魔法や異能が存在しても、主人公になれるかどうかは別の話 作:考える人
親友ポジ――それはハーレムもののラノベやギャルゲーにおいて、わりかし重要な存在である。
三枚目担当であったり、ほぼ空気的な存在であったりしつつ、たまに起死回生の活躍をする肉壁。そして主人公の攻略対象とは絶対に恋愛関係にならない。ありがちな特徴を挙げるとするとこんなところだろうか(独断と偏見)。
以前にも少し話したが、学園に入学して半年近く、唯一できた友人が主人公ならば、僕は親友ポジだった。
入学当初から友人の主人公らしさをまざまざと見せつけられた僕は、己が主人公であるという妄想を早々に打ち砕かれた。
そこで僕は役割を求めたのだ。友人が主人公であるならば、その主人公が織りなす物語において役割が欲しい、と。主人公になれないのなら、せめてモブになるのは嫌だ、と。
主人公である友人がどんどん活躍して周囲からの評価を上げていこうと、次々増えていくヒロインと目の前でイチャイチャされようと、周囲から腰巾着とバカにされようと、僕は親友ポジを守り続けた。
しかしそんなある時、現れたのだ――――本物の親友ポジというやつが。
そいつはしれっと『主人公とヒロインズ+僕』のグループに溶け込み、いつの間にか僕以上にグループに馴染んでいた。
グループに混ざってきた理由も主人公がいたからであり、僕に対する興味があまりないことはすぐに察することができた。
要するに僕にとって彼は友人の友人、つまり敵である。
最初こそ親友ポジを渡してなるものかと対抗心を燃やしていたが、すぐに格の違いというものを見せつけられることになる。
例えば――
CASE1 決闘
後に主人公のハーレムメンバーの一員となる女子生徒VS主人公の決闘が行われた時のこと。
え? 決闘の原因? 覚えてないけど多分主人公が女子生徒の下着を見たとかそんなんでしょ。知らんけど。
とにかくその決闘の最中、僕のポジションは例のごとく野次馬。そしてその僕の隣に本物の親友ポジ(以下『本ポジ』)がいた。
主人公と女子生徒の決闘はバトル漫画によくある超高速バトル。僕や周囲の野次馬は何が起こっているのかわからず、『は、速すぎて見えない!』とモブ同然のセリフを吐いていた時、本ポジはぼそりとつぶやいた――
『お、今攻撃の前にフェイント入れたな。緩急をつけてきたか』と。
おわかりだろうか? そう、これは『普段おちゃらけているが本当は実力者であることを匂わせ』ムーブである。
あまりのレベルの高さに、僕は決闘そっちのけで本ポジの顔をガン見してしまった。
CASE2 屋上
ある日、本ポジは校舎の屋上から、校庭にいる主人公がヒロインたちと仲良さげに談笑しているのを見下ろしていた。
そしてスマホを片手にこうつぶやいたのだ――
『ええ、あいつは想像以上の速さで成長してますよ――老師』
おわかりだろうか? そう、これは『とある組織に所属し、主人公を監視するスパイ』ムーブである。
一番格好いいやつじゃん! 僕はあまりの羨ましさに、本ポジの顔をガン見してしまった。
え? なんでお前はそんなとこにいたのかって? 屋上のベンチでボッチ飯きめてただけですがなにか?
ちなみに本ポジは結局僕の存在には気づかず、スマホをポケットにしまいながらクールに屋上を去っていった。
スパイ的なムーブしてるくせに、周囲の存在に気づかないのはいささかマヌケな気もするが。
CASE3 情報通
親友ポジにおける標準技能――それは情報通であること。
主人公が何かしら現状手詰まりになったとき、または気になった相手のことが知りたいとき、颯爽と必要な情報を提供することが親友ポジには求められる(独断と偏見)。
しかし僕が主人公に提供できる情報など、ゲームの攻略情報くらい。くそぉ……! ポ〇モンの種族値ならそらで言えるのに!!
一方で本ポジは、さりげなく主人公に手詰まりから抜け出す情報を与えたり、全校生徒の詳しい情報を持っていたりと、もはや勝負にもならなかった。
あげくの果てにはヒロインたちの誕生日、好物、趣味、スリーサイズまで知り尽くしているほど……
それを知ったとき、僕はあまりの気持ち悪さに本ポジの顔をガン見してしまった。
とまあそんなこんなあり、敗北を悟った僕は親友ポジを本ポジに明け渡そうと心に決めたわけだ。
それなりに辛いことも多かったが、いざ今の居場所を失うと思うと、どこか喪失感を覚えた。
これで僕も明日からモブの一人か――そう考えると、その日の学校からの帰り道は、なぜだか少し寂しかったのを覚えている。
そうしてその次の日、朝が来て目を覚ました僕は、前日のことを思い出し――――
なんかちょっと変なテンションだったなと、少し恥ずかしくなった。なんだ『本物の親友ポジ』って。
―――――
おまけ
僕の通っている異能学園では、髪形や服装の自由がかなり利く。
一応指定の制服はあるのだが、あってないようなものである。
というのも、制服の改造自由、小物自由、髪染めオーケーといったように、なんでもありだからだ。
ぴっちりと正しく制服を着こなしているのはごく一部であり、生徒のほぼ全員が各々自由に着崩している。
制服の上着を着用することなく、なぜかいつも肩にかけている人。
ワ〇メちゃんといい勝負ができそうなほどスカートの短い人。
制服の肩から先がなくなっている人。切れ口はギザギザ。
タトゥーが入っている人もおり、髪色はむしろ無い色を探す方が難しい。
というわけで、皆が思い思いの姿格好をしているというわけだ。
初日は僕もきっちり着こなしてて登校したのだが、学校に着いた瞬間、個性の表現大会のような光景を見せられて、かなり衝撃を受けたのを覚えている。
なんせ僕の通っていた中学ではそのあたりの校則が厳しく、『髪を染める=不良』みたいなイメージもあったほどだ。
ただそんな光景にもすぐになれ、数日もすると僕も好きな格好で登校し始めた。
今の僕の登校スタイルは、指定の制服(ブレザータイプ)の下に灰色のパーカーを着込み、紺色のヘッドホン(お高め)を肩にかけるというものである。
え? なんでそんな格好をしているかって?…………だって、かっこよくない……?
パーカーかっこいいじゃん、ヘッドホンかっこいいじゃん。
初めてその格好で登校したとき、ポケットに手を入れながら教室の壁にもたれかかるだけで、僕は少し興奮していた。
なお、しばらく陰で『くそださヘッドホン』と呼ばれるようになった。ダサくないよ!!!
ちなみに、朝の校門で風紀委員による抜き打ち服装チェックが行われていることもある。
ただ誰かが注意を受けてたり、何かを没収されたりしているのを見たことがない。なんのために存在しているのか、不思議でしょうがない。
この前なんて荷物検査でカバンの中に銃が入っていた生徒もいたが、『よし、問題ないな』と、当然のごとくスルーされていた。問題しかねえわ。腕に着けてる腕章の『風紀』の文字は飾りかな? 無法地帯にもほどがある。
―――――
異能学園の
そのため僕は、知らないことで損したり恥をかく校則があるかもしれないと考え、生徒手帳に記されてある校則を読んでみることにした。
生徒手帳をパラパラとめくり、最初に目についたのは『服装』の項目。
そこには――『制服は正しく着用すること』と書かれていた。
…………はて?
僕は違う学校の生徒手帳を読んでいるのかと表紙を確認するが、そこに書かれているのはやはり僕の通う学園の名前。
…………ふむ、どうやら生徒手帳に記されている文字に何の意味もない可能性が出てきたらしい。
しばらく校則を読み進めるが、むしろ正しく守られているルールを見つける方が難しいほどだった。
特に一番気になったのが『教員の特別な許可なく異能の力を使用することを禁ずる』という部分。異能の使用が許可制だったの知らなかった。みんな平気で使ってるし、この前なんて教師に向かって異能ぶっぱしてるやついたけど……。
ちなみにその項目を破ったものは一発で退学とあった。めちゃくちゃ厳しい。ちゃんとその校則が運用されていたら、おそらくほぼ全ての学園生が学園から消えることになるだろう。そう考えると、ガバガバでよかったかもと考えたその時――
今朝、生徒同士の私闘に巻き込まれた時のことを思い出した。
私闘の理由は、男子生徒が転んで、女子生徒のスカートの中に偶然頭を突っ込んだことが原因らしい。
決闘前はこれでもかというほど怒りを見せていた女子生徒だが、決闘後は男子生徒の実力を認め、誤解が解けたことで固い握手を交わしていた…………女子生徒の水魔法によって、全身びしょ濡れという形で巻き込まれた多くのギャラリーや通行人の目の前で。なお、僕は通行人Aである。
…………やはり退学にすべきではないだろうか? 僕は訝しんだ。
これまでは1年生時を振り返るような形でしたが、次から現在進行形になります。