脳無(幼女)のヴィランアカデミア 作:殻木の弟子
本作も次回で終わります。
超常解放戦線への襲撃作戦から1ヶ月後。
今、世界は大混乱に陥っている。
作戦に参加していた生徒が数多く犠牲になったため、雄英は世間から猛バッシングを受け、根津校長は辞職。
公安の非人道的行為が公開されたことにより、市民による“公安狩り”が起こって、公安委員の家族まで殺される事態へとエスカレートしている。
襲撃作戦では、僕達1年A組からも犠牲者が出た。
最前線にいた、常闇くんと上鳴くんだ。
この事態を受け、政府は雄英の無期限閉鎖を宣言。
僕達は実家へ帰ることになり、僕達の“ヒーローアカデミア”は、あっさりと終わりを迎えた。
雄英の寮から家に帰ったとき、パパンとママンは僕が無事だったことを喜び、抱きしめてくれた。
でも、常闇くんと上鳴くんの両親はどうだろうか?
考えるだけで胸が苦しくなる。
これからどうなるのだろうか?
ニュースでは、各国のトップヒーローがオール・フォー・ワン達に次々と殺害されていると報じている。
ヒーローは超常解放戦線によって狩られ、守るべき市民に非難され、辞めていく。
当然、治安はどんどん悪くなる。
「はぁ・・・」
もし、内通していることがバレたら。
オール・フォー・ワンに『用済みだ』と判断されたら。
どちらでも、僕達は終わりだ。
公安委員のように市民によって殺されるか、オール・フォー・ワンによって殺されるかの差でしかない。
『そう悲観することはないよ、青山優雅くん。僕が君と君のご両親の身の安全を保証しよう』
「!」
『今夜、君の所へ会いに行く。と言っても、夢の中での話だけどね』
なぜ敵であるオール・フォー・ワンと、平然と会話をしているのかって?
それは、僕、青山優雅が雄英に潜んでいた内通者──クズの
「やあ、青山優雅くん」
眠りにつくと同時に、僕の意識は何も無い平原に飛ばされた。
ここはオール・フォー・ワンの部下の個性によって作られた夢の中の世界らしく、僕も何度か招かれたことがある。
「ご両親は元気かい?」
「えぇ、まあ・・・」
数多くいるオール・フォー・ワンの協力者の中でも、僕は『素晴らしい働きをした』らしく、南国のとある無人島とそこにある豪邸をプレゼントされた。
敵の活動が活発化し、日本も治安が悪化してきたため、僕達は今そこで生活している。
「今日は君に、改めてお礼を言おうと思ってね。君の『素晴らしい働き』について・・・ね」
「!」
オール・フォー・ワンの言う『素晴らしい働き』が具体的に何を指すのか、この時僕はまだ知らなかった。
・・・知らないままでいた方が幸せだっただろう。
「おいで、骸」
オール・フォー・ワンが呼びかけると、上空から翼の生えた少女が降りてきた。
彼女の可愛らしい顔と頭上に浮かぶ輪っかによって、まるで天使が降りてきたかのように見える。
「へぇ・・・こいつがオール・フォー・ワンの言ってた内通者?」
しかし、彼女もまた凶悪な敵。
確か、街をいくつも吹き飛ばし、虐殺を繰り広げたと報道されていて──上鳴くんと常闇くんを殺した敵だ。
「紹介しよう、彼女は骸だ。元々ただの脳無だったが、偶然覚醒した──君のおかげでね」
「・・・え?」
どういうことだろう。
僕は彼女に会ったことは──
「彼女が覚醒したのは、神野区でヒーローに襲撃された時なんだ。もし、爆豪勝己の拉致に成功していなければ──
そう考えるとゾッとするよ、とオール・フォー・ワンは言う。
「骸がいなければ、ヒーロー側の戦力をここまで削ることはできなかっただろうし、何より──」
オール・フォー・ワンが顔を覆っているマスクを外す。
「──僕が
マスクの下の素顔は、神野区の中継で見たのっぺらぼうではなく、白い髪の青年だった。
「ありがとう、青山優雅くん。君のおかげで、僕の長年の夢が叶うよ」
「あ、あぁ・・・」
僕のせいだ。
僕のせいで、僕の渡した情報のせいで、凶悪な敵が誕生した。
その敵によってオール・フォー・ワンは力を取り戻し、多くの人が亡くなった。
上鳴くんも、常闇くんも死んだ。
たくさん、たくさんの人が死んだ。
全部、僕の流した情報から・・・。
「誇ると良い、青山優雅くん。君はヒーロー社会を崩壊させるきっかけを作ったんだ」
「・・・」
オール・フォー・ワンはニヤニヤと笑みを浮かべて言う。
「君は間違いなく・・・超一流のトップ
1週間後。
「あの青山とか言うやつ、死んだよ。首を吊ったらしいね」
罪の意識に耐えきれなかった、というやつだろう。
わたしが覚醒したのは、どちらかと言えば現場のヒーロー達の対応が問題だった気がするけど・・・そんなことを彼は知らなかっただろうからね。
「そうか・・・フフフ、オールマイトはこれを知ったら悲しむだろうね」
「怒る可能性もあるよ?・・・まあ、無個性の死にぞこないが怒ったところで、何の役にも立たないだろうけどさ」
オールマイト・・・八木典俊はもはや、何の力も持たない人間。
オール・フォー・ワンは、八木典俊の大切なものを全て奪おうとしているんだ。
「奴の教え子達の家は特定できた。いつでも行けるよ?」
「よし、それじゃあ早速・・・『
「お、出てきた出てきた」
双眼鏡で緑谷出久の家を監視していると、母親の緑谷引子が玄関から出てきた。
どうやら食料を買いに行くらしい。
「『眠り香』+『空気操作』・・・」
家から少し離れ、人目がない道に来たあたりで、個性を使って眠らせる。
「ふむ・・・それはミッドナイトの個性だね。傷を負わせず相手を無力化できるというのは、やはり便利だ」
わたし的には、もっと致命的なダメージを簡単に与えられる個性が欲しい。
死体でも個性を奪えるからね。
「う〜んと・・・『放電』」
威力を控えめにして体内に電気を流し、心臓を止める。
もちろん、この女は死んだ。
「吸収して・・・部分顕現!」
死体を吸収し、もう一度体外へ出現させる。
わたしの操り人形として。
「ふふっ、すごいでしょ!電気系の個性を使って筋肉を刺激して、喋らせることもできるんだよ!」
「我々は宇宙人だー」と、人形に喋らせてみる。
「ほう・・・中々精度がいいね。すごいじゃないか」
「えへへ~!それじゃ、『OFA』を回収しちゃおうか!」
「
「・・・え?荷物なんて──」
「『麻痺毒』」
緑谷の言葉は途中で遮られ、困惑した表情のまま意識を失った。
かわいそうに、戦うこともできないなんて。
「ふふっ、あっけなかったね」
「いいや、本番はここからだよ」
意識を失った緑谷を家の中に引っ張って運ぶ。
「それじゃあ、頑張ってね!」
ここから先は、わたしが見つけた『秘策』で解決する。
「いざ!『感情爆発』!!」
個性には色んな種類のものがある。
便利なものもあれば、とても限定的な使い道しかないものも。
もっと最悪なのは、デメリットしかない個性だ。
例えば、イモムシの異形型。
モゾモゾと這い回ることしかできず、体が簡単に潰れる。
『機械が勝手に壊れる』だけの個性もあったね。
『感情爆発』も、そんなデメリットだけの個性だった。
周りにいる人の感情を増幅・強化し、極端なものにしてしまうんだよね。
この個性のせいで、彼は幼少期から虐待を受け、周辺でやたらと事件が発生するようになった。
そのせいで彼は『疫病神』と呼ばれ、次第に社会から排除されていった。
最終的に彼は殺人教唆やらなんやらで捕まり、タルタロスに収監されていたわけだけど、実はそれらは公安がでっち上げた罪だったんだ。
『生きていることが社会の害になる』けど、本人に罪は無い。
だったら、罪を押し付けて閉じ込めよう。
都合の悪い奴は殺すか隔離してきたんだよね、公安は。
『個性社会の闇』ってやつだね。
話が逸れちゃったけど、わたしが目をつけたのは『想いを強化する』という部分。
『OFA』を奪うには強い意志力が必要らしいんだけど、オール・フォー・ワンの弟への『愛』を増幅させれば、きっと奪えるはずだ。
「がんばれ、オール・フォー・ワン・・・!」
ようやく、僕の長年の目的が達成される。
弔を使って奪う計画だったが、骸によってその必要はなくなった。
必要なのは、『
「僕の下へ帰ってこい、与一!!」
「フフフ・・・ハハハハッ!」
ついに、全てを取り戻した。
「おはよー、オール・フォー・ワン。その様子だと、成功したみたいだね?」
「あぁ・・・無事回収できたよ」
中期目標は達成した。
あとは最終目標・・・すなわち、
「世界を我が手に」
オール・フォー・ワン大勝利!希望の未来へレディGO!!
かわいそうな青山優雅・・・ひとえにテメェが情報を流したせいだが
次回で最終回です。
ヒーロー社会も何もかもおしまいです。
お楽しみに。