Hedgehog in Borderland   作:M.T.

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ねくすとすてぇじ編
ねくすとすてぇじ


ヘイジside

 

 『今際の国』滞在27日目、『ねくすとすてぇじ』開催日。

 俺達は、それぞれ『げぇむ』に備えて着替えてからいつもの場所に集まった。

 俺は白いタンクトップの上にライトブルーのシャツ、下は黒いジョガーパンツとスニーカー。

 ヒヅルはピンクのタンクトップの上に黒いミリタリーベスト、下は黒いホットパンツとスパッツとタクティカルブーツといった格好で、『ビーチ』にいた頃と似た色合いのキャスケットを被り、指ぬきグローブを装着し、リュックを背負っている。

 クリハラさんは、上は白とオレンジのボーダーのポロシャツ、下は紺のジーンズにフラットシューズといった格好だ。

 

 そして正午。

 いよいよ、『ねくすとすてぇじ』が始まる。

 

『また見つけた…あそこにも一機…六本木方面に、『♡J(はあとのじゃっく)』だ。おそらく絵札の『げぇむ』に12会場が、昨晩のうちに23区内に設置されているんじゃないか…?』

 

「今は少しでも情報が欲しい。そのまま他の会場も探してみてくれるか?」

 

『わかった』

 

 俺達の仲間が、通信をして偵察係から情報を入手していた。

 するとタッタが口を開く。

 

「つまりは、こういう事なのか…?『今際の国』にはオレ達『ぷれいやぁ』の他に『でぃいらぁ』って滞在者がいて、オレ達は何も知らずに『げぇむ』を通じて殺し合いをさせられてた…でもって全ての『げぇむ』をオレ達『ぷれいやぁ』が『くりあ』した時点で、『でぃいらぁ』は全員敗退。勝ち残ったオレ達は次に、『今際の国』の国民と名乗る連中とこれから絵札の『げぇむ』で殺し合う…」

 

「まともな頭じゃ信じられない話だけど…連中の言葉から推測するとそうなるわね…」

 

 タッタが言うと、アンさんも口を開く。

 すると俺達の仲間が、次々と口を開く。

 

「連中に勝てたら…どうなるんだ?12種の絵札の『げぇむ』を『くりあ』したら…オレ達は…元の世界に戻れるのか?」

 

「『♡Q(はあとのくいいん)』が言ってたじゃない…『答え』なんて無い…これはただの『げぇむ』だって…」

 

「全部の『げぇむ』を『くりあ』しても、また一から『げぇむ』が始まるだけだったりしてな…!!きっとどこにも希望なんてねーんだよクソッ!!」

 

「だったら私は、これ以上『げぇむ』になんて参加したくない!!」

 

 違う。

 それじゃ、『♡Q(はあとのくいいん)』の思うツボだ。

 『♡Q(はあとのくいいん)』が今までの『(はあと)』の『げぇむ』を全部仕切ってきたのだとしたら、『♡Q(はあとのくいいん)』の揺さぶりは、既に始まってる。

 そう思ったその時、俺達の仲間が口を開く。

 

「だったら…こうしない?私達の『びざ』は残り10日もあるんだし…他の『ぷれいやぁ』に任せておけば、全部の『げぇむ』を『くりあ』してくれるかも…」

 

「ここに来て他力本願か?そもそもウチらの他に何人『ぷれいやぁ』が生き残っとるんかもわからんのやで?」

 

 仲間の一人が提案すると、クイナさんが反論する。

 するとタッタがクイナさんに向かって言った。

 

「だったらお前は『げぇむ』に参加すりゃいいじゃんかよ」

 

「あ!?」

 

「『げぇむ』に参加しなくても助かる可能性があるならそれを選ぶだろフツー!!」

 

「今更日和ってどないすんねん言うんじゃ!!あのイカレた連中に一矢報おうとは思わんのか!?」

 

「やめなさいよ!!こんな時に私達が揉めてどうするの!!」

 

 タッタとクイナさんが喧嘩すると、他の仲間が仲裁に入る。

 するとそこへ、ヒヅルが愛用の高級ナイフを抜きながら、火に油を注いだ。

 

「逃げ続けたけりゃ好きにすればいいよ、腑抜け共が。どのみち『今際の国』の国民は、全員オレ達がぶっ殺す」

 

 ヒヅルがナイフを構えながら言うと、他の仲間が驚きを露わにする。

 するとクイナさんは呆れ返り、タッタはヒヅルの挑発にムキになる。

 

「アンタはアンタで極端やな…」

 

「誰が腑抜けだ!!このっ…『げぇむ』中毒の変態が!!」

 

「何とでも言えばいい。そんなに『げぇむ』が嫌なら、オレ達が全種類の『げぇむ』を『くりあ』するのを、指を咥えて見てろ。そんで親指ふやけてればいい」

 

「やめとけよ、売り言葉に買い言葉だろが。まぁ、オレはヒヅルに賛成だがな」

 

 タッタが今度はヒヅルと喧嘩すると、クリハラさんが仲裁に入る。

 するとその時だった。

 

『また1機見つけたぞ。けど…妙だな…さっきは…あんなところには無かったぞ…?『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』…!?な…何なんだアレは…!?』

 

 そんな声が聴こえたかと思うと、通信が途切れる。

 

「…?オイ…?応答しろよ!オイ?オイっ!?」

 

「どうしたの?」

 

「わかんねーけど、急に無線が…」

 

 急に通信が途切れると、他の皆が困惑する。

 そんな中、ヒヅルが俺に話しかける。

 

「…ねぇ、アレ……」

 

 ヒヅルが指差した方角を見ると、遥か遠くの高層ビルの上に『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』の飛行船が見える。

 ビルの上で、何かが光った。

 おい…嘘だろ…!?

 そんなのアリか!?

 

「逃げろ!!!」

 

「えっ?」

 

 俺が叫んだ、その瞬間だった。

 

 

 

 ――タァン!!

 

 

 

 俺達の仲間の一人の頭が、吹き飛んだ。

 

「何!?何…!?何が起こったのよォ!?いやああああ!!!」

 

「……狙撃…!?」

 

「か…隠れろ!!どこでもええから身を隠すんや!!」

 

「けどっ…!!狙撃ったって、どこか…らっ…」

 

 俺達が混乱している間にも、仲間がもう一人撃たれた。

 

「向こうよ!!」

 

「あのビルからだよ!」

 

 ウサギとヒヅルは、『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』がいるビルの方を振り向いた。

 『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』は、俺達のいる方へ狙撃銃を向けていた。

 俺とヒヅルは、咄嗟に近くのビルの影に、クリハラさんは車の影に隠れた。

 

「嘘だろ…あのビルからッ…!!」

 

「SASじゃあるまいし…どんな腕してんだよ…!!」

 

「正午を過ぎてる、『ねくすとすてぇじ』は始まってるんだわ…」

 

「けど何で…!?『げぇむ』会場は!?『るうる』は!?私達はまだ、『げぇむ』に参加してないじゃない!!」

 

 ツインテールの女性が叫ぶと、俺は自分の推測を話す。

 

「まさか…オレ達は既に、『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』の『げぇむ』にエントリーしちまったんじゃ…!?」

 

「どういう事…!?」

 

「『ねくすとすてぇじ』が始まった時点で、あの狙撃銃の射程範囲にいる『ぷれいやぁ』全員が、『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』の参加者って事だ…!!」

 

「そんな…!」

 

 俺が言うと、リナさんが絶望の表情を浮かべる。

 するとその時、タッタが言った。

 

「アンチマテリアルライフル…映画で見た…1km先の500円玉でも狙える、装甲車や航空機の破壊に使われる狙撃銃だよ…」

 

「装甲…車!?皆今すぐに、今いる場所から移動するんだ!!隠れた場所を見られてたらアウトだ!!あの銃は、車くらい簡単に貫通す───」

 

 アリスが叫んだ、その瞬間だった。

 

 

 

 ――ガゴンッ!!

 

 

 

 車を貫通して、俺達の仲間がまた一人撃たれた。

 何でだよ…

 何で、こんな事になっちまうんだよ…!?

 

「ぐ…ぐ…う…」

 

「アリス…」

 

 アリスが俯いて拳を握りしめると、ウサギがアリスを心配する。

 アリスは、タッタに何かを話しかけていた。

 

「…タッタ。動かせる車が…あったよな?」

 

「ああ!もしもの時の為に整備しといたやつが2〜3台」

 

「3組に分かれてここから離れよう…今は……これ以上死人を出させない事を優先させるんだ…!!」

 

 アリスが言うと、アリス、ウサギ、クイナさん、タッタの4人、俺、ヒヅル、ネズミ、リナさんの4人、アンさん、クリハラさん、他の仲間3人の5人が車に乗り込んだ。

 

「身体を低くしろ!!ゼッテー頭上げんじゃねーぞ!!直進すれば狙い撃たれる!!なるべくジグザグに走行するんだ!!」

 

 俺達は何とか車に逃げ込んだが、ヤヨイとヤギが逃げ遅れてしまっていた。

 俺は、ヤヨイとヤギに向かって叫んだ。

 

「ヤヨイ!!ヤギ!!こっちだ!!」

 

「ちょ…6人も入らないって!」

 

 俺が助手席から叫ぶと、ヒヅルが叫んだ。

 ヤギはヤヨイを連れて俺達の車に逃げ込もうとするが、ヤヨイは腰が抜けたのか、その場で座り込んで動かなかった。

 

「あ…ごめんなさいっ…私、腰が抜けちゃって…」

 

「っ…!!」

 

 ヤヨイが絶望の表情を浮かべて涙を流しながら笑うと、ヤギはギリっと歯を食いしばる。

 そしてヤヨイの身体をヒョイと抱えると、俺達の車の後部座席に向かって思いっきりヤヨイを投げた。

 

「受け止めろ!!!」

 

 ヤギがヤヨイを投げると、後部座席に座っていたリナさんとヒヅルが咄嗟にヤヨイの身体を掴んで力一杯車内に引き摺り込み、そのまま車のドアを閉めた。

 取り残されたヤギは、俺の方を見て笑っていた。

 その直後だった。

 

 

 

 ――バギャッ!!!

 

 

 

 ヤギの頭が、吹き飛んだ。

 俺達の車の窓には、ヤギの血が飛び散る。

 

「いやあああああああっ!!!」

 

「ヤギさん!!!」

 

 ヤギが『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』に撃たれると、ヤヨイとネズミが叫ぶ。

 

「アクセル全開で、ブッ飛ばせ!!!」

 

 今生き残っている全員が車に乗り込むと、アリスが叫んだ。

 俺は、運転席で呆然としているネズミに向かって叫ぶ。

 

「ネズミ!!」

 

「っはい…!!」

 

 俺が叫ぶと、ネズミは頭を切り替えて車をジグザグに走らせた。

 俺達を乗せた車はそのまま、北東に向かってひたすら走った。

 車を走らせてしばらくして、『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』は俺達を狙ってこなくなった。

 

「撒いたみたい……」

 

「でも、先生やアンさん、アリス君達と逸れちゃったわね…」

 

 ヒヅルとリナさんが言うと、車を運転していたネズミが震えながら言った。

 

「あれが…『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』…絵札の『げぇむ』は、他にもあんなのが11人もいるってのかよ!?」

 

 ネズミが震えながら言うと、俺は『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』の『げぇむ』の内容を推測して口にする。

 

「さしずめ…『げぇむ』『さばいばる』、難易度『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』…『るうる』『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』を殺せば『げぇむくりあ』、『ぷれいやぁ』全員が殺されれば『げぇむおおばぁ』…ってとこか」

 

「そんなのただの殺し合いじゃねぇか!?ふざけやがって…!!クソッ!!」

 

「ヤギさん…ごめんなさい…私のせいで…!!」

 

 俺が言うと、ネズミは悪態をつきながらハンドルに拳を打ちつけ、ヤヨイはヤギの死を思い出してガタガタ震えながら泣く。

 するとその時、ヒヅルがリアガラスを眺めながら言った。

 

「…ねぇ。飛行船が動いてる」

 

「え…?」

 

 俺が助手席からバックミラーを確認すると、ヒヅルの言う通り、『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』の飛行船が動いていた。

 最初に『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』を見つけたヒヅルは、飛行船を見ながら言う。

 

「もしかして…絵札の『げぇむ』会場は23区内のどこかに設置されていて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()が『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』の『げぇむ』会場なんじゃ……」

 

「ヘイジ君の言う通り、私達は既に『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』の『げぇむ』にエントリーしてしまっているという事ね…撃ち殺されるのが嫌なら、積極的に他の『げぇむ』に参加するしかない…『今際の国』で安全な場所なんて、どこにもないのね…!」

 

 ヒヅルが言うと、リナさんは身体を震わせながら言った。

 そんな中、窓の外に、俺が探していたものが映る。

 

「っ…!おい、あそこに向かってくれ!」

 

「はい?」

 

「見つけた…『♡K(はあとのきんぐ)』の『げぇむ』会場…!!」

 

 俺が言うと、ネズミは渋谷方面へと車を走らせた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 『♡K(はあとのきんぐ)』の飛行船が浮かんでいる原宿へ行くと、原宿の街並みはくどいくらいにイルミネーションで装飾されていて、どこからかBPMが高くやかましい音楽が聴こえる。

 竹下通りの看板には『げぇむ』『おうさまげぇむ』と書かれていて、その上には『なんいど』『♡K』と書かれたライトが設置されていてやかましいぐらいにビカビカと点滅している。

 『げぇむ』会場の前にはタブレットが置いてあって、その近くには張り紙が貼ってあった。

 

「ここが『♡K(はあとのきんぐ)』の『げぇむ』会場…」

 

「『(はあと)』って事は…殺し合いの『げぇむ』かもしれないわね」

 

「りっ、リーダーなら殺し合わずに『くりあ』する方法を見つけてくれますよ!」

 

 リナさんが言うと、ネズミが俺の方を見ながら言った。

 ヒヅルは、若干不安そうに俺を見上げながら口を開く。

 

「…ヘイジ。もし、一人しか生き残れない『るうる』なら、オレは……」

 

「それ以上は言うな、ヒヅル」

 

 ヒヅルが何かを言おうとすると、俺が遮った。

 ヒヅルが何を言おうとしているのかは、何となく察しがついた。

 

 もし一人しか生き残れない『るうる』なら、俺はヒヅルを生かす。

 ヒヅルは、俺にとって希望だ。

 俺は、ヒヅルが生き残る為の犠牲になるのなら、それでいい。

 

 …以前の俺なら、そう決断していただろう。

 でも今は違う。

 頭と身体を総動員して、最後まで諦めずに皆で生き残る方法を探して、それでもダメなら皆が納得のいく方法で生き残る一人を決める。

 それでもし死ぬ事になっても、逆に一人だけ遺ったとしても、皆が納得いく方法で決めたのなら文句は無い。

 

「ヘイジ…」

 

 ヒヅルは、心配そうに俺を見てくる。

 俺も、そこまで鈍感じゃない。

 自惚れるわけじゃないけど、ヒヅルは多分、俺の事が好きなんだと思う。

 俺に気を遣って、その気持ちを必死にしまい込んでる。

 そういう顔だ。

 

「ヒヅル。お前の想いは、ちゃんとオレに届いてる」

 

「………!!」

 

 俺が言うと、ヒヅルは大きく目を見開く。

 俺はそのまま、ヒヅルの小さな身体を力強く抱きしめた。

 

「お前の想いに応えられなくてごめん。だけど、お前の想いは全部オレが受け止めるから。一緒に生きて帰ろう」

 

 俺は、ヒヅルを抱きしめながら、俺の気持ちを伝えた。

 俺はまだ、ニーナ以外の人と幸せになる事はできない。

 第一、ヒヅルはまだ中学生だ。

 ヒヅルの想いには、応えられない。

 

 だけど俺を想ってくれているヒヅルの事は、誰よりも信頼している。

 俺は、『げぇむ』を生き残って、『答え』を見つけて、ヒヅルと一緒に生きたい。

 

 俺がヒヅルを抱きしめると、ヒヅルはポツリと口を開いた。

 

「………苦しいよ、ヘイジ」

 

「ごめん…」

 

「オレは、ヘイジが生きていてくれるだけでいいの」

 

 そう言ってヒヅルは、帽子の鍔で目元を隠した。

 生きていてくれるだけでいい、か…

 ヒヅルは賢いから、きっとわかってるんだ。

 誰もが死と隣り合わせのこの世界では、ずっと一緒にいられる保証なんかどこにもないって事を。

 それでも俺は…俺を何度も救ってくれたヒヅルと生きたい。

 

 

 

ーーー

 

1人1台

 

タブレットの指紋認証が完了し次第

エントリー完了とみなします

 

 

エントリー数

 

14名

じゃすと

 

ーーー

 

 

 

 14人か…多いな。

 ここにいる5人が全員エントリーしたとしても、まだ4人足りない。

 俺は、タブレットを手に取って、指紋認証をした。

 しばらくして、画面がついたかと思うと、『あなたの『なんばぁ』は『13』です』と表示される。

 ヒヅルも同じように、『げぇむ』にエントリーした。

 次にネズミがエントリーしようとした、その時だった。

 

「あ〜良かった、まだエントリー締め切ってなかった!」

 

 ヤンキーっぽい男が、割り込んでネズミを突き飛ばし、先にエントリーしてしまった。

 するとリナさんがヤンキー男を睨みながら言い放つ。

 

「ちょっと。私達が先にエントリーしようとしてたのよ?」

 

「知るかよ!こっちはさっさと『げぇむ』に参加しなきゃ、『びざ』が切れちまうんだよ!『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』とかいうバケモンに撃ち殺されたくねぇしよ!!」

 

「だからって、順番を守らないなんて非常識にも程があるわ」

 

 ヤンキー男がタブレットを抱きかかえながら自己中発言をすると、リナさんは怯むどころか強気に出る。

 だがそんなリナさんを見て、ヤンキー男が口を開く。

 

「…なぁ。アンタら、『びざ』はあと何日残ってるんだ?」

 

「え…?っと…オレはあと16日…」

 

「……17日」

 

「私は20日よ」

 

 皆が『びざ』の残り日数を言うと、ヤンキー男は皆を指さして非難した。

 

「そんなに残ってんなら、ちったぁ空気読んでくれよ!『びざ』切れ間近の奴等がこの国にどれだけいると思ってんだ!?アンタらがソイツらの参加枠を奪う事になるんだぞ!?それに、限られた生存枠を奪い合う『げぇむ』だったらどうすんだよ!?チームで参加してる奴等がいたら、オレに勝ち目ねぇじゃねぇか!!」

 

「言いやがりよしてよ…!会場を先に見つけたのは私達…」

 

 皆を非難するヤンキー男にリナさんが反論しようとした、その時だった。

 

「…ううん。彼の言う通りだと思う」

 

「ヤヨイ…!」

 

 ヤヨイが、首を横に振りながらリナさんを止めた。

 ヤヨイは、俯いたまま話し始める。

 

「『げぇむ』の参加者が限られてるなら、『びざ』切れ間近の人に権利を譲るべきだと思うわ。私達が全滅するっていう最悪の事態を防ぐ為にも、リスクを分散しておかないといけないし…」

 

「い、言ってる事はわかるけどよ、だからって…」

 

「…それに私は…もう嫌なの。私のせいで誰かが死ぬのは…私は、リーダーの足を引っ張る事になるのだけは…嫌だ…!」

 

 ヤヨイは、泣きながら言った。

 ヤヨイにとって、ヤギの死は、とてもショックで、絶望だったんだ。

 ヤギを失ったショックを抱えたまま『げぇむ』に参加したって、戦力にはならない。

 それをヤヨイ自身が一番わかってた。

 きっと、自分が俺やヒヅルの足枷になる事を恐れて、エントリーしない事にしたんだ。

 

「大丈夫だって!リーダーはヤヨイの事を重荷に思ったりなんかしない!『げぇむ』は皆で協力した方がいいに決まってる!」

 

「…………」

 

 ネズミは、ヤヨイを説得して『げぇむ』に参加させようとした。

 ネズミの言う通り、『(はあと)』は自分だけが生き残ろうとせずに皆で一致団結すれば『くりあ』できるものがほとんどだった。

 俺も、5人全員で協力し合った方がいいと思うんだけど…

 俺達が困っていたその時、さらに参加者がやって来る。

 

「あ〜、やっと着いた…って、何これ?揉め事?」

 

「あ…えっと…」

 

 次に来たのは、背の高い女性だった。

 ウェーブのかかった長い黒髪をアップにしていて、ピンヒールを履いている。

 すごい美人だな…

 美人さんは、エントリー方法を確認すると、エントリーするかどうかで揉めているネズミ達に声をかける。

 

「ふぅん…なるほどね。何でもいいけど、誰がエントリーするのかさっさと決めたら?」

 

 美人さんが、ネズミ達にエントリーを急かしてくる。

 するとリナがハッキリと言った。

 

「私はエントリーしないわ」

 

「リナさん…?」

 

「『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』が来るかもしれないのに、エントリーする気がない彼女を一人にするわけにもいかないでしょう?ヘイジ君が今まで運良くそういう『げぇむ』に当たらなかっただけで、生存枠を奪い合う『げぇむ』の可能性だってゼロじゃないわけだし。それに私、本当は『げぇむ』になんか参加したくなかったから」

 

 リナさんは、遠くに見える『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』の飛行船を見ながら言った。

 するとネズミも、手を挙げて口を開く。

 

「あ〜…だったらオレも残るわ。女の子二人にはしておけないし〜…さ、さ?」

 

「皆…」

 

「んじゃ、リーダー、ご武運を!オレ達は、『♠︎K(すぺえどのきんぐ)』に気をつけながら近くで待ってますんでっ!」

 

 そう言ってネズミは、俺に向かってビシッと敬礼をする。

 結局、参加するのは俺とヒヅルだけか…

 なんて思っていると、さっきのヤンキー男が気まずそうに話しかけてくる。

 

「あの…さっきはカッとなって怒鳴っちまって悪かったよ。オレ、狭間(はざま)瑠輝也(ルキヤ)っつうんだ」

 

「ヘイジだ」

 

「…ヒヅル」

 

 俺とヒヅルは、ルキヤさんに自分達の名前を言った。

 すると今度は美人さんが口を開く。

 

「何?これ、自己紹介的なノリ?あ、あたし紋嘉(アヤカ)。よろしく」

 

 そう言ってアヤカさんは、気さくに俺達に手を差し出してくる。

 俺は、アヤカさんの手を取って握手を交わした。

 俺とヒヅル、ルキヤさん、アヤカさんは指示に従って会場の中へと進んだ。

 

 俺達が辿り着いたのは、1階がオシャレなコンセプトカフェになっているビルの前だった。

 会場に入ると、既に5人の男女が集まっていた。

 強面で目の近くに傷があり見るからにカタギじゃなさそうな男性、メガネをかけた気弱そうな初老の男性、メモを書きまくってる中年女性、顔に刺青を入れたガラの悪そうな男性、作業着を着た長髪の男性の5人だ。

 

「あ…また人が来ましたね…」

 

「あぁ?」

 

「メモメモ…!」

 

 メガネの男性がオドオドした様子で口を開き、刺青の男が俺達を睨み、中年女性が俺達の方を見ながらメモを書きまくっている。

 これで9人か…

 『げぇむ』が始まるにはあと5人必要なわけか…

 1時間ほど待っていると、また3人来た。

 男子高校生、ニット帽とタンクトップを身につけた男性、キッチリしたサラリーマンの男性の3人だ。

 

 時間だけは膨大にあったので、『げぇむ』に参加している全員の名前を聞いておいた。

 カタギじゃなさそうな人が等々力(トドロキ)さん。

 メガネをかけた初老の人が邦枝(クニエダ)さん。

 メモを取ってる人が佐久間(サクマ)さん。

 顔に刺青を入れた人が祥吾(ショーゴ)さん。

 作業着を着た人が黒田(クロダ)さん。

 男子高校生が瑞希(ミズキ)君。

 ニット帽の人が赤松(アカマツ)さん。

 サラリーマンの人が秋本(アキモト)さん。

 

 さらに1時間後。

 ようやく最後の2人が来た。

 一人は幸薄そうなOL、もう一人は狐のような顔が特徴的な華奢な男性だ。

 

「♪」

 

 2人が会場に足を踏み入れた、その瞬間だった。

 会場の出入り口がひとりでに閉まり、扉にロックがかかる。

 

「ひっ!?」

 

 急に扉が閉まると、OLがビクッと肩を跳ね上がらせる。

 

「かぁーっ、やっと揃ったぜ」

 

「これで14人…ですか」

 

 これでようやく14人揃った。

 するとスポットライトがパッと光り、クラシカルなメイド服を着た女性が現れる。

 長い髪をおさげにしていて、無表情ではあるものの端正な顔立ちをしている。

 女性は、マイクを手に取って口を開く。

 

『エントリー数が14名に達しました。これより、『げぇむ』を開始します』

 

「な、なんだテメェ!?」

 

「アンタが『♡K(はあとのきんぐ)』なのか!?女じゃねぇか!!」

 

 女性が言うと、ルキヤさんとアカマツさんが声を荒げる。

 すると女性は、咳払いをしてから自己紹介をする。

 

『申し遅れました。私はこの『げぇむ』の主である『♡K(はあとのきんぐ)』の代理を務めさせていただきます、アイと申します』

 

「代理って…本人はどこにいんのよ!?」

 

『まずは『げぇむ』の説明をさせていただきます。これから皆さんに参加していただく『げぇむ』は、『おうさまげぇむ』。難易度『♡K(はあとのきんぐ)』』

 

 アイと名乗る女性は、サクマさんの質問を無視して淡々と説明をした。

 

『『るうる』の説明。皆さんの中から1名、『おうさま』を選出します。『おうさま』は、この場にいる全員のうち1人に1つだけ、『めいれい』をする事ができます。『おうさま』に『めいれい』された方は『どれい』、それ以外の方は『へいみん』となります。『おうさま』の『めいれい』は絶対。『どれい』は、『おうさま』の如何なる『めいれい』にも従わなければなりません』

 

 アイと名乗る女性は、手元のタブレットを見ながら『るうる』の説明をした。

 するとアヤカさんが口を開く。

 

「知ってるわよ、王様ゲームでしょ?くじ引きで王様を引いた人が命令できるってやつ」

 

『ええ。ですがこの『おうさまげぇむ』が通常の王様ゲームと異なる点は、二つございます。一つ目は、『おうさま』は参加者の投票によって選出される点』

 

 投票…!?

 俺達で『おうさま』を決めろっていうのか…!?

 

『皆様には、エントリーの時点で0から13の数字をランダムに割り振らせていただきました。『げぇむ』では、この数字を『なんばぁ』と呼びます。『なんばぁ』は『げぇむ』終了まで同じ数字を使います。0〜13の全ての数字が必ずいずれかの参加者に割り当てられ、参加者同士で『なんばぁ』が被る事はありません』

 

「『げぇむ』が終わるまで固定で、ダブりはない…それって、要は参加者の個別の番号って事だよね…?」

 

『左様でございます』

 

 ヒヅルが質問すると、アイが答える。

 アイは、説明を続ける。

 

『皆様には、自分が『おうさま』にしたい参加者の『なんばぁ』を入力し、投票していただきます。この際、『おうさま』に選ばれた場合に実行される『めいれい』をセットする事ができます。制限時間は60分。ただし、制限時間内に全員の投票が終わった場合、その時点で投票時間終了となります。投票時間終了後に、得票数が最も多かった参加者が『おうさま』となり、『おうさま』がセットした『めいれい』が実行されます。『おうさま』の発表後、次のターンに移行し、再び『おうさま』を決める投票を開始します。『おうさま』の『めいれい』の有効期間は、次の『おうさま』を決める投票が終了するまでの間です』

 

「何それ…エンドレスなの…!?」

 

「得票数が同率1位の場合はどうなるんです?」

 

『その場合は、投票は全て無効となり、そのまま次のターンに移行します』

 

 幸薄そうなOLとアキモトさんが言うと、アイがアキモトさんの質問に答える。

 さらにアイは、説明を続ける。

 

『次に、この『げぇむ』が通常の王様ゲームと異なる点二つ目ですが…『おうさま』が『どれい』に強制できる『めいれい』は2種類ございます。1つは、通常の『めいれい』。そしてもう一つが…『しょけい』。『どれい』を強制的に『げぇむおおばぁ』にする事ができます』

 

 えっ…?

 今、何つった…!?

 

「強制的に…」

 

「『げぇむおおばぁ』…だと…!?」

 

『『しょけい』の『めいれい』をセットする際は、必ず対象となる参加者に割り振られた『なんばぁ』を指定して下さい。通常の『めいれい』をセットする場合は、この場にいる全員の顔写真が選択画面に表示されますので、その中から一人を選んで指定して下さい。この際、『なんばぁ』の指定は必須ではありません』

 

 タブレットを見ると、俺達全員の顔写真が表示されている。

 これで『めいれい』したい相手を選ぶのか…

 

『『めいれい』が実行された際は、『どれい』のタブレットにのみ『めいれい』の内容が表示されますが、『おうさま』は全員の前で『めいれい』の内容を公開しても構いません。ただし『しょけい』の『めいれい』が実行された際のみ、私がその内容を全員の前で公開させていただきます。『げぇむ』の大まかな流れは以上となります』

 

 アイは、手元のタブレットを見ながら言った。

 すると最後に入ってきた男がクスッと笑う。

 

「なるほどね♪ところで、そろそろ『げぇむくりあ』の条件を教えていただけないだろうか。もしかして…今言った『しょけい』や、行方不明の『♡K(はあとのきんぐ)』が関係あるのかい?」

 

『左様でございます。『♡K(はあとのきんぐ)』における勝敗ですが、既に皆様の中に『♡K(はあとのきんぐ)』が潜んでおられます。『♡K(はあとのきんぐ)』を『しょけい』する事ができれば『げぇむくりあ』。『ぷれいやぁ』が全員殺されれば『げぇむおおばぁ』』

 

 やっぱり…殺し合いの『げぇむ』なのか…!

 俺達が生き残るには、殺される前に『♡K(はあとのきんぐ)』を見つけて殺すしかない。

 

『なお、『げぇむ』における禁止行為は2つ。『どれい』が『おうさま』の『めいれい』に従わなかった場合。他の参加者を自力で投票できない状態にした場合。また、禁止行為ではありませんが、無効となる『めいれい』がいくつかございます。『しょけい』以外で人を死に至らしめる『めいれい』、人間の規格を超える『めいれい』、一度に複数の『めいれい』を実行させようとした場合、『おうさま』が複数人に『めいれい』を下そうとした場合。この場合は、『めいれい』は実行されず、そのまま次のターンに移行します』

 

 アイは、タブレットを操作しながら、注意事項をひとつずつ丁寧に説明していく。

 …あれっ?

 でもこれ、何かを聞き出す系の『めいれい』をされたら、相手の質問にいちいち全部答えなくちゃいけないって事か?

 …それ、だいぶキツくないか?

 なんて思っていると、アイが丁寧にも俺の疑問を解消してくれた。

 

『ここで注意点ですが、例えば『質問に答えろ』という『めいれい』をセットする場合、必ず『めいれい』をセットする際にその内容を明記した上でセットして下さい。この際記入できる質問は一つまでです。質問の内容が無記入、もしくは曖昧な場合は、『一度に複数の『めいれい』を実行させるケース』に該当し、『めいれい』が無効となります』

 

「誰が『♡K(はあとのきんぐ)』かもわからねーのに、投票もクソもねーだろ!!」

 

「そもそも、誰が何番かもわからないのに、投票も『しょけい』もできないんじゃないの…!?それでどうやって『♡K(はあとのきんぐ)』を見つけろっていうのよ!?」

 

『だからこその『♡K(はあとのきんぐ)』の『げぇむ』でございます。これは、生かしたい人を決める『げぇむ』。時間は有り余るほどございます。皆様、与えられた時間を有効に使って、誰を生かし誰を殺すかを慎重にお考え下さい。それでは、『げぇむすたあと』』

 

 アイが言うと、壁に設置されたタイマーが動く。

 

「ど、どどど…どうすれば…?」

 

「誰が『♡K(はあとのきんぐ)』かなんてわかるかよクソッ!!」

 

「あの…『K(きんぐ)』と言うからには男の人ですよね?女の人は除外していいんじゃ…」

 

「まぁ、単純に確率で言えば男である可能性が高いだろうね。でも、『♡K(はあとのきんぐ)』はあくまで『(はあと)』の最高難易度の『げぇむ』を担当する『今際の国』の国民の名称に過ぎないから、必ずしも男とは限らない♪…とか言うボクが『♡K(はあとのきんぐ)』だったりして♫」

 

 そう言って狐顔の男は面白そうに笑う。

 

「あ、ボクは戸蔭(トカゲ)飛龍(ひりゅう)。ヨロシク♬」

 

 狐顔の男は、皆が困惑しているのも気にせずに自己紹介をした。

 するとクロダさんが口を開く。

 

「そもそも…今ここで『♡K(はあとのきんぐ)』探しをやる事に意味はあんのかァ…?他人の『なんばぁ』がわかんねぇんだから、『しょけい』のしようがねぇだろ…」

 

「だ、だったらオレは自分に投票するぞ!」

 

「私も!」

 

 クロダさんが言うと、アカマツさんとサクマさんは早速自分に投票した。

 そんな中、ルキヤさんは頭を掻きながら悩む。

 

「皆が皆自分に投票したら、いつまで経っても『げぇむ』が終わらねぇよな?これって結局、テキトーに『なんばぁ』選べって事か?」

 

「でももし仮に、適当に選んで『おうさま』になった人が『♡K(はあとのきんぐ)』だったり、『♡K(はあとのきんぐ)』を殺す為に片っ端から怪しい人間を消そうとしている危険思想の奴だったりしたら?自分が『しょけい』されるリスクを冒してまで好き好んで他人に投票する奴がいると思う?」

 

「あ〜クッソ、何から考えたらいいかわかんねー!」

 

 ルキヤさんに対してアヤカさんが言うと、ルキヤさんはガシガシと頭を掻く。

 そんな中、ヒヅルが俺に声をかける。

 

「ヘイジ。オレは『(はあと)』は苦手だから…この『げぇむ』はヘイジの判断に任せる。オレはこのターン、ヘイジを『おうさま』にするから…ヘイジの『なんばぁ』を教えてほしい」

 

「…わかった。オレの『なんばぁ』は……」

 

 俺は、ヒヅルに自分の『なんばぁ』を耳打ちした。

 すると今度は、ヒヅルが俺の耳を手で覆ってくる。

 

「じゃ、次はオレね」

 

「えっ?」

 

「オレはヘイジと一緒に生きるって決めたから…ヘイジだけにはリスクを背負わせない」

 

 そう言ってヒヅルは、自分の『なんばぁ』を俺に耳打ちしてきた。

 この『げぇむ』は『生かしたい人を決める『げぇむ』だ』とアイは言っていた。

 考えろ…この『げぇむ』を皆で生き残る方法を。

 

 

 

 

 

♡J編にオリキャラを登場させるつもりなんですが、定員を増やすのと原作通り20人で進めるのとどちらがいいですか?

  • 人数増やす
  • 原作通り20人で進める
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