魔法や異能が存在しても、主人公になれるかどうかは別の話 作:考える人
正直なところ、とうに覚悟はしている。
それこそ、宗助に現実を突きつけられたその前から、ずっと。
『実は私……、綿谷冬二くんと仲良くなりたくて』――なんてことを告げられる、その覚悟を。
実際、冬二たちと行動を共にしていた1年のころには、そういったことが何度かあったわけで。
宗助に親ポジの引継ぎを完了してからは、そんな当て馬あつかいもなくなったのだが、今でも冬二と交流があるのは事実。ならば、ありえない話でもないだろう。
そう、だからたとえ……本当にそうなったとしても、なんら落ち込むことではない。それこそが普通のことで、自然なことなのだから。
そんなふうに、僕は心の中で保険を何重にもかけつつ、この日もお昼を食べながら、亜夜との会話を楽しんでいた。
「雪春はゲームが好きなのか。私はそういったものにこれまで全く触れてこなかったから、少し興味があるな」
「家がそういうの厳しかった感じ?」
「いや、ゲームに限らず、娯楽全般に対してあまり興味を持てなかったんだ。ずっと、強くなることに必死で」
「そうなんだ。何か強くなりたい理由とかあるの?」
冬二みたいに、『大切な相手を守りたい!』とか。
「理由…………いや、そういうのは特にないな。……強いて言うなら、強くなりたいと思ったから……だろうか?」
……? どゆこと?
「幼いころ、初めて異能で自分の身体を強化した時、信じられないほど気分が高揚したんだ。望めばなんだってできてしまいそうな、あの万能感。子供の体でありながら、大人にだって力負けしない無敵感。体の
「……なるほど」
それは少しわかるかもしれない。僕も異能の存在を知った時、似たようなことを感じたし。
もしかして、僕たち――
「その時に決めたんだ。私の、この一度きりしかない人生の全てを、異能を磨き上げるために捧げようと。……だから、それ以外のことは何も目に入らなかった。世界一の異能者――その言葉を聞いた時、誰もが私の顔を思い浮かべる……そんな存在になるために」
「…………」
きっと、その言葉は噓偽りのない本心なのだろう。
力強く語る亜夜のその目が、これまでにないほどの熱を宿している。
……覚悟がガンギマリ過ぎて、すごいというかむしろちょっと怖いな。
まあでも、すごいのはもちろんすごいんだけど。
僕たち似た者同士かも――とか、一瞬でも考えた自分が恥ずかしい。
僕と違い、亜夜は将来なりたい自分のビジョンを既に持っていて。学生の時点で立派な夢と、周りを置き去りにしてしまうほどの強い志があるのは、正直主人公みたいでめちゃくちゃ憧れる。
「でもそれで、視野が狭くなってしまったり、オーバーワークだったりで集中を欠き、両親や隊長に咎められることも多々あったんだ。恥ずかしながら、今回部隊を休隊するよう言われたのも、その辺りが原因で……」
「……そうだったんだ」
「正直、休隊を告げられた時はショックだった。ただ以前にも話した通り、休隊はあくまで一時的なものであり、いずれまたすぐ部隊に戻る。……だからこそ思ったんだ。ならばせっかくのこの機会に、今しかできないような、これまで触れてこなかったことにも触れてみようと。私に休隊を告げた隊長も、“学生らしく過ごしながら、ゆっくり休め”と、そう言っていたから」
「……じゃあ、また今度オススメのゲームでも貸そっか?」
「それはありがたい。ぜひやってみるよ」
……となると、どういったゲームがいいかな。やっぱり戦闘アクション系? いや、むしろそういうのとはかけ離れてた方がいいのか?
……ここは大穴で倫理アドベンチャーという手も――
「ところで雪春……その、さっきの“触れてこなかったことにも触れてみる”という話にも繋がるんだが……」
「ッ……!」
亜夜に貸すゲームを真剣に悩んでいたその時、僕の体に緊張が走る。
というのも、僕に語りかける亜矢の声が、これまでと比べて明らかに異なったからだ。
まるで、これから何か大切なことをカミングアウトするような、そんな気配。
「……実は私――」
ついに来たッ!――僕はすぐさま身構え、そして覚悟を決める。
たとえ何を言われようとも、傷つき、ショックを受けることがないように。
しかし、続けて告げられた亜矢の言葉は、僕にとってまるで想定外のもので。
「――バイトをしてみたいんだ」
「…………」
「…………」
「……バイト?」
「ああ。部隊に所属していてはできないような経験を積むことで、自分の視野を広げられるかもと。それで、雪春に相談したくて……」
なんだ、バイト探しの相談だったのか。
てっきり『恋をしたんだ! 冬二に!』とか言われると思って焦っちゃった。
「何か……オススメのバイトとかがあったりしないだろうか?」
「うーん……。ちなみに、どんな職種がいいとかあったりする?」
「定番かもしれないが、飲食業に少し興味がある……かな」
ふむふむ。
「それと……、他にも学生バイトがいるような職場だとありがたい。頼りやすい存在がいると、何かと心強いだろうから」
おっと、かなり難題な条件を出されてしまった。
僕に学生の知り合いとかほとんどいないし、当然バイト事情など知るはずもない。
はてさて……、どうしたものか。
「どうだろう? そんな条件のバイトに、何か心当たりとか……」
「……ごめん、ちょっと思いつかないかな。ギリ友人にそういうの詳しいやつがいるから、よかったら聞いてみようか?」
「ぐっ……!」
すっごいもどかしそうにするな……。そんなにバイトしたくてたまらないのか……。
「そ、その……だな」
「うん?」
「雪春がバイトしてる店って、飲食店じゃないのか?」
「…………」
飲……食…………?
「だから私も、雪春と同じバイト先で働けたらなって……」
「……一応聞くけど、亜夜は飲食店で働いてみたいんだよね?」
「ああ、そうだ」
「部隊ではできないような経験をしてみたいと」
「そ、そうなんだ!」
「じゃあウチはやめた方がいいよ」
「なんでだッ!?」
だってあの店、飲食店を名乗ってるだけだし。あれを飲食店と呼ぶには、まともな飲食店に申し訳がなさ過ぎる。
接客スキルよりも戦闘スキルの方が重宝される、そんな職場なんだから。
というか僕、バイトしてること自体は言った覚えあるけど、バイト先の詳しい話とかしたっけ?
……いや、するわけないよな。演説内容と並んでトップシークレットなのに。
となると、亜夜は初めから僕のバイト先のことを知っていたということになる。……なら、なんで最初知らないフリをしたんだ?
そんな疑問を抱きながら、僕は宗助の
『休隊中だって偽りながら、何か任務を与えられてる可能性だって十分にある。……雪春、北鎮部隊がお前に接触してくる理由に、何か心当たりとかないか?』
亜夜の、不自然な僕への接触。
バイトをしていることに対する、謎の興味関心。
なぜか僕のバイト先について知っており、なおかつそれを隠そうとしたこと。
そして、唐突な『働きたいんです』宣言。
それらを鑑みて、僕の中で一つのある考えが浮かぶ。
もしかして、亜夜が僕に接触してきた真の目的……それは僕のバイト先の店にアルバイトとして潜入し、数多の違法行為を調査するためなのではないかと――――なんて思ったりもしたが、秒でそんなわけないかと結論付けた。
わざわざ潜入捜査なんかしなくても、入店と同時に武装ロボの機関銃乱射が見れる職場だし。
だからこそ、そんな職場を亜夜に紹介するわけにはいかない。
「その、これは善意100%で言うんだけど、本当にウチの店はやめといた方がいいと思うよ」
「でも、雪春はその店で働いてるんだろ? ……もしかして、知り合いと同じ職場で働くのは嫌だったりするのか? あまり働いてる様子を見られたくないとか」
まあ……、当たらずとも遠からずというか……。
「頼む雪春、私はキミと働きたいんだ……!」
亜夜は僕の目をジッと見つめ、胸に手を添えながらそう告げる。
とても必死で、どこか不安そうな、そんな表情を浮かべながら。
……実際のところ、亜夜が何を考えているかわからない。もちろん何の打算もなく、言葉通りバイトをしてみたいだけというのも考えられるが、正直その可能性は低いと思ってる。
ただそれでも、亜夜のその懇願自体は、心からの本気のものに見えた。
それに、だ。美少女から『キミと働きたい』なんて言われて、僕に断れるわけがなくてぇ。
「じゃあ……、店長に伝えとくよ。バイト希望の知り合いがいるって」
「っ! ありがとう! 雪春!!」
「ちなみに、いつから働けるとかある? 僕からの紹介って形になるから、最初は僕がシフトに入ってる日の方がいいと思うけど」
「私はいつでもかまわない! なんなら今日からでも!」
「わかった。まあさすがに今日だと急すぎるし、週末とかになるかな。土曜はいつもみたいに試合……用事があって夕方遅くからのシフトだから、日曜でもいい?」
「大丈夫だ!」
「オッケー、細かい時間とか決まったらまた伝えるね」
「よろしく頼む。……あと、もう一つお願いがあるんだが、私が部隊に所属していることは内緒にしてもらえないだろうか? ほら、もしかしたら物騒に思われるかもしれないから……」
物騒バトルなら多分ウチの従業員の圧勝だよ。平気で犯罪者も雇おうとするし。
まあただ断る理由もないため、僕は亜夜の願いを了承する。
「ちなみに採用面接とかって――」
そんなもの、ウチにはないよ……。
とまあそんなこんなで、日曜日――
事前に予定していた、亜夜の初出勤日。
亜夜が店を訪れる予定時間の一時間ほど前、ちょうど朝のシフトが始まるそのタイミングで、僕は店にいる全てのスタッフに集合をかけた。
「なんだなんだ?」
「なんか渡谷から話があるんだとよ」
店のスタッフルームに集まったスタッフたちは、あからさまに『めんどくせえな……』という表情を浮かべており、真面目に話を聞こうとする様子はまるでない。
「……今日から、僕の知り合いが新しく店のスタッフとして働きます」
「ほーん、渡谷の知り合いが入ってくるのは初めてだな」
「それで、話ってのはそれだけか?」
「いえ、本題はここからです」
そう、これから告げる内容こそが、僕が伝えなければならない言葉。
それは
とりあえず今はここにいる従業員だけだが、最終的にはこの店で働く全従業員に周知するつもりだ。
そんな重大案件を、僕は強い意志と共に口に出す。
「みなさんには、その新しいスタッフが見てるところでの暴力暴言、またその他の社会的規範に反する全ての行為を控えてもらいます」
「「「…………」」」
僕の言葉を受け、スタッフたちはわかりやすく困惑し、何人かは苦笑いを浮かべる。
何言ってんだこいつ――そう言いたげな表情で。
「いやいや……渡谷、そいつは無理無謀、無茶ってもんだぜ」
「さすがにそれは……なあ?」
「それができるなら俺たちこんなところにいねえよ」
提示したお願いに対し、スタッフたちの反応は圧倒的に否定より。
なんなら、冗談を言っていると思われている節すらある。
……まあ、こういった反応になるのは想定済みだ。
だからこそ、まずは僕がどれだけ本気なのかを示さねばなるまい。
「つうか俺たちが自重したところで、客の方はどうにもならねえだろ」
「そうそう、いくら渡谷の頼みっつっても――」
「やめますよ」
「「「……は?」」」
僕のその一言で、スタッフルームが一瞬にして静まり返る。
そして間を置かず、僕は同じ言葉を繰り返す。
「やめますよ、マジで。」
それが決定打となり、先ほどまでの弛緩した雰囲気は室内から消滅。
スタッフたちの態度が、ようやく真面目に話を聞くモードに移り変わる。
「……じょ、冗談だよな?」
「『違法だよ! あ〇るくん』のノリで言うのやめろって……。本気かと思うじゃねえか……」
僕は本気だ。
しかし思ったより効果てきめんだな。まさかここまで退職予告が上手くいくとは。
これまで完全に否定よりだったはずのスタッフたちの間に生まれた、見てわかるほどの迷い。
第一段階は成功。ただ、これだけで全て上手くいくとは思っていない。悲しいことに、多くのタスクを担っていた人間が職場を辞めたところで、なんだかんだその後も上手く回っていくのが現実というもの。一人の人間が社会に与える影響など、一部のバケモノを除き、たかが知れている。
つまり、辞める辞める詐欺でどれだけ脅そうと、『じゃあ辞めればいいじゃねえか!』と開き直られてしまっては意味がない。
だからこそ、僕はここからさらにたたみかける。社会に大きな影響を与える、その一部のバケモノを利用することで。
「ちなみに、ただ辞めるだけじゃありません。今僕が受け持っている業務は、全て権田さんへと引き継ぎます」
「やっていいことと悪いことがあるだろッ!!」
「俺たちを路頭に迷わせる気かッ!?」
「この人でなし!」
何とでも言うがいい。それほどまでに僕は本気なんだ。
亜夜にこの店のイカれ具合を見られ、それで辞められたり、僕も同じ人種だと勘違いされるわけにはいかないのだから。
「ま、待て渡谷! そもそも前提として、
「そうだ! 絶対にめんどくさがって――ッ!」
「権田さんには事前に、『この仕事を任せられるのは権田さんしかいないんです!』っておだてといたんで、ノリノリで引き継ぐ気満々ですよ。楽しみですね。やる気になった権田さんが、この店をどんな破滅へと導くのか」
「こ、この……ッ!」
「グッ……! て、店長はさっきからなに黙ってんすか!? 店長からもなんか言ってやってくださいよ!」
スタッフの一人がそう告げると、それまで部屋の隅で空気となっていた店長が、ひどく疲れた表情で口を開く。
「……みんな、渡谷くんの言う事を聞くように……」
「お前店長に何したッ!?」
はて? 何かおかしなことでも?
従業員の意思を尊重してくれるなんて、素晴らしい上司じゃないですか。
さて、あともう一押しだ。
「僕だって……、本当はこんなことしたくないんです……。でも、詳しくは話せませんが、これがゆくゆくはみなさんのため、そしてお店のためにも繋がるんです……! どうか、お願いします! 何も“一切やるな”とは言いません。新しいスタッフの見えないところでやる分には、何も言いませんから……!」
「「「…………」」」
僕はその場で頭を下げ、脅しから一転、実直さを見せつけるように頼み込む。
まあ店のためというのは普通に嘘で、完全に私利私欲なんですけど。
同級生女子と、同じバイト先で共に働く――そんな青春的状況を、より長く続けたいがための。
そうして、なんとかスタッフたちの了承を勝ち取った僕は、万全の状況を整えた上で、亜夜の初出勤を迎えることに成功するのだった。
それが、完全に逆効果であることを知らずに。
――――――
おまけ
『そろそろお昼にしようか』――そう告げられた冬二が、雇い主に連れられて入ったのは、とあるファミレス店。
テーブル席に腰掛け、注文した料理を待つそのすぐ傍では、山盛りの料理を必死の形相でかきこむ男性の姿があった。
「はーいお客さーん! 大食いチャレンジ、残りあと五分しかないよぉ!!」
「バカな……!! この俺が、食いきれない……!? 俺が食いきれなかった料理なんて、一つもなかったのに……! いや……たくない…………ッ!」
するとその男性のもとに、これまで遠巻きに眺めていた複数のスタッフたちが近づき、次々と声をかけ始める。
「へい
「ウププッ。こんなとこで満腹になるやつ初めて見るぜ」
「大食いチャレンジ始まって以来の少食だよオマエ」
「胃袋ちっせえんだよ」
「二度とチャレンジすんな!
そんな心無い言葉の数々がトドメとなり、男性の料理をかきこむ手は完全に止まり、そのまま倒れるように机に突っ伏してしまう。
そしてタイムアップを示すストップウォッチが音を鳴らすと、スタッフたちは安堵するようにその場から離れていく。
「あいつ、おそらくもうチャレンジはしないだろうな」
「初挑戦にしちゃいいセンいってたのに」
「あぶねえあぶねえ、もう少しで賞金五十万もっていかれるところだったぜ」
「…………」
醜悪――そうとしか表現できない光景を目の当たりにし、冬二は思わず顔をしかめる。
そんな冬二の向かい側の席に、お手洗いから戻ってきた天眼路が腰を下ろすと、全てを察したように笑みを浮かべた。
「フフッ、どうやらさっそく洗礼を受けたようだね」
「……あの、本当にここが天眼路さんのオススメの店なんですか?」
「まあ問題の多い店だが、料理の味だけは確かだから安心していい。元は別の目的があって通ってたんだが、今ではすっかり常連になってしまってね。それに土曜のこの時間帯は、なぜかガラの悪い店員たちの不在確率が高くて、割と快適に過ごせるんだよ」
じゃあ今日は低い方の確率を引いてしまったのか――先ほどの光景を思い出し、冬二はそう判断する。
「それと……いや、未成年のキミには関係のない話か」
「何がですか?」
「いやね、たとえ建物内でなくとも、店の敷地内でタバコを吸おうとすれば、水いっぱいのバケツを持った店長さんが真顔で追いかけてくるから、気を付けるよう言おうとしたのさ」
「……もしかして、この前びしょ濡れだったのってそれですか?」
「フフッ」
「いやフフじゃなくて」
つくづくおかしな店であることを実感しつつ、冬二は改めて店内の様子を見回す。
何かが少し掛け違えていれば、ここが自分の職場になっていたのかもしれない――そんな思いを抱きながら。
「どうしたんだい少年。何か……思うところでもあるのかな?」
「……天眼路さんは、俺と初めて会った日のことって覚えてますか?」
「もちろんだとも。飲まず食わずで調査に夢中になり、行き倒れていた私を、少年が助けてくれたのだから」
「……実はあの時、この店の採用面接に向かうところだったんです」
「なるほど、ではあの出会いがなければ、少年は私の助手としてではなく、ここで働いていた可能性もあるということか」
「はい……」
冬二が思い出すのは、人けのない道端で倒れ、カラスに頭をつつかれていた天眼路の姿。
「正直、最初は絶対死体だと思って焦りましたよ」
「
そう告げながら、天眼路は髪をかき分け、それまで隠れていた片目を冬二に見せる。
眼球全体が赤黒く染まる、悪魔の力を色濃く発現した特別な眼を。
冬二がそれを見るのは、何も初めてのことではない。それでも、アンバランスなその両目には、見るたびに違和感を覚えてしまう。
「……その目って、確か生まれつきそうなんですよね?」
「生まれつきかどうかはわからないが、孤児院の前に置き去りにされていた時点で、既にこの目だったらしい。ちなみに、そこには『取扱説明書』と書かれた紙も一緒に置かれていたそうだ。私もあまり人のことは言えないが、私の生みの親は随分と人間性が欠けているらしい」
「っ……!」
驚愕する冬二とは対照的に、天眼路は普段と何ら変わりない調子で告げ、赤黒く染まる目を再び髪で覆い隠す。
「自分自身について……それもまた、私が追い続ける謎の一つさ。とはいえ、今は少年の依頼が優先だ。昼食を食べ終えたらまた調査に戻ろう。そうだね……、今度はメンター……登坂さんあたりから話を聞いてみようか」
「……はい!」
午後からの調査に向け、気合を入れる二人。
求める真実にはまだ遠い中、二人は束の間の休息を過ごしていく。
「…………うまっ」
その後、運ばれてきた料理を口にし、冬二は実感した。
本当に味だけはいいのだと。