魔法や異能が存在しても、主人公になれるかどうかは別の話 作:考える人
一人目と二人目が簡単に見つかったことで、最後の一人も簡単に見つかるだろうとタカをくくっていた僕(with呪いの装備)は、思わぬ苦戦を強いられることになる。
二年の全クラスを回ったにもかかわらず、見つからないのだ。
髪色信号機というこれ以上となくわかりやすい外見であるため、見逃すはずはないのだが……。
そこまで考えて、僕は一つの可能性にたどり着く。もしや僕と同じように、昼休みは人目の少ない所に移動しているのではないか、と。
そこで僕は、脳内に記憶されている『ぼっちズ グッドロケーション』ファイルを引っ張り出す。
その上で考える。仮に僕が蛇塚だとすれば、一体どこに行くのか。
蛇塚は僕と違い、そこにいるだけで目立つ存在だ。遠目からチラチラと見られるのは思った以上にストレスがたまる。ならば僕が普段過ごしている屋上などはダメだ。
人が少ないではなく、完全に人がいない場所でなければならない。人がおらず、その上で最大限昼休みを過ごしやすい場所。そして二年生の校舎からアクセスしやすいとなれば……あそこの可能性が高い。
僕は蛇塚の居場所に目星をつけ、移動を開始する。
移動途中に烏丸が、光華と同じように蛇塚にも激痛を与え、悲鳴を上げさせることで居場所を特定するのはどうかな?と聞いてきたが、却下しておいた。人を呪うという行為に抵抗がなさすぎる。
そうして僕が向かった先、それは自動販売機が近くに置かれた校舎裏。昼時はちょうど日陰になり、人通りもめったにないそこに、蛇塚はいた。ビンゴだ。
蛇塚は自動販売機で買ったであろうブラックコーヒーを口に含みながら、つまらなさそうな表情で空を見ている。
……ちょっとかっこいいな。今度僕もパクらせてもらおう。
そんなことを考えながら、僕と烏丸は蛇塚に近づき声をかけた。
「蛇塚くん、ちょっと今いいかな?」
「あっ?」
できる限りフレンドリーに話しかけた結果、返ってきたのは威圧的な態度と言葉。
ふざけやがって、こっちは呪いの装備(Bランク)持ちだぞ。釘さしたろか?
「その、チーム関連のことで話があるんだけど……」
「チーム? ……ああ、そうか、お前、あの……その…………リーダーか」
やっぱ刺したろか? なんだ? 僕の名前はそんなに覚えづらいか? わりかし覚えやすい方だろ!
「実は申請書にチームメンバーの署名が必要で、蛇塚くんにも書いてもらいたくて……」
「ちっ……」
蛇塚は悪態を取りながらも、渡した申請書とペンを素直に受け取り、名前と異能ランクを記入していく。
まったく、そうやって悪態をつくからぼっちになるんだろうに……。はて、なぜ僕は悪態を付いていないのにぼっちなのだろうか?
僕が終わりのない疑問に頭を悩ませていると、隣にいた烏丸が蛇塚に声をかけようとしていた。
口を開き、やっぱり閉じ、もう一度口を開き、やはり閉じるという行為を繰り返しており、なんとか話しかけたいというのが嫌というほど伝わってくる。
しかし完全にテンパっており、また藁人形を取り出して棍棒外交を始めようとしたので、一旦没収しておく。ここにきて話がこじれるのはまずい。
「ほらよ。これでいいだろ」
そうこうしているうちに蛇塚は必要事項を記入し終え、僕に用紙を返す。
異能ランクの欄には『D』と書かれていた。
ということは、チーム内で平均ランクである『E』は僕だけ。こいつら、なんだかんだ全員上澄みなのか……。なぜか無性に納得がいかない。
まあなんにせよ、蛇塚からも無事署名がもらえたため、もはやこの場に残る必要はないのだが……。
烏丸はその場を動こうとせず、まだなんとか蛇塚に話しかけようとトライしている。
「あ、あのの、あの、へび! づか! ん、くん!」
そしてついに、烏丸は声を出すことに成功した。声量調整は盛大にミスったが。
「あっ? なんだよ、まだなんかあんのかよ?」
「そのっ! ワタシ、たち、同じチームに、あ、だから、仲良く、したいなって……」
あまりにも下手くそだが、それは烏丸にとって勇気を振り絞った精一杯の歩み寄り。
しかし蛇塚はその歩み寄りを拒絶する。
「所詮余り物で組まれたチームだろうが。こっちはお前らと仲良くする気なんざねえんだよ」
なにか地雷に触れたのか、蛇塚は今まで以上に不機嫌な態度をとり、烏丸を睨みつける。
睨まれたことで烏丸は小動物のように怯えるが、その手はしっかりと藁人形に伸びていた。
こういうところが同情しにくいんだよな……。というかいくつ藁人形持ってるんだこいつ。
「オレがこんな見た目で、友達の一人もいなさそうだから仲間だとでも思ったか? クソみたいなレッテル貼りやがって」
「ち、ちがっ、そんなんじゃないよ!」
いやそんなんだったろ。
「オレは誰とも仲良しごっこなんざするつもりねえんだよ。どうせどいつもこいつも、こっちを見た目だけで判断して、心ん中じゃバカにしてやがる。そんなヤツらと仲良くするなんざ、死んでもごめんだ」
そうぼやく蛇塚からは、どこか諦めのような感情を感じとることが出来た。
『自分はお前らとは違う。誰からも理解されない。されたいとも思わない』――そんな周囲を突き放す、心からの拒絶の意思。
大人から見れば、ガキの癇癪だとバカにされるかもしれない。でも僕には、その感情が嫌というほどわかる。
そして
「そうだよね。そうやって人付き合いに初めから保険をかけておかないと、裏切られた時に傷つくもんね」
「……あっ?」
僕の言葉を受け、蛇塚は睨みつける先を烏丸から僕へと変える。
「だってそうでしょ? 初めから相手に期待してなければ、傷つくこともないんだから」
「喧嘩売ってんのかてめぇ! お前に何がわかるってんだよ!?」
「僕は外部生だ」
「っ!?」
今にも掴みかかってきそうな勢いの蛇塚だったが、僕の突然のカミングアウトによって、その怒りに動揺が差し込まれる。
隣で聞いていた烏丸も、僕を見て目を見開いていた。
「外部生がどういった扱いを受けるかなんて、説明する必要ないよね? 僕は入学したその時から、外部生だからという理由だけで、人となりなんて関係なしに、周囲からそういった視線を向けられてきた」
「……」
「そんな僕が、他人にレッテルを貼ってバカにすると思う?」
……まあ実際は髪色信号機とか、心の中で悪口を言ったりもしたけど、今は置いておこう。こういうのは勢いが大事!
「烏丸さんも、クラスメイトから距離を置かれている立場だ」
「そ、そうだよ!」
こっちは自業自得くさいけど。
「そんな僕たちを、今まで蛇塚くんを軽く見た連中と一緒にするなんて、それこそ蛇塚くんの言う『レッテル貼り』じゃないか」
「そ、れは……」
蛇塚は何か言い返そうとするも、言葉につまり無言になる。
そうしてしばらくすると、申し訳なさそうな表情を浮かべて口を開いた。
「……そうだな。わりぃ、確かにオレが勝手に決めつけてた」
出てきたのは意外にも素直な謝罪の言葉。
「お前も、さっきは悪かったな。呪い女……じゃない、えっと……たしか烏丸、だったか」
「うん! 合ってるよ!」
…………髪色信号機の時代遅れヤンキーが。
「どうかしたかリーダー?」
「いや、なんでもないよ」
色々と納得はいかないが、なんだかんだ初めてこの時、僕はチームの絆が育まれたことを実感できた。
蛇塚も、最初の印象は最悪だったが、こうして素直に謝罪できるところを見ると、実は根は優しいのかもしれない。
彼とは意外にも仲良くやっていけそうだ。もしかしたら、冬二以来の友人同士になれるかもしれない。
「さっき蛇塚くんが言ったように、僕たちは自分たちで集まったわけじゃなくて、余った人たちで結成されたチームだ。もちろん最初はゴタゴタすると思うけど、同じ感情を理解できるからこそ、僕たちは上手くやっていけると思う。だから、これからよろしく」
そう言って僕は蛇塚に手を差し出す。
「……ああ、こっちこそよろしくな」
蛇塚も同じように手を差し出し、まさにその手と手が握られようとしたその時――
「ああー! こんなところにいたー!」
突如飛んできた想定外の大声に、僕と蛇塚の動きがピタリと止まる。
その声の主はこの場にいる三人のものではない。
僕たちは声の聞こえてきた方を振り返ると、少し離れた場所に一人の女子生徒が立っていた。
その生徒は間違いなく僕らの方を見ており、こちらへズンズンと近づいてくる。
「もう! すぐ教室からいなくなっちゃうんだから!」
私怒ってます!――という表情があざとくも可愛らしく、赤茶けた髪色が特徴的なその女子生徒の視線の先にいるのは、面倒なのに見つかったという表情を浮かべる蛇塚だった。
「別にオレがどこにいようとオレの勝手だろ。お前には関係ねえよ」
「あー! そういうこと言うんだ。未だに周囲に馴染めない秋人を心配しに来てあげた、と~っても優しい幼なじみに対して」
「自分で優しいとか言うなよ。お前こそ何しにきたんだ、
「それはもちろん、一人で寂しくしているだろう秋人に……」
蛇塚から舞衣と呼ばれた少女は、言葉の途中で初めて、ほぼ空気となりかけていた僕と烏丸の存在を認識する。
「えっ!? 秋人が私以外の人と会話してる!!! どういう関係!? もしかして友達できたの!? きっかけは!?」
「一気に全部聞くなって。そうやってまくし立てるの、お前の悪い癖だぞ。そいつらはあれだ。一緒のチームのやつだよ」
「そうなんだ! あっ! 初めまして!
「……うっす」
「…………」
蛇塚の幼なじみを名乗る彩場の、息継ぎすらなく紡がれる言葉の波に、僕と烏丸は完全に飲み込まれてしまう。
烏丸にいたっては、顔から全ての感情が削ぎ落とされ、まるで石像のようにピクリとも動かない。
「でもよかったよ。秋人のことだから、このまま誰ともチームが組めずに、留年しちゃうんじゃないかって心配してたから。お母さん安心しました」
「誰がお母さんだ」
「だって秋人のおばさんから、『秋人のことよろしくね』って頼まれてるもん。実質学校では私がお母さんだから」
「ちげぇよ。……ったく、相変わらずおせっかいなやつだな」
「もう、なんでこんなに捻くれちゃったかな~。昔はあんなに可愛かったのに。私からのチームの誘いも断っちゃうし」
「オレがお前のチームなんかに入ったら、お前がチームメイトから変な目で見られるだろうが」
「……ふ~ん? そんなこと考えてたんだ。別に気にしなくてもいいのに。…………ほんと、変なところで優しさ見せるんだから」
「あっ? 最後なんて言った? 声小さくて聞こえねえよ」
「べ~つにぃ~、なんでもありませ~ん」
蛇塚と彩場。二人のその会話からは、長年培った信頼と、確かなお互いを思う感情が伝わってくる。
彩場から蛇塚へ向ける思いはもちろんのこと、蛇塚から彩場へ向ける思いも、不器用ながら確かに感じ取れた。
…………なんだろう、僕の心を塗りつぶしていくこの真っ黒な感情は。
いや、僕はこの感情を知っている。
そうか、これが……そうなのか。この掌にあるものが…………殺意か。
「あっ! そう言えば何かチームの話の途中だったんだよね? ごめんね邪魔しちゃって」
彩場は蛇塚への謝罪を済ませると、僕たちの方へと体を向け、軽くその頭を下げる。
「秋人のこと、よろしくお願いします。見た目はちょっと怖いかもしれないけど、根はすごく優しい人なので」
とても穏やかな優しい声でそう告げると、彩場は頭を上げて笑顔を浮かべる。
「じゃあ私はこれで。あ、そうだ! 今日の放課後、秋人に借りてた漫画返しに行くね。ではではごゆっくり~」
そう言って手を振りながら、彩場は駆け足で立ち去っていく。
彩場という嵐のような存在がいなくなったことで、その場はしばらく静寂に支配される。
そんな中で、申し訳なさそうに口を開いたのは蛇塚だった。
「ああー……その、悪かったな。すげえうるさいヤツで」
やれやれ感を出しながらも、どこか照れくさそうな蛇塚は、僕と烏丸に向けて再び手を差し出す。
「変な邪魔は入っちまったが、改めてこれからよろし――」
「ぺっ!」
「……」
それは拒絶の意思だった。蛇塚の言葉を遮るように、烏丸はわざとらしく大声を出して唾を吐き捨てる。そしてそのまま、蛇塚に背を向けて歩き去って行った。
「……急にどうしたんだ? 烏丸のやつ……」
急変した烏丸の態度に困惑する蛇塚だが、残念ながら蛇塚にその理由を察することはできないだろう。
「別に、蛇塚くんは何も悪くないよ。……でもね、蛇塚くんには絶対に理解できないんだ。絶対にね」
僕は烏丸と同じように、蛇塚に背を向けて歩き出す。
そんな蛇塚と僕との間には、決して埋まることのない溝が、確かに存在していた。
「なんなんだよ……」
蛇塚秋人はわからない。つい漏れ出た彼の困惑の言葉が、ただ虚しくその場で溶けていった。
さて、最後の最後にとんでもなく不快な思いをしてしまったが、署名自体は集めることができた。
これで提出するぞ!――といきたいところだが、実はもう一箇所、まだ申請書に空欄が存在する。
それは『チーム名』の欄だ。
こちらは悩みに悩みまくり、結局決まらずにここまでズルズルときてしまった。
これから卒業まで付き合っていく名前になるので、やはりいいものにしたい。
「チーム名って悩むよね。ワタシはカッコイイ系の名前がいいかなぁ」
悩む僕の隣で、さも当然のように共感を示す
「ワタシにいくつか案があるんだけど、言ってみていい?」
「…………」
悩むと言っても、チーム名の大体の方向性は決まっている。そのため、今さら新しい案は特に必要ないのだが、無視したら呪われそうなので一応聞いておこう。
「もちろん。聞かせてほしいな」
「えっと、『絆!~一丸となり頂点へ!~』とかどう!?」
体育祭のスローガンかな? なんなら今の僕たちからもっとも遠い言葉だろ。
「あっ、でもこれは次点で、本命は『
「うん、すごくかっこいいね」
メンバーは基本的にぼっち……………………うん、ぼっちであり、それを絡めたチーム名にするのはどうかと考えている。
たださすがに『ぼっち』では格好がつかない。何か別のそれっぽい言葉に変換する必要がある。
…………そうだ。『はみ出し者』とかどうだろうか? それなら元の意味と大きく変わらないし、孤独というよりは孤高という感じがして、ちょっとかっこいい。
それと日本語のままよりかは、海外の言葉を使ってカタカナにした方がさらに格好がつく。
僕は『はみ出し者』の外国語をスマホで検索する。そしてその中の一つに、これだ!と思う言葉があった。
『ミスフィット』
チーム『ミスフィット』――うん、いいのではなかろうか? 響きも悪くない。
よし、これで決定だ。僕はチーム名の欄に『ミスフィット』と書き込む。
色々と苦労したが、なんとかこれで申請書の欄を全て埋めることができた。後は立花先生に提出するだけ。
期限は放課後までだが、なるべく早めに提出するべきだろう。ここまできて提出忘れとかシャレにならない。
そう考えていると、ちょうど烏丸が渡りに船な提案を口にする。
「あっ、リーダー。ワ、ワタシ次の授業、立花先生の異能歴史学なんだけど、よかっ、よかったら、ワタシがその時に、申請書渡すよ」
「ほんとに? 頼んでいいの?」
「うん」
「じゃあ……」
僕は烏丸に申請書を渡そうとするが、一瞬それをためらう。僕の中で嫌な予感がよぎったのだ。申請書を提出する前に、なくされたりしたらどうしようかと。
しかし烏丸は呪いっ子キャラではあるものの、ドジっ子キャラではない。ならば大丈夫だろうと思い直し、僕は申請書を手渡した。
ちょうどその時、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る。
そしてその予鈴こそが、呪いを解呪する方法だった。烏丸は予鈴を聞き、慌てて教室へと戻っていったのだ。
こうして、僕の仲間探しの旅は終わりを迎える。多少の苦労や精神的ダメージはあったものの、無事任務をやり遂げることができた。文句なしのハッピーエンドだ。めでたしめでたし――
――あれ? そういえば、光華にかけた呪いは解呪したのだろうか?
――――――
おまけ
もちろん解呪されているはずもなく――
「ぐぅぉぅ、うぐぅ…………!」
光華夏美は昼休みが終わりを迎えようとしている現在も、保健室のベッドで横になりながら激痛に苦しんでいた。
「大丈夫? 光華さん。さっき呪いの
「む、無理です……」
保険室の先生――養護教諭からの励ましの言葉も、今の光華にとっては慰めにならない。
すでに過去の思い出が走馬灯のように、光華の脳内を駆け巡っていた。
「先生、母上に伝えてください……。あなたの期待に、あまり応えることの、できなかった娘で……申し訳ありません、と……」
「あ、遺言は残さなくて大丈夫よ。この呪い、痛みを与えることに特化してる分、身体機能への影響は皆無だから」
痛みで動けない時点で、身体機能への影響大では?――――と疑問に思うものの、もはや光華には突っ込む気力も残っていなかった。
そうこうしていると、ついに養護教諭の呼び出した呪いの専門家が到着する。
「お疲れ様です。呪いにかかっている生徒がいると聞いて、こちらへ参りました」
「お疲れ様です! 待ってました立花先生!」
養護教諭は部屋に訪れた立花を歓迎し、そしてすぐに光華のもとへと案内する。
「この子なんですけど……」
「光華か……」
立花は光華の状態を確認すると、光華の腹部に手のひらをかざす。
立花が行ったのはたったそれだけ。しかしそれだけの行為が、光華の取り巻く現状を大きく変える。
「ぐぉゥ、つう――――あれ、治った!」
永遠に続くかと思われた苦しみが嘘のように消え去り、光華は勢いよく上体を起き上がらせる。
あれだけの激痛だったにもかかわらず、今の体の具合はまさに健康そのもので、まるで狐につままれたような気分だった。
「さすがですね立花先生。あんな一瞬で解呪するなんて」
「確かに強力な呪いでしたが、呪いを構成する要素のほとんどが、術者の隠蔽に使われていました。おそらく呪詛返しを防ぐためのものでしょう。ですので、呪いを打ち消すこと自体はそれほど難しくありません」
そう言って、事実簡単そうに呪いを解呪した立花だが、もちろんそれは立花のような実力者だからこそできたこと。
「では、誰が光華さんに呪いをかけたかは不明ということですか?」
「そうですね。詳しく調べれば分かったかもしれませんが、もう消してしまいましたから。……ですが、あれほど複雑な呪いを構成できる人間はそういません。それこそ高等部で可能な人間となれば、烏丸くらいのものでしょう」
「あぁ……、やっぱり烏丸さんですか。彼女も懲りませんね。以前、田中くんを呪った時は停学処分まで受けたというのに……」
呪いをかけた下手人として、一人の問題児が浮上し、困った様子で会話を交わす立花と養護教諭。
そして、そんな二人の会話を傍で聞いていた光華。彼女はこの時、笑みを浮かべていた。それは普段、学園で見せる王子様としての笑顔ではなく、口元だけが不自然に歪められたもの。彼女の両手は震えるほど力強く握りしめられており、その目には確かな怒りが込められている。
また一つ、雪春たちのチームに爆弾が生じた瞬間だった。
『パンパカパーン! チームの溝が深まった!』