魔法や異能が存在しても、主人公になれるかどうかは別の話   作:考える人

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チーム / 生徒会長

 

 

 教壇に立つ立花先生が、その言葉を言い放つ。

 

 人によっては、なんでもない言葉を。人によっては、期待に胸を膨らませる言葉を。人によっては、待ち望んでいたであろう言葉を。

 

 

 僕にとっては、絶望に叩き落とされる言葉を。

 

「それでは、6人1組を作って学園に申請しろ」

 

 無茶おっしゃる。

 

 2人組を作るだけでも(ぼっち)にはハードルが高いというのに、6人組なんてもはや『ハードルの先どこ?』状態だ。

 ソシャゲのフレンドは枠が足りないくらい存在するのに……!

 

「以前から伝えていたが、2年時からはチームを組んで行動する訓練や任務が始まる」

 

 ここ数日の僕はかなり憂鬱気味だったのだが、その原因がこれだ。

 

 1年時の授業や異能の訓練は基本的に個人成績しか存在しなかった。

 けれど先生の言葉通り、2年時からは通常授業の他に、チームでこなす任務(ミッション)での単位が発生する。

 この任務をこなした数や質によって成績がつけられ、ノルマも存在するためサボると単位がもらえない。

 

 1年のこの時期の僕なら、任務という言葉に心が躍ったであろうが、現在の僕にとっては憂鬱にしかならない。

 

「わかっていると思うが、チームでの実績は学園の成績だけでなく、卒業後の進路等にも強く影響する。なお、一度組んだチームは特別な理由がない限り解消することはできないため慎重に考えろ。期限は2週間だ」

 

 それだけ言うと、立花先生は教室から出ていく。

 

 それからの教室内はもうお祭り騒ぎだった。

 皆が自由に立ち上がって集まり、あーだこーだと楽しそうに話し合っている。

 他クラスの生徒ともチームが組めるとあって、クラス間の移動も活発に行われている。

 

 ………………僕? 別にいつも通りだ。誰にも話しかけられることなく、自分の席で不動を貫いている。

 おかしいね。バイトではお客から引っ張りだこなのにね。主にクレームで。

 

 まあしょうがない。こうなることは前日から覚悟していた。

 先生こそ不在だが、一応授業中ということなので屋上に避難することもできない。

 なので可能な限り存在を消し、次の授業が始まるまでの間だけ耐えればいい。

 

 そう考え、僕は自分の殻に引きこもるため、首にかけていたヘッドホンを装着しようと――

 

「なあ雪春」

 

 ――しかけたところで声をかけられ、思わず手に持っていたヘッドホンを落としてしまう。

 それほど誰かに声をかけられるということが、僕にとって異常事態だったからだ。

 

 驚いて顔を上げると、そこにいたのは主人公属性モリモリ友人――綿谷冬二だった。

 

「俺さ、ずっと前から考えてたんだけど……」

 

 そう言って冬二は僕に何かを告げようとする。

 いや、このタイミングでわざわざ話しかけてくるのであれば、その内容は一つしかありえない。

 そして僕の予想通り、冬二はその言葉を告げる。

 

「俺とチームを組まないか?」

 

 僕の机に両手を置き、真剣に僕の眼を見つめる冬二。

 その表情はどこまでも本気で、ふざけた雰囲気など微塵も感じられない。

 

 …………だからこそ(・・・・・)、僕は耳を疑った。

 

 

 

 

 

 正気かコイツ????

 

 

 

 

 

 ……いや、別に嫌というわけではない。

 僕から勝手な理由で距離をとっておきながら、冬二はいまでも変わらず友人として接してくれるし、三日に一回は『ラーメン食べに行こうぜ!』と誘ってくれる。……せめて週一くらいにしてくれという思いがないわけでもないが。

 なんにせよ、こうしてチームにも誘ってくれる冬二に対し、正直嬉しく感じている気持ちもあるのだ。

 しかしその嬉しさ以上に、今は圧倒的な困惑が僕の心を埋め尽くしている。

 

 

 なぜなら――――

 

 

 

 冬二のハーレムメンバーにとんでもない表情で睨まれているからだ。もちろん僕が。

 

 こっわぁい。睨んだだけで人が殺せそう。

 

 まあそうなるのも当然だろう。冬二のハーレムメンバーは5人。ただこの5人というのは、あくまでこのクラス内に限った話。他にも他クラスの女子生徒や先輩後輩、さらに行く先々で現地妻を作りまくってることは容易に想像できる。

 話が逸れた。要するに、僕が冬二とチームを組んだ瞬間、チームの上限が6人と設定されている以上、ハーレムメンバーの誰かがあぶれるということだ。

 

 もしそんなことになれば間違いなく、ヒロインの座からの脱落がかかった戦争が始まる。ただでさえ正妻戦争でちょくちょくギスギスしているのに勘弁してほしい。

 

「なあ雪春」

 

 なあじゃないんだよ。なんでお前はあのヒロインズの殺意に気づかないんだ。

 

「あのさ、冬二……ちょっと後ろ向いてもらっていい?」

 

「…………?」

 

 僕は暗にヒロインズの殺意に気づくよう伝えるが――

 

「……なんだ? 特に何もないけど……」

 

 この鈍感系主人公がよぉ。

 まあこれで気づけるのなら、今こんな事態にはなってないか。

 

 どうしたものか…………

 

「雪春となら、例えAランク任務だってきっとこなせると思うんだ」「きっとチーム順位でもトップを狙えるはずだ」「俺、2年になったらチームを組めるって知って、ずっと雪春と組みたいと考えてたんだ」「俺たち、絶対最高の関係を築けるはずだ」「だから雪春! 俺とチームを組もう!!」

 

 …………必死過ぎない?

 

 なんか怖い。完全にヒロインを口説く時の熱量なんだけど。なにがお前をそこまでさせるの?

 

 ほらみろ。後ろでさらに表情がきつくなったヒロインズを。

 『え? 断るよね? 当たり前だよね?』『まさか了承するんじゃないでしょうね?』『私そこまで熱のこもった言葉いわれたことないんだけど?』――そんな言葉が聞こえてくるようだ。

 さすがに口に出すなんてマネはしてこないけど、闇討ちされる可能性とか十分にあるんじゃないかなこれ。

 

「いや、そのさ……悪いけどチームは別の人と組んでよ」

 

 僕は心苦しい思いをしながらも、冬二の誘いを泣く泣く断る。

 すると冬二は信じられないと言った表情を浮かべて僕に詰め寄る。

 

「何で断るんだ!? もうチームを組む相手が決まってるのか!?」

 

「そういうわけじゃないけど……」

 

「じゃあなんで!? 俺に何か問題でもあるのか!?」

 

「別に冬二に問題なんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、よく考えたら冬二(こいつ)のせいだわ。

 

 僕は鋼の意志で断った。

 

 

 

 余談だが後日、僕を睨んでいたヒロインズのうちの1人がお菓子をくれた。

 それだけで理不尽に睨まれていたことへの怒りを忘れ、少し舞い上がってしまった僕はかなりちょろいと思う。

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

おまけ

 

 

 普通の学校に全校集会的なものがあるように、異能学園にも全校集会が存在する。

 そして今現在、壇上に立ち、全生徒からの注目を集める3年女子の生徒会長が口を開いた。

 

「私は第99代生徒会長として、全校生徒対象の異能決戦トーナメントの開催を宣言し、優秀者には学園から賞金を出すことを約束します!!!」

 

 生徒会長の宣言に生徒達が湧き上がり、多くの者が拳を突きあげて喜びを表現する。

 体育館のボルテージが最高潮に上がっていく中、僕は思う。

 

 

 この学園、生徒会長の権限強いなぁと。

 

 

 まあ生徒会主催の企画として、大会を開催するのはまだいいとしよう。

 ただお金出すのはアウトでしょ。教育機関なんだと思ってんだ。

 しかもそれを一生徒が決めてしまえるのなかなかイカれてると思う。

 

 それに学園から(・・・・)賞金を出すってことは、もしかして学費の一部も…………

 いや、そこは学校のお金でモ〇ハン買おうとした僕が言えることじゃないな、うん。だまっとこ。

 

 

 なんにせよ、そんなことを単独で決めてしまえるほど、この学園の生徒会長の権限は強い。

 新しい設備をたてる、購買の値段設定を変える、なんてのは序の口。

 

 やつは生徒の退学停学を自由に与えたり取り消したりする権利すら持っている。

 去年、冬二が性格の悪いことで有名だった教師を殴り、退学させられそうになった時、生徒会長が出てきて冬二の退学を取り消し、さらにはその教師を辞職にまで追い込んだのだ。怖すぎるぜ。

 ちなみにその生徒会長が冬二のハーレムメンバーであることは、退学を取り消した理由とは何の関係もない。いいね?

 

 

 

 

 全校集会が終わり、自分のクラスへと帰りながら、僕は先ほど配られた『異能決戦トーナメント』なるものの詳細が書かれた紙を眺めていた。

 先ほどはまあいろいろと言ったが、実のところこういう漫画とかでよくある、異能を用いた大会とか最強決定戦的なのは大好きだ。

 

 そのため、それが実際に行われるのなら、僕も参加してみたいと思うのは必然だった。

 所詮Eランクの僕が優勝できるとは微塵も思わないが、出場するだけでもいい記念になるだろう。

 

 そう考え、詳細を見てみると――――『出場資格:Ⅾランク以上』と書かれていた。

 

「…………………………チッ」

 

 

 僕は持っていた紙を力いっぱいゴミ箱に投げ込んだ。

 

 

 

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