魔法や異能が存在しても、主人公になれるかどうかは別の話   作:考える人

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結成 / 転校生

 

「なぜお前たちが呼び出されたかわかるか?」

 

 教壇に立つのは普段から険しい表情をさらに険しくした立花先生。

 そんな立花先生が僕を含めた数人の生徒に向かって問いかける。

 

 まあ要するに呼び出されて説教を受けているわけだ。

 補習に、呼び出しに、まじめで通っていた中学のころからは考えられない変化だ。へっ。

 

 ちなみに呼び出された理由は――

 

「チーム決めの期限は2週間と、そう言っていたはずだ」

 

 これである。

 

『6人1組を作って学園に申請しろ』と言われてから早2週間と少し。

 

 僕は呼び出されるまでそのことを完全に忘れていた。それがこの結果である。

 考えることすら苦痛だったので、思い出すのを意図的に避けていたのかもしれない。

 

「すでに期限から数日過ぎているわけだが……お前たち4人(・・)は未だ申請なし。言い訳があるなら聞くぞ?」

 

 そう言って先生は僕たち1人1人の顔を順番に見回す。

 

「どうだ? 光華(こうか) 夏美(なつみ)

 

 まず先生が最初に問いかけたのは光華夏美という名の生徒。

 

「はっはっは! 申し訳ない立花先生。子猫ちゃんたちがボクを取り合って争いを起こしてしまってね。こうなってしまっては誰と組んでも遺恨が残ってしまう……そう考えたボクは自ら身を引いたというわけです。まったく……美しすぎるのも悩みものですね」

 

 などと言っているが、そいつの浮かべている表情はドヤ顔だった。

 自身が美しいということを疑いもしない――それを態度で存分に示す光華という生徒。

 男子の制服を着用し、男であるかのような言動をとっており、女子がキャアキャア言うのも納得するほどのイケメンなのだが、夏美という名からわかるように()である。

 

 まあ男装女子というやつだ。

 しかし今さらその程度の属性に驚いたりはしない。

 この学園にはロボっ子メイドにケモ耳少女、果てはゾンビ少女(異臭きつめ)だって存在するのだから。

 なお例に挙げたメンバー三人(?)は全員冬二のハーレムメンバーである。

 

「なるほど、つまりモテすぎるが故だと」

 

「その通りです先生!」

 

 相変わらず自信に満ち溢れた表情を浮かべ続ける男装女子の光華。

 それとは対照的に、立花先生の浮かべる表情は正に極寒。

 この時点で僕は察した。あぁ、これはくるな……と。

 

「そこで誰かを蹴落とすのではなく、ボク自身が身を引くというこの――」

 

 

 

「黙れセックスシンボル気取りが」

 

 

 

 わぁ。

 

「モテすぎて取り合いになっただと? 本当に美しい人間というのは周りから線を引かれるものだ。己とは釣り合わない、隣にいるのもおこがましいとな。所詮お前は頭の軽い女どもが気軽に手を出せる量産品にすぎん」

 

「……」

 

 突然の暴言に、自信に満ち溢れた光華の表情は固まり、口を開いたまま呆然とする。

 

「にも関わらず、自身が量産型であることを自覚できないどころか、さらにつけあがる始末。挙句の果てには己の不手際をモテすぎるのが悪いだと? あまりにも滑稽すぎてもはや泣けてくる。今すぐにその狂いきった自己認識能力を改め、己の未熟さを噛み締めながら生きろ大量生産の偽ブランド粗悪品女」

 

「………………粗悪、品」

 

 あーあー、ぼろくそ言われて机に突っ伏しちゃった。というか思ったより打たれ弱いな。

 

 まあこんな暴言を吐く立花先生の姿は予想外だったというのもあるのだろう。

 僕は立花先生が担任ということもあって、PTAが助走をつけて殴りこんでくるような罵倒には慣れているが。

 

「お前はどうだ? 蛇塚(へびづか) 秋人(あきと)

 

 立花先生の標的が光華から別の生徒へと移る。

 ロックオンされたのは蛇塚という一昔前のザ・不良といった見た目の生徒。

 なぜかボロボロになっている制服を着崩し、オールバックにした髪は赤、青、緑と三色に染められている。信号機かよ。

 

「ああ!? 別に理由なんてねぇよ! クソみてぇなやつらと組みたいと思わなかっただけだ!」

 

「そうか。お前のようなクソ以下の有害廃棄物には、クソみたいなやつらと組むのも申し訳ないか」

 

「ふん、勝手に言ってろ。オレはそこの男女(おとこおんな)と違ってしょうもねえ悪口は言われ慣れてんだよ。そうやってお前も――ゲボォ!?」

 

 

 何が起こったのか、僕も最初はわからなかった。

 目の前にいた立花先生が消えたかと思うと、いつの間にか蛇塚の前に移動しており、蛇塚の頭が机にめり込んでいた。

 

 

 ………………肉体言語に出やがった。

 

「教師を『お前』呼ばわりするな」

 

 もういろいろとアウトだよ。そのセリフ、生徒を『有害廃棄物』呼ばわりした人間が言っていいものなのか、胸に手を当てて考えてみてほしい。

 教師というかもはや軍隊の教官じゃん。いや軍隊の教官でも完全にアウトだけど。

 

「さて、次はお前だ。烏丸(からすま) 冬歌(とうか)

 

「ひっ!!」

 

 ほらもう目が合っただけで怯えてるじゃん。

 烏丸はいたって普通の小柄な女子生徒だ。両手でわら人形を抱えていること以外……

 

 光華と蛇塚みたいな問題児ならまだしも、こんな大人しい子まで脅すのはさすがにどうかと……

 

「ああ、そう言えばお前は1年の時にクラスメイト全員を呪って病院送りにしていたな。チームを組めなかったのもそれが原因だろう」

 

 やばい子だった。

 え、こっわ、なにこの子。クラスメイト全員を呪った?

 

「癇癪を起こして見境なく周囲に当たり散らす。まさにガキそのものだな。高校生にもなってその精神性はまったく成長していないのか」

 

「そ、そ、そこまで、いわなくて、いいじゃん…………業豪討魔舞血儀璃法蘭――」

 

 ヤバイヤバイヤバイ! なにか唱え始めたんだけど!?

 

「……ふん、烏丸家の呪詞(じゅし)か」

 

 そんな烏丸に対して立花先生は一切慌てることなく、人差し指で空中に魔法陣のようなものを描く。

 すると烏丸は信じられないといった表情を浮かべた。

 

「う、嘘……ワタシの、呪いが、、、消された?」

 

「お前の呪いなど所詮お遊戯のレベルだ。同じお遊戯クラスのやつらに通用して図に乗ったか? そもそもお前の呪いは回りくどい。手本を見せてやる――『首を垂れろ』」

 

「フゲッ!!?」

 

 立花先生が人差し指を下に向けると、烏丸の頭が机にめり込んだ。

 

 教師が生徒に向かって『首を垂れろ』なんて、この学園を卒業したら多分二度と聞くことないだろうなぁ。

 

「さて……最後に君だ。渡谷雪春」

 

 まずい……ついに先生の標的が僕に向いてしまった。

 このままでは僕も机とキッスすることになってしまう。

 

「なにか――――言い訳はあるか?」

 

 忘れてたからです。えっへっへ――とか言える空気じゃないなこれ。

 まあ忘れてなかったからといって、チームを組めてたかどうかは別なんだけど。

 

 仕方ない。下手に言い訳したらもっとひどい目に遭いそうだし、ここは素直に答えよう。

 人格否定だろうが何だろうがどんとこい!!

 

「先生、僕は言い訳なんてしません」

 

「ほう?」

 

「僕が期限までチームを組まなかった理由――それは、チームを組んでくれる友達がいなかった。ただそれだけです」

 

「……そうか」

 

 

 

 

 …………おいなんだその気まずそうな顔は。

 なぜ目を逸らす。なぜ悲しそうな顔をする。

 

 さっきみたいに暴言を吐けよ!

 さっきみたいに手を出せよ!

 

 腫れ物に触っちゃった……みたいな顔するなよ!!!

 ボッチの僕には罵る価値もないってか!?

 ボッチの僕はナルシストや不良や呪い女より気の毒ってか!?

 

 もっと僕を罵れよ!!

 もっと僕を殴れよ!!

 

 

「まあ、こうなってしまったからには、お前たち4人でチームを組んでもらうことになる。6人には足りていないが、それは追々でいいだろう」

 

 その後も先生は一切僕と目を合わせようとしなかったため、僕は意地になって先生の眼を見つめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 渡谷 雪春

 光華 夏美 

 蛇塚 秋人 

 烏丸 冬歌

 

 以上4名、あまり者たちによるチーム結成

 

 

 

 

 

―――――

 

 

おまけ

 

 

 高校2年生の4月が終わり、5月になった。

 

「転校生のサラ・シャスティだ」

 

「サラです。この通り日本語はバッチリなので、みなさんよろしくお願いしますね♡」

 

 5月というこの中途半端な時期に転校生とか。古〇くんかな?

 まあそれは置いておいて、外国人の金髪美少女転校生にテンションを上げ、黄色い声援を送る男子共。

 恥ずかしいから態度には出さないが、僕もそれなりにテンションが上がっている。

 

 とはいえ、残念ながら彼女とクラスメイト以上の関係になることは絶対にない。

 

 偶然僕の隣の席が空いているわけでもなければ、彼女を学校案内に連れて行くこともなく、実は小さいころによく遊んだ幼馴染だったなんてことは起こりえるはずがない。

 だって、そんなのは主人公の役目なのだから。

 

「お、お前は!?」

 

 そんな期待を裏切ることなく、転校生の姿を見て立ち上がったのはハーレム系主人公こと綿谷冬二。

 

「『セーラス』の人間が転校だなんて、いったい何のつもりだ!?」

 

「あら冬二さん、なんのつもりもなにも、私はれっきとした学生ですから。こうして学校に通うことは何もおかしなことではありませんよ? それに、ご安心ください。今はあなたがたと敵対する気はありませんわ。今は、ね」

 

 今回は敵対パターンかぁ。まあいきなり魔法ぶっぱしたりしない分ましかな。

 過去の例で言えば、いきなり冬二に抱き着くパターンや、私たちは前世の夫婦なのパターン。出会い頭に『お前は今朝の…………! 私と決闘しろ!』パターンもあった。

 

 転校してきたと思ったら、すぐにいなくなった子もいた。劇場版限定ヒロインだったのかもしれない。

 

「お前たち、座れ」

 

 ガヤガヤと慌ただしくなる教室で、立花先生が静かに、それでいて威厳のある声で冬二たちを(いさ)める。

 冬二だけでなく、冬二のハーレムメンバーも立ち上がり、それはそれは恐ろしい形相で殺気立っていた。

 

「座れと言っている。3度目はないぞ」

 

 立花先生の最終通告によって、冬二たちは納得いっていない様子だが、渋々殺気をおさめて席に着く。

 

 

 ……目の前で起きていることなのに、知らない漫画の一場面を見させられた気分。

 最強は立花先生だということしかわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転校生の登場で慌ただしく1日が始まったものの、僕個人としては何事もなく放課後になった。

 5時間目の授業の間、なぜか転校生と冬二だけ教室にいなかったけどね。へっ!

 きっと屋上とか校舎裏とか、間違えて鍵をかけられた体育倉庫でよろしくやってたんだろう。

 

 どうせ僕には関係のない話だ。いいんだ。僕には僕が来るのを待ってくれている人たちがいるんだから。バイト先の店長と同僚だけど。

 

 僕はカバンを持って立ち上がり、教室を出て下駄箱へと向かう。

 廊下を歩きながらスマホを見ていると、前の方から転校生が歩いてきていた。

 

 やっぱり綺麗な顔してるな~なんて考えつつ、ガン見していると思われるのが嫌なので、すぐに視線をスマホに戻す。

 

 

 するとバイト先のグループチャット(店長抜き)が荒れていた。

 スタッフの一人が今週で辞めるとのことで、退役軍人を送り出すような盛り上がり様を呈している。

 

 まーた1人やめるのかぁ。仕事量が増えるなあ。

 この前、在庫管理担当の人が全員同時に辞めたせいで、その仕事も僕に回されそうだし。

 やっと今の仕事を覚え始めたばかりなのに。

 

「これからクラスメイトとして、よろしくお願いしますね」

 

 というか入って一ヶ月もたってないのに、仕事を増やされ過ぎではなかろうか。

 これが初バイトであるため比較しようがないのだが、それでも多すぎると感じるほどだ。

 

「雪春さ――、、、あらあら、つれないですね」

 

 そう言えばちょっと前に救急車で病院に運ばれた先輩いたけど、あれ以来見てないな。

 死んではいないと思うけど、もしかして辞めたのだろうか?

 しかしいくらなんでも辞めすぎだよ。店員の入れ替わりが多すぎて、まだ全員の顔と名前が一致してないし。

 なんならメニューの暗記よりそっちのほうが問題かも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今もしかして僕が話しかけられた!!?????

 

 

 

 慌てて振り返るとすでに転校生はおらず、僕は数少ない青春のチャンスを棒に振った。

 

 

 

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