脳無(幼女)のヴィランアカデミア   作:殻木の弟子

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原作より公安の非人道度が上昇しています。
注意してください。


第10話

「ほら、座って座って」

 

レディ・ナガンをクッションに座らせ、わたしはベッドの上に腰かける。

 

あの後、レディ・ナガンだけ脳無に乗せて、タルタロスから連れ出した。

他の囚人はどうしたかって?

もちろんわたしが全部食べたよ。

 

「確かこのボタンを・・・」

 

カメラを起動し、配信(・・)を開始する。

 

今、わたしとレディ・ナガンがいるのは、新拠点にあるわたしの部屋だ。

ベッドとテレビと、後はレトロなゲーム機がいっぱい置いてある。

 

「・・・で?私に何の用事があるんだ?」

 

「ふふっ、ちょっと聞きたいことがあってね・・・。合川(つむぎ)って女の人、知ってる?」

 

「・・・聞いたことのない名前だな」

 

ふむふむ。

やっぱり素性は知らされないまま、ただ殺すように言われただけっぽいね。

 

本当に酷い奴らだよ、公安は。

 

「写真も持ってるんだけど・・・見たことないかな、この人」

 

「・・・ああ、知っている。かなり前に殺した女性だ。確か、ヒーローの情報を(ヴィラン)に流していたとかだったかな」

 

「ほうほう。公安はそういう手段も使っちゃうわけね・・・」

 

「・・・どういう事だ?」

 

ナガンが首を傾げる。

 

「・・・公安は、『ヒーロー社会の維持』を目的にしてる。ナガンにやらせてたみたいに、都合の悪い奴らは消しちゃうのさ」

 

そう。

『都合が悪い奴ら』だ。

『悪い奴ら』じゃない。

 

「ナガンが殺してきた中には、不正やマッチポンプを仕組んだヒーローとかもいたんでしょ?」

 

「・・・ああ」

 

「その事実を、ジャーナリストが掴んだら。それを世間に公表したりしようとしたら、公安はどうすると思う(・・・・・・・)?」

 

「・・・まさか」

 

ナガンの顔が青褪める。

 

そりゃそうだよね。

自分が殺したのが、不正したやつでも敵予備軍でもなんでもない、ただの民間人(・・・・・・)なんだから。

 

「・・・ナガンは悪くないよ。悪いのは命令した公安で、ナガンはなんにも知らなかったんだからさ」

 

「・・・」

 

下を向いたまま固まるナガン。

 

「ジャーナリストだったんだ、フリーの。偶然、ヒーローの不正の証拠を掴んだらしくて、それを公表しようとして・・・」

 

「・・・公安に、目をつけられたのか」

 

ナガンがポツリと呟いた。

 

「そう。この人、殺されるちょっと前に子供を産んでてさ。後から夫が子育てで苦労したらしいよ〜」

 

まあ、それも子供が5歳になるまでの話だったんだけど。

 

「子供が5歳の頃、強盗殺人事件に巻き込まれて親子一緒に死んじゃったんだけど・・・その話についてはこの動画をどうぞ!」

 

荼毘の動画のうち、わたしに関係ある部分だけ流して聞かせる。

 

 

 

 

 

「・・・これでわたしからの話はおしまい。次はナガンのお話を聞かせて?」

 

「・・・何を話せばいい。暗殺を命令した当時の公安委員長は、もう私が殺したぞ」

 

「あー、違う違う。復讐の相手を探すためとかじゃなく、昔の仕事の話が聞きたいの」

 

公安の悪行をバラすなら、わたしや荼毘が言うより、実際にそれをやらされてたナガンの口からの方が効果的だろうからね。

 

「・・・そうか。長い話になるだろうが・・・聞いてくれるか?」

 

「うん、もちろん!」

 

 

 

 

 

「・・・で、私はタルタロスにぶち込まれたってわけだ」

 

「なるほど・・・。やっぱりひどい連中だ、公安は」

 

ナガンの一件で学習して・・・いや、学習はしてないか、同じようなことをホークスでやったわけだし。

 

反乱を起こさない、自分達にもっと都合の良い駒を作っただけだね。

 

「さーて、この辺で配信はおしまい。近々最終決戦(・・・・)も配信する予定だから、ぜひ見てね!」

 

カメラの電源を切り、配信を終了する。

 

「さて、配信も終わったことだし・・・」

 

「私を殺すか・・・?ふっ、当然だな」

 

ナガンはもう・・・なんというか目が死んでる。

 

「いや・・・普通に宴会するけど・・・一緒に食べよ?」

 

「・・・っ!」

 

下を向き、黙り込むナガン。

 

「・・・ナガン?早く食べにいこう」

 

「・・・なんでだ」

 

「?」

 

「私はっ!」

 

ナガンが立ち上がり、私の肩をガシッと掴む。

 

「お前の母親を、殺しちまったんだぞ!?なのに・・・なんで・・・」

 

そう言ってナガンは、床に座り込んだ。

 

う〜ん、そんなに気にしなくてもいいと思うんだけどな。

ナガンだって、やりたくてやったわけじゃないだろうしね。

 

「わたしは『骸』であって、『合川重』じゃない。『合川紡』も、わたしにとっては会ったこともない他人だし」

 

わたしの素材の母親とか、わたしにとってはどうでもいい。

合川紡からしてみれば、わたしは『娘の死体で作られた何か』みたいなものだろうしね。

 

「ナガンは今の社会、偽り(ハリボテ)の社会を壊したいんでしょ?じゃあ仲間じゃん!!」

 

地面に座り込むナガンに、わたしは手を差し伸べる。

 

偽り(ハリボテ)の社会も、ヒーロー共も、公安も・・・気に入らないものは全部壊せばいい。(ヴィラン)は自由なんだからさ!」

 

光輪をピカピカ輝かせ、ナガンに微笑みかける。

 

「さあ・・・わたし達と一緒に、全部壊そう」

 

忌まわしき過去も、グズグズ腐っていく現在(いま)も、希望の無い未来も。

全て壊して、殺してしまえ。

 

「そして、望み通りの世界を作る・・・。一緒に来て、ナガン」

 

わたし達が全て壊し、そして作り上げる。

古き世界の『骸』は、新たな世界の礎になる。

 

「・・・わかったよ。私は、お前について行く」

 

ナガンは、わたしの手を取った。

 


 

ナガンが超常解放戦線に加わった頃。

ヒーロー側は『最悪』としか言いようがない状況に陥っていた。

 

まず、襲撃作戦は完全に失敗。

多数のヒーローが命を落とす結果となり、犠牲者の中にはホークスなどのトップヒーローも数多くいた。

ただ、問題はそこではない。

雄英や士傑高校の学生にまで、多くの犠牲者が出てしまったのだ。

当然、『なぜ学生を参加させたのか』と批判が殺到し、マスコミは教師陣の判断を激しく非難した。

 

ヒーロー公安委員会は、さらに激しい非難を受けた。

荼毘の告発動画によって、『ヒーローの不祥事を隠蔽し続けていた』ことが露呈。

この内容だけでも猛烈に批判されていたが、ここで追い打ちをかけるように骸とナガンの配信が行われる。

『ヒーローに暗殺を行わせていた』だけでなく、『市民もターゲットにしていた』のだ。

当然国民は激怒し、公安に対して『過去の暗殺記録すべての公開』を求める暴動が起こった。

 

政府は公安に対応を求めたが、公安の状況も非常に悪い。

幹部はリ・デストロこと四ツ橋力也を拘束しようとして大半が死亡、他にも重症者が多数。

それだけの犠牲を払って拘束したのは、トゥワイスによって作られた偽物だった。

 

その混乱によって対応が遅れ、市民の暴動はさらに激しさを増していった。

 


 

「・・・なんか勝手に崩壊してない?」

 

今日もニュースは暴動の発生を報じ、政府と公安を批判している。

ヒーローも誹謗中傷を受けて、辞める人がどんどん増えてるみたいだね。

 

「無理矢理封じ込めていたものが解き放たれたんだ・・・反動も大きいさ」

 

テレビの画面を見つめ(・・・)、オール・フォー・ワンがニヤリと笑う。

 

「そういえば、この前渡したソフトどうだった?かっこよかったでしょ?」

 

大昔のゲームソフトに、めっちゃかっこいい魔王がいたんだよね。

オール・フォー・ワンは気に入ってくれたかな?

 

「ああ・・・楽しませてもらったよ。素晴らしいじゃないか、大魔王(・・・)

 

「そうでしょ〜!かっこいいよねゾー◯!」

 

いいよね◯ーマ。ザ・ラスボスって感じで。

 

「体の状態も万全だ・・・」

 

オール・フォー・ワンは、既に全盛期の体を取り戻している。

『OFA』を奪うための秘策(・・)も確保できた。

 

「さぁ・・・全てを奪いに行こうか」




骸ちゃんはオール・フォー・ワンにド◯クエⅢをプレイさせました。
その結果、オール・フォー・ワンは『大魔王』に憧れています。


次回はヒーロー側にいる誰かさんの視点です。
ヒント 裏切り者
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