脳無(幼女)のヴィランアカデミア 作:殻木の弟子
ご注意を。
「これは・・・閉じ込められたのか!」
群訝山荘側に襲撃をかけたヒーロー達は、大混乱に陥っていた。
捕縛した超常解放戦線の構成員は全て偽物。
さらに、山荘を中心として展開されたバリアにより、ヒーロー達は閉じ込められたのだ。
「本物はどこに・・・っ!?」
轟音を立てて山荘が崩壊し、土煙が辺りに立ち込める。
「ようこそ。わざわざこっちに来てくれてありがとう」
土煙の向こうから現れた集団。
それは、解放戦線の幹部達だった。
集団の最前列にいる少女・・・骸は、何かを引きずりながら歩いている。
「スパイが役立たずだったばっかりに・・・かわいそう」
「・・・!」
ヒーロー達は、骸が足を掴んで引きずっているのが、赤い翼を持った人間だと気付いた。
「お前達は、わたしの餌。全員今から喰われるよ・・・」
そう言うと、骸はホークスを右手で持ち上げ──一気に吸収した。
ヒーローが事態を飲み込む前に、あっさりと。
「こんなふうにね」
それを見ていたヒーロー達は、激しく動揺する。
No.2ヒーローが、あっさりと殺されたのだから当然である。
「ホー・・・クス・・・?」
黒い鳥のような頭をした少年・・・常闇踏陰は、呆然と立ち尽くしている。
死んだのか?
ホークスが?
あんな簡単に?
骸の姿が変化し、背中から一対の翼が生える。
ただ、それはホークスのような赤い翼ではなく、真っ白な翼だ。
「みんな、準備はいい?」
解放戦線メンバーが戦闘態勢に入る。
コピーとの戦闘で疲弊したヒーロー側に対し、解放戦線側は万全の状態。
さらに、トゥワイスが健在。
「蹂躙せよ」
「「「オォォォォーッ!!!」」」
これより始まるのは戦闘ではない。
ただの虐殺である。
「『肉体変形』+『触腕』+『筋力増強』+『蛇』!」
『触腕』で増やした腕を巨大な蛇に変える。
正直に言うと『蛇』を使う必要性は全く無いんだけど、かっこいいからいいよね!
「『閃光』×8+『レンズ』×5!」
さらに、増やした蛇の口へレンズを作り、レーザー砲にする。
このレーザーは、回避も防御も不可能。
文字通り『必殺技』だけど、わたしにとっては通常攻撃だ。
「ふふふ・・・」
レーザーを高速で連射すると、それは地形も貫通し、次々にヒーローを消し飛ばす。
「さらに・・・『分裂』+『反射』」
蛇になった腕が破裂し、その残骸がレーザーを反射していく。
めちゃくちゃに反射してるように見えるかもしれないけど、全部わたしの計算通りに動いている。
「避けられるものなら、避けてみろ!」
「よーし、行ってこい!」
トゥワイスによって、次々複製される解放戦線幹部達。
耐久力は本体より低くなるが、その攻撃性能は全く劣化していない。
「「「制圧放電 雷網!!」」」
「ゴハッ・・・」
莫大な電力で放たれた雷撃は、一撃で数十名の命を奪った。
「ぎゃあぁぁぁっ!」
ガスマスクの男が放った炎は、一瞬で人を炭に変えた。
個性・・・『異能』の鍛錬をずっと重ねてきた彼らの技術が、無限に複製され襲い掛かってくるという悪夢。
それに呆気なく殺されていくヒーロー達だったが、それはトップヒーロー達でも例外ではない。
「忍法 千枚通し!!」
エッジショットが荼毘の体を貫くが、それは一瞬で崩れ落ち、泥となる。
「残念、ハズレだ」
エッジショットの周囲360°が、増殖した荼毘で埋め尽くされる。
「しまっ・・・」
「「「燃えろ」」」
全ての荼毘が一斉に火を放つ。
回避不能、通り抜けられる火力でもない。
「ちょっと焼き過ぎたか・・・?まあいいか」
後に残ったのは、真っ黒に炭化した死体だけだった。
「ぬうっ!」
迫りくるコピーの群れに対し、セメントスはコンクリートの波を操り対応する。
しかし──
「ほい圧縮!」
触れた部分を『圧縮』し、Mr.コンプレスはそれを簡単に突破する。
「くっ・・・」
いくら壁を作っても、コンクリートで固めて拘束しようと、複製され続けるコンプレスの前には成すすべがない。
次第に状況は悪くなっていく。
「そらよっと!」
コンプレスが大きな布を取り出し、セメントスに向かって放り投げる。
「・・・!?」
セメントスが布を払い除けると、そこにコンプレスの姿はない。
「視線誘導・・・手品の基本だぜ?」
いつの間にか接近していたコンプレスが、セメントスの肩に触れる。
それと同時にセメントスの上半身が『圧縮』され、残った下半身は血を噴き出して倒れた。
「ウルシ鎖牢!」
コピー達を拘束していくシンリンカムイ。
相手が攻撃を仕掛ける前に、相手を拘束・無力化していく。
「・・・ぬん!」
しかし所詮木は木に過ぎず、圧倒的な暴力の前には無意味である。
「ストレス75%・・・」
自らを縛る木を引き千切り、リ・デストロが立ち上がる。
「消えろ」
その拳がシンリンカムイに迫り・・・黒い鎧に阻まれた。
「助かりました!」
「コピーはしっかり消しておけ!耐久は低い、小突く程度で十分だ!」
シンリンカムイの窮地を救ったのは、No.9ヒーロー、ヨロイムシャだった。
「・・・不愉快」
リ・デストロの体がさらに盛り上がり、両手に黒いオーラを纏う。
「我が異能の極北・・・その身で受けろ!」
「いかん!回避を──」
周りのヒーロー達に回避するよう叫ぶが、時既に遅し。
「解放100%・・・負荷塊」
圧倒的な力の奔流が、ヨロイムシャと周りのヒーローを巻き込み、跡形もなく消し去った。
「ヨロイムシャさ──」
シンリンカムイの頭部に、複数のナイフが突き刺さる。
「ぐぁ・・・」
「それって中身はどうなってるんですか・・・?切ってみればわかりますけど」
『変身』で姿を変え、気配を消して接近していたトガが、シンリンカムイに馬乗りになり、ナイフを突き立てる。
何度も、何度も何度も何度も。
「が・・・あ・・・」
ビクビクと痙攣していたシンリンカムイだが、やがて動かなくなった。
「へぇ・・・ちゃんと血は流れてるんですね!」
ナイフに付いた血を啜り、トガヒミコはニッコリ笑った。
トップヒーローでさえも、次々と殺されていく。
戦っているのはトゥワイスの作ったコピー達であるため、解放戦線幹部の本体は傷1つ負っていない。
「駄目だぁ・・・勝てねぇ・・・」
「くそっ、一時退却を!」
逃げ出そうとする一部のヒーロー達。
市民を守るために日夜戦っているとはいえ、実際に死の危険が目前に迫った時、命を投げ捨てられる者はそれほど多くはないのだ。
「こ、これを壊せば!」
しかし、バリアがそれを許さない。
「壊れろ!壊れろ!壊れろってんだよぉッ!」
「ちくしょう、なんで壊れねぇんだ!!」
「出せよ!ここから出してくれぇぇぇっ!」
泣きながらバリアを叩くヒーロー達。
それを背後から襲撃する者がいた。
「おら、粛清!!」
「ぎゃあっ!?」
泣き喚くヒーローを斬りつけたのは、大剣を持った男・・・スピナーだ。
「怖気づいて逃げ出そうとするなんてな・・・。そんなもんは『本物』じゃねぇ!」
「あがっ!」
腰を抜かし、這いつくばって逃げるヒーロー達を、スピナーは大剣で斬り裂いていく。
その姿は、まるで処刑人のようであった。
「お前らみてぇな偽物は・・・粛清対象だ!!」
「お〜い、骸ちゃ〜ん!死体全部集め終わったよー!」
こちらに手を振るトゥワイスの背後には、積み上げられた死体の山が。
黒焦げになった死体、穴だらけの死体、ぐちゃぐちゃのミンチになった死体。
色んな死体がそこにはあった。
戦闘開始から約30分、わたし達はバリア内にいたヒーローの殲滅を完了した。
わたし達の損害は・・・群訝山荘が跡形もなくなったくらいかな。
「じゃあ、さっさと食べちゃおう。『肥大化』」
背中から生えた『剛翼』を大きくして、死体の山を包み込む。
翼に触れた部分から、死体が一気に吸収されていく。
「あぁ・・・良い!とっても気分が良い!!」
わたしの中に、膨大な力が流れ込んでくる。
こんなにたくさん一気に吸収したことはなかったから、初めての感覚だ。
「お・・・。なんか頭の上が面白いことになってるな」
「え?」
荼毘に言われて頭の上に手をやるけど、何にもない。
「これで見てみてください」
トガが渡してきた手鏡を覗いてみると、わたしの頭上に
「えっなにこれ」
頭の上に、ピカピカ輝きながら浮かんでいる。
手で触れられないし、熱も感じない。
「取り込んだやつの個性かな・・・なんか消えないし」
ふむふむ。
どうやら、この個性は『加護』というらしい。
「むむむ・・・」
輪に意識を集中させると、光の輪が輝きを増した。
「うおっ、眩し!」
「わぁ・・・骸ちゃん、天使みたいですね!」
天使・・・天使か。
「ねぇねぇトゥワイス、ちょっと地面をパンチしてみて」
「えっ!?」
「大丈夫、殴ってみれば分かるよ」
トゥワイスが恐る恐る地面にパンチする。
ドゴン!
「うおっ!?」
物凄い音と一緒に、地面にヒビが入った。
「この個性は『加護』っていうやつで、輪っかから出る光を浴びた人にわたしの『身体能力』をちょっと分けられるらしいよ」
わたしはこう見えて身体能力がめっちゃ高いから、トゥワイスにもすごいパワーが宿ったってわけだね。
「えぇ・・・強くね?」
「元の持ち主は大してパワーがなかったみたいだし・・・宝の持ち腐れだね」
見た目もかっこいいし、これは出したままでいいかな。
「さて・・・。こっちは片付いたし、次の段階に進もう」
ヒーローの戦力を大幅に削った今、作戦の第1段階は完了した。
次は第2段階、市民へ大きな被害を出して、ヒーローへの信頼をぶち壊す。
「マキアは?」
「もうすぐ来るぜ・・・」
その直後、地面を突き破ってギガントマキアが現れる。
「いざ、主の下へ!!」
わたし以外のみんなは、マキアに乗って死柄木を回収し、第3段階の準備に向かう。
街を襲うのはわたしの役目だ。
「じゃあ、わたしは飛んで行くから。また後でね!」
「気をつけろよ骸ちゃ〜ん!」
トゥワイス達に手を振り、空へ飛び立つ。
大量殺戮はわたしの得意分野だ。
「おい、あれなんだと思う?」
「また
上空に巨大な『翼』を広げて飛ぶ存在を、市民はさして気にしていなかった。
まあ、気にしていたとしても、その正体に気付いたとしても、もはやどうしようもなかったのだが。
群訝山荘を後にした骸は、既に大阪上空まで到達していた。
「『閃光』×18+『レンズ』×7・・・。出力最大、照準ロック」
上空にて、骸は翼を展開する。
都市を、平穏を、そこにいる全ての命を終わらせるために。
「さぁ・・・死に絶えろ!!」
この日、大阪、京都、兵庫、和歌山に存在した複数の都市が、上空から降り注いだ光によって壊滅した。
各都市の80%以上が物理的に消滅し、多数の死者・行方不明者を出すとともに、莫大な額の経済損失が発生。
この大惨事を引き起こした敵を、現地にいた何人かの民間人が、吹き飛ばされる前にカメラで捉えており、インターネット上にその姿が拡散された。
巨大な白い翼を広げ、
その姿から彼女は、一部の者達から『神の遣い』や『終末を齎す者』として信仰されることとなった。
トゥワイスと骸ちゃんがいたら、まあこうなるよね・・・。
クラストが生き残ってるし、なんとか・・・ならんか。
骸ちゃんはマッハで飛ぶとか余裕です。
『閃光』によるレーザーの射程は流石に県を跨ぐレベルではないので、各県に飛んでいって都市を吹き飛ばしました。
次回、ダビダンス。