Hedgehog in Borderland   作:M.T.

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遅れてごめんなさい。
別の小説書いてたのと、卒論で忙しかったので1日空いてしまいました。


たいざいいつかめ(1)

アリスside

 

 俺と女の子が同時にボタンを押した、その直後だった。

 『じんち』内にあったモニターがつく。

 

 

 

ーーー

 

こんぐらちゅれいしょん

 

げぇむ

『くりあ』

 

ーーー

 

 

 

 その画面を見た俺は、全身で息をしながら膝をついた。

 

「生きてる…オレはまだ生きてるぞ!!」

 

「ええ」

 

 俺が目に涙を浮かべながら生の喜びを噛み締めていると、女の子が微笑む。

 するとその時、レジから『びざ』が発行される。

 『びざ』とトランプを受け取った俺は、安堵のため息をつく。

 

「ありがとな。キミが来てくれなかったら、オレ達助からなかった…だけど…さっきの…あんな事になるなんて…いくら自分達が生き残る為とはいえ…オレは…『おに』を…()を…殺…」

 

 俺は、急に罪悪感が込み上げてきた。

 俺が『くりあ』したせいで、二人も死……

 

「あなたじゃないわ。ボタンを押したのは、()()よ。原因も責任もわからないものを、1人で背負う必要なんて無いわ」

 

 女の子がそう言ったその時、ヒヅルも『じんち』に入ってくる。

 

「そうだよ。そんな事言ったら、自分が生き残る為に『おに』のオッサン刺しまくったオレはどうなんの?」

 

 そう言ってヒヅルは、ナイフについた血を払う。

 コイツ…一人で二人の『おに』を足止めしてたのか…

 

「ヒヅル…お前…」

 

「何とか生きてるよ。ギリギリね」

 

 俺が声をかけると、ヒヅルは顔に返り血をつけたままピースサインをする。

 ヒヅルが『おに』を足止めしてくれなかったら、俺は『じんち』に入れなかった。

 ヒヅルにも感謝しなきゃな。

 

「ありがとう。オレ…アリス…有栖良平」

 

宇佐木(ウサギ)柚葉」

 

 俺とウサギが互いに名乗り合っていると、ヒヅルは自分の『びざ』を取って名乗る。

 

「ヒヅル。小鳥遊火鶴」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヘイジside

 

 俺は、『おに』を巻き込んで下に落ちて怪我をしたカルベを介抱した。

 

「大丈夫かカルベ」

 

「お前…銃持ってんだな…」

 

 カルベは、例のパーカーの男に話しかける。

 そういえば、何で拳銃なんか持ってたんだ…?

 

「まーね♪人に向けて撃ったのは初めてだけど」

 

「『げぇむ』の賞品ってのと関係でもあんのかよ。まぁいいや…んな事より…何でオレ達を助けた?」

 

「これはね、レースなんだ。『げぇむ』に勝つ為には、強い馬に賭けなくちゃ」

 

「賭け……?」

 

 賭け、だと…?

 俺は、どの『げぇむ』だって命懸けだった。

 『楽勝』なんて思った事は、一度もなかった。

 大切なものだって失った。

 それなのに、『賭け』だなんて…

 

「今回は君達に貸しを作っといたまでさ。オレの名は、苣屋駿太郎。この貸しは君達が、もう少しこの国を知った時に返してもらうよ♪」

 

「お前は…何を知ってんだ…?『今際の国』ってのは何なんだ!?オレ達は…元の世界に戻れるのか…!?」

 

 元の世界に戻れるのか。

 俺もそれは気になっていた。

 俺達は、元の世界に戻れるのか…?

 また、妹と一緒にいた頃の平穏な日常は帰ってくるのだろうか。

 俺が不安を顔に出すと、チシヤが口を開く。

 

「君達はどう思う?ここは見た通り未来の世界で、得体の知れない未来人の手中でオレ達の命は弄ばれている。これは単なる永い夢。案外、死とともに悪夢から目覚めていつもの暮らしに戻れるのかもしれない。あるいは、妄想と現実の区別がつかなくなったのか…宇宙人(エイリアン)の実験…仮想現実(バーチャルリアリティ)…オレはね、どれでもないと思ってる。オレ達は、迷い込んだだけなのさ。いつでもなければどこでもない。子供の頃に読んだ童話の世界にね。だったらこのオレが、著者の要求(ニーズ)に応える『主人公』になるまでの事♪主人公としての選択を間違えない者だけが、自ずと元の世界に戻れるのさ」

 

 主人公…か。

 俺達も、主人公としての資質を試されてる…?

 

「お前は…その選択を、知ってるのか…!?」

 

「悪いが情報はタダじゃない。ヒントくらいはあげてもいいけど。世界が静止しても、無線ってのは生きてるんだ。特に、タクシー無線の周波数なんかがオススメかもね♪」

 

 そう言ってチシヤは、どこかへと去っていった。

 すると、下の階にいたメガネの男と色黒の男が俺達のいる上の階に上がってきた。

 

「礼を言う。お前らのおかげで生き残れた」

 

「ああ…あのままアンタの言葉を無視して殺されてたらって思うと…ゾッとするよ」

 

「それはこっちのセリフだ。アンタらがオレの作戦に乗ってくれなきゃ、オレもカルベも助からなかった。ありがとう」

 

 俺とカルベは、『げぇむ』を生き残った二人と握手を交わした。

 その様子を、チシヤが遠目で見ていたような気もしたけど、気のせいだと思い直した。

 するとその直後、ヒヅルが上の階から降りてくる。

 

「おまた」

 

「ヒヅル…」

 

 ヒヅルは、俺に向かって軽く手を振った。

 そして♠︎の5のトランプと俺の分の『びざ』を手渡してくる。

 

「はいこれ。ヘイジの『びざ』」

 

「あ、ありがとう」

 

 ヒヅルの身体には、血がついていた。

 まさか、『おに』に遭遇して怪我をしたんじゃ…

 

「…ん?ああこれ?安心しなよ。これオレの血じゃないから」

 

「じゃあそれ…」

 

 まさか、『おに』の……

 

「細かい事はどうでもいいじゃん?行こうよ」

 

 そう言ってヒヅルは、先に1階へ降りていく。

 その一瞬、ヒヅルが俺に向けた目は、冷たく、深く、暗く、まるで水の底に沈んでいるように見えた。

 俺がアリスやカルべと一緒に1階に降りると、クリハラさんと、足を怪我した小柄な男の子…チョータと、付き添いのOL…シブキさんがマンションの外にいた。

 

「よーぅ、おかえりお前ら!!」

 

 クリハラさんは、ニカッと笑ってブンブンと勢いよく手を振ってくる。

 どうなってんだろう、この人のバイタリティ…

 なんて思っていると、クリハラさんは『おにごっこ』で怪我をしたカルベを指差す。

 

「あ゛っ!!テメェらまーた怪我人増やしやがって!!またオレが診ろってのか!?いいよ!!」

 

「いいのかよ…」

 

 クリハラさんが言うと、アリスと俺に支えられていたカルベがツッコミを入れる。

 俺達はひとまず、全員で生きて再会できた事を心の底から喜んだ。

 

「そうだ、ヒヅルにもちゃんと礼を言わねぇと。アイツが『おに』を足止めしてくれなかったら、『くりあ』できなかった」

 

「ああ…あれ?またいない…」

 

 アリスが言うと、俺はヒヅルを探すが、見渡した範囲にはヒヅルはいなかった。

 アイツ、マジでどこ行ったんだ…?

 『げぇむ』が始まる前もそうだけど、ちょっと目を離した隙にいなくなるからな…

 

「おっす」

 

 うわっ、ビックリした。

 ヌルッといなくなってヌルッと出てくるな、ホント。

 

「ヒヅル…お前、今までどこで何してたんだよ。先に降りてたんじゃなかったのか?」

 

 俺が尋ねると、ヒヅルはポケットに手を突っ込んで目を逸らす。

 

「…ちょっとね」

 

 『ちょっと』って…

 何があったんだよ。

 …いや、そんなの俺に教える義理なんかないか。

 そもそも、仲間だと思ってるのは俺だけだし。

 

「とりあえず、屋根があるとこにでも連れてってくれよ。話はそれからだ」

 

「そうね…」

 

 クリハラさんが言うと、シブキさんが仮宿の病院を案内してくれた。

 それから俺達は、病院に一緒に向かい、クリハラさんは病院にあった医療器具を使ってカルベの手当てをした。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

クリハラside

 

 俺は、病院の設備を使ってカルベの治療をした。

 電気は通ってねえけど、この程度の怪我なら難なく治せる。

 俺がカルベの治療とチョータの診療を終えて病室を出ると、外で待っていたシブキさんが俺に話しかける。

 

「…ありがとう。チョータ君とカルベ君を、助けてくれて」

 

「いいって事よ。おかげで、オレが本当にやりたかった事を思い出せたような気がしたわ」

 

 この国に来て、チョータを治して、ようやく思い出した。

 『笑顔で人を救う医者になる事』、それが俺の夢だ。

 俺がタバコの代わりにココアシガレットを咥えると、シブキさんが何かを言いたそうに視線を逸らす。

 

「どうしたシブキさん?」

 

「いや…ここまで何も見返りを要求されないなんて、逆に怖くて。てっきり、『身体で払え』とでも言われるのかと…」

 

 シブキさんは、気まずそうに言った。

 

 ………。

 

 ………。

 

 ………。

 

 ………チクショウ、その手があったか。

 

「がぁーーークソッ、その手があったか!!なあ、それ今からでもアリだったりしねえ?」

 

「ナシに決まってるでしょ!?」

 

「なあ、お願い!じゃあせめてパイズリだけでも!」

 

「ちょっと、やめてよ!土下座しないでよそんな事で!」

 

 俺は、土下座してシブキさんに頼み込んだ。

 クソッ、俺とした事が、一生の不覚…!!

 身体を要求しても良いんなら、最初からそうしとけば良かったぜ!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヘイジside

 

 俺は、アリスと一緒に病室の外で待っていた。

 するとアリスが、俺に話しかけてくる。

 

「なあ、ヘイジ。次の『げぇむ』は、アンタらも一緒に参加しないか?皆で一緒に生き残ろうぜ?」

 

 アリスは、俺に嬉しい提案をしてくれた。

 俺は正直、このままアリス達と一緒にいてもいいと思っていた。

 だけどその刹那、俺の脳裏にはニーナの亡骸が浮かぶ。

 

「…悪いけど、遠慮しておくよ。ある滞在者に、限られたイスを奪い合う『げぇむ』もあるって聞かされてる。もしそういう『げぇむ』に当たっちまった時、オレはアリスやカルベを殺したくない。そうじゃなくても、オレは…前の『げぇむ』で大切な人を守れなかった。誰かが死ぬとかそういうのは、これ以上、耐えられそうにねぇよ…」

 

「そっか…辛いな……」

 

 俺がニーナの事を話すと、アリスは悲しそうな表情を浮かべる。

 きっとアリスは、まだこの国に来たばかりで、大切な人を失った事がない。

 それでも俺の気持ちを理解しようとしてくれているあたり、いい奴だと思った。

 

「それに、オレは今、ある人を探してるんだ」

 

「ある人って…?」

 

「オレにこの世界の事を教えてくれた人だ。オレは、その人といつか生きて会う約束をしてる。…あっ、もしかしてだけど、会ってたりしないよな?」

 

「どんな人だ?」

 

「イバラって名前の女性だ。背が高くて、茶髪で、八重歯が生えてて…こんな感じの」

 

 俺は、持っていた紙にイバラの似顔絵を描いて見せた。

 かなり特徴的な見た目だったから、見た事があればすぐにピンと来るだろうと思った。

 だけど案の定、アリスはイバラの事を知らないみたいだった。

 

「いや…知らねぇな。そもそも、オレ達がこの国に来たの、昨日の事だし」

 

「だよなぁ」

 

 まあ、昨日この国に来て既に会ってたら逆にびっくりだわな。

 …にしても、こういうのってどうやって探せばいいんだろうか。

 『びざ』の残り日数にも気をつけたいし…人がたくさん集まってそうな場所とかに行けばいいのか?

 なんて考えていると、アリスが話しかけてくる。

 

「…なぁ。アンタは、何でヒヅルやクリハラさんと一緒に行動してるんだ?アンタにとって、あの二人は何なんだ?」

 

 ヒヅルとクリハラさん…か。

 少なくとも俺は、二人の事を仲間だと思いたい。

 だけど二人とも、『げぇむ』の内容によっちゃ俺を一切の躊躇なく切り捨てる、そのつもりでいるんだろうな。

 

 …正直、その方が気が楽だ。

 情が湧いちまったら…お互いにつらくなるだけだ。

 

「さぁ…何なんだろうな。少なくとも、アイツらにとっては『メリットがあるから生かし合ってる関係』だってさ。もし互いを蹴落とし合う『げぇむ』に当たった時は、相手を蹴落として自分が生き残る覚悟が、アイツらはとっくにできてる。オレは…アイツらみたいにはなれねぇよ」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヒヅルside

 

「…………」

 

 俺は、病院の屋上でぼんやりと空を眺めながら、さっきの『げぇむ』会場での出来事を思い出していた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 数時間前。

 俺はチシヤに呼び出されて、マンションの裏に向かった。

 

「やぁ」

 

 俺が来ると、チシヤは笑顔で手を振ってくる。

 

「やるじゃん、一人で『おに』二人を足止めするなんて。道理で中学生が生き残ってるわけだ」

 

「どーも」

 

「君、元の世界で何やってた人?」

 

「ただの中学生。父親がちょっとした有名人だけど」

 

 俺が自分を親指で指しながら答えると、チシヤが話しかけてくる。

 

「君、泊まるとこあるの?」

 

「無いよ。ちょっとずつ移動してる。その方がこの国の事色々知れそうだし」

 

「ちゃんとしたとこあるけど、ついて来る?」

 

 ちゃんとしたとこ、かぁ。

 まあ野宿よかマシだけど…俺人多いとこ苦手なんだよね。

 つーか、オッサン(クリハラ)怪我人(チョータ)OL(シブキ)のとこいるし。

 

「…悪いけど、遠慮しとく。知らない大人に一人でついていくなって()()()()に言われてるから」

 

「ふぅん。だったら場所のヒントだけ教えておくよ。気が向いたら、()()()()も連れてそこに向かうといい。『答え』が見つかるかもよ」

 

 そう言ってチシヤは、俺に折り畳んだ紙を渡してきた。

 紙を開くと、そこには地図が描かれていた。

 

「『ビーチ』で待ってる」

 

 そう言ってチシヤは、ヒラヒラと手を振ってどこかへ消えた。

 …いや、この地図、目印が書かれてないんだけど。

 地図だけ渡されても、目印書いてなかったら意味ないじゃん。

 あ、もしかして、自分で探して来てみろって事?

 めんどくさっ。

 

「んー…」

 

 とりあえず、明日オッサンに話してみよっかな。

 アイツ使えるから、しばらくは一緒にいるつもりだし。

 それにしても、『ビーチ』か…

 なんか変な宗教勧誘とかじゃないといいけど。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヘイジside

 

 夕飯の支度ができたので、俺はヒヅルを呼びに行った。

 

「おーい、ヒヅルー!…ったく、どこ行っちまったんだよアイツ…」

 

 俺は、病院内を歩き回ってヒヅルを探した。

 ようやく、人の気配がありそうな部屋を見つけて、その部屋のドアを開ける。

 

「ヒヅル、いるなら返事―」

 

 俺が病室のドアを開けると、信じがたい光景が目に飛び込んできた。

 そこには、濡羽色のショートヘアを風に靡かせた、上半身裸の女の子がいた。

 日本人離れした紅い瞳を持った猫みたいに大きくて丸めのツリ目に、小さな鼻と口が特徴的な、絶世という言葉が似合う美少女だ。

 小柄でありながら出るところは出ていて、身体は引き締まっていて、抜群のスタイルをしている。

 肌は透き通るように白くて、まるで陶器でできた人形みたいだ。

 

 女の子は、ちょうど胸のサラシを外しているところだった。

 月明かりで照らされて、女の子の姿がハッキリと目に映る。

 神秘的な光景に、俺は思わず目を奪われた。

 だけど女の子がこちらを振り向くと、我に返って慌てて物陰に隠れた。

 

「わっ、ご、ごめん!」

 

 俺は思わず、咄嗟に謝りながら隠れた。

 

 …最低だ。

 ()()()()()()()

 何やってんだ俺は…ニーナというものがありながら…!

 

 ………つーか…今の、ヒヅルだよな?

 

 背丈とか服とか同じだったし、絶対そうだ。

 でもアレ、完全に女だったよな…?

 

 えっ…マジ?

 アイツ、女だったの…?

 ずっと男だと思ってたよ…

 

 俺は混乱しながらも、物陰に隠れたまま股間を両手で押さえつけて、乱れる心を必死に落ち着かせた。

 すると、着替え終わったヒヅルが部屋から出てくる。

 

「……何」

 

「あ…いや、飯できたから呼びに来たんだけど…」

 

「わかった。行く」

 

 俺が声をかけると、ヒヅルは何ともない表情で先に歩く。

 どことは言わないけどちゃんと立派なものが服の上からでも確認できて、さっきのが見間違いじゃなかった事を再認識させられる。

 

 ……気まずい。

 というかヒヅル、何でそんな何でもありませんみたいな態度できるんだよ。

 男に裸見られたんだから、もっと動揺するなり…普通そういうのあるだろ。

 俺は頬を掻きながら、明後日の方向に視線を向けて口を開く。

 

「…ヒヅル。お前、女の子だったんだな」

 

「うん」

 

「今日一番の衝撃だよ」

 

「別に隠してるつもりなかったんだけど。男だと言った事は一度もないし」

 

 言われてみればそうだ。

 確かに、俺が勝手に男子だと思い込んでただけだ。

 でも、普通男子だって思うだろ…

 一人称『オレ』だし、『♠︎(すぺえど)』の『げぇむ』難なく生き残ってるし。

 

「いや、そうだけど…じゃあ何で自分の事『オレ』って言ってたんだよ」

 

「『わたし』だと3文字で長いじゃん」

 

 えぇ…そんな理由かよ。

 2文字も3文字も大して変わらないだろ別に。

 

「…何でサラシ巻いてたの?」

 

「走ると揺れて痛いから」

 

 あぁ、うん。

 それに関してはごめん。

 変な事聞いた。

 

「というか、みんなオレの事男だと思ってたんだね。道理で会話が噛み合わないと思った」

 

 …うん。

 今思えば、何で『おにごっこ』の『るうる』説明の時ヒヅルが黙ってトイレに行ったのか理解できた。

 そりゃあ、男にはいちいちトイレ行くとか言いづらいよな。

 年頃の女の子なんだし。

 

「…まあでも、男扱いされてた方が気は楽かな。変な奴が寄ってこないし」

 

 ヒヅルは、自嘲気味に言った。

 …もしかして、昔何かあったのか?

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 夕飯を食べ終わった後、クリハラさんにその話をしたら、クリハラさんに笑われた。

 

「マジかよ…ヘイジ君、今まで気付いてなかったの?」

 

「クリハラさんは気付いてたのか」

 

「何年医者やってると思ってんだ。言っておくが、オレは一眼見ただけで相手のスリーサイズを当てられるんだぜ?へへっ、どうだ羨ましいだろ」

 

「きも」

 

 クリハラさんが指で丸を作って覗き込むような仕草をすると、ヒヅルが凍りつくような視線をクリハラさんに向けながら口を開く。

 

「…まあオレは、てっきりヒヅルちゃんが男のフリをしてるものだと思ってたわけだが?」

 

 クリハラさんは、ヘラッと笑いながら言った。

 あ、だから『ボウズ』って言ってたのか。

 …俺、仲間の事知った気になってたけど、何も知らなかったな、マジで。

 

 ……そうだ。

 俺は何も知らないんだ。

 二日間一緒に過ごしてきた、コイツらの事を。

 

「…なあ。そういえば、前々から聞こうと思ってたんだけどさ。クリハラさんとヒヅルがこの世界に来て初めて『くりあ』した『げぇむ』って、どんな『げぇむ』だったんだ?」

 

 俺は改めて、クリハラさんとヒヅルに尋ねる。

 するとクリハラさんが、ポツポツと話し始めた。

 

「…そうだなぁ。じゃあまずオレから話すか」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

クリハラside

 

 俺がこの国に迷い込んだのは、11日前の事だ。

 俺は、医療ミスの冤罪を着せられて医師免許を剥奪されて、路頭に迷いに迷って、闇医者に手を染めた。

 だが悪党を食い物にして違法な治療行為をしているうちに、だんだんと何の為に生きてるのかわからなくなっていった。

 ただ笑顔で人を救う医者を目指していたはずなのに、憧れからどんどん遠ざかっていく自分を嫌いになっていった。

 だから俺は、願ったんだ。

 

 できる事なら、全部リセットしてしまいたい。

 ここじゃない、どこか別の国に行きたい。

 

 俺が花火を見たのは、ちょうど手術を終えて家に帰ろうとしていた時だ。

 花火の眩しい光に包まれて、俺の意識は途絶えた。

 

 そこからは、お前らも知っての通りさ。

 いつの間にかこの国に迷い込んで、街をウロチョロしているうちに、明かりがついたビルに導かれるように入っていって、わけわからねえまま『げぇむ』に参加しちまった。

 俺が迷い込んだ『げぇむ』会場は、学習塾だった。

 俺の他には4人の滞在者が既に会場にいて、全員『げぇむ』経験者だった。

 俺達が案内通りに学習塾に入ると、塾に設置されていたモニターがつく。

 

 

 

ーーー

 

エントリー数 1人ずつ

 

制限時間 5時間

 

賞品 オイルランプ

 

難易度 ♢9(だいやのきゅう)

 

ーーー

 

 

 

「『♢9(だいやのきゅう)』…」

 

「あのオッサン、初っ端からこの難易度とか…死んだな」

 

 あの時は何を言っているのかよくわからなかったが、他の参加者は俺を馬鹿にしたように笑っていた。

 俺は、少しムッとしたのを堪えて、他の参加者と同じようにブースに入った。

 俺が入ったブースには、将棋盤と将棋駒が置かれたデスクが設置されていて、空席の反対側には若い女が座っていた。

 

「はじめまして。よろしくお願いします」

 

「あ、ああ…」

 

 俺の反対側に座っていた女は、律儀に頭を下げてきた。

 結構カワイイ顔してるな、と思ったが、ブースの壁には白杖が立てかけてあった。

 おそらく目が不自由なんだろうと思った。

 だがそれよりもっと気になったのは、女の首に縄が巻かれている事だ。

 何かのドッキリか?と思いつつも椅子に座ると、俺の椅子の真上から縄が降りてきて、俺の首に縄がかかった。

 

「うわっ!?何だこれ!?」

 

 俺が驚くと、女が笑った。

 

「その反応…『げぇむ』は初めてですか?」

 

「『げぇむ』…?何なんだよ、そりゃあ?」

 

 俺が口を開いた直後、ブース内に設置されたモニターがつく。

 

 

 

ーーー

 

げぇむ 『しょうぎ』

 

るうる

 

・参加者は、挑戦者と対戦者に分かれて、全員一斉に対局を行うこと

・対戦ブース内の対戦者と対局し、最初に勝った挑戦者は『げぇむくりあ』

・挑戦者が『げぇむおおばぁ』となる条件は以下の場合です

 ・対戦者に負けた場合

 ・他の挑戦者が『げぇむくりあ』した場合

 ・制限時間内に決着がつかなかった場合

  この場合は、挑戦者・対戦者両者とも『げぇむおおばぁ』

 ・反則行為が認められた場合

・どちらかが玉を取った時点で決着とします

 それ以外の方法での決着は認められません

 

ーーー

 

 

 

 俺は、『るうる』を見ても、いまいち『げぇむ』の事が理解できなかった。

 初心者用にご丁寧にルールブックまで用意してあったが、『げぇむ』の『るうる』はさっぱりだった。

 対戦相手の女に聞くのが一番早いと思って、遠慮なく聞いた。

 

「なぁ…この『げぇむ』ってのは何なんだ?『げぇむおおばぁ』になったらどうなる?」

 

「あなた、将棋を指した事は?」

 

「おい、勝手に進めるんじゃねえよ。『げぇむ』って何なんだ」

 

「まず私の質問に答えて下さい。将棋を指した事はありますか?」

 

 この女、俺が質問に答えるまで同じ問答を繰り返す気か。

 俺は呆れつつも、ため息をついて答える。

 

「…あるよ」

 

「だったら、説明は要りませんね?大丈夫ですよ、普通に指せばいいだけですから。詳しい話は指しながらしましょう?」

 

 そう言って女は、将棋盤に駒を並べる。

 

「これ、どっちが先攻とかどうやって決めるんだ」

 

「あなたが先攻でどうぞ?私は後攻で構いませんので」

 

「…チッ、舐めやがって」

 

 俺がこの世界に迷い込んでまだ時間が浅いからって下に見やがって、と心の中で悪態をついた。

 するとその直後、ブース内に設置されたスピーカーからアナウンスが鳴った。

 

《先攻・後攻が決まったら、先攻が『げぇむすたあと』と宣言して対局を始めて下さい》

 

「…『げぇむすたあと』だ」

 

 俺の宣言と同時に、対局が始まった。

 

《▲7六歩》

 

 俺が駒を動かすと、機械音声が流れる。

 …なるほどね、目が見えない女との対局を公平にする為か。

 

 対局して、俺はすぐに驚く事になった。

 俺の対戦相手の女は、洒落にならないくらい強かった。

 

「あら…あなた、なかなかやりますね。油断していると足元掬われかねませんね」

 

「ガキん頃からジジィに仕込まれてるオレを舐めんじゃねえよ。…まぁ、結局勝ち逃げされちまったけどな」

 

 俺は、昔ジジィと将棋を指した事を思い出しながら、女と将棋を指した。

 まあ結局、俺が一勝もできねぇままジジィはくたばっちまったんだがな。

 

「そういえば…自己紹介がまだでしたね。私は王馬(おうま)歩美(アユミ)といいます」

 

 王馬…

 この女、アレか。

 元竜王の王馬竜玄の娘か。

 なるほど、道理で強えわけだ。

 

「…栗原鳳正だ」

 

「そう…クリハラさんですか。ひとつアドバイスをしておきましょう。この国で長生きしたいなら、タバコはやめた方がいいですよ。この国では、身体が資本ですから」

 

 アユミという女は、対局中に鼻をすんっと鳴らしながら言った。

 余計なお世話だ、と思いながら取った駒を打とうとした、その時だった。

 隣のブースから、叫び声が聴こえてきた。

 声が聴こえた方を振り向くと、磨りガラス越しで顔は見えなかったが、隣のブースで誰かが首を吊っているのが見えた。

 …きっと、俺と一緒に参加した参加者だ、そう思った。

 

「何だ…!?」

 

「隣のブースの挑戦者が負けたみたいですね。気にせず続けましょう」

 

「おい、『げぇむおおばぁ』になったらマジで人が死ぬのか…!?」

 

「ええそうですよ。あなたも私に負ければ『げぇむおおばぁ』…同じ目に遭います。…さ、あなたの番ですよ」

 

「ふざけやがって…!!」

 

 負けたら絞首刑だと…!?

 ふざけんじゃねえ、俺はあんな目に遭ってたまるか…!

 

 …なんて、思っていた時もあったさ。

 俺以外の挑戦者は、俺の決着を待たずに全員対戦者に負けて首を吊って死んだ。

 気がつけば、生き残っている挑戦者は俺だけになっていた。

 俺は、対局を続けているうちに、ふとある可能性が頭を過った。

 

「……なぁ、さっき、『負ければ『げぇむおおばぁ』』っつってたよな」

 

「はい。言いましたが」

 

「それってさ…アンタにも同じ事が言えるんじゃねえのか?」

 

「…………」

 

「黙ってねぇで答えろよ。アンタも俺に負けたら、首吊られて死ぬんじゃねえのか?」

 

 俺が尋ねると、アユミは躊躇なく盤上に置きながら口を開く。

 

「…そうですよ。だから何です?お互い、自分が生き残る為に勝ちに行く。それだけですよ」

 

「……そうかよ」

 

 アユミの言葉を聞いて、俺は決心した。

 あと二、三手もあれば、アユミは俺から玉を取れる。

 だがもう、これ以上勝負を引き延ばすつもりはなかった。

 何故ならもう、俺の中では勝負は決まっていたのだから。

 

「…………投了する。オレの負けだ」

 

「…え?」

 

 俺は、決着を待たずに降参した。

 俺にはもう、勝って生き残る気なんかさらさらなかった。

 

「アンタは、『自分が生き残る為に勝ちに行く』って言ったな。でも、オレは違う。オレは、アンタを殺してまで生きたくなんかない。オレは、今まで散々悪事に手を染めてきた。人を笑顔で助けたかったはずなのに、どんどん理想から離れていくテメェが嫌で仕方ねぇんだ。医療業界じゃ、『トリアージ』って言葉がある。緊急度や重症度に応じて患者の治療優先度を決める事だ。…誰かを犠牲にしなきゃ助からねぇってんなら、助かるべきなのは、どう考えてもオレじゃねぇよ」

 

 俺は今まで、違法な治療行為をする為に臓器売買やら違法薬物の取引やらに加担してきた。

 もしここで絞首刑になったとしても、それは自業自得だ。

 だが、アユミは違う。

 ただこの世界に迷い込んじまっただけの、未来ある若者だ。

 どっちが生き残るべきかなんて、考えるまでもない。

 俺は、『げぇむ』から降りてアユミを生かす事にした。

 

「…って、オレが負けを認めても、アンタがトドメを刺さなきゃ決着はつかないんだったな。見ての通り、オレはもう勝つ気はさらさら無えからさっさとトドメを刺してくれ」

 

「嫌です」

 

「何が嫌なんだ。あと少しで、アンタはオレに勝って生き残れるんだぞ」

 

「あなたが真剣に勝負してくれるまで、指しません」

 

 アユミは、意地でも俺が真剣勝負をするまで指さないつもりだった。

 俺は、いてもたってもいられなくなって、アユミに向かって叫んだ。

 

「何でだよ…オレはもう、生き残る気なんかこれっぽっちも無えんだよ!このまま時間が過ぎれば、アンタまで死ぬんだぞ!?負け逃げなんか許さねえってか!?生き残る事より、意地が大事かよ!?」

 

「…そうよ。私は、私の生き方も、死に方も、全部自分で決める。この世界に迷い込んだ時から、ずっと決めてた事よ。あなたの情けで引き延ばす命なんて、ゴミも同然。そんなもの、こっちから願い下げよ」

 

 俺が問いかけると、アユミは真剣な表情を浮かべて答えた。

 この女は、あくまでも自分の理想に生きて理想に死ぬつもりだった。

 青臭くて馬鹿げていると思った。

 

「…要するに、オレはもう生き残る気は毛頭無いわけだが、それでもアンタを殺す気で真剣勝負をしろと?」

 

「はい」

 

 俺の馬鹿げた質問に、アユミは真剣な表情で答えた。

 真性の馬鹿だ、と思った。

 だがそれと同時に、俺が今まで出会った中で一番気高く、美しい女だとも思った。

 

「ははっ…アンタ、バカだろ」

 

「よく言われます」

 

「いいね。惚れちまいそうなくらい良い女だぜ」

 

 俺が言うと、アユミは笑顔を浮かべながら駒を指した。

 俺とアユミは、その後も制限時間ギリギリまで対局を続けた。

 アユミは元々俺が今まで対局した誰よりも強かったが、俺との対局の中でさらに成長し続けていた。

 俺も、脳細胞にトップギアを入れ、手数を重ねるごとに戦略を練り続けた。

 

「…なぁ。アユミ」

 

「何ですか」

 

「オレが勝ったら、ヤらせてくんねぇ?…って、一人しか生き残れない『るうる』だから無理か」

 

 俺は、駒を指しながら冗談を言った。

 せめて対局中は、死の恐怖を忘れていたかった。

 するとアユミは、まるで子供のように無邪気な笑顔を浮かべながら言った。

 

「良いですよ。あなた程の人なら、喜んで受け入れます。まあ、私に勝ったらの話ですけど」

 

「ははっ、やっぱりアンタ、本当に良い女だね。その約束、忘れんなよ?」

 

「…ええ」

 

 俺が念を押すと、アユミが小さく頷く。

 アユミの頬は、心なしかほんのりと染まっているように見えた。

 

「ちなみに、アンタが勝ったらオレに何を望む?」

 

「もう一局お願いします」

 

「ははは、アンタならそう言うと思ったよ」

 

 アユミが言うと、俺は思わず笑みをこぼした。

 どっちかが死ぬんだから約束なんて無意味、なんて野暮な話は無しだ。

 俺は、この対局が終わればどっちかが死ぬなんて事もすっかり忘れて、ただ純粋にアユミと駒を指し合った。

 そしてとうとう、決着がついた。

 

「…悪いな。これで詰みだ」

 

「……参りました。私の負けです」

 

 俺がアユミの玉を取り、アユミが首を垂れた。

 こうして、対局が終わった。

 玉を取るまでに指したのは118手、決着がついたのは制限時間の5秒前だった。

 

《第三ブース、終局。勝者、クリハラ様。対局時間4時間59分55秒。『こんぐらちゅれいしょん』。『げぇむくりあ』》

 

 …ふぅ。

 ギリギリだったが、なんとか勝てた。

 

「クリハラさん。ありがとうございました。最期にあなた程の猛者と戦えて、私は満足です」

 

 アユミは、笑顔を浮かべながら頭を下げた。

 

《挑戦者側に『げぇむくりあ』となった参加者がおられます。よって、対戦者側は『げぇむおおばぁ』》

 

 …やっぱり、敗者が死ぬシステムだったか。

 しかも俺がクリアしたら、他のブースの奴等まで死ぬ…

 アユミも、別の『るうる』で『げぇむ』に参加させられてた参加者だったんだな。

 

「…ひとつだけ、心残りがあるとするなら…あなたの顔を、見てみたかった」

 

 そう言ってアユミは、涙を流しながら微笑んだ。

 その直後、アユミの首に巻かれた縄が引っ張られ、アユミは宙吊りになる。

 窒息死か、縄を引っ張られた衝撃で頸椎を骨折したのか、アユミは首を吊ったまま動かなくなった。

 ブースに置かれていたレジからは、俺の『びざ』と♢の9のトランプが発行された。

 

「……何だよ。ここで死ぬつもりだったのに…結局、オレが生き残っちまったじゃねぇかよ…」

 

 俺は、視界がぼやけて目から温かいものが流れるのを感じながら、この世界の不条理さを恨んだ。

 もしカミサマなんてもんがこの世にいるんだとしたら、唾を吐きかけてやりたい気分だった。

 生きる価値が無い奴を生かして、生きる価値がある奴を殺した。

 とんだクソ野郎だ。

 

 俺にはもう、この国で生きていく気力なんかなかった。

 日の当たらない場所で虫螻みてぇに蹲って、ただ『びざ』切れを待つ身となった。

 

 

 

「俺の命も、あと6時間…か」

 

 あと少しで、クソみてぇな人生から解放される。

 そう思ってたのに、気が付けば次の『げぇむ』会場にいた。

 俺が次に参加したのは『♠︎A(すぺえどのえぇす)』、『げぇむ』の内容は『しゃとるらん』だった。

 普段の運動不足が祟って、俺は体力が尽きて途中で転んだ。

 

「おいバカ!!何やってんだ!!走れ!!」

 

 既に走り終わった奴が安全地帯から叫んできたが、俺にはもう立ち上がる体力も気力もなかった。

 やっと、楽になれる。

 そう思ってたのに。

 

「っ…!」

 

 気が付けば、身体が勝手に動いていた。

 時間切れになる前に、俺は線を踏み越えていた。

 

 …どうして。

 死にたかったはずなのに。

 生き残る事なんか、とっくに諦めていたはずなのに。

 何で、こんな時に限って身体が動くんだよ。

 

 その時、俺の服のポケットからは♢の9のトランプが落ちた。

 俺がアユミを…他の参加者を全員死なせて手に入れたトランプだ。

 

「………っ」

 

 死んで何になる。

 俺が死んだら、アイツらが命懸けで戦った意味がなくなっちまう。

 理想に生きて俺を生かしたバカな女の生き様を、二度と思い出せなくなっちまう。

 

「死んでたまるかってんだクソっタラぁああああっ!!」

 

 俺は、雄叫びを上げながら走った。

 肺が潰れそうになるのも気にせず、ただひたすら走った。

 

 俺は生きる。

 地べたを這いつくばろうが、泥水を啜ろうが、生にしがみついてやる。

 利用できるもんは全部利用して、絶対に生き残ってやる。

 この命が燃え尽きるまで、足掻き続けてやる。

 俺達に悪趣味な『げぇむ』をやらせてほくそ笑んでやがるクソ野郎を見つけ出して、思いっきりぶん殴ってやる。

 

「ゼェッ…ゼェッ……ゲホッ、ウ゛ェエ゛ッ!!」

 

 俺は、息を切らして、みっともなくゲロを吐きながらも、何とか完走した。

 足掻きに足掻いて、俺はまた一日生き存えた。

 

 

 

 

 




北句(ほっく)平治(ヘイジ)

・23歳男性
・都心の国立大学の大学院2年生
・黒髪の短髪に戦闘服。今際の国に来てからは無精髭を生やしている。
・身長177cmくらい
・性格は真面目でお人好し
・『くりあ』した『げぇむ』は『♡3』、『♠︎4』、『♠︎5』。

本作の主人公。
元の世界では、真面目な優等生でありながらも、努力が報われず、親友と恋人にも裏切られて虚しい人生を送っていた。
理系学生でプログラマー志望で、ICPCへの出場経験もある。
公園でヤケ酒をして寝ぼけていた時に花火を見て、そのまま今際の国に迷い込んだ。
中学と高校では陸上部に所属していた。
地元に歳の離れた妹がいる。
名前の由来はハリネズミの英名の『hedgehog』から。



小鳥遊(たかなし)火鶴(ヒヅル)

・13歳女性
・中学2年生
・ショートの黒髪に戦闘服。色々入っているリュックとスケボーを常備
・身長は150cmくらい
・性格はつかみにくい
・『くりあ』した『げぇむ』は『♠︎4』、『♢5』、『♠︎5』、その他多数。

『♠︎4』を『くりあ』した少女。
まだ中学生でありながら毎日『げぇむ』に参加しており、『げぇむ』に慣れている。
その経験からか、人の死に対して全く抵抗が無い。
運動神経抜群で頭も切れる。
冷徹で打算的な印象を受けるが、意外にも義理堅い一面を持つ。
若干天然が入っている。
一見男性に見えるが、実は女性。
ただし、本人曰く『性別を偽っているつもりはない』との事。
名前の由来はフラミンゴの当て字。



栗原(クリハラ)鳳正(ほうせい)

・39歳男性
・闇医者。東大医学部を首席で卒業し、数々の高難度手術を成功させた元天才外科医。
・天然パーマの短髪に白衣。レンズの割れた眼鏡をかけている。
・身長は171cmくらい
・性格は、普段は飄々としているが意外とヘタレ
・『くりあ』した『げぇむ』は『♢9』、『♠︎A』、『♠︎4』。

『♠︎4』を『くりあ』した男。
体力に自信がある方ではないが、傷を治す事を交換条件にヒヅルに助けてもらい、『げぇむ』を『くりあ』した。
医師免許を持たない闇医者だが、腕は確か。
良くも悪くも俗っぽいが心根は優しく、人を助ける為に医者をしていた善良な人物。
頭脳明晰で、囲碁や将棋といったボードゲームもお手のもの。
本人曰く得意ジャンルは『♢』。
元々喫煙者だったが、今際の国に来てから禁煙している。
名前の由来はグリフォン。



王馬(おうま)歩美(アユミ)

・19歳女性
・大学2年生
・ブラウンに近い黒髪のセミロング
・身長は161cmくらい
・性格は、知的な淑女

『♢9』の将棋戦でクリハラと対戦した女性。
元竜王の娘で、全盲でありながらプロ棋士と遜色ない実力を持つ。
得意ジャンルは『♢』。
激戦の末にクリハラに敗れ、強敵と戦えた事に満足して処刑された。
クリハラに対して恋愛感情を抱いていた。
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