魔法や異能が存在しても、主人公になれるかどうかは別の話   作:考える人

63 / 100
拳聖祭と救国の王女③ / 笑顔で浮かべる嘘

 

 学園内のとある一室に詰め込まれた複数の生徒たち。

 それは無造作に集められたわけではなく、目的もなく集まったわけでもない。

 ここにいる生徒たちの共通目的――それは『王女護衛』の依頼を受けること。

 つまりここにいる全員、僕たちミスフィットのライバルというわけだ。

 

「……で、ボクらはどういった理由で呼ばれたわけだい?」

 

「ほんとだぜまったく。夏休みにいきなり理由も告げず呼び出しやがって」

 

「ワ、ワタシは暇してたから嬉しかったけど……」

 

 集まっているチームは全部で10チームほど。

 見覚えのない顔ばかりであるため、おそらくほとんどが三年生チームなのだろう。

 

「おいこらリーダー」

 

 つまり、僕たちは上級生を相手に、この『王女護衛』の依頼を勝ち取らなければならないというわけだ。

 

「無視すんじゃねえよこのクソボケリーダー! 立花先生の名前まで使って呼び出したくせしやがって!」

 

「そうだよ。君には説明責任があるはずだ」

 

「……」

 

「おいなんだ。その不満そうな顔は」

 

 そりゃそうでしょ。普通に連絡したらガン無視しやがったくせに、立花先生がブチ切れてるって言ったら秒で来たんだから。

 

「そもそもどうやってボクらの番号を知ったんだい? 連絡先を交換した覚えはないんだけど」

 

「メンターから教えてもらったんだよ」

 

 実際はメンターの机を漁り、『指導生徒・連絡先名簿』と書かれたファイルを勝手に覗き見て知ったわけだけど。

 ちなみに、烏丸に電話をかける際、なぜか僕の真後ろから着信音が鳴り始めた。シンプルに恐怖を感じた。

 

「それで……改めて聞くけど、呼び出した理由は? これは一体なんの集まりだい?」

 

「任務だよ。拳聖祭(けんせいさい)で学園に来てる、ジール王国の王女様を護衛する任務。ここにいるのは僕たちと同じように、その任務を受けようとしているチームの人たちで、この中から任務を受けるチームが選ばれることになってる。で、これからそのための審査が始まるってわけ」

 

 僕がそう説明すると、三人は各々まったく別の反応を示す。

 烏丸は『へー、そうなんだ』といった様子のしれっとした反応を。

 蛇塚はあからさまにめんどくさいといった、嫌そうな反応を。

 そして中でも、一番大きなリアクションをとったのは光華だった。彼女は目を輝かせ、とびっきりの笑みを浮かべる。

 

「素晴らしい! 王女様の護衛なんて、このボクにピッタリの任務じゃないか! いやあ、リーダーのこと少し見直したよ! たまにはいいことするんだって!」

 

 たまに?

 

 まあ、任務に乗り気なら何も言うまい。

 一方で、そんな光華とは対照的に、蛇塚は任務内容の詳細が書かれた紙を見て、隠すことなく不満を告げる。

 

「つーかこれ、依頼期間が夏休み中の三週間に加え、呼び出されれば可能な限り応じることって……いくらなんでもダルすぎるだろ。これ絶対受けなきゃダメか?」

 

「マイナス58ポイント」

 

「あ?」

 

「蛇塚くんの暴力沙汰で、チームが受けた総減点ポイントだよ。その分を蛇塚くんが一人で補填してくれるなら、無理にこの依頼を受ける必要はないけど」

 

「ぐっ……!」

 

 自分の行動で、チームに迷惑をかけている――その事実に責任を感じたのか、蛇塚の反対する勢いが弱くなる。

 蛇塚のやつ、普段は悪ぶってるくせになんだかんだ性格良いよなと思う。普段は猫かぶりながら、根はドクズの光華とは正反対だ。

 

「そ、その、蛇塚くん。任務……受けようよ。せっかくリーダーが、やろうって言ってくれてるし、ね?」

 

 そうだそうだ。もっと言ってやれ、烏丸(マイナス98ポイント)

 

「ちっ、わあったよ」

 

 蛇塚は渋々ながらも、護衛任務を受けることを了承する。

 

「それで? 審査って何をするんだい? 選ばれるチームの数は?」

 

「一チームだけだって。審査内容は当日発表って書かれてたから、これから説明されるんだと思う」

 

 先ほども少し話したように、護衛任務を受けようとしている相手は上級生ばかり。

 そんな中で、護衛に選ばれるのはたったの一チーム。正式に任務を受けるためには、その一枠に僕らが選ばれなければならない。

 

 ただ、僕はそれほど大して心配はしていない。というのも、周囲は上級生ばかりでありながら、冬二のように異能ランクAの序列入りしている生徒の姿は、一人も見当たらないからだ。

 つまり、他のチームは異能ランクBの生徒がチーム内で最高ランクということ。

 おそらくだが、序列入りしている生徒は冬二たちのように、拳聖祭の出場で忙しいのも関係しているのだろう。

 

 しかし、しかしだ。僕らのチームにはいる。他のチームにはいない、異能ランクAの序列入りしている生徒――恐怖の呪い娘が!

 護衛任務ともなれば、その審査方法は腕っぷしが問われるものになるはず。

 ならば反社組織の幹部すら瞬殺してしまう呪いの女王――烏丸の独壇場になるのは間違いない!

 僕は半ば確信していた。僕らのチームが、まだ見ぬ王女様を護衛する栄光の未来を。

 また、この会場にいる生徒たちの大半が、呪いに侵される地獄絵図を。

 

 

 そうしてしばらく待機していると、一人の大人の男性が部屋へと入り、教壇に立って口を開く。

 

「えー、みなさまお待たせしました。これより、審査の方を開始していきます」

 

 その言葉に、先ほどまで騒がしかった部屋の中は静まり返り、生徒たちの緊張感が明らかに増した。

 ついに始まるのだと、否が応でも実感させられる。

 

「早速ですが、当日発表としていました審査方法を発表させていただきます」

 

 いよいよか……。大丈夫、できることは全てやったはずだ。

 この部屋にいる生徒の髪の毛は既に採取済み。要するに、いつでも集団腹痛を引き起こすことが可能というわけだ。

 さあこい! どんな審査だろうと、依頼を勝ち取ってみせる!

 

 

「審査方法は――チームごとの面接です」

 

 

 ……面、接?

 

「なにか質問等がありましたら、挙手でお願いします」

 

 その言葉に、僕は勢いよく手を上げる。

 

「はい、そちらの方」

 

「す、すみません! 審査って、異能の実力とかそういうのを見るんじゃないんですか!?」

 

 面接はまずい! 僕や光華はともかく、蛇塚や烏丸にまともな受け答えなんてできるはずがない!

 烏丸なんて自己紹介でテンパって、クラスメイト全員を病院送りにするやつだぞ。

 

「この審査に関しましては、護衛対象であるリリアーナ様の意向です。任務ランクを設定している時点で、最低限の実力は保証されていますので、人となりの方を重視したいとのことです」

 

「な、る……ほど。わかりました……」

 

 僕はそれ以上発言することなく、その場で考え込む。

 どうする? 他チームが面接を受けるタイミングを見計らって、腹痛を起こさせるか? ……いや、そんなあからさまにやれば、間違いなく不審がられるし、審査自体が有耶無耶になる可能性もある……。

 僕はしばらく考えに考え、その上で結論を出した――

 

 

 ――これは無理だな、と。

 

 

 ……帰るか。

 

「待て待て待てリーダー! いくらなんでも諦めが早すぎる!」

 

 そんな立ち去ろうとする僕の腕を、光華は掴んで止めようとしてくるが、無理なものは無理だ。

 僕は船を降りさせてもらう。

 

「君が先導した船じゃないか! 最後まで責任を持ちなよ!」

 

 責任? 知らない言葉ですね。

 

「ほらっ! 座りなって!」

 

「ぐえっ」

 

 諦め、本気で帰宅しようとしたのだが、光華によって僕は力づくでその場に抑え込まれてしまう。この発光ゴリラめ……!

 

「まあこのままだとマズイのはボクも同意だ。何か策を考えないと……」

 

「……なら、烏丸さん(・・・・)を無口キャラってことにするしかないんじゃない?」

 

 僕は抑え込まれながら、唯一思いついた策を口にする。

 

 面接で喋らないとか、お前なにしにきたんだ案件だが、余計なことを喋られるよりは確実にマシだ。

 それに異能社会には、無口キャラ程度の変なやつはいくらでもいるわけですし。

 

「……それしかないか」

 

「ま、しゃあねえわな」

 

 とりあえず、光華と蛇塚はその案を了承。後は張本人の烏丸さえ了承すれば……。

 

「あ、その……リーダー」

 

「烏丸さん、思うところもあるだろうけど、今回は――」

 

「み、みんなの前だからって、恥ずかしがらずに名前で呼んでくれても……いいんだよ? ほら、前みたいに冬歌さん(・・・・)って。フヘヘ……」

 

「アハハ」

 

 しゃべんなカス。

 

 

 

 

 その後、無言作戦に烏丸も了承し、待つこと数十分。

 

「次、えっと……おろ、ぐ……『愚蓮(ぐれん)努羅魂(どらごん)仏血切離(ぶっちぎり)』のみなさん、お入りください」

 

 ついに、僕らの面接の番が訪れる。

 

 僕らが面接室へと足を踏み入れると、待ち構えていた面接官()一人。

 それは真っ白な長髪を後ろでくくった、スーツ姿のとても容姿の整った女性だった。年はかなり若く見える。なんなら学生に見えるほど。

 そしてその日本人離れした見た目からして、おそらく彼女も王女様と同郷であり、それなりに王女様と近しい人物なのだろう。たとえば従者とか。

 

 まあ、それはいいとして……。

 その面接官の背後や壁際、そして入ってきた扉の傍など、部屋の至る所に、なぜかサングラスをかけたガタイのいい男たちが配置されており、僕たちを囲んでいる。

 

「…………」

 

「みなさん、どうぞお座り下さい。面接と言っても、簡単な受け答えばかりですので、気軽にお答えください」

 

 なら部屋にいるガタイのいい男たちは排除してくださいよ。

 『余計なことしてみろ。今すぐツマミだすぞ』とばかりに圧かけてくるんですけど。

 

 僕は内心ツッコミたいのを我慢し、大人しく椅子に腰かける。

 

「それでは、ご自身の名前と異能ランクをお願いします」

 

 ついに始まったか。まあこうなった以上、もうなるようになれだ。

 

「渡谷雪春です。異能ランクはEです」

 

「蛇塚秋人……です。異能ランクはD……じゃなかった、Cっす……です」

 

「光華夏美です。異能ランクはCです」

 

「か、烏丸冬歌です! 異能ランクは、あっ、えっと……Aです!」

 

 ……………………ん? あれ? え、今普通に烏丸しゃべった?

 待て待て待て。僕、ちゃんと面接中は口を開くなって言ったよね?

 烏丸のやつ、『わかった!』って元気よく言ったよね!?

 

 ちゃんと言えた!――とばかりにドヤ顔を浮かべる烏丸を、僕ら三人はマジかこいつと言わんばかりに睨みつける。

 

「……? どうかされましたか?」

 

「い、いえ! なんでもありません!」

 

 くそっ! 面接が始まって秒で作戦変更を余儀なくされてしまった……!

 こうなったらプランBだ。

 僕はこっそりと、烏丸の隣に座る光華にアイコンタクトを送る。そしてそれに気づいた光華がコクリと頷くと、面接官が資料に目をやった隙をついて、烏丸の首元に手刀を入れた。

 

「ふげっ!?」

 

 光華からの不意打ちをくらい、烏丸は為す術なく意識を失う。

 これこそがプランB――烏丸の強制シャットダウンだ。

 

「それでは最初の質も――あら、そちらの方はどうされたんですか?」

 

「あ、すみません。彼女、普段からよく気絶するんですよ」

 

「そうです。いつものことなので、気にしないでください」

 

「えぇ……?」

 

 当然、面接官は不審がるも、僕らはいつものことだとゴリ押しする。割とウソは言ってないので。

 

「ま、まあ……あなた方がそれでいいのでしたら……」

 

 明らかに猜疑心バリバリだが、なんとか乗り切れたらしい。

 

 

 そうして、その後しばらく、烏丸抜きで面接が進んでいく。

 

「あなた方の達成した任務がAランクとFランク。かなり依頼ランクに差がありますが、これはどうしてでしょうか?」

 

「はい、確かに一見なんの共通点もありませんが、ある一点――この二つの依頼には共通点が存在します」

 

「といいますと?」

 

「それはどちらの依頼も、誰も受けることなく、塩漬け状態――放置されていたということです。一つはその依頼ランクの高さゆえ。もう一つは、内容の割の合わなさゆえ。誰も受けない。またはできない――それ即ち、自分たちだからこそできることだと、自分は考えています。今回、護衛の依頼に立候補させていただいたのも、自分たちであれば……いえ、自分たちだからこそ、十全に任を果たせると考えたからです」

 

「なるほど……」

 

 僕の答弁を聞き、面接官は頷きながらパソコンに何かを打ち込んでいく。

 

「それでは次の質問です。チーム内には高ランク異能者も在籍する中、Eランクである渡谷さんがリーダーに選ばれたのはなぜかと、失礼ながら少し疑問に思いました。ですので、蛇塚さんと光華さんにお聞きします。渡谷さんをリーダーとして選んだ理由、または彼のここが優れているという面がありましたら、ぜひお教えください」

 

 今までは僕が中心に受け答えしていたが、今度の質問は僕以外に向けたもの。

 頼むぞ! 我がチームメイトたちよ……!

 

「えっと……、そうっすね…………………………性格(が悪いところ)っすかね」

 

「やはり(ある意味)性格がいいところでしょうか。彼のその性格のおかげで、チームがまとまっているのは間違いありません」

 

「なるほど……。他にはありますか?」

 

「あー……、まあその……………………………(ずる)賢いところっす」

 

「(性格が悪いから)相手の裏をかくのが上手いですね。その(ドン引きするような)機転に、チームが何度も救われました」

 

 心なしか悪口に聞こえるが、きっと気のせいだろう。

 よしよしよし、思ったよりいい感じだ。正直ほとんど諦めていたが、これならワンチャンあるかもしれない。

 

 いくつかの質問と受け答えを終え、少し自信が湧いてきたその時だった。

 

「それでは最後の質問です。実は事前にみなさんのことを少し調べさせていただきました。学園から資料の提供もしていただいております」

 

 終わったぜ☆

 

 僕は続く言葉を待つまでもなく、敗北を悟る。

 

「暴力事件を始めとした問題行動。そしてそれに伴う停学等々……。どうやらかなり素行に問題が見られるようですが……、何か弁明はありますか?」

 

「ありません」

 

「「おいこらリーダー」」

 

 だって事実だし……。

 

「正直なことを言いますと、特に蛇塚さんと烏丸さん。二人は異能の実力以前に、人間性に問題があるかと」

 

「ああっ!?」

 

「ほらリーダー、大切な仲間が悪く言われてるよ。何か言い返さなくていいのかい?」

 

 別に大切じゃないし……。

 

「チームメイトの暴走を止められないリーダーの管理能力にも、疑問を覚えますね」

 

 なんだとっ!? 仲間の悪口はともかく、僕の悪口は許さないぞ!

 

「他にも気になる点はいくつも――」

 

「さっきから黙って聞いてりゃあよぉ。上からグダグダと……調子に乗ってんじゃねえぞ!」

 

 まあ案の定といいますか、面接官の容赦なく浴びせかけてくる事実に、沸点の低い蛇塚がブチ切れ。

 ついに我慢できず、その場から立ち上がるのだが、面接官の背後にいた屈強な男がすぐさま反応し、蛇塚の行く手を阻むように立ち塞がる。

 

「ソレイジョウ、ウゴクナ。ウゴケバ――」

 

「どうなるってんだよ?」

 

「ちょっと蛇塚くん、落ち着いて! ほらリーダーも手伝って!」

 

 光華は蛇塚を必死に止めようするが、僕はいまいち乗り気になれない。

 なんせここで蛇塚の暴走を止めたところで、依頼を勝ち取るのは既に絶望的なわけですし。

 まあでも、本当に殴ったりしてしまえば、またペナルティを食らうかもしれない。そう考え、僕も止めに入ろうとしたその瞬間、蛇塚の目の前にいた男が泡を吹いて意識を失い、そのまま倒れこんでしまう。

 

「…………」

 

「……蛇塚くん」

 

「ま、待てっ! オレはまだなんもやってねえぞ!」

 

 え? じゃあ誰が――

 

「わ、ワタシの仲間に手を出す人は……だだだ、誰であっても許さないから……!」

 

 その声に僕らは振り返ると、いつの間にか意識を取り戻していた烏丸が、ミニ『厄災の泥人形(ミカエル)』を複数体生み出し、臨戦態勢に入っていた。

 

 これにはさすがの光華も、やっちまったとばかりに両手で顔を覆う。

 

『レオがやられた! 気をつけろ! その泥には触れるな!』

 

『護衛対象の隔離が最優先だ!』

 

「ああっ!? 何言ってっかわかんねえよ! 日本語喋れや!」

 

「やっちゃえ! ミカエル!」

 

「ああもうっ! 君たちいい加減にしなよ!」

 

 あれよあれよと、あっという間に室内は面接模様から乱闘現場へと早変わり。

 結局こうなっちゃうかぁ……。

 

 立花先生から反対されたにもかかわらず、黙って依頼を受けにいき、そして懸念通り問題を起こす始末。

 どうにかお叱りを回避できないものか。僕は座っていた椅子ごと乱闘から少し離れ、説教&暴力回避の方法を考えていると、ふと面接官の姿が目に入る。

 乱闘が発生しながらも、まったく動じることなく、カタカタとタイピングし続ける面接官。

 

 

 そんな面接官の口角が、僅かにだが上がっているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  おまけ

 

 

 

『トラブルもありましたが、なんとか全チームの面接が終わりましたね』

 

『ええ、ではさっそく始めていきましょうか』

 

 先ほど、雪春たちの面接を行った面接官も含め、複数の男女が一つの部屋に集まり、会議を開始する。

 王女の護衛――その重大案件を、任せるに足るチームを選ぶために。

 彼らの話すその言語は、日本語ではなくジール王国の公用語。

 

『私は二番目のチームがよろしいかと。受け答えもしっかりしており、教員たちからの評価も高いです』

 

『でしたら六番目のチームもなかなか――』

 

『ならば八番目のチームも候補として――』

 

 各々が自身の意見を告げ、議論を重ねていく。

 合理的に、多角的な視点から、冷静に。

 しかしそんな中で、面接官の少女(・・)だけは、それまで誰も候補としてあげなかったチームを選んだ。

 

『このチームを護衛にしましょう』

 

 少女はとあるチームの資料を、全員に見えるよう掲げる。

 

『お、お待ちください! さすがに彼らだけは……!』

 

『そうです! そのチームは教員からの評価も最低で、あげく面接で暴力沙汰を起こすやつらですよ! 私は反対です!』

 

 少女の提案に、少女以外の全員が難色を示し、反対意見を提示していく。しかし――

 

『いえ、彼らでいきます』

 

『……』

 

 まさに鶴の一声だった。なんの根拠も示さず、ただゴリ押しするような発言に、誰も何も言い返すことができない。

 それは面接官であった少女が持つ、その立場(・・)ゆえ。

 

『……失礼ですがリリアーナ様(・・・・・・)。今回の我々の目的は覚えておいでですか?』

 

『ええ、もちろんですとも』

 

 リリアーナ――それはジール王国第一王女の名。

 その名を呼ばれ、少女は髪留めを外しながら、まるで吸い込まれるような笑みを浮かべて告げる。

 

『拳聖祭を通じ、より多くの生徒と関わることでその知見を広げる……というのはあくまで建前。私たちの真の目的、それは現代に再び顕現した大悪魔――――冥界王メイルカムイの契約者を見つけ出し、始末すること。メイルカムイを冥界へと送り返すことは、ジール王国の王族に課せられた使命です。確実に王位を継ぐためにも、それは絶対に成さねばなりません』

 

『ではなぜ彼らを……?』

 

『ビビッときたんですよ。彼らを見たその瞬間に。きっと我が偉大なるご先祖――エルナリーナによるお告げなのでしょう。彼らと共に行動すべきだ、と』

 

 そう口にしながら、サラスティナ異能学園に所属するジール王国第一王女・リリアーナは、持っていた資料を楽しそうに見つめる。

 『愚蓮努羅魂仏血切離』のチーム名が記された、その資料を。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。