脳無(幼女)のヴィランアカデミア 作:殻木の弟子
骸ちゃん(の素材)が死んだ理由が明らかに・・・。
「や、やめてくだ――」
メシャリ。
「・・・『骨刃』か。なかなか面白い個性」
入手した個性を確認し、手についた血を服に拭う。
死穢八斎會を皆殺しにしてからしばらく経ったけど、わたしは戦力拡大と資金稼ぎを続けている。
何度かヒーローにも出会ったけど、全員問題無く殺した。
「お金も結構貯まったし、弔達に届けに行こうかな・・・」
1ヵ月以上連絡がないんだけど、捕まってたりしないよね・・・?
「えーっと、新しい拠点は確か・・・っ!?」
突然、わたしの口から泥が溢れ出す。
なにこれ?
「ゴボゴボ・・・(攻撃じゃない?)」
毒でもないっぽいし、近くに人影はない。
どんどん湧き出る泥は、そのままわたしの全身を包み込んだ。
「・・・どこ、ここ?」
泥が消えると、わたしは研究所のような場所にいた。
周りの水槽には、脳無がたくさん浮かんでいる。
「ようこそ、ワシの研究所へ・・・。歓迎するぞ、
「わぁ、悪の科学者っぽい」
「お前を実験台にしてグッチャグチャにしてやる!」とか言われるのかと思ったら。
わたしは普通に歓迎されていた。
「ほうほう、死体を吸収できる個性とな・・・。さらに体の構造まで大きく変化していると来た!実に面白いのう!」
このおじいさん・・・ドクターは、わたしを含む脳無達を作り上げた人らしい。
わたしは本来、中〜下位の脳無であったらしく、明確な意識を持ったり喋ったりするはずはないとのこと。
「極限状態で生存本能が刺激されたか・・・にしても珍しい事例じゃ!」
と、ドクターはこんな調子でずっとハイテンションである。
「あ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なんじゃ?」
「わたしの素材って、なんで死んだの?」
わたしには脳無になる前の記憶がない。
知ったところでどうにかなるものではないが、ちょっと気になる。
「ふむ・・・ちょっと待っとれ」
奥に引っ込んでいったドクターは、3分くらいして何枚かの紙を持って帰ってきた。
「これじゃな。おまえさんの素体は、とある
『・・・ただいま、電話に出ることができません。ピーっと鳴りましたら、お名前とご要件を――』
「チッ、出ねぇぞ」
骸が殻木に会っている頃、死柄木達
「まさか骸ちゃん、ヒーローに捕まったのか!?」
「ないだろ・・・エンデヴァーとイレイザーヘッドを個性なしで相手できる奴だぞ。電波がない所にいるだけだろ」
このとき、骸は殻木と共に地下施設にいたため、電話が繋がらなかったのである。
「しょうがねぇ・・・ドクター、荼毘の居場所は?」
『ええい、ちょっと待っとれ!ったく、今良いところじゃったのに・・・。三重と滋賀の県境じゃ!』
「いいとこ居やがる・・・よし。転送頼むぜ、行くぞ」
『はいはいわかった、さっさと行って来い!』
殻木は骸の体を解析したくてウズウズしているため、対応が雑であった。
「――と、そんな感じじゃな。こいつがおまえさんの素体を殺さなければ、ワシもこんな特異体に出会えんかった・・・感謝せねばならんの!」
「ふーん・・・。やっぱりヒーローとか公安ってクソだね」
なんというか、間接的にヒーローに殺されたようなものだった。
哀れ、生前のわたし。
「そんなことよりもじゃ!サンプルを、サンプルを採らせてくれ!」
「いいよー。どのくらい?腕一本?」
「それだけあれば十分じゃ!」
自分の左腕をもぎ取り、ドクターに渡す。
するとドクターは、「うっひょ~」とか言いながら奥に引っ込んで行った。
「・・・ちょっとー。弔達の所に送ってくれない?」
「おお、すまんすまん。忘れとったわ」
ドクターが返事をした直後、また口から泥が溢れ出す。
「ゴボゴボ〜(またこれか〜)」
そしてわたしは、再び泥に包まれた。
「・・・あ。骸に死柄木達の現状を説明するのを忘れとったのう・・・まあ良いか!そんなことよりこれの解析を!!」
もちろん全然良くなかったので、殻木は後で骸にチョップを食らう羽目になるのだが、それはまた別のお話。
泥が消えた後、わたしがいたのは見知らぬ町の中だった。
「・・・また知らない場所だ」
ま、いいか。
ここがどこだろうと、やることは変わらないからね。
「弔達はどこか・・・な?」
濃厚な血の匂いがする。
しかも、見知った人物の血だ。
「・・・トガ?」
わたしは、匂いがする方向へ走り出した。
「うわぁぁぁぁ・・・あ?」
俺とトガちゃんに襲いかかってきた『俺』達が、一瞬でミンチになった。
「・・・トゥワイス、これはどういう状況」
ものすごく冷たい声で話しかけてきたのは、さっきまでいなかった骸ちゃん。
「骸ちゃん!なんでここに――」
「今それはどうでもいい」
そう言って骸ちゃんは、トガちゃんに右手で触れた。
すると、トガちゃんの体から傷が消え、それが骸ちゃんに移っていく。
「この傷は・・・内側からやられてる?陰湿な個性」
あっという間に傷を治した骸ちゃんは、再びこっちを見て言った。
「これをやったのはどこのどいつ?全部殺す」
「異能解放軍とか言う奴らですっ!」
パッと見てわかるくらいブチギレている様子の骸ちゃんに、俺は思わず敬語で返事をした。
「ふーん。ところで・・・前から気になってたんだけど、なんで自分を増やさないの?」
「・・・その、もしかしたら、俺が分身かもしれないと思って・・・。怖いんだ、自分を増やすのが」
骸ちゃんは納得したような顔をして、手をポンと叩いた。
「ふーん、なるほど。でも、そういうことなら安心していいよ?ここにいるトゥワイスが確実に本体だから」
「・・・どうして断言できる?」
俺が増やした分身は、見た目も身体能力も本体と全く同じだ。
見分けるには、ダメージを与えてみるしかない。
「わたしは『耐久知覚』って言う個性を持ってる。普通の人の耐久は2000〜3000くらいで、今のトゥワイスは耐久4000。分身の耐久は1000より少なかったから、絶対本物だよ。断言する」
「・・・よ、よかった~」
ホッと胸を撫で下ろす。
少なくとも、俺が怪我して消滅する可能性はなくなったわけだ。
「それに、本物かどうかなんて、どうでもいいことじゃない?」
「えぇ・・・?」
「大事なのは意思だよ、意思。例えコピーでも、動く死体でも、自分で『こうしたい』って意思を持っているなら本物だよ」
作られた命だとしてもね、と骸ちゃんは言う。
「そう・・・だよな。別に俺がコピーでも、俺は、仲間を・・・」
「ほら、ブツブツ言ってないでさっさと戦う!また偽物がきてるよ」
骸ちゃんが指差す方向には、こちらへ走ってくる偽物が。
「へっ・・・もうそんなの意味ねえぜ。俺は、仲間を守る!!」
俺はもう、ビビらない。
例え俺がコピーでも、俺は自分の居場所を、仲間を守るだけだ!
「個性『二倍』の恐ろしさ、思い知れや解放軍!!」
「・・・不快」
わたしは今、とても怒っている。
ブチギレている。
「なんで連絡しないの?」
なぜ、緊急事態なのに連絡しないのか。
連絡してくれれば、世界中どこにいても30分以内に合流するのに。
「・・・なんでこんなしょうもない連中が?」
時代遅れの革命家気取りの分際で、わたしの仲間を傷付けるとは。
百万回死ね。
内臓を引きずり出して、生きたまま1つづつ潰してやる。
「皆殺しだ!」
『肉体変形』+『肥大化』+『骨刃』!
向かってくるゴミどもを串刺しにし、即座に死体を吸収する。
「・・・あの炎、荼毘かな」
町中で広がる蒼炎の方向にわたしは向かった。
「異能の強さ以外に、生の価値はない」
「そう。じゃあ、お前の価値はわたしより下だね」
『肉体変形』+『冷却』×4!
『肉体変形』で腕を伸ばし、ベラベラ喋っていたフードの奴の右腕を掴む。
「!?」
すぐに払い除けられたけど、効果はすぐに現れた。
「グァッ・・・」
苦しげに呻き、右腕を押さえるフードの奴。
「『冷却』でその腕を−100度くらいまで冷やしたからね。『氷』の個性を持ってる体でも、その温度は耐えられないでしょ?」
「貴様っ!」
こちらへ飛んでくる氷をはたき落とし、今度は相手の顔を掴む。
「お前の個性・・・ああ、“異能”って言うんだっけ?ちゃんと貰っておいてあげるよ」
頭を掴んでいる右腕に力を込め、氷の像になったフードの奴を粉々に砕く。
「自分で氷は出せないのか・・・。微妙に使い勝手悪くない?」
バラバラに砕けた死体を吸収し、わたしは荼毘の前に降り立った。
「なんでわたしを呼ばないの?電話すればすぐ行くのに」
「電話はした。お前が電波の届かない場所にいたんだろ」
「何?そんな・・・ことは・・・」
・・・あるかも。
さっきまで、地下施設っぽい所にいたし。
「・・・ドクターはそんなこと言ってなかった」
「あー。貴重なサンプルを目の前にして、その他のことが頭から抜けてたんじゃねえのか?」
あいつ、後でぶん殴る。
「・・・ゴホン。それはともかく、なんで戦闘になってるの?」
「義爛・・・俺達を死柄木に紹介したやつが人質にされた上に、『ヒーロー達に居場所を通報する』と脅してきやがった。それで仕方なく戦いに来たわけだ」
「なるほど。それは皆殺ししかないね」
人質にされるということは、義爛という人は敵連合の構成員もしくは協力者的な存在。
つまり仲間ということ。
わたしの仲間に手を出すやつは皆殺しだ。
「事情を聞かなくても皆殺しにする気だっただろ」
「まあね・・・じゃあ、その義爛って人を助けに行ってくるよ。その人の見た目は?」
「右前歯が欠けた白髪のおっさん」
「そう。じゃあ、行ってくる」
バゴン!
「何だ!?」
「・・・来たか」
大きな音を立てて、タワーの外壁が破壊される。
「どうも。あなたが義爛?」
ガラスをぶち破って現れたのは、5歳くらいの少女だった。
「ようこそ。私は異能解ほ「うるさい死ね」
少女はリ・デストロを蹴り飛ばし、俺を横抱きにしてタワーから飛び出した。
「うおぉぉっ!?」
「口を閉じたほうがいい。虫が入る」
少女は、俺を抱えたまま民家の上に着地した。
「めちゃくちゃなことするな・・・。お前さんが骸か?分倍河原達から話は聞いてるよ」
「ぶばいがわら・・・トゥワイスのこと?」
「「「「そうだ!!」」」
「うおっ、ビックリしたぁ!」
増殖した分倍河原が一斉に返事をする。
いつの間にかトラウマは克服したらしい。
「義爛の怪我は治しておいたから、わたしは雑魚を皆殺しにしてくるね」
「マジかよ・・・指も全部生えてるじゃねえか」
切り落とされた右手の指も、いつの間にか元通りになっている。
降りてくる間に治したのか・・・。
「ここは任せたよ、トゥワイス」
「「「「「おう、任せとけ!!!」」」」」
「いくらでも湧いてくる・・・鬱陶しい」
『筋力増強』+『肥大化』+『肉体変形』+『骨刃』+『触腕』!
『触腕』で6本に増やした腕を強化し、『骨刃』を展開。
高速で振り回し、建物ごと解放軍を薙ぎ払う。
「この程度、何匹来ても・・・?」
なんだ、この音?
巨大な何かが走ってくるような・・・。
「・・・なに、あれ」
音のする方向に目をやると、巨人が全てを薙ぎ倒しながらやって来た。
「「「おいおい、相手になってねぇじゃんかよ!解放軍!」」」
「・・・あれは?」
近くにいたトゥワイス達に、巨人の正体を尋ねる。
「あいつはギガントマキアだ!屈服させるためにボコボコにしろって言われたんだが・・・無理だろ!」
「なるほど・・・って、今度は何!?」
町の中心部から轟音が響き渡り、建物が次々と崩れていく。
「あれは・・・弔の個性?」
あんな大規模を崩せるものだったかな・・・まあ、わたしの知らない内に特訓でもしたんでしょ。
「あれ?なんだろ」
スマホが振動している。
「もしもし?」
『あー、荼毘だ。死柄木が勝ったぞ』
弔は勝ったらしい。
相手のリーダーはさっきのハゲかな?
「ふーん。あんな大技食らったら、まあ相手も降参するだろうね」
あとは残党狩りだね。
『ただ勝っただけじゃない。異能解放軍が傘下に入るらしいぞ』
「えっ」
さっきまで殺し合いをしてたのに、どうしてそうなったわけ?
さらば外典。
お前の個性は、骸ちゃんが活用してくれる・・・かもね。
『耐久知覚』は、物や生物の耐久値がHPみたいな感じで見える個性です。
骸ちゃん(の素材)を殺した強盗殺人犯・・・腕から羽が生えてたらしいよ。