魔法や異能が存在しても、主人公になれるかどうかは別の話   作:考える人

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1年生編 / ランク制度

 

 いきなり1年生編をすっ飛ばして2年生となったわけだが、一応ダイジェスト的に1年生編を語ろうと思う。

 

 四月――友達が一人できた。終わり。

 四月分が終わりというわけではなく、1年生編が終わりである。いやまじで。

 

 もちろん、特殊能力が当然のように存在する学校だけあって、初めて見るものや初めて体験することはいくらでもあった。

 けれど、そこにストーリー性のある何かは微塵もなかったのだ。

 

 心躍るような冒険なんてなかったし、謎の敵組織と異能力バトルなんてのもなかった。

 なんなら1年間まともに学園の中から出ることすらなかった。

 ちょっとした非日常もすぐに慣れてしまい、一ヶ月もするころには平凡な日常となった。慣れって恐ろしいね。

 授業で勇者とか魔王とかいう単語が出てくるのも、今や当たり前のことに感じてしまう。

 

 まあさすがにこれで終わるのはアレなんで、四月の出来事を詳しく話そう。

 

 意気揚々と高校に入学した僕だったが、初めはなかなか周囲になじめなかった。

 いや、初めだけじゃないな。今もだ。

 とにかく、僕みたいに一般家庭からこの学園に入学したものはまったくおらず、ほとんどの学生が親も異能持ちであり、小学生のころからの顔なじみらしい。

 中には僕のような存在を『外部生』とバカにする態度をとる人間もいる。まあ学園内に差別意識が存在するのはお約束的展開だ。それ自体は悪くない。後に『お前らがバカにした人間は実は超すごいやつでしたおらひれ伏せ』的なざまぁ展開が主人公(・・・)には待っているからだ。

 

 そう、主人公には。

 

 ここで話を戻すが、僕は四月に友達が一人できた。

 そいつは同学年で、僕以外ではたった一人の一般家庭出身の生徒だった。

 同じ肩身の狭い思いをしていた者同士、僕たちはすぐに仲良くなった。

 入学したばかりというのもあって、お互いの身の上話もよくした。

 

 本人曰く一般人だが、両親はおらず、育ての親である祖父とは血が繋がっていないらしい。

 本人曰く一般人だが、感情が高ぶると瞳の色が変わるらしい。

 本人曰く一般人だが、自身の記憶にない夢を頻繁に見るらしい。

 本人曰く一般人だが、異形の存在に襲われかけた幼馴染を助けようとした時、異能に目覚めたらしい。

 

 

 

 ………………むしろこれでただの一般人とかありえる? 一般人の定義が壊れるぜ。

 

 案の定、彼はすぐに学園で頭角を現し、様々な事件に巻き込まれていく。

 そして事件を解決するたびに彼の傍に侍る女子が増え、着々とハーレムを形成していくその姿は正に王道ラノベ主人公。

 

 はっきり言って羨ましかった。

 

 最初こそ唯一の友人レベルで仲が良かったのだが、彼がハーレムメンバーを増やしていくにつれ、僕とは疎遠になっていった。

 主人公の親友ポジにおさまるという考えもあったが、目視しただけで女子のスリーサイズを言い当てる特技なんて持ってないし、情報通でもなければ主人公を陰で監視する第三勢力でもない。

 他にも理由はあるのだが、なんだかんだあって僕は親友ポジは諦めた。 

 

 同じ一般家庭出身のはずなのに、片や主人公とリア充への道を爆走し、片やモブとボッチへの道をひた走る。残酷すぎない?

 闇落ちするには十分すぎる理由だよ? まあモブの闇落ちとか誰得だよって話だけど。

 

 そんなこんなで疎遠状態なわけだが、彼の方からは今でも『ラーメンでも食べに行こうぜ』と定期的に連絡がくる。

 誘い自体は実は嬉しかったりする。僕の方から勝手に距離を取っておきながら、今でも友人として接しようとしてくれるのだから、嫌なわけがない。

 

 ただその手の誘いは絶対に断るようにしている。なぜかって? 高確率でハーレムメンバーの誰かが突撃してくるからだ。

 そうして始まるイチャイチャ物語。彼女いない歴=年齢の僕に精神的な死を与える禁書扱いされるべき物語だ。

 

 かつて僕はせめてもの抵抗として、ラーメン屋など入ったこともない清楚系ヒロインの代わりに、ニンニクマシマシと唱えた。

 

 めちゃくちゃ嫌われたが後悔はしていない。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

おまけ

 

 

 

 

 『異能』『学園』とくれば必ずセットでついてくるもの――――そう、ランク制度である。異論は認める。

 ラノベにおいてはイジメや差別の原因になる率9割は超えるであろうあのランク制度が、やはり当然とも言うべきか存在する。

 

 選考基準はぶっちゃけよくわからないが、A~Fで分かれており、それぞれの割合は――

 

 A、片手で数えられる人数

 B、5%

 C、15%

 D、20%

 E、60%

 F、片手で数えられる人数

 

 といった感じになっている。

 Aランクともなると、もはや学園の顔といっても過言ではなく、学園から様々な特権が与えられるらしい。

 逆にFランクは学園の最下層であり、絵にかいたような落ちこぼれ扱いをされる。

 

 先ほど話した僕の友人は、なんとそのFランクだった。

 

 さて、一部の方はこれだけの情報で察したであろう。

 

 これはいわゆる、『すごい能力持ってるけど周りが節穴、もしくは選考基準に合わないせいで正当に評価されない俺』パターンだ。

 事実、友人は『やーい!お前んち、Fランク~』などと蔑まれながらも、自身の真の実力を示し続け、特例でAランクと同等の扱いをされるようになった。

 

 ただただ羨ましい。Aランク認定も羨ましい。主人公的展開も羨ましい。もうなんか全部羨ましい。

 

 ちなみに僕のランクはEランク。割合が最も高い最頻値、可もなく不可もなく、言ってしまうとフッツ~のランクだ。Eより上はエリート、下はほぼいない。なんだこの絵にかいたようなモブは。奇想天外な展開など起こるはずもない。

 

 ランク制度を生み出した人へ――きっとあなたはもう死んでいるでしょうが、頼むからどっかで痛い目にあってくれ。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 ランク制度には、Aランク内のみにおいて序列制度がある。

 もう序列制度って言葉がかっこいいよね。漫画とかでキャラの名前と一緒に『序列○位』とか書かれてるだけでちょっとテンションが上がってしまう。

 一度校内で、Aランクの序列一位の人とすれ違ったことがある。序列一位――つまり学園で最強の称号を持つ存在である。ちなみに女性。

 友人と廊下を歩いていた時、偶然その学園最強の人が通りかかったのだ。

 そしてその学園最強は友人の隣を通り過ぎようとしたその時、急にその場に立ち止まり、視線を友人に向けてこう告げた。

 

『力がよどんでいる。惜しいな……』

 

 驚いた友人は慌てて振り返るが、学園最強は既に歩き去ったあと。

 その当時、友人はまだ『へただなあ、へたっぴさ……! 異能の使い方がへた……!』と周囲からバカにされていた時期である。

 つまり学園最強はその時点で友人の才能を見抜いていたということだ。

 やはり才能のある人間は、自分と同じように才能のある人間を見極めることができるのだろう。

 

 ちなみに、その学園最強は隣にいた僕には目もくれなかった。

 序列制度がちょっと嫌いになった。

 

 

 もし何かしらの間違いが起こって、僕がこの学園における権力を握ったとき、真っ先にランク制度と序列制度を消してやろうと思う。

 

 

 

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