脳無(幼女)のヴィランアカデミア   作:殻木の弟子

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絶望は加速する。
混乱は拡大する。

そして文量がどんどん増える。


第8話

「先生!」

 

イレイザーヘッドに攻撃を仕掛けた死柄木。

それを妨げたのは、緑谷出久だった。

 

「何で!」

 

「死柄木が個性を使えないなら、僕らも戦力に!!」

 

「なると思うか?」

 

死柄木は緑谷を投げ飛ばし、更に蹴りを入れる。

 

「ゴハッ・・・」

 

「骸より一撃が軽い・・・先生はなんでこれが欲しいんだ?」

 

『弟がそこに居る・・・だから必要だ』

 

死柄木が1人でブツブツと会話する。

意識が混同しているわけではなく、死柄木の中にオール・フォー・ワンの意識が独立して存在しているのだ。

 

「イレイザーヘッドは厄介だから消すが・・・『OFA』を奪うのは今じゃない。そうだろ?先生」

 

『ああ。骸の案(・・・)を採用することにした』

 

緑谷と爆豪の猛攻を涼しい顔で受け流し、オール・フォー・ワンと会話する死柄木。

 

「無視してんじゃねぇよ!!」

 

「・・・こんなの注意を傾けるまでも無い」

 

繰り出される爆撃を軽々と躱し、死柄木が爆豪の目の前に迫る。

 

「ごめん、君にもう興味ないんだわ」

 

「させん!!」

 

爆豪に迫った拳を、グラントリノが蹴って逸らす。

 

「ワラワラと湧いてくるなぁ・・・!」

 

一旦後ろに飛び退き、体勢を立て直す死柄木。

 

「赫灼熱拳 ヘルスパイダー!!」

 

そこに炎の網が襲いかかる。

 

「分かるだろエンデヴァー・・・オールマイトに勝てないおまえじゃ、俺に勝てないよ」

 

しかし死柄木は右腕を振るい、それを簡単に吹き飛ばす。

 

「くっ・・・!?」

 

猛烈な風圧に耐え、その場で踏ん張るヒーロー達。

 

パンチ一発で天候を変える男に近い身体能力。

個性を使えずとも、ヒーロー達を圧倒するには十分だ。

 

「終わりだ、ヒーロー」

 

笑みを浮かべ、エンデヴァー達にそう告げる死柄木。

その体に傷はなく、表情には余裕が浮かんでいる。

 

「ハァ、ハァ・・・」

 

それに相対するエンデヴァーの表情は苦しげで、立っているのがやっとという様子。

全身の至る所から出血しており、どう見てもこれ以上戦える状況ではない。

 

「ハァ・・・ハァ・・・。いくら、力を得ようとも・・・っ!!信念無き破壊に我らが屈することはない!!」

 

「強がるなよヒーロー。もう立っているのがやっとだろう?それに、俺達にも信念はあるんだぜ」

 

笑みを浮かべたまま、死柄木は話し始める。

 

ヒーロー(おまえたち)は、社会を守るフリをしてきた。過去何世代も・・・守れなかったモノを見ないフリして、傷んだ上から蓋をして・・・浅ましくも築き上げてきた」

 

骸みたいな奴を無かったことにしてな、と死柄木は言う。

 

「・・・どういう意味だ!?」

 

「まぁ、それは後で分かるさ・・・続きと行こうか。傷んだのを放置したせいで、中身は腐って蛆が湧いた。小さな小さな積み重ねだよ、エンデヴァー」

 

「おまえたちの築いた全てが、俺たちを否定してきた」

 

「だから全部壊す。力を手に入れて、おまえたちの全てを否定してやる」

 

死柄木は笑みを深くし、大声で言う。

 

「理解できないだろう!?」

 

「それでいい」

 

「できないから、“ヒーロー”と“(ヴィラン)“だ!!」

 


 

「スケプティック、骸の方も(・・・・)映像は完成したか?」

 

「問題ない。例の内部データ(・・・・・)も準備は完了している」

 

街を破壊し、建物を吹き飛ばしながら直進するギガントマキアの上で、荼毘とスケプティックは話し込んでいる。

 

「加害者の息子と被害者が、ヒーローと敵として出会うとはな・・・面白いこともあるもんだぜ」

 

「おーい、何話してんだ?そろそろ着くぜ!」

 

トゥワイスが2人を呼びに来る。

 

「わかった・・・すぐ行く」

 

荼毘の正体が明らかになるまで、あと少し。

 


 

「うわぁ・・・。やっぱり『崩壊』ってすごい個性」

 

更地になった街の跡を見下ろしながら、わたしは弔の下に向かっていた。

 

「マキアは・・・もう来てるか」

 

わたしの斜め後ろ辺りに、建物を吹き飛ばしながら走る巨人が見える。

『大きい』というのは、それだけで脅威になるよね。

 

「・・・いた」

 

ヒーローと交戦する弔を見つけ、更に加速する。

 

「うわぁあああ!!」

 

「うるさい」

 

叫び声を上げながら弔に迫る緑髪を蹴り飛ばし、着地する。

 

「デク!!」

 

「早かったな・・・向こうは片付けたのか?」

 

「もちろん」

 

弔には傷一つなく、ダメージは見られない。

訓練の成果はあったみたいだね。

 

「・・・まだ生きてるじゃん、それ」

 

弔の足元に転がっていた、血塗れのおじいちゃんにとどめを刺して吸収する。

さっき手に入れた『影の化け物みたいなの(・・・・・・・・・・)を出す』個性、破壊力もだいぶあるみたいだね。

 

「『ジェット』・・・別にいらないかな」

 

「・・・貴様ぁっ!」

 

声がしたほうを見ると、見たことあるヒーローが。

 

「久しぶりだね、エンデヴァー。そっちのツンツン頭ははじめましてかな?」

 

「・・・てめェ」

 

ツンツン頭が、わたし・・・いや、わたしが出した『影』の個性を見ている。

 

「ん?これがどうかした?」

 

「どうしたもこうしたもあるか!そいつは鳥頭の・・・常闇の個性だろ!!てめェあいつに何しやがった!?」

 

鳥頭・・・一気に死体を吸収したから、どれのことかわかんないな。

一旦出して(・・・)みようかな?

 


 

「じゃあ、今日食べた連中を全部見せてあげる。その中に常闇って奴がいたなら、これはそいつの個性なんじゃないかな」

 

飛んできた女の子・・・骸は、翼を広げて空中に浮かんだ。

頭についた輪っかも相まって、天使のような外見だ。

 

でも、そんな僕の呑気な感想は、次の瞬間に吹き飛ばされることになる。

 

「部分解放・・・顕現せよ」

 

翼が一気に巨大化し、そこから大量の何か(・・)がぶら下げられる。

 

「・・・っ!!」

 

翼から吊り下げられたそれは、無数の死体だった。

黒焦げの死体、穴だらけの死体、頭が無い死体・・・。

 

その中には、見覚えのあるコスチュームの死体も沢山あって。

 

「わたしの個性は『死体融合』。文字通り、死体と自分を融合させる個性だよ・・・常闇って奴の死体は、ここにあるかな?」

 

「おまえっ/てめェッ!!!」

 

僕とかっちゃんは、同時に飛び出した。

 

「向かってくるんだ・・・雑魚のくせに」

 

骸がこちらに掌を向ける。

 

「挑発に乗るなっ!」

 

エンデヴァーが僕たちを掴み、骸から引き戻す。

吊り下げられた遺体に気を取られて気付かなかったけど、僕たちの真上に、巨人・・・ギガントマキアの腕が迫って来ていた。

 

「怒りに飲まれるな!!相手の思うツボだぞ!」

 

わかっている。

でも、クラスメートの無惨な死体を前にして、僕は冷静ではいられなかった。

 

「もう話は済んだ?なら、さっさと──」

 

その言葉は、死柄木達に放たれた氷に遮られた。

この個性は・・・!

 

「轟くん!」

 

「・・・おい。今のは、何だ?」

 

氷を放った轟くんの表情は、怒りで歪んでいた。

 

「?」

 

首を傾げる骸。

 

「あいつらに何したかって聞いてんだよ!!」

 

轟くんが再び骸に氷を放つが、それはギガントマキアの上から放たれた蒼炎に阻まれた。

 

「おーう、いたいた。こっから見るとどいつも小っさくて・・・焦凍もいることだし、ちょうどよかった」

 

「荼毘!!!」

 

乱入者を睨み、エンデヴァーが叫ぶ。

 

「酷えなァ・・・そんな名前で呼ばないでよ」

 

荼毘が頭に液体を振りかける。

 

「何してんだあいつ?」

 

「サプライズがあるとかなんとか・・・。映像も流してるらしいから、スケプティックに見せてもらおう。わたしも後半で出てくるらしいからさ」

 

そう言って、死柄木と骸はギガントマキアの上に飛び移った。

 

荼毘の髪の色が変わる。

黒から白へ。

 

「燈矢って、立派な名前があるんだから」

 


 

『僕、轟燈矢は、エンデヴァー家の長男として生まれました』

 

『今まで30人以上の罪なき人々を殺しました』

 

『僕が何故このような醜穢な所業に至ったか、皆に知ってもらいたい──』

 

スケプティックのパソコンに、動画が映し出されている。

 

「顔はこんななっちまったが・・・身内なら気付いてくれると思ったんだけどなぁ」

 

「でも俺は忘れなかった。言われなくてもずうっとお前を見ていた」

 

「皆が皆、清廉潔白であれとは言わない。お前だけだ」

 

荼毘のテンションが上がる。

エンデヴァーと轟焦凍は固まっている。

 

「事前に録画しておいた俺の身の上話プラスアルファ(・・・・・・・)が今、全国の電波とネットを走ってる!」

 

「いけねえ、なんだか愉しくなってきた!!」

 

荼毘のテンションがさらに上がり、踊り始める。

 

「ダンス上手くない?」

 

「意外な才能ですね・・・」

 

「今それどうでもよくねぇか!?」

 

騒ぎ立てる骸達とは対照的に、ヒーロー側は沈黙している。

 

死んだと思っていた息子が、兄が、実は生きていた。

凶悪な敵として、自分達の前に現れた。

その衝撃は計り知れない。

 

「どうしたらお前が苦しむか、人生を踏み躙れるか、あの日(・・・)以来ずぅぅぅぅぅぅぅっと考えた!」

 

「自分が何故存在するのか分からなくて、毎日夏くんに泣いて縋ってた事知らねぇだろ」

 

「最初は、おまえの人形の焦凍が大成した頃に、焦凍を殺そうと思ってた!」

 

「でも、期せずしておまえがNo.1に繰り上がって俺は!おまえを幸せにしてやりたくなった」

 

「・・・上げて落とすってやつね」

 

「上がれば上がるほど、落ちた時の落差は大きくなるからな・・・」

 

感心したように骸とMr.コンプレスが呟く。

 

「九州では死んじまわねえか肝を冷やした!」

 

「・・・さっき俺が殺してなくてラッキーだったな」

 

死柄木がボソッと呟く。

 

「『星のしもべ』や『エンディング』を誘導して、次々おまえにあてがった!!」

 

ダンスはどんどん激しくなっていき、荼毘はその場でくるくると回っている。

 

巡り、回るのだ。

悪意も、過ちも。

 

エンデヴァーの過去の過ちが、今、最悪の形で返ってきたのだ。

 

「念願のNo.1はさぞや気分が重かったろ!?」

 

「世間からの称賛に心が洗われただろう!?」

 

「子どもたちに向き合う時間は、“家族の絆”を感じさせただろう!!?」

 

「未来に目を向けていれば、正しくあれると思っただろう!!?」

 

「知らねェようだから教えてやるよ!!!」

 

荼毘がピタリとダンスをやめ、エンデヴァー達の方を向く。

 

「過去は消えない」

 

「ザ!!自業自得だぜ」

 

「さァ一緒に堕ちよう轟炎司!!」

 

地獄(こっち)息子(おれ)と踊ろうぜ!!!」

 

 

 

『──エンデヴァーに連なる者も同様です』

 

画面が切り替わり、ホークスの顔が映し出される。

 

『彼は公安所属のヒーローで、スパイとして僕らの中に潜入していました』

 

『さらに彼は僕らに取り入る為、あろうことか、No.3ヒーロー・・・ベストジーニストを殺害しています』

 

大きな袋に入れられたベストジーニストの姿が映し出される。

 

『暴力が生活の一部になってしまっているから、平然と実行できてしまう』

 

『彼にこれを命じたのは、ヒーロー公安委員会です』

 

『彼の父親は、連続強盗殺人犯・・・敵でした』

 

『公安はその息子であった彼・・・鷹見啓吾に目をつけ、汚れ仕事を押し付けるコマとして教育を施しました』

 

『さらに・・・彼の父が引き起こした1件目の事件。「ヒーローが到着した時には、親子が殺害されていた」とされていますが、真実は違います』

 

画面がさらに切り替わり、当時の新聞記事が映し出される。

そこには、犠牲になった親子の顔写真が掲載されていた。

 

『ヒーローが到着した時点では、この親子は生存していました。しかし、ヒーローが不必要に敵を刺激したことで、敵がヒーローを攻撃し・・・親子は巻き込まれて亡くなりました』

 

『ヒーロー公安委員会はこの事実を隠蔽。真実は闇に葬られました』

 

『さて・・・ここで被害者の子どもの写真を見てください』

 

被害者親子の内、幼い少女の方が拡大される。

 

『彼女の遺体はオール・フォー・ワンによって回収、蘇生されました。こうして誕生したのが、皆さんもよく知る敵、骸です』

 

笑顔を浮かべる骸の顔が映し出される。

その顔は、犠牲になった少女の顔と全く同じだった。

 

『このような隠蔽・改ざんを、ヒーロー公安委員会は平然と行ってきました』

 

『さらに、都合の悪い人間を殺害させ、自分達に都合の良い社会を作り上げています』

 

荼毘の顔がアップで映される。

 

『よく考えてほしい!彼らが守っているのは自分だ!皆さんの誰かが犠牲になったとしても、彼らはそれをなかったことにするでしょう!骸にそうしたように!』

 

 

 

「・・・え?これやばくね?」

 

「マジかよ・・・公安最低だな」

 

「陰謀論じゃなかったのか・・・」

 

市民の間に、混乱が広がる。

 

「あんな小さい子が、ヒーローのせいで・・・」

 

「他にも隠蔽された事件があるって言ってたよなぁ!じゃあ、俺の父ちゃんが敵に殺されたってのも・・・」

 

子どもがいる者は憤り、公安委員会・・・政府にも疑念を抱く。

 

憶測が憶測を呼び、インターネット上では情報が錯綜する。

混乱が拡大し、日本中を包みこんでいった。




荼毘とスケプティックは、骸(の素材)に起こった事件を利用し、公安委員会や現体制への疑念・不信感を向けさせることにしました。
結果は大成功。陰謀論者はウッキウキで活動し、警察への電話は鳴り止みません。

骸ちゃんがオール・フォー・ワンに提案した内容は、次回明らかになります。
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