ニラギside
「せーのっ、よっ!」
「ぎゃっ!!」
今になっても、時々思い出す。
河川敷で、バッティングの的にされたり、プロレス技をかけられたりした時の事を。
「なん…で…何で…僕にばっか…こんな事するんですか…」
「別に理由なんかねーよ。ただ、何つーか…お前見てっと何かムカつくんだよな」
「あーそれわかる!」
嫌われたから、歪んだのか。
それとも…
歪んでいたから、嫌われたのか。
アイツらが去っていった後、俺は地面を睨んでいた。
その時、黒い野良猫が物陰から出てきた。
俺がボロボロになった身体を起こすと、野良猫は俺に威嚇してそのまま走り去っていった。
…ははっ、とうとう猫にも嫌われたか。
俺がヤケクソ気味に笑った、その時だった。
「だいじょうぶ?」
不意に声をかけられて振り向けば、2、3歳くらいの女のガキが立っていた。
ガキは、俺にハンカチを差し出してきた。
「ん」
「…いらない」
「ん!」
俺が拒絶しても、ガキはハンカチを差し出した。
「いらねぇっつってんだろ!消えろ!」
俺がガキの手を払いのけると、ハンカチが地面に落ちた。
するとガキは、目と口をアホみてぇに開いてポカンとした表情を浮かべた。
「ねこちゃん」
「は?」
そのガキがポツリと呟いた、その時だった。
「ヒヅルちゃん、こんなところで何してるの!?探したのよ!」
「ママ、ねこちゃんいた!」
「はいはい、ネコちゃんいたのね。おうち帰るわよ」
ガキを探しに来た女が、ガキの手を引いて去ろうとした。
俺と目が合った女は、まるで路上のホームレスを見るような、忌避と憐憫の目を俺に向けてきた。
女に手を引かれたガキは、振り向きざまに俺に手を振った。
「…ばいばい」
ガキはそのまま、女に手を引かれて帰っていった。
あのガキは、ブランドものの子供服を着せられてた。
きっと周りに好かれて、愛されて、祝福されて生きてきたんだ。
俺とは違う。
あんなガキに、俺の事なんかわかるはずがない。
あのガキも、大人になる頃には他と同じになる。
アイツだって、どうせ俺を嫌って拒絶するんだ。
「へー、オニーサン『げぇむ』好きなんだ。オレも一緒」
一人だけ、どんなに俺が嫌がらせをしても俺を嫌わない女がいた。
犯そうとしても、『げぇむ』で見殺しにしようとしても、すまし顔をしてやがった。
ソイツは、かつて一人だけ俺に優しくしてきた女のガキだった。
周りから好かれてたくせに、今じゃ随分と生意気なクソガキになって、誰も信用してねぇって目をしてやがった。
周りと同じになるどころか、俺と同類になってやがった。
俺が嫌われる事でしか居場所を作れねぇクズなら、アイツは『
尚の事、アイツがムカついて仕方なかった。
「何で『げぇむ』について来んだよテメェ」
「…だって、初めてだったから。オレの生き方を理解してくれる人」
あの女だけは、バカみてぇに俺について来やがった。
だがあの女も、結局俺の前から消えやがった。
俺が何もしなくても、アイツは勝手に離れていった。
あれだけムカつくガキだったはずなのに、消えたらスカッとするどころか、虚しくなるだけだった。
何でアイツがムカついて仕方なかったか、ムカつくのに俺の前から消えたら虚しくなったか、わかった気がする。
◇◇◇
『げぇむ』の残り時間が、20分を切った。
『
奴等はもう、残り時間は誰一人『じんち』の前から動かず、『ばとる』もしない。
残りの『あいてむ』をゲットしても、逆転は不可能だ。
今になって、なんでこの『げぇむ』に『あいてむ』があるのかがわかった。
もし『あいてむ』が無かったら、勝敗はたった一回の『ばとる』で決まっちまう。
『あいてむ』という不確定要素がある事で、会場内を動き回って点数を奪い合うこの『げぇむ』が成立してたんだ。
残り時間がどれだけあろうと、あとはもう消化試合だ。
「それでも!!このままじっとなんかしてられるかい!!ウチは、最後の『あいてむ』を探すで…!!」
「わかんねーのかよ!?今更そんな事したって…余計につらくなるだけ…」
「んなもんわかっとるわ!!たとえ自己満足でも…ウチはただ、最後の最後までできる事やって、納得して死にたいだけや!!」
そう言ってクイナは、最後の『あいてむ』を探しに行きやがった。
ウサギは右腕が折れてもう戦力にならねぇし、
…いや、コイツらが動けたところで、俺らの負けはもう覆せねぇか。
今にして思えば、何ともらしくない気まぐれだった…
何故俺はあの時、数ある『げぇむ』の中からよりによって…
『
『
この俺がチームプレー?
冗談にもなりゃしねぇぜ…
嫌われ、嫌われ続け、嫌われ続け、嫌われ続けるだけの人生。
1人だけ俺を毛嫌いしねぇクソガキがいたが、結局アイツも俺から離れていった。
そんな俺が、チームプレー?
………けどよ、アイツらと一緒に『げぇむ』をする事で、俺はようやくわかっちまったんだ…
俺は、1人で『げぇむ』会場を彷徨いているウサギに歩み寄った。
ウサギは、特に俺を警戒する事もなく振り向いた。
どうせ永くはねぇ身なら、最期に一度くらい…誰かと協力して何かを成し得る事で…
必要とされてみたかった…
好かれて、みたかった…
………なァんて事を、これっぽっちも思わねぇ、歪んだ人間が、俺だったんだよォ!!
俺は、振り向いたウサギの顔面を、思いっきり殴った。
「がっ…!!ニラ…ギ!?何を…!?」
ウサギは、鼻と口からボタボタ血を垂らしながら、俺に反撃しようとする。
俺は、ウサギの折れた方の腕を掴んで、地面に組み伏せた。
「あ…あああああああ!!」
ウサギが痛みで叫ぶと、俺はこの女を大人しくさせる為に、右手で首を掴んで絞めた。
するとウサギは、俺を押し除けようと必死に暴れた。
痛手の女だってのに、何つー馬鹿力だコイツ…!!
「直にオレ達ァくたばるんだ!!どーせなら、2人のお楽しみの続きをしようぜ!!最期にテメェと1発ヤって、スカッと気持ち良ォく人生の幕引きといこうじゃねーの!!片手とはいえ怪力女だからよぉ…大人しく…しといてもらうぜ!!」
俺が首を絞める力を更に強めると、ウサギはとうとう意識を失った。
チッ、手間かけさせやがって…
「ぎゃ…はは!無抵抗ってのもちと味気ねぇが…時間もねぇし…そこは我慢するか……」
そう言って俺がウサギのスパッツをパンツごとずり下ろした、その瞬間だった。
――ゴッ!!
「テ…メェは…何をやってんだよォッ!!」
アリスは、感情まかせに俺に怒鳴り散らした。
俺は、アリスを見下すように笑いながら身体を起こした。
「ぎゃ…はは…言った…ろォ…生き死には二の次…『げぇむ』は楽しめるかどうかだけだってよォ…何が、チームワークだよ…!!くっだらねぇ…クソみてぇな『げぇむ』だったぜ…オレはよォ…わかっちまったんだよ。オレという人間が…オレの楽しみは…テメェだよアリス!!」
「…何!?」
「大勢に信頼され好かれ、まるで希望の塊みてぇなテメェが、オレは心底、憎くて憎くてしょうがねぇ!!だからこの手でグチャグチャにしてやりたかったのさ!!そんなテメェにとっての希望そのものを!!テメェが人生最期の瞬間を、惨めったらしいクソみてぇな気持ちで終える姿を拝めりゃオレは、ここで死んでも、本望ってもんだぜェェ!!」
「う…あああああああ!!」
俺が散々挑発してやると、アリスは激昂して俺に殴りかかった。
俺に馬乗りになって、何度も顔面を殴りつけてきた。
「ぎゃ…は!!ぎゃはは!!」
い…いるんだよアリス!!
この世には、オレみてぇな…他人から嫌われる事でしか居場所を作れねぇ…生まれながらの
◆◆◆
クイナside
『げぇむ』会場を探し回ったウチは、とうとう開いとるコンテナを見つけた。
「見つけた…!!最後の『あいてむ』や…!!」
ウチは、2500点分の『あいてむ』をゲットした。
これでウチらの『げぇむおおばぁ』が回避できたわけやない。
せやけど…
「はは…2500点ゲットォ…!これで…自己満足…完了や…」
《『ぷれいやぁ』チームに、点数の移動がありました》
◆◆◆
アリスside
ニラギからウサギを助け出した俺は、ウサギを抱えて『じんち』に戻った。
俺は、ウサギを手当てしながら、『じんち』のポールの前で蹲っているタッタに話しかける。
「…………なぁ、タッタ…そういやオレ…まだちゃんとタッタに伝えてなかったよな…あの時…『ビーチ』の皆が悲しみを乗り越えようと、必死に前に進もうとしてて…けどそれは、簡単な事じゃなくて…皆が苦しんでたあの時…あのランボルギーニが皆の救いになった…タッタが、オレ達に立ち直るきっかけをくれたんだよ…あの時は、ありがとな」
俺が言うと、タッタは少しだけ顔を上げて、またすぐに俯いた。
「ほら…オレ達ってもうすぐ…死んじまうじゃん?…だからさ、最後にそれだけ、ちゃんと伝えときたかったんだ………じゃあな、タッタ…」
俺は、タッタにそう言い残して、少し一人になろうとした。
◆◆◆
キューマside
俺達が『今際の国』に来てまだ日が浅い頃、俺はシタラ達とこの国で自由気ままに過ごしていた。
「ホントだって、オレ見たんだって!デッカい鳥!」
「ここが『今際の国』だからって、そんなデケェ鳥はいねぇだろ」
「酔っ払ってたんじゃねーのか?」
「そん時はシラフだったぜ!」
俺は、他の4人と焚き火を囲んでその日あった事を話していた。
夜明け前、俺が海沿いを散歩していると、ダチョウくらいデカい鳥が空高く飛んでいるのが見えて、その鳥は海の上で旋回して陸の方向へと戻っていった。
シタラとゴーケンは、最初は信じてくれなかったけど、俺は確かにこの目で見た。
「そうだ、じゃあ今度は皆で港に行ってみようぜ!また鳥が来るかもしれないだろ?」
「ちょっと待って、今から行くの?」
時間が時間だったから、ウタは俺の提案に驚いてはいたけど、結局満場一致で怪鳥を見に海に行く事に決まった。
俺がまだ薄暗い海に向かって大声で叫ぶと、俺の声に反応してか、鳥が飛んできた。
だけどその日は、前の日よりもずっと低く飛んでいて、その姿がハッキリと確認できた。
「おっ…女ぁ!?」
俺がデカい鳥だと思っていたのは、ハンググライダーに乗った女だった。
自由気ままに広い空を飛ぶ女を見た俺は、思わず笑っていた。
「あはっ!!」
「キューマ!?」
俺は迷わず、近くに着地した彼女に話しかけに行った。
「やあ!」
俺が話しかけると、ゴーグルを外して振り向く。
「オレはキューマ。君は?」
「イバラ。茨原花江よ」
俺は、その日のうちにイバラと意気投合して、友達になった。
一緒に『げぇむ』に参加するわけでもなく、焚き火を囲んで駄弁り合った。
「皆もやる?コツ掴んだら楽しくなるわよ」
イバラが俺達にハンググライダーを勧めると、シタラがイバラに尋ねる。
「空飛んだら、この国から出られんのか?」
「いいえ!噂では、領海を超えた瞬間に、レーザーで撃たれるって聞いてるわ」
「だったら何でこんな朝っぱらからハンググライダーをやってたの?」
イバラが言うと、ウタが尋ねる。
するとイバラは、無邪気な笑顔を浮かべて答えた。
「楽しいからよ。私は、こんなに自由で美しい世界を見た事がなかったの。明日死んじゃうかもしれないなら、思いっきり楽しまなきゃ損だと思わない?」
「
俺とイバラは、乾杯して笑い合った。
いつしかイバラは、俺にとって、仲間の次に大切だと思える親友になっていた。
◇◇◇
『げぇむ』終了3分前、俺は海を見に来ていた。
ウタには止められたけど、どうせもう誰も俺達の『じんち』には来ない。
それにここでなら、彼に会える気がした。
空を見上げると、カモメが飛んでいた。
こうして広い海と空を眺めていると、俺がまだ『ぷれいやぁ』だった頃、イバラと飲み交わした事を思い出す。
ハンググライダーに乗ったイバラを怪鳥と間違えて笑われたのも、今となっては懐かしい。
そんな事を考えていると、俺の考え通り、アリスが来た。
「もしかしてここでなら、会えるかもって思ったんだ。海って広いもんね。どうせなら人は
俺の隣に並んだアリスは、全身血で汚れていた。
アリスは、無言で俯いたままだった。
「残り時間は3分あるけど、もう…やめちゃうんだ…?」
「ああ…オレ達の…完敗だ…」
アリスはもう、最後の悪足掻きをする気力も残っていなかった。
最後にもうひと勝負仕掛けてくるんじゃないかって…期待してたんだけどね。
「ホントにそれで、後悔はないんだ?なーんか…ちょっとだけガッカリだね。過去形にしちゃうのは不本意だけど、良い『
「…なぁキューマ。最後に教えろよ…『答え』…」
「そりゃ駄目だね。諦めちゃったんだから。正直言うと、勝負を途中で放棄しちゃった今の君への興味は少し、薄れちゃってるんだ…」
「…だよな。……だったら、せめて死ぬ前に…オレと…あ…握手してくんねーか…?」
「……握手?」
「アンタは…オレがこれまで出会ってきた中で、ダントツにすごい人間だよ…敵なのに…仇なのに…自分でもおかしいってわかってるけど、それでも…アンタを尊敬し、感謝し、憧れすらしちまったんだ…だからオレも
「とはいえ、まだ『げぇむ』の途中だよ?今、オレに触れたら『ばとる』になってオレが勝っちゃうけど…そんな事はもう…今の君には…関係ないか…」
途中で諦めちゃったとはいえ…いい勝負
アリス…俺も、君には感謝しているんだよ。
俺も、君の敬意に応えよう。
「OK!好敵手の最期の裸の頼みだ。快く聞き入れよう!」
「ありがとな…キューマ…」
俺とアリスは、固く握手を交わした。
するとその瞬間、『ばとる』が成立して、俺の腕輪に点数が表示された。
俺の点数が12000点…そしてアリスの点数は、14700点だった。
「…………い、14700…!?」
何だ、これは…!?
見間違いじゃない…だとすると…!?
《両チームに、点数の移動がありました》
俺達のチームがリードしていた500点が、『ぷれいやぁ』チームに移動した。
「
◆◆◆
タッタside
5年前、当時高3だった俺は、高校を中退してお笑い芸人を目指した。
うちは父ちゃんが死んじまって、貧乏だったけど、母ちゃんが女手一つで俺を育ててくれた。
『死んだ父ちゃんにはちっとも似てない』、それが母ちゃんの口癖だった。
俺は、父ちゃんとは違う。
小さな車の整備工やって、毎日油にまみれて真面目に働いても、借金だけ遺して心労で逝っちまった父ちゃんは…
結局、家族を守れなかったんじゃねーか。
俺は、父ちゃんとは違う。
男ならデケー夢叶えてビッグになって、母ちゃんに二度と金の苦労はかけさせねーんだ。
女手ひとつで俺を育ててくれた母ちゃんに、恩返ししたくて何が悪ィんだよ!!
何とか芸人の養成学校に入った俺は、毎日バイトに明け暮れながら、ネタの練習をした。
だけど養成学校に入ってから3年目、俺はとうとうクビになった。
それでも夢を諦めきれなかった俺は、高校の頃のダチに勧められた能力開発セミナーを受講して、厳しい課題を乗り越えた。
講師に褒められた俺は、俺だってやればできるんだって、嬉しさのあまり他の奴等と抱き合って泣いた。
ダチのサークルのイベントの司会を頼まれた時は、メチャクチャでかいイベントにして、大成功を収めた。
もちろん最初からうまくいったわけじゃなかったけど、諦めずに片っ端から人を集めたら、当初の予定以上の人数が集まった。
だけど、イベントのビジネスがようやく波に乗ってきた頃、ダチは皆就職を理由にイベントを抜けた。
2年後、久々にダチ同士で飲み屋に集まって、酒を飲み交わした。
他の皆は、真面目に会社員やってた。
最初は、ビッグになる夢を掴もうとしてる俺は勝ち組で、就職した奴等はやりたい事から逃げた負け犬だと思ってた。
あれからちっとも前に進んでなかったのは、俺だけだった。
『やっぱり死んだ父ちゃんにちっとも似てない』、それがこの国に迷い込む前に、母ちゃんに言われた最後の言葉だった。
――逃げ続けたけりゃ好きにすればいいよ、腑抜け共が。
――何の役にも立ちそうもねぇクズは、他に見当たらねぇだろ?
――そんなに『げぇむ』が嫌なら、オレ達が全種類の『げぇむ』を『くりあ』するのを、指を咥えて見てろ。
――やっぱ何やらせても、クズはクズだな!テメェなんざに任せられる仕事は、どこにもねぇんだよ。
俺は、ヒヅルとニラギに言われた言葉を思い出した。
悔しいけど、アイツらの言う通りだ。
アイツらに馬鹿にされたのが悔しいんじゃない。
アイツらの言った事が全部正しいのが…俺自身が、本当に腑抜けでクズなのが悔しい。
――あの時は、ありがとな。
それでも…俺にとっては、アリスが言ってくれた言葉が、救いだったんだ。
◇◇◇
「じゃあな。タッタ…」
ウサギの手当てを終えたアリスは、そのまま立ち去ろうとする。
俺は、『じんち』にもたれかかったまま、アリスに声をかけた。
「……アリス…ちょっと…付き合ってくんねーか…?」
アリスを呼び止めた俺は、ある場所へアリスを連れて行った。
俺が来たのは、『あいてむ』があるコンテナの前だった。
「『あいてむ』は全部手に入れた…今更…こんなとこに来てどーすんだよ…オレ達は…負けたんだぜ…?」
「まだ…負けてねーよ」
そう言って俺は、コンテナの扉の取手を握って、手前に引いた。
「この会場では暴力行為を極力防ぐ為に、武器の持ち込みは一切禁じられてるけど…ここに…1つだけある…このドアでオレの腕を、切り落としてくんねーか?」
「…………………な、何を…言ってんだよ…タッタ……」
「オレの腕輪をお前が持ってりゃ2人分の戦力は、14700…たった一度の『ばとる』なら…奴等を欺けるかもしんねぇ…!!腕輪を外しちゃいけねーって『るうる』は、無かっただろ?これはオレ1人じゃできねーんだ…頼む…!!手を貸してくれッ!!」
俺は、コンテナのドアに左腕を挟みながら、アリスに頼み込んだ。
皆が生き残る為にはもう、これしかねぇんだ…!!
「でき…ねぇよ…!そんな事…できるわけねーだろッ!!」
アリスは、首を横に振って、俺の頼みを拒んだ。
……やっぱり、優しい奴だよお前は。
「…どうしようもねぇ…人生だった…何をやってもダメだった…こんな安物のオレに…かけてくれた一言で…その一言でオレが…どれだけ救われたか…!!その一言だけでオレは…オレは…!!」
アリス…俺はな。
俺を救ってくれたお前にだけは、勝ってほしいんだよ。
「…アリス、
俺は、ジャージの袖を噛みながら、覚悟を決めてアリスの目を見た。
「…へへっ、心配すんなアリス…腕一本千切れたくらいじゃ、オレは死なねーよ…!!勝って全員で、ここから出ようぜ!!」
俺が言うと、アリスは俯きながら拳を固く握りしめると、ようやく決心して取手を掴んだ。
「う…うああああ!!!」
――ガァアアアンッ!!
「ぐ…!!ゔゔ…!!」
「ああああああ!!!」
アリスは、俺の左手が千切れるまで、何度もコンテナのドアを叩きつけた。
終了3分前、やっと俺の左手から腕輪が外れた。
「すぐに…止血しねーと…!!」
「いいから…行けよ…!!もう…5分もねーんだ…あとは…自分で何とかすらァ!!勝てよアリス…!!この機を無駄にしたら…あの世でブン殴っからな!!さっさと行けよアリス!!行けぇぇッ!!」
俺が叫ぶと、アリスは涙を拭って、俺の腕輪を持って走り去った。
俺は、服で傷口を縛って止血しようとした。
クソッ…全然血が止まらねぇ…
こんな事なら、クリハラのオッサンに応急処置のやり方習っとくんだったな…
「くそっ…!!ダメだ…!!全然止まんねー…!!…寒ぃ。もしかしてこれって…もう…ダメなやつか…?……へ…へへ…けどよ……やったぜ…!!最後の最後に…オレは…やったんだ…!!オレだって、やりゃあできるんだッ…!!」
頭ん中…ボヤけてきた…
俺がマイナス10000点を喰らわせて死なせたアイツも…こんな気持ちだったのかな…
「……今…なら…仲間の為に命を懸けたアイツの気持ちも…少しは…わかる…か…な…ア…リス…オ…レの、方こそ…あ…りが…と…な…」
◆◆◆
アリスside
「何の手品だ!?アリスッ!?」
驚いているキューマに、俺はタッタの腕輪を見せた。
「その…腕輪は…!!そういう事か…!!」
俺は、キューマから500点を奪う為に、キューマと握手した。
キューマが俺の頼みに応じてくれたのは…俺の言葉がハッタリや出まかせなんかじゃなく、本心だったからだ。
「やっぱすごいね。君の方がよっぽど
そう言うキューマは、海を眺めながら涙を流していた。
「さすがのアンタでも…死ぬのは…怖い…よな…」
「いや…ただ…約束してたから…あの世でブン殴られるのは…痛いからヤダなァ…と思って…」
「……キューマ。アンタ、言ったよな…『オレを知りたきゃ、オレと『
俺が尋ねると、キューマは俺を見る。
『げぇむ』を通じて見えたものは、きっと間違いじゃない。
キューマ達があんなにも『げぇむ』が強かったのは、仲間を信頼できたのは…彼等もまた、元は『ぷれいやぁ』だったからだ。
「アンタらの…仲間への想いは、オレ達と同じ…いや…それ以上…!!それは、共に命懸けの『げぇむ』を潜り抜けてきたからこそ培われた…信頼…情愛…アンタ達『今際の国』の国民は、オレ達と同じように『げぇむ』を勝ち進んできた『ぷれいやぁ』…違うのか…!?頼むから…答えてくれッ!!もし…違うのなら…」
「君がそう感じたのなら、きっとそれが真実だよ」
「……だ…だったら…オレ達が…元は同じ『ぷれいやぁ』だったなら…何の為に…こんな事を…オレは…オレは…!!オレはアンタに…死んでほしくないッ…!!」
「ここで2人が出会った時点で、どちらかは必ず命を落とす。そういう『るうる』だったんだから、しょうがないよね」
「こんな場所で…こんな『げぇむ』でさえ出会わなかったら、オレ達…」
「こんな場所で、こんな『げぇむ』で出会えたからこそ、オレ達は解り合えたんだ」
「オレ達は…友達になれたかもしれなかったのに…!!」
「オレ達はとっくに、友達じゃないか」
俺が言うと、キューマは笑顔で言った。
何で…死んじまうってのに…オレが死なせるも同然だってのに…
何でそんなに、笑ってられるんだよ…!?
俺は、アンタを殺してまで生きられそうにねぇよ…!!
「…い…やだ、もう…こんなの、たくさんだッ…!!だったらアンタが生きてくれ!!さっきの『ばとる』はナシだ!!オレ達の負けでいい!!絵札を全て『くりあ』しても『今際の国』の国民として『げぇむ』の日々が続くだけなのなら…そんなものが『答え』だったんなら…!!オレをもう…この『げぇむ』から降ろしてくれ…!!オレには無理だ…オレは…アンタみたいに強くはなれない…オレは…アンタのようには生きられないッ…!!」
「君はオレにはなれないし、なる必要もない。選択肢は常に、君だけのものだ。早く見つかるといいね…誰かの真似じゃなく…君にとっての本当の、生きる意味が。友人として、心からそう願ってるよ」
キューマがそう言った瞬間、タイマーが0になった。
《制限時間を過ぎました。現時点で合計点の少ない『
「…うん。これが…『死』か。…うん、思ってた通り、案外悪くない…一つの後悔もない。
キューマがそう言った、直後だった。
――ピィン…
――ズッ
――ドボォォン
レーザーで頭を撃ち抜かれたキューマは、そのまま前のめりに倒れて海に落ちた。
《『ぷれいやぁ』チーム、『げぇむくりあ』》
港の上に浮かんでいた飛行船から吊り下げられていた幕の表示が、『
その直後、飛行船が内側から爆発して、炎を上げながら海に落ちた。
◆◆◆
???side
その頃、墨田区の『
キューマ達の脱落を知った『
「キューマ…シタラ…ゴーケン…ウタ…マキ……アンタ達の歌、僕達の魂に響いてたよ。アンタ達の事は、一秒たりとも忘れない。どうか、安らかに眠っておくれよ」
道化師の装いをした『
他の4人の仲間も、キューマ達の死を惜しんで泣いていた。
◇◇◇
同刻、新宿の『
「キューマ君…皆……」
キューマの脱落を知ったイバラが、窓の外の景色を眺めていた。
イバラの頬は、涙で濡れていた。
すると、会場内にいた幼い少女が、イバラに話しかける。
「ママ、大丈夫…?」
「……何でもないわ」
少女が話しかけると、イバラは涙を拭って、少女にハグをした。
「それより、ご飯にしましょう。スミレ、
「…うん」
イバラが言うと、スミレと呼ばれた少女が下の階に降りた。
『げぇむ』会場の教会の上に浮かんだ飛行船に吊るされた『
『ねくすとすてぇじ』開催1日目
『げぇむ』 残り10種
『ぷれいやぁ』 残り239人
♡J編にオリキャラを登場させるつもりなんですが、定員を増やすのと原作通り20人で進めるのとどちらがいいですか?
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人数増やす
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原作通り20人で進める