脳無(幼女)のヴィランアカデミア 作:殻木の弟子
危機に直面した時、生物は自分の限界を超えた力を発揮する。
虫であれ、動物であれ、人間であれ、危機こそが生物を最も成長させるのだ。
そう、どんな生物であっても。
「脳無格納庫、制圧完了」
たとえそれが、動く死体だったとしても。
「うえぇ〜〜〜これ本当に生きてんのォ・・・?」
Mt.レディが手に持った脳無に目をやる。
脳が露出したその姿は、とても生きているようには見えない。
「こんな楽な仕事でいんですかね、ジーニストさん。オールマイトの方行くべきだったんじゃないですかね」
「難易度と重要性は切り離して考えろ、新人」
不服そうなMt.レディをベストジーニストがたしなめる。
命令されなければ動かない脳無であるが、動き出せば大きな脅威となる。
難易度は低いが重要性が高い仕事。
「機動隊、すぐに
そのはずだった。
「アァ・・・」
突然、1体の小型脳無が動き出した。
「なんだ!?」
周囲を警戒するが、他の脳無が動き出す様子はない。
「1体だけなら問題ない!すぐに取り押さえて・・・」
すぐさまベストジーニストが捕縛しにかかる。
「イト・・・?」
「くっ!?」
脳無は腕を変形させ、簡単に繊維の拘束を引き千切った。
「コワイ・・・コナイデ」
「っ!?」
猛烈な速度で振り抜かれた腕は、周囲の建物をめちゃくちゃに破壊した。
「・・・助かりました、ジーニスト」
ベストジーニストがヒーロー達の衣服を操り、回避させたのだ。
しかし彼らの表情は険しい。
「こいつ・・・他の脳無を・・・!」
変形した腕から、無数の脳無が取り込まれていく。
「ア・・・グ・・・」
全て吸収し終えたその体に、異変が現れる。
青白かった体表が、人間のそれと大差ない色になっていく。
「何かする前に仕留める!」
動きを止めたそれを確保するべく、その場にいたヒーロー全員が動き出す。
しかし・・・
「来ないでっ!」
先程とは比べ物にならない速度で振るわれた腕が、その場にいた全員の意識を刈り取った。
「はぁ、はぁ・・・」
ヒーロー達を排除し、地面に座り込んだ脳無。
その姿が変貌し、姿が人間に近くなっていく。
そして最終的に、5、6歳くらいの少女に外見が変化した。
頭が痛い。
「はぁ・・・はぁ・・・」
裸で目が覚めたと思ったら、よくわからない人達に襲われて。
なんとかやっつけたけど、今どうなってるのかわからない。
「あれ・・・わたし、名前は・・・?」
自分が誰なのか、わからない。
なんでこんなことになっているのかも。
パチ、パチ、パチ。
「いやー、驚いたよ。命令もなしに起動し、プロヒーローを簡単に倒してしまうとは・・・。黒霧とはまた別タイプの成功例かな」
黒いマスクを着けた人が、拍手をしながら現れた。
「だれ・・・?」
「僕はオール・フォー・ワン。取り敢えず、これを着るといい・・・君の名前はなんて言うのかな?」
黒いマスクを着けた人──オール・フォー・ワンが差し出したスーツを羽織る。
ブカブカで変な格好だけど、裸よりはマシかな。
「わかんない・・・」
気がついたらここに居て、ロープみたいなので縛られてた。
名前も何もかもわからない。
「そうか・・・。なら、僕が君に名を与えよう。そうだな・・・今日から君は“
ムクロ・・・よくわからないけど、かっこいい名前。
「わかった・・・わたしは骸」
「いい子だ。早速だけど、君にお願いしたいことがある。そこにいる人達は見えるかい?」
オール・フォー・ワンが指さした先には、泥みたいなものから出てくる人達がいた。
「見えるよ」
「彼らについて行って、力になってあげてほしいんだ」
力になる・・・。
「助けるってこと?」
「ああ」
助ける・・・みんなを守るってことね。
きっとわたしならできるよ。
「オール・フォー・ワンは来ないの?」
「僕は、彼らを捕まえに来るやつを足止めしなきゃいけない。オールマイト・・・世界一強いであろう男さ」
「・・・大丈夫?」
そんなに強い人が来たら、殺されちゃうかもしれない。
まだ会ったばかりだけど、わたしはオール・フォー・ワンには死んでほしくない。
「大丈夫さ。僕はこう見えて、結構強いんだぜ?」
そう言うとオール・フォー・ワンは、泥から出てきた人の内、黒い靄みたいなのが出てる人へ指を伸ばし、突き刺した。
「ちょっと・・・!?」
「大丈夫、個性を発動させるだけさ」
靄が広がり、大きな穴のようになる。
あそこに入れればいいんだろう。
「さあ、行くんだ骸」
「・・・わかった。気をつけて」
オール・フォー・ワンに背を向け、騒いでる人達の所に駆け寄る。
体に手をいっぱいくっつけてる人は、オール・フォー・ワンと何か話しているみたいだ。
「お嬢ちゃんは・・・さっきパイプ仮面と話してた・・・」
「なんだよその格好!いいセンスだ!」
「わたしは骸。オール・フォー・ワンが、みんなを助けてあげてって。この服はさっき貰ったんだよ」
「そうか・・・。色々丸見えだからとりあえずボタンはしようなっ!?」
仮面の人がサングラスの人に叩かれた。
「早く──」
悪寒。
何か、とんでもないものがやって来た。
わたしを簡単に殺せる、そんな何かが。
「来た!来ちゃった!早く逃げよう、早く早く早くっ!」
「ちょっ、おい!まだコマが──」
「いいから早くっ!」
腕を変形させてみんなを掴み、靄に飛び込む。
オール・フォー・ワンの方をチラッと見ると、筋肉ムキムキの人と戦っていた。
「先生!俺、まだ──」
「弔、君は戦いを続けろ」
そしてわたし達は、どこかの部屋に転移した。
骸ちゃんの基本情報
・享年6歳。親の個性が良さげなやつだったのでオール・フォー・ワンが目をつけていたが、とある事件によって死亡したため遺体を回収。個性を調べると思ってたのと違ったため、脳無の素材とした。
・ヒーロー達に拘束された際、なんかバグって起動。生命の危機が迫ったことで秘められた力的なのが解放され、骸ちゃんが爆誕した。
・身長は低い。
・今持っている個性は『超再生』『身体変形』『死体融合』。
『死体融合』は、生前持っていた個性『融合』がバグって変化
した結果発現。