彼女にいったい何があったのか…?
お楽しみいただければ幸いです。
ヒミコside
「おかーさん!みてみて!できた!」
「まぁっ、すごいわね妃神子!よく頑張ったわね!」
私は昔から、頭がいい方だったと思う。
両親は二人とも研究者で、物心ついた時から研究資料や論文を絵本代わりに育ってきた。
『天才』、『神童』、色んな呼ばれ方をされてきた。
だけど私にとっては、そんなのどうでも良かった。
最初はただ、お母さんに喜んでほしかっただけだった。
お父さんは私が生まれる前に研究所の事故で亡くなってて、お母さんが女手一つで私を育ててくれた。
科学者だったお母さんは毎日研究で忙しかったけど、それでも私が難解な参考書やパズルを解いて見せに来たらすごく喜んでくれた。
私は、それが当たり前の事だと思ってた。
だけど学校に行ける歳になって親以外の人間と接しているうちに、自分が人とは違う事をいやでも自覚する事になった。
「妃神子、学校はどうだった?」
「お母さん…私ね、本当は学校楽しくないんだ。クラスの子がね、『ヒミコちゃんと遊んでてもつまんないからもう遊ばない』って」
小学校に入学してから、たったの1週間で孤立した。
漢字で名前を書いただけで、『習ってない事をやるな』ってものすごく怒られた。
クラスメイトとも全然話が合わなくて、私はクラスの中で一番身体が小さかった事もあって、すぐにいじめのターゲットにされた。
クラスメイトも、教師も、全員が私の敵だった。
私がその事をお母さんに相談すると、学校で孤立した私を見兼ねて、お母さんがある提案をしてきた。
「ねぇ妃神子。お母さんと一緒にアメリカ行こっか。向こうには、妃神子みたいに頭のいい子がいっぱいいる学校があるの。そこなら、妃神子もきっと馴染めると思うわ」
お母さんは、私の為に、アメリカにあるギフテッド教育に特化した学校を探して編入手続きをしてくれた。
そこは天才しか入れないような超難関校だったけど、私はその学校の編入試験と進級試験を突破して、一番上のクラスに配属された。
私は、そこでなら自分の居場所を作れるかもしれないと思って楽しみにしていた。
だけど私は、そこでも孤立した。
「妃神子、どうしたのその怪我!?」
「お母さん…私もう学校行くのやだよ…!」
私は、編入してすぐに学校で酷いいじめを受けた。
クラスのリーダー格の生徒が授業中に間違いをしたからそれを指摘したら、『アジア人のくせに生意気だ』って暴言を吐かれて、思いっきり突き飛ばされた。
ソイツは典型的なレイシストで、日本人の私が自分より成績が良いのが気に入らなかったらしく、他のクラスメイトと結託して私をいじめてきた。
先生に助けを求めたけど、いじめっ子の親が学校に多額の寄付をしていたから、先生達も助けてくれなかった。
入学してから3日で不登校になって、渡米してからたったの1ヶ月で帰国した。
階段から突き落とされたり生卵をぶつけられたりするくらいなら、字を書けないフリをする方がいくらかマシだった。
『出る杭を打つ習性があるのは日本人だけだ』、なんて言ってたどっかの評論家気取りに唾を吐きかけてやりたい気分だった。
その後もお母さんは、私の為に学校や塾を探してくれたけど、結局私の馴染めそうな場所は見つからなかった。
だけど私達を取り巻く悪意は、それだけに留まらなかった。
「一二さん、娘さんの取材の件、受けてくれる気になりました?」
「研究がうまくいってなくてカツカツなんでしょう?取材を受けてくれたら、謝礼の方オマケしときますよ」
「いい加減にして下さい!!取材は受けないって何度も言ってるでしょ!?お願いだから、もう帰って!!」
どこから情報が漏れたのかは知らないけど、私の知能に目をつけたマスゴミ共が、こぞって毎日のように私の家に押しかけてきた。
私が好奇の目に晒される事を嫌がったお母さんは、毎日何十件も来る取材の依頼を全て断り続けてきた。
私がいじめられたり、下品な連中が私目当てで擦り寄ってきたりする度に、お母さんは心労で窶れていった。
私は、お母さんが私のせいで苦しい思いをするのが嫌だった。
私なんかいない方がお母さんは幸せになれたんじゃないか、そう思った事もあった。
「お母さん。普通に生まれてこなくてごめんね」
「普通になんかならなくていい。妃神子の事は、お母さんが守るから…!!」
マスゴミの対応に疲れたお母さんは、私を連れて、アイツらが追ってこない田舎に逃げ込んだ。
お父さんの遺産で山を買い取って、山奥の古い小屋でお母さんと二人で暮らした。
何もかもが自給自足だったけど、生きる為に知恵を駆使する生活は、今までの窮屈な生活より断然心地が良かった。
「お母さん。学校はもう行かなくていいの?」
「いいのよ、あんな妃神子の才能を妬む連中しかいないところになんか行かなくて。あんなレベルの低い奴等なんか、相手にする事ない。妃神子の才能は、本当に必要としている人の為だけに使ってあげて」
私は、お母さんの事が大好きだった。
お母さんは、私の才能を妬んだり悪用したりせずに、私だけを見てくれた。
どんなに忙しくても、私が難解な問題を解決する度に、お母さんはすごく喜んでくれた。
お母さんの笑顔を見る事が、私の幸せだった。
だけどある日を境に、お母さんと私の間にすれ違いが生じるようになった。
「やったぁ!!また勝った!!」
「すごいわね、妃神子!」
お母さんは、仕事が休みの日は、よくチェスに付き合ってくれた。
だけどいつからか、毎回私が勝つようになった。
「…ねえお母さん。私が子供だからって、手加減しなくていいからね。最近勝ってばっかでつまんないよ」
「え!?あ、そ、そう?ごめんね…」
当時の私は、私がゲームを楽しめるように、お母さんが手加減してくれているんだと思ってた。
だけど、違ってた。
お母さんは、私のような天才じゃなかった。
お母さんは、私を退屈させない為に、必死で私のレベルに追いつこうとしていた。
だけど、限界はすぐに訪れた。
お母さんと一緒にゲームをするのがつまらなくなった私は、一緒に遊んでくれる対戦相手を求めて、オンラインのボードゲームに入り浸るようになった。
オンラインのボードゲームをやっているうちに、古参の人にも勝てるようになってきたけど、プレイヤーの中に一人だけどうしても勝てない人がいた。
フェイフォンさんって人で、将棋でも、チェスでも、私を完膚なきまでに負かしてきた。
どのゲームでも私の戦略をことごとく先読みして先手を打ってきて、まるで私の思考が全部読まれているみたいだった。
あんなの、生まれて初めての事だった。
ずっと勝てないのは悔しかったけど、生まれて初めて超えたいと思う人に出会えて、あの時の私は確かに高揚していた。
フェイフォンさんは、仕事が激務らしくてサイトにアクセスしてる事は稀だったけど、私が対戦を申し出た時は毎回対戦してくれた。
何度挑戦しても完膚なきまでに叩きのめされたけど、それでも私は勝てるまで何度も対戦を申し込んだ。
ようやく私以上に頭のいい人に出会えたのが嬉しくて、思い切って『友達になってくれませんか』ってメッセージを送ったら、彼は『僕に一回でも勝ったら友達になろう』と返信してくれた。
私は、彼の事をもっとよく知りたくて、彼がサイトにアクセスしているのを見つけるたびに舞い上がりそうになった。
だけど、ようやく居場所を見つけた私とは逆に、お母さんはどこか疲れた様子だった。
「…ごめん妃神子。お母さんちょっと疲れちゃった。しばらく一人にしてくれる?」
「お母さん…大丈夫?」
いつからか、お母さんはいつも元気がなかったように思う。
長年続けてきた研究がうまくいかなくて、いつも落ち込んでいた。
私は、お母さんの喜ぶ顔が見たかった。
「ねぇお母さん。この研究が完成したら、お母さん嬉しい?」
「ええ、そうね。この研究が完成すれば、多くの人の命を救えるのよ。そうなったら嬉しいわね」
私はただ、お母さんに喜んでほしかっただけだった。
お母さんは普段私をラボに入れてくれないから、お母さんがいない時にこっそりラボに入って研究を手伝った。
そんなある日、いつものようにお母さんがいない間にこっそり研究の手伝いをしていたら、たまたまお母さんの研究が完成した。
「お母さん!!見て!!できた!!」
「えっ、嘘…!?本当に妃神子が作ったの!?」
「うん!なんかできた!ねぇお母さん、ヒミコすごい?」
「すごいなんてもんじゃないわ…私が10年かけても一度も成功しなかったのに…!」
私が完成させたのは、お母さんが長年研究してきた、当時治療不可能とされていた感染症を抑制する治療薬だった。
私が完成させた研究を見て、お母さんはしばらく考えた後、私に話しかけてきた。
「ねえ妃神子。これ、お母さんが作ったって事にしてもいい?」
「うん、いいよ!」
私は、お金や名声なんかどうでも良かった。
お母さんの喜ぶ顔が見られれば、それで良かった。
完成した研究を学会で発表したお母さんは、瞬く間に世界中から注目を浴びた。
今までお母さんの研究に見向きもしなかった科学者達が、皆お母さんを称賛した。
その一件でお母さんは科学者として名誉な賞を受賞して、多額の賞金と助成金のおかげで、私達の生活は潤った。
私は、きっとお母さんは喜んでくれるだろうと思ってた。
でもお母さんは、喜ぶどころか日に日に心を病んでいった。
だけどある日、お母さんが怖いぐらいに機嫌がいい日があった。
「妃神子。今日は妃神子の好きなもの作ってあげる。何食べたい?」
「んっとねぇ、じゃあ…オムライスとハンバーグとエビフライ!」
「わかったわ。すぐ作るからちょっと待ってて」
「わぁい、やったぁ!」
ある日お母さんは、私の為にご馳走を作ってくれた。
私は、その日初めて絶対王者のフェイフォンさんにボードゲームで勝った事を報告した。
きっとお母さんが喜んでくれると思ったから。
「そういえばお母さん!私ね、今日初めてボードゲームでランキング1位になったんだよ!」
「うるさい…」
「1位になったら1番にお母さんに見てほしかったから、プレイ画面録画しといたの。ほら見てよこれ!」
「うるさいんだよ!!」
私が報告すると、お母さんはいきなりテーブルの上のご馳走をぶちまけて怒鳴りつけてきた。
「どうせ私はアンタみたいな天才じゃないわよ!!学会で研究を発表した時、あのジジィ共に何て言われたと思う!?『本当に君が作ったのか』、だってよ!!ええそうよ、どうせ私は、娘が完成させた研究でしか有名になれない凡人よ!!あの研究で褒められたって、ちっとも嬉しくなんかなかった!!アンタに負けた事実を突きつけられて、プライドがズタズタになるだけだった!!」
「お、お母さん…?」
「何なのよ、アンタ!!リアルの友達を一人も作らずに、顔も本名もわからない相手とパソコンでゲームばっかりやって!!本当に気持ち悪い!!私はもう、アンタが何考えてるのかわかんないのよ!!」
「お母さん…私はただ、お母さんに喜んでほしくて…」
「昔からずっとそうだった!!お前の才能は、いつだって私を苦しめる!!何もかも、全部お前のせいだ!!」
あの人は、いきなり私を全否定してきた。
『普通じゃなくていい』、そう言ってくれた頃のお母さんはもう、いなかった。
…いいや、違う。
本当は、ずっと前から壊れてたんだ。
『普通じゃなくていい』なんて、凡人の精一杯の強がりだった。
結局お母さんも、私を貶めた奴等と同類だった。
その時だった。
急に強烈な眩暈と吐き気、息苦しさを覚えたのは。
「ぅぐ…!?ガハッ、ゲホッ、ゲホッ…!!ぐ、苦しい…!お、お母さん…助け……」
うまく呼吸ができなくなって、私は無我夢中でお母さんに助けを求めた。
だけどお母さんは、殺意のこもった目で私を睨んでくるだけだった。
その時、ようやく気がついた。
お母さんが作ってくれたご飯に毒が盛られていた事に。
お母さんは、本気で私を殺そうとしていた。
きっと、私を殺した後の事なんか考えてなかったと思う。
あの時のお母さんは、もう正気じゃなかった。
「死ね!!私の視界から消えろ!!お前なんか、生まれてこなきゃ良かったんだ!!」
それが、意識が途絶える寸前、あの人が私に言い放った言葉だった。
その言葉を聞いた瞬間、私の中で大事な何かがプツン、と音を立てて切れた。
私が目を覚ましたのは、それから1ヶ月後の事だった。
担当医曰く、あと少し治療が遅れていたら私は助かっていなかったらしい。
お母さんは、この一件の後、重度のノイローゼと診断されて精神病棟に入院した。
退院した後、親族の全員が引き受けを拒否したから、私は児童養護施設に送られた。
お母さんに見捨てられて、私のたった一人の友達だったフェイフォンさんに助けを求めようと、ボードゲームのサイトにアクセスしたら、アカウントが削除されていた。
アカウントが削除された今、もう私が彼とコンタクトを取る手段は無い。
私が母親の…あの女のせいで昏睡状態になっている間にサイトとアカウントが削除されたから、私はあの人と別れの言葉を交わす事もできなかった。
私は、くだらない嫉妬心で私を殺そうとしたあの女に復讐すると決めた。
何一つ成果を残せずに私の手柄で有名になったバカの分際で、勝手にノイローゼになって私から何もかもを奪おうとしたあの女だけは、絶対に許さない。
私があの女の抹殺を実行に移したのは、私がアイツに殺されかけてから2年後の事だった。
アイツの病室に人が寄りつかない時間帯を徹底的に調べて、事故に見せかけてアイツのいる病室を爆破した。
翌日のニュースで、アイツが爆発に巻き込まれて重傷を負った事を確認した私は、施設の先生に付き添ってもらって、一緒にあの女のお見舞いという名の状況確認に行った。
アイツは、全身に修復不可能な火傷を負って、全身に包帯を巻いて、爆発で四肢を失って一人じゃ何もできない身体になっていた。
アイツは、私が病室に来たのを確認すると、私に向かって掠れた声で一言放った。
その言葉を聞いた私は、病院を飛び出して、思いっきり大笑いした。
「ぎゃははははははははは!!!ザマアミロ!!あははははははは!!」
その時だった。
私が、空に上がる巨大な花火を見たのは。
――ミーンミンミーン…
「…………え?」
『今際の国』滞在1日目。
私は、気がつけば『今際の国』に迷い込んでいた。
そのまま、訳も分からず『げぇむ』に参加した。
ーーー
げぇむ 『ちぇす』
難易度
ーーー
私が初めて参加したのは、知能型の『げぇむ』の中でも2番目に難易度が高い『げぇむ』だった。
1人しか生き残れない『るうる』だったから、生き残る為に相手を脱落させたら、本当にソイツが死んだ。
私の対戦相手の首輪が爆発して、血と脳漿が顔に飛んできた。
「何なのよこれ…!本当に、人が死んだ…!!」
私以外、全員死んだ。
『びざ』とトランプが発行されて、私は生き延びた。
私は、初めて経験する死の恐怖に、ただただ怯える事しかできなかった。
このまま一生、いつか確実に来る死の恐怖からは逃れられないのか、そう思った。
『げぇむ』を『くりあ』した私が多摩川の河川敷の高架下に身を隠して怯えていると、頭の悪そうな男が二人私のところに来た。
「あーあ、やっと女見つけたかと思えばガキじゃねぇか」
「まーいいじゃねーか。突っ込める穴がありゃあよ」
「ねえお嬢ちゃん、どこから来たの?一緒に遊ばない?」
「いや!!離してください!!」
ソイツらは、あろう事かまだ小学生の私を暴行しようとした。
身の危険を感じた私は、すぐに逃げようとした。
だけどその直後、もう一人の男が思いっきり私を蹴り飛ばしてきた。
「喰らえ、竜巻旋風脚〜!!」
いきなり蹴っ飛ばされた私は、身体をくの字に曲げて吹き飛んだ。
訳がわからず混乱して嘔吐する私を見下して、ソイツらはヘラヘラ笑った。
「うわ、ひっでぇ」
「一回やってみたかったんだよなぁ〜これ。オレら格ゲー世代だべ?」
「ガハッ…!!ゲホッ、ゲホッ…!!」
「抵抗したら二度と『げぇむ』できない身体にしてあげちゃうよ?」
そこからは、一方的な暴力だった。
私はこの日、身をもって思い知る事になった。
圧倒的で理不尽な暴力の前では、知能なんか何の役にも立たないという事を。
命からがら生き延びたって、妬まれて、いじめられて、裏切られて、嬲られて、奪われて、最期は家畜のようにただただ死を待つだけの人生なら、最初からこんな才能なんかいらなかった。
久しく味わっていなかった本物の暴力に、私は失禁しながら泣いて許しを乞う事しかできなかった。
「ひぐっ…ぇぐっ、ごべんなざっ…もうゆるぢで…」
「やぁーっと大人しくなった」
男2人に殴られて抵抗する気力もなくした私は、服を脱がされて2人がかりで押さえつけられた。
なんで私があんな目に遭わなきゃならないのか、訳が分からなかった。
「お嬢ちゃん、お名前なんていうの?」
「ひ、ひみこ…です…」
「へぇ〜、ヒミコちゃんっていうんだ。ちっちゃくて可愛いね」
「そんじゃお楽しみタイムといきますがッ」
私が何もかもを奪われるのを覚悟したその時、いきなり銃声とともに男の頭が吹き飛んだ。
「………?」
銃声のした方を振り向くと、そこには女の人が立っていた。
黒い頭巾を被っていて、口元を布で隠していたけど、よく見るとプラチナブロンドの髪と青い眼、陶器のような白い肌をしていて、素直に綺麗な人だと思った。
年齢は、10代後半から20代前半くらいだろうか。
ブラトップとショートパンツといった露出度の高い格好が、彼女のスタイルの良さを引き立てていた。
女の人は、手にライフルを持っていて、無言でこっちを見ていた。
「…………」
「な…女…!?」
「な、何なんだよぉ!?」
バカ二人が慌てふためく中、女の人は、今度は腰に差していたハンドガンを抜いて銃口を向けてきた。
私が咄嗟に身を屈めて伏せた直後、彼女はバカ二人をハンドガンで撃ち殺した。
『げぇむ』でもないのに人が人を殺す光景を目の当たりにした私は、ショックで理解が追いつかなかった。
次は私だと思ったその時、彼女はハンドガンを腰に差し、英語の手話で私に『大丈夫?』と聞いてきた。
私が呆然としていると、彼女はため息をつきながら去っていこうとする。
私は、咄嗟に彼女に叫んだ。
“
私が英語で叫ぶと、彼女は足を止めて振り向く。
どうやら耳が聴こえないわけじゃなくて、口が利けないだけらしい。
私は、地面に投げ捨てられた服を回収しながら、彼女に話しかけた。
“
私が話しかけると、女の人は大きく目を見開いて、いきなり私の肩を掴んで揺さぶってくる。
日本人で英語が話せるのがそんなに珍しいのかな、と思った。
するとその時、後ろから声が聴こえた。
「ぁ…がっ…た、たすけ……」
どうやら女の人が撃ったバカが一人だけ死んでいなかったらしく、血を流しながら助けを求めていた。
女の人は、助けを求めるバカを容赦なく撃った。
眉間を撃ち抜かれたバカは、今度こそ呆気なく死んだ。
« 弱い。 »
女の人は、東スラヴ系の言葉でポツリと呟いた。
「………!!」
奪われて、使い捨てられて、ゴミみたいに死ぬべきなのは、果たしてどちらなのだろうか。
この時私は、今まで自分がとんだ思い違いをしていた事に気がついた。
…ああ、そうか。
今まで受け身だったからいけなかったのか。
この世界は弱肉強食。
踏み躙られるのが嫌なら、こっちが先に踏み躙ってやればいい。
卓越した知能を持って生まれた私が、知能の低い凡愚に虐げられていい道理なんか無い。
私は、奴等に翻弄される人生を送るべき人間じゃない。
私が、群れて増えるしか能のない蛆虫を淘汰してやるのよ。
奴等は人じゃないから、殺したって、奪ったって、何をしたっていいの。
« この国のシステムは、無駄が多すぎる。人と呼ぶのも悍ましい、無能なクズどもが大量に生き残ってるこの有り様。もっと厳正で効率的な選別が必要だわ。この世界は弱肉強食。人じゃない奴等は、淘汰されるべきなのよ。 »
« ! »
私が彼女の言葉で返してあげると、彼女は僅かに目を見開く。
« 私の頭脳なら、『今際の国』のシステムを掌握できるかもしれない。私は、『今際の国』の国王になってこの国を一から作り直す。あなたもついてくる? »
« ♪ »
私が言うと、彼女はコクっと頷いた。
彼女は名前をルーナと言って、まるで昔飼ってたバカ犬みたいに懐いて私の後ろをついてきた。
私の作る王国の家臣第一号には、王を守る『
私が『今際の国』に迷い込んで62日目、『ねくすとすてぇじ』が始まった。
「そんな…!たった8手で…!?」
「あれれぇ?どうしたの?こんな子供に連敗して恥ずかしくないの?オバサン」
私が挑発すると、当時の『
『
『
私は自動的に『げぇむくりあ』になって、『
私が『げぇむくりあ』したちょうどその時、どこかでもう一つの飛行船が落ちた。
飛行船が落ちた方角からは、ルーナが歩いてきた。
« あ、やっぱりあなたも『げぇむくりあ』したのね。誰倒した?私は『
« ……『
私が尋ねると、ルーナが答える。
『ねくすとすてぇじ』を『くりあ』した後、私と彼女はこの『今際の国』に残る事を選び、私は新たな『
この国のシステムを管理してる『じょおかあ』から『今際の国』の支配権を奪い、私が国王になってこの国を一から作り直す。
そしたらこの国の滞在者を『家臣』と『家畜』の2種類に分けて、『家畜』にすらなれないゴミは全員排除してやる。
『げぇむ』は、私の作る王国に要らないゴミを処分して、使える奴だけ生き残らせる為の、所謂『選別』。
全てが合理的に管理された、私の為の理想郷を作る。
その為なら、利用できるものは全部利用して、何が何でも生き残ってやる。
◆◆◆
クリハラside
「この世界には、バカが多すぎる。どいつもこいつも、私よりバカだからってくだらない嫉妬心で私の足を引っ張りやがって。『妬み』、この世で最も忌むべき感情だわ。私は、この国の国王になって、使えないゴミを一匹残らず排除してやるのよ。知能の低いゴミが私に逆らっていい理由なんか無い。
俺は、ヒミコが絵札の主として君臨している理由を、その口から聞いた。
話が終わると、俺は思った事を率直にヒミコに伝えた。
「ちっせぇなぁ」
「………は?」
「黙って聞いてりゃ、マジでクソくだらねぇ。理想郷を創ったらママがキャンディーくれるってか?頭の悪い奴が自分より幸せに生きてるとイラつくだろ?お前さんだって、所詮お前さんが見下してる奴等と同類なんだよ。…いや、罪を犯してる時点で、オレん中じゃお前はソイツら以下だな」
俺が鼻で笑いながら言うと、ヒミコは額に青筋を浮かせる。
おうおう、キレてるキレてる。
おお、怖い怖い(笑)。
「ふざけないで!!私があんな低俗なゴミ共より下ですって…!?」
「ハッキリ言ってやるよ。お前が国王になったところで、家臣どもは誰もお前について来やしない。お前には、人の上に立つ人間として、一番大事なものが致命的に欠けてるからだ」
俺は、ヒミコの計画の矛盾をわかりやすく指摘してやった。
するとヒミコは、飴を噛み砕いて俺を睨みつけてくる。
「おいチヂレ頭。それ以上喋ったら殺すぞ…クズがよ!!」
ヒミコは、俺を睨みながら罵倒してきた。
殺す…殺す、か。
想定してたリアクションだな。
ここは、俺が昔読んでた漫画の名台詞で挑発してやるか。
「殺す…ねぇ。あまり強い言葉を使うなよ。弱く見えるぞ?」
俺が不敵な笑み(のつもり)を浮かべて煽ってやると、ヒミコは目を見開いてブチ切れた。
いいぞ、もっと怒れ。
そっちがキレてくれた方が、俺が勝ちやすくなるんだよ。
俺は、アンの肩に手を置いて前に出た。
「アン。次は俺が出る。そろそろこのクソガキにキツいおしおきをしてやらねぇとな」
「勝算はあるの…?」
「勝算もクソもあるかよ。こんな毛も生え揃ってねぇお子ちゃまの考える数字なんざ、オレが一発で当ててやる」
そう言って俺は、ヒミコと反対側の椅子に座った。
さぁ、決着つけようぜクソガキ。
お前の大好きな、制裁ごっこの時間だ。
『
『げぇむ』の内容も、全く違った内容にする予定です。
ただしドラマ版の『
正直ドラマ版の『
♡J編にオリキャラを登場させるつもりなんですが、定員を増やすのと原作通り20人で進めるのとどちらがいいですか?
-
人数増やす
-
原作通り20人で進める