・・・?」片目は、左の眉をちょっと上げた。

「片目になる前から、『仲間の悪魔』みたいなヤツだったって」

「ほう。ずいぶん昔の話だな。名は?」

「・・・スメコットー」

「・・・ああ。俺を船から追放しようとした若造か」片目は笑った。「お嬢ちゃん、あの男に育てられたのか」

「まあね」

「ガキ育てて何が面白ェんだ?」

「大事なことだろ。子育て」

「そうかァ?」片目は笑った。「んじゃ、ちゃんと伝えてやるよ。『俺が殺した』ってな」

「・・・。」

 あれ。

 俺のこと殺す気なの?

 いやちょっと待って。俺そんな重要人物じゃ──

「勇気の巫女ってなァ、勇者の片腕らしいな? 北国でも名指しされてたぜェ」

「あ、そっか」俺、重要人物だったわ。

「なんだよ」

「いや、別に・・・」

「勇者はどこだァ?」

「知らない」

「そうかァ」

 片目は、曲刀の切っ先をリーモに向けて、ユラユラ揺らし始めた。

 ギラつく刃物の先端。どうしても、そこに目が向いてしまう。

「西で1隻沈めて来たんだがよォ? あれにゃ、乗ってなかったのかねェ?」

「えっ!?」

 リーモが、相手の口車に動揺した、その瞬間!

 片目の曲刀が、消えた!

 気付いたときには──アッパーカット! 白刃の!

「頂きィ」

 致命傷!

 ハイエルフの白い肌、胸から喉まで、切り裂かれた!

 竹筒アーマー、何の役にも立たなんだ! いや、わかってはおったけれども!

「・・・!」

 

 ガシャガシャ。竹筒アーマーが甲板に落ちる。

 がらんがらん! 盾が落ちる。

 小剣が落ちる──して、白い手が、それを握り直した。

 

「あァ?」

 一瞬、動きの止まった片目の胸元に、白い裸体が飛び込んだ。

 ぶつかって、弾け、2人とも甲板に転がる。

 片目の胸に、異物が生えた。小剣の柄。

「い・・・いま、てめェ、何しやがった・・・?」

「はぁはぁ・・・何もしてない」

 ヌードのリーモ。

 白い肌をさらけ出し、小剣を突き出したポーズのまま、転がっておる。黒髪を結ぶリボンほどけ(あ、いまラモリマイさまがさっと出てきて拾いました!)、ポニーテイルはバラッバラ。その黒い髪の合間に、綺麗な乳首が見えておる。

「俺は、何もしてない。女神さまのおかげ」

「女神・・・だァ・・・?」

 傾いたアホウドリの甲板を転がって、片目は舷側にぶつかった。

「俺ァ・・・まだまだ、船乗り・・・・・・・・・」 

 しがみつこうとする。が、その手はやがて垂れ下がり、その身体は境界を乗り越えて、黒い海へと落ちていった。

 リーモ。艦長席にすがって、立ち上がる。

「おまえみたいな船乗り、俺は、認めない」

「リーモ」

「女神さま。ありがと。俺さ、まさか片目に」

「服着なえ」

「あ、はい」

 

◆♀◆ 21、魔王、海を呼び集める ◆♂◆

 

「──見たぞ。リーモ。そなたの秘密」

「ブロォッホ」

「うむ。まさに、ローヒンよ、その通りだ」

 馬上の美女。

 海駆ける黒馬にまたがった、滄溟たる髪の美女──女魔王、クレッヂマネー!

 水晶玉に映るリーモの裸身を見つめつつ、黒馬に説明する。

「あれは『可能性』の神術。勇気の女神の秘術であろう。リーモは、人と神のあいだの存在だったというわけだ」

「ブロォッホ」

「そうだな。それも重要な点だ」

 魔王は、パンツ拾うリーモのお尻を見つめつつ、答える。

「いまほどの危機に、女勇者が姿を見せぬ。すなわち、この付近には居らぬということ」

 魔王は、シャツの袖通すリーモの可愛いおっぱいを見つめつつ──

「ブロォッヒーン!!!」馬がキレた。

「む」魔王、イラッとする。「ちょっと見ておるだけではないか」

 魔王。レズである。女勇者大好き。娼館の女を買ったりもする。

 リーモの初々しい裸身に、ヨダレを垂らさぬわけがなかった。

 水晶玉を胸元にしまう──前に、もうひと目だけ、リーモを見ておいて。

「勇気の女神・・・女を見る目だけは、褒めねばならぬ」

 とにかく。

 水晶玉をしまった魔王は。

 右手を高々と上げて、背後を見た。

 背後。広々とうねる大海原に、骸骨兵を乗せた大型ガレーが1隻、迫ってくる。

 魔王の手を見るや、櫂を逆回しにして、減速、停止した。言葉はいらぬ。骸骨兵は、魔王の恐怖の術の支配下だから。

 ガレーの足元に、黒い背びれが浮かび上がった。シャチ軍団。傷だらけの巨体が顔を出した。

<ついに、やるのか>シャチが訊く。

「うむ。海を寄せるゆえ、離れるな」

<おう>

「ブルル」

 

《集まれ。盛り上がれ。押し寄せよ》

 

 鳴り響く声で、魔王は唱え始めた。

 

《我らは大海。最古の太母。侵略者。いかなる陸(おか)も、あらがえはせぬ》

 

 詠唱が進むに連れて、海が盛り上がる。

 魔王クレッヂマネーの足元が、高まる。幽霊艦エトピリカ、それにシャチ軍団も乗せて、海水の山がせり上がる。

 

《集まれ、集まれ、集まれ・・・》

 

 魔王の詠唱は単調なくり返しに入った。海は、さらに広く高く、盛り上がってゆく・・・

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