ヘイジside
『げぇむ』『おうさまげぇむ』。
難易度『
エントリー時に、参加者全員にタブレットが1台ずつ支給され、0〜13のうちのどれかの数字が個別の『なんばぁ』として割り振られた状態で『げぇむ』を開始する。
制限時間は60分(ただし全員の投票が終了した場合は、その時点で投票時間終了)。
タブレットに『おうさま』にしたい参加者に割り振られた『なんばぁ』を入力し、投票を行う。
この際、実行したい『めいれい』をセットできる。
制限時間経過後に、最も得票数の多かった参加者が『おうさま』となり、投票時間内にセットした『めいれい』が実行される。
『おうさま』に『めいれい』された相手は『どれい』となり、次の『おうさま』を決める投票が終わるまでの間は『おうさま』の『めいれい』に従わなければならない。
強制できる『めいれい』は、通常の『めいれい』と、『どれい』を強制的に『げぇむおおばぁ』にできる『しょけい』の2種類。
『
『ぷれいやぁ』が全員殺されれば『げぇむおおばぁ』。
『げぇむ』における禁止行為は2つ。
『どれい』が『おうさま』の『めいれい』に従わなかった場合。
他者を自力で投票できない状態にした場合。
「オレは自分に投票するぞ!」
「私も!」
1ターン目は、自分に投票する奴がほとんどだった。
『
皆で生きて『げぇむくりあ』する為には、『
かといって、ヒヅル以外全員初対面で信頼関係を築くのは容易じゃない。
『ビーチ』にいた時とはわけが違う。
どうすれば…?
「ヘイジ」
俺が考えていると、ヒヅルが声をかけてくる。
「ヘイジは…誰が『
「そうだな…『おうさまげぇむ』なんて何でもアリの『げぇむ』を作るような奴だ。『
「………」
俺が言うと、ヒヅルは冷や汗をかいて唇を噛み締める。
「オレは、この『げぇむ』を平和的に攻略したい。その為には、信頼できる仲間が必要だ。皆を説得して、できるだけ多くの参加者をオレ達の側に引き込もう」
俺は、ヒヅルの手を取って提案した。
するとヒヅルは、微かに頬を染めて返事をする。
「…わかった。オレ、ヘイジの為にできる事なら何だってする。とりあえず、話聞いてくれそうな人探してくるね」
そう言うヒヅルの目元は、微かに緩んでいるように見えた。
俺とヒヅルは、他の皆を説得しに行った。
だけど……
「はぁ!?投票!?もうしちゃったわよ!」
「ワリ、オレももう投票しちった…」
「そんな事言って、お前が『
「はっ、話しかけんじゃねーよ!」
他の皆は、俺の提案をろくに聞こうともしなかった。
そりゃあそうだよな…
俺が『
自分が『しょけい』されるかもしれないのに、自分の命を預けて人に投票するなんて事…初対面同士でできるはずがない。
サクマさん、ルキヤさん、アカマツさん、クロダさんに断られた俺は、次は最後に来た男…トカゲのところに行った。
トカゲは、ソファーの上で脚を組みながら音楽を聴いていた。
「なあ、アンタ。投票はしたのか?」
俺が話しかけると、トカゲはイヤホンを外して俺を見上げる。
「…まだだけど。何で?」
「だったら、オレ達のプランに協力してくれないか?オレ達は、平和的に『
俺は、トカゲに協力を持ちかけた。
だがさっきまで貼り付けたような笑顔を浮かべていたトカゲは、急に無表情になる。
「そんな事を言って、君が『
そう尋ねられた時、俺は、『俺はヒヅルとずっと一緒だったから『
だけど、『ずっと一緒にいた』って言葉だけで俺が『
むしろ、ほとんど初対面の奴等の中に、顔見知りがいる奴が混じってたら余計に警戒される。
ここは素直に『証明できない』って答えるべきだ。
「それは……できない」
「それが答えだよ。もっとも、こんな事を言ってるボクが『
そう言ってトカゲは、タンッとタブレットに数字を入力して投票した。
コイツ…意地でも俺と協力しないつもりか。
「同じ『ぷれいやぁ』同士だから協力し合えると思ってるなら、とんだ思い上がりさ。人は人の生き方を強制できるほど、偉くはないのだから」
トカゲはそう言って立ち上がると、俺の方を振り向いて口を開く。
「……あ、一応教えとく。ボクの『なんばぁ』は『1』だよ」
「…どうして組む気が無いのにそんな事教えたんだよ?」
「さあね」
トカゲは、そのまま俺に手を振って去っていった。
結局1ターン目は、ほとんど皆俺の話に耳を傾けてくれなかった。
ヒヅルの方も同じだったのか、ヒヅルは心なしか落ち込んでいた。
「…やっぱり、皆話を聞いてくれなかったね」
「説得に応じてくれたのは、この二人だけか…」
結局、60分かけて説得して、説得に応じてくれたのは、アヤカさんとミズキ君だけだった。
アヤカさんは、腕を組みながら口を開く。
「あたしはいいと思うよ。アンタ達のプラン。『
「僕も賛成です。平和的に『げぇむ』を終わらせられるなら、その方がいいですよ…」
アヤカさんが言うと、ミズキ君も賛成する。
だけどその時、ミズキ君が思い出したように疑問を口にする。
「…あっ、でも、どうやって『くりあ』すれば…?『
「必勝法ならあるわ」
疑問を口にするミズキ君に対して、アヤカさんが言った。
「あたし達の中で誰か1人を『おうさま』にして、『おうさま』が仲間の誰かに『アンタが『
「そ、それ、すごくいい方法じゃないですか!」
アヤカさんが言うと、ミズキ君がアヤカさんの意見に賛同する。
アヤカさんは、早速投票をしようとする。
「それじゃ、このターンはヘイジ君に投票するから。『なんばぁ』教えてくれる?」
「ああ。オレの『なんばぁ』は……」
アヤカさんが聞いてくると、俺は自分の『なんばぁ』を教えた。
そんな中、ヒヅルは、話を聞いてくれたミズキ君に礼を言っていた。
「ありがとう。話、聞いてくれて」
「え!?あ、う、うん…」
ヒヅルが言うと、ミズキ君は頬を染めて頭を掻く。
ミズキ君は、心なしか嬉しそうだった。
もしかしてミズキ君、ヒヅルの事…
《投票の集計が完了しました。参加者の皆様は、メインルームにお集まり下さい》
アナウンスが鳴ると、参加者は全員最初の部屋に戻る。
全員が揃ったところで、アイさんが口を開く。
『それでは、『おうさま』を発表します。今回の『おうさま』は、ショーゴ様』
っえ……!?
何で…
何でショーゴさんが『おうさま』になってんだよ…!?
「おっ、オレか♪」
最初の『おうさま』に選ばれたショーゴさんは、下卑た笑みを浮かべる。
するとアカマツさんが、ショーゴさんを指差して叫ぶ。
「ちょ…ちょっと待てよオイ!何でコイツが『おうさま』なんだよ!?」
「そうよ!こんなの、おかしいじゃない!!」
アカマツさんが結果に異議を唱えると、サクマさんも同意した。
するとその時だった。
「あ、あの…!すみません、私です…」
「………あ?」
クニエダさんが、申し訳なさそうに手を挙げた。
「わ、私、本当は自分に投票するつもりだったんですけど…間違えて『5』を押してしまって…多分そのせいです…すみません……」
クニエダさんは、間違えてショーゴさんに投票してしまった事を正直に白状した。
するとクロダさんが、カッとなってクニエダさんの胸ぐらを掴んだ。
「ふっざけんなこのジジィ!!」
「ひぃっ!!すみませんすみません!!」
「やめましょう。間違いは誰にだってあります。……それに、彼に投票したのは、本当にクニエダさんだけだったんでしょうかね?」
クロダさんがクニエダさんに八つ当たりすると、アキモトさんが仲裁に入った。
アキモトさんの言う通りだ。
ヒヅル、アヤカさん、ミズキ君の3人は俺に投票してくれたから、俺には4票入ってるはず。
なのにショーゴさんが『おうさま』になったって事は、ショーゴさんが5票以上獲得したって事になる。
クニエダさん以外に、3人も押し間違いをしたとは思えない。
つまり、意図的にショーゴさんを『おうさま』にした奴がこの中に少なくとも3人以上いるって事だ。
でもショーゴさんには、正直言って初対面の人間を3人も従わせられる程のカリスマ性があるようには見えないし、何か策があるってわけでもなさそうだ。
これは、ショーゴさんが意図してやった事じゃなくて、誰かが勝手にショーゴさんを『おうさま』にしたって事だ。
誰が、何の為に…!?
「んじゃあ早速『めいれい』を実行するぜ。『どれい』は…お前だよ」
そう言ってショーゴさんが指を差したのは、最後に入ってきた幸薄そうなOLの
ショーゴさんの『めいれい』によって『どれい』になったメイさんは、青ざめて唇を噛み締める。
「っ………」
メイさんが顔を逸らすと、ショーゴさんは下卑た目でメイさんを見ながら歩み寄った。
「オレがセットした命令はぁ〜…『ヤらせろ』」
「……っいや…!!」
ショーゴさん…いや、ショーゴが舌なめずりをしながら言うと、メイさんは絶望の表情を浮かべる。
いくら何でも『めいれい』できる『るうる』だからって、流石にこれは看過できない。
ミズキ君と俺は、ショーゴの前に立ち塞がった。
「ちょっ…おいアンタ!!それはないだろ!?」
「好きに『めいれい』できるからって、やっていい事と悪い事とあるだろうが」
ミズキ君と俺は、『るうる』を悪用してメイさんに乱暴しようとするショーゴを止めようとした。
するとショーゴが悪びれずに口を開く。
「あ?何スットンキョーな事言ってやがんだ?別に『るうる』じゃ禁止されてねぇぞ?つーか、いいのかなぁ?『おうさま』の『めいれい』を邪魔したりなんかして。もしコイツらが邪魔したせいで『めいれい』を実行できなかったら、どうなんのかなぁ?」
『その場合は、『めいれい』を妨害したミズキ様とヘイジ様、そして『めいれい』を実行できなかったメイ様が『げぇむおおばぁ』となります』
「だってよ」
ショーゴがアイの事すらも下品な目で見ながら尋ねると、アイは表情ひとつ変えずに答え、ショーゴは得意げに笑った。
さらにショーゴは、メイさんが逆らえないのをいい事に、後ろからメイさんに抱きつく。
「にしても、『どれい』ってのは可哀想だよなぁ。こ〜んな事されても、文句の一つも言えねぇんだからよ」
そう言ってショーゴは、メイさんの着ていたブラウスを引きちぎった。
レースのブラジャーに包まれた豊満な胸が曝け出される。
ショーゴは、下着の上から乱暴にメイさんの胸を揉んだ。
あまりの屈辱的な仕打ちに、メイさんは、耳や首まで真っ赤にして目に涙を浮かべていた。
ショーゴの奴…男も大勢いる前で、なんて事を…!!
俺と同じ事を思ったのか、とうとう我慢ならなくなったミズキ君が、ショーゴに飛び掛かる。
「やめろ!!」
ミズキ君は、ショーゴに飛びかかって止めようとした。
だがショーゴは、ミズキ君の顔面にストレートパンチを叩き込んで吹っ飛ばしてきた。
「がっ!!」
「驚いたぜ。まーだ頭の切り替えができてねぇバカがいたとはな。それ以上オレの邪魔したら、テメェとこの女がどうなるか、わかってんだろうな?」
そう言ってショーゴは、メイさんの髪を乱暴に引っ掴んだ。
ここでショーゴを止めれば、自分だけでなくメイさんまで『げぇむおおばぁ』になってしまう。
理不尽な『るうる』に憤りを覚えながら、ミズキ君は悔しそうに拳を握りしめた。
「ほら、さっさと歩け!グズグズすんな!」
ショーゴは、無理矢理メイさんを歩かせ、奥の個室へと移動させた。
それを俺達が呆然と眺めている中、アイが無機質な声で言い放つ。
『1ターン目の生存者は、14名中14名。それでは次のターンも、生かしたい人を慎重に選んで下さい』
こうして、最初の『げぇむ』の1ターン目が終了した。
誰も、メイさんを助けられなかった。
アヤカさんは、殴られて床に倒れたミズキ君に駆け寄った。
「大丈夫!?」
「はい…すみません、ありがとうございます」
アヤカさんは、顔を腫らし鼻血を垂らしたミズキ君を心配した。
クソッ…今まで何を見てきたんだオレは…!
『
「オレのせいだ…オレがもっと強く皆を説得して、仲間を増やしておけば…!」
もっと仲間を増やして俺が『おうさま』を取っておけば、こんな事にはならなかったのに…!
俺が悔しさのあまり拳を握りしめていると、ヒヅルが俺の拳の上にそっと手を添えてくる。
「ヘイジは悪くないよ。初対面の人間をそう簡単に信用なんかできるわけない。オレ達は、あの1時間でやれるだけの事はやった…と思う」
ヒヅルは、俺の手を握りながら言った。
すると、ミズキ君の手当てをしていたアヤカさんが口を開く。
「それよりさ、建設的な話をしようよ。あの男…このターンで何とかしない?」
アヤカさんは、メイさんとショーゴが入っていった部屋を顎でしゃくりながら言った。
「何とか、って…まさか、殺…」
「もしもの時は、アイツを殺す事も考えないといけないかもしれないわね」
俺が言おうとすると、アヤカさんはキッパリと言い切った。
「な…殺すって…そんなのダメだ!!それじゃ『
「だからって、これ以上アイツを野放しにはしておけないでしょ?次アイツに『おうさま』を取られたら、狙われるのはヒヅルちゃんかもしれないのよ?もし制裁を躊躇してヒヅルちゃんがメイちゃんと同じ目に遭ったら、ヘイジ君責任取れるの?」
「それ…は……」
アヤカさんに反論された俺は、何も言い返せなくなった。
確かにショーゴは、野放しにはできない危険人物だ。
だからってショーゴを殺したら、『
でももしまた奴に『おうさま』を取られたら、次に狙われるのはヒヅルかもしれない。
それだけは、絶対に阻止しなきゃいけない。
ヒヅルは…俺にとって希望なんだ。
「…………」
俺が黙り込んでいると、アヤカさんが俺の胸ぐらを掴んでくる。
「理想論を掲げる暇があったら、『最悪』を想定しなさいよ。ヒヅルちゃんは、アンタにとって希望なんでしょ?もしヘイジ君がアイツを殺してでも仲間を守る覚悟が無いって言うんなら、あたしがこのグループを抜けるだけだから」
そう言い放つと、アヤカさんは俺を解放した。
次のターン、俺はどうすればいい…?
アヤカさんの言う通り、ショーゴを殺すしかないのか…!?
◆◆◆
???side
「……………」
『げぇむ』会場のVIPルームでは、参加者の一人であるメイが、部屋の片隅で蹲ってガクガクと震えていた。
引きちぎられた下着やストッキング、そしてメイの内腿についた血痕と薄汚い白い液体が、この部屋で行われていた行為の悲惨さを物語っていた。
メイと一緒に部屋にいたショーゴは、ズボンを持ち上げながら、蹲って怯えているメイを見下して笑った。
「初めてだったとはな」
そう言ってショーゴは、メイの髪を乱暴に引っ掴み、下卑た笑みを浮かべた。
「なかなか楽しませてもらったぜ、メイちゃん♪」
「う……うぅ…うぁあああああ!!」
ショーゴがメイを見下して笑うと、絶望の表情を浮かべたメイは、大声で泣き喚いた。
◆◆◆
ヘイジside
「あースッキリした」
2ターン目が始まって30分が経過した頃、事を終えたショーゴとメイさんが戻ってくる。
ショーゴは、用済みと言わんばかりにメイさんを突き飛ばした。
ヒヅルとアヤカさんは、乱暴に突き飛ばされたメイさんに駆け寄った。
放心しているメイさんの顔にはくっきりと涙の痕がついていて、よほど乱暴に扱われたのか髪と服がクシャクシャになっていた。
「ひどい…」
同じ女性としてショーゴの行いを非道に感じたのか、サクマさんが口元を手で覆いながら呟いた。
「あ?何がひでぇんだ?コイツも感じてたみてぇだしwin-winだろ」
「お前…!!」
ショーゴがヘラヘラ笑いながら言うと、ミズキ君がショーゴを睨みつける。
「おいクソガキ、お前どうせ童貞だろ?ソイツ、なかなかの名器だったぜ。一回味わってみたらどうだ?オレの
ショーゴがミズキ君を挑発した、その時だった。
アヤカさんがショーゴの前に立ち、ショーゴにキツいビンタを喰らわせた。
アヤカさんは、軽蔑の眼差しでショーゴを睨みつける。
「最低よ」
アヤカさんがキッとショーゴを睨むと、ショーゴはニヤリと笑う。
「いいねぇ、威勢のいい女は嫌いじゃねぇぜ。コイツの次はテメェだよアヤカ。んでその次が帽子のガキ。ババァは…いいや別に」
「ちょっとアンタ今何て言った!?」
ショーゴが言うと、女性陣で唯一相手にされなかったサクマさんが怒る。
「んじゃ、このターンもよろしく頼むぜ〜♪」
そう言ってショーゴは、メインルームから去っていく。
ヒヅルとアヤカさんに介抱されていたメイさんは、膝を抱えて泣いていた。
「何で…何で、私ばっかり……私が何したっていうのよ…!」
「……ごめんなさい。あなたを助けられなくて」
メイさんが泣くと、アヤカさんがメイさんに謝罪しながら背中を摩る。
アヤカさんは、メイさんにシャワーを浴びせるため、3階にある宿泊施設にメイさんを連れて行った。
するとその時、ミズキ君が、俺にある提案をしてくる。
「ヘイジさん。メイさんを僕達のグループに入れませんか…?」
「オレもちょうど同じ事を考えてた。奴に酷い目に遭わされた彼女なら、絶対に奴を『おうさま』にさせたくないはずだ。それにきっと、他の皆もそう思ってる。もう一度仲間を募れば、今度こそ平和的に『げぇむ』を終わらせられる」
「でもヘイジ…本当にいいの?アイツをどうにかしなくて」
「…アヤカさんはああ言ってたけど、奴を殺したりなんかしたら『
俺が言うと、ヒヅルは少し不安げに俯く。
そりゃあ、ヒヅルはアイツに狙われてるんだもんな。
不安だよな…
「大丈夫だよ。ショーゴはもう二度と『おうさま』を取れない。お前の事は、危ない目に遭わせないから」
「……違うよ、ヘイジ。
「ヒヅル…」
ヒヅルは、俯きながら言うと、俺に頭を下げてきた。
「…ごめん、ヘイジ。オレ、アイツを説得しに行った時…オレ、アイツがヘイジに協力するって言ってたのを断ってきた」
「……え?」
「アイツが、『仲間に投票してほしかったらヤらせろ』って言うから…中指立てて逃げてきた。……ダメだった?」
アイツ…ヒヅルにそんな事言ってたのか。
俺も一緒に行ってやればよかったな。
「いや、いいよ断ってくれて。ヒヅルが話しかけた時点で既に投票を終えていたのかもしれないし…あんな奴の為にヒヅルが傷つく事ない」
「アイツはバカだから、理詰めで説得したところで止められないよ。もしアイツがこれ以上ヘイジの計画を邪魔するようなら、オレが自己判断でアイツを去勢するから。その時は、止めないでね」
「怖い事言うなよ…」
俺が顔を引き攣らせると、ミズキ君が話しかけてくる。
「『おうさま』を取り続けるには、過半数の8人でグループを組めばいいんですよね?誰を誘えば…?」
「そうだな…オレとしては、クニエダさん、サクマさん、ルキヤさんの3人を優先して仲間に引き入れようと思う。ルキヤさんとクニエダさんは、自分の間違いを素直に認められる人だ。根気よく説得し続ければ、仲間になってくれる可能性が高い。サクマさんは、メイさんと同じ女性として、これ以上ショーゴの好きにはさせたくないはずだ。最終的には全員が仲間になるのが理想だけど…」
俺が言ったその時、アヤカさんとメイさんが戻ってくる。
「ただいま〜っと」
メイさんにシャワーを浴びさせたアヤカさんが、俺達に声をかけてくる。
メイさんは、身体を洗い流したからか、さっきよりは心なしか顔色が良くなっていた。
アヤカさんは、コソッと俺に話しかける。
「ねえ聞いて。メイちゃんにあたしのブラ貸してあげようと思ったんだけどさ。全然入んないのよこれが。いや〜参っちゃうねホント」
アヤカさんは、軽快に笑いながら言った。
何というか、強いな…
「…ずっと気になってたんですけど、アヤカさんって『
俺が尋ねると、アヤカさんは気まずそうな笑顔を浮かべて頬を掻きながら答える。
「あーっとね……お水」
アヤカさんが言うと、俺とミズキ君が納得した。
その一方で、ヒヅルはいまいちピンと来ない様子で尋ねる。
「あの…お水…って?」
「水商売の事。夜の店で接客する仕事って言ったらわかる?」
「…?」
俺はわかりやすいようにヒヅルに説明したけど、ヒヅルはきょとんとしていた。
中学生にはまだ早かったか…
「ほら、こういう商売してる子って、
「アヤカさん…」
「あたしには、守らなきゃいけない大事な人がいるの。だからこんなところで死ぬわけにはいかないのよ。何が何でも、生き残ってやるんだから」
アヤカさんは、ロリポップを咥えながら話した。
アヤカさんは、綺麗で、優しくて、そしてとても強い人だ。
俺は、アヤカさんのように、強く気高く生きたいと思った。
するとその時、ソファーに座っていたメイさんが立ち上がる。
「すみません…私ちょっとお手洗いに行ってきます…」
「ついて行こうか?」
「……大丈夫です」
アヤカさんが声をかけると、メイさんはニコッと微笑んで去っていった。
しばらくして、メイさんが戻ってきた。
俺達は、手分けして残り時間でルキヤさん、クニエダさん、サクマさんの三人を説得した。
俺がクニエダさんを、アヤカさんがルキヤさんを、ミズキ君がサクマさんを説得し、ヒヅルはメイさんの付き添いだ。
俺が説得したクニエダさんは、何とか俺の説得に応じてくれた。
クニエダさんは、前回間違えてショーゴに投票してしまった事を後悔していて、その罪滅ぼしの為に俺に協力する事にしたらしく、メイさんには何度も謝っていた。
そして制限時間の5分前。
「連れてきたわよ」
「ルキヤさん…サクマさん…」
アヤカさんとミズキ君が、俺がターゲットにしていた二人を連れてきた。
「アヤカさんの頼みとあっちゃあな!」
「アタシも協力するわよ。ショーゴの奴は野放しにしておけないしね。アタシだけスルーした罪は重いわよ」
二人とも、グループで『おうさま』を獲り続ける計画には快く賛同してくれた。
サクマさんは私怨が混じってる気がするけど…
でも、これで過半数の8人が揃った。
今度こそ、俺が『おうさま』を獲れるはずだ。
もう、あんな悲劇は繰り返さない。
誰一人犠牲を出さずに、『
◇◇◇
投票時間が終わり、2ターン目の『おうさま』を決める時間になる。
全員が決められた位置に立ち、『おうさま』の発表を待つ。
『時間になりました。それでは、『おうさま』を発表します。今回の『おうさま』は───
───メイ様』
…………!?
なん、で…!?
何で、メイさんが『おうさま』になってるんだよ!?
俺のグループは、皆俺に投票したはずだろ…!?
俺の得票数は8票。
どう足掻いても、誰かが俺より得票数が多くなる事はないはずだ。
考えられる可能性は…
「メイさん!何で…」
ミズキ君は、自分に投票したであろうメイさんを問い詰めた。
するとメイさんは、俺達から顔を逸らしながら口を開く。
「…ごめんなさい。私はやっぱり…あの男を許す事なんて、できなかった…!!」
メイさんは、ショーゴを睨みながら言った。
アイは、メイさんがセットした『めいれい』の内容を読み上げる。
『今回の『どれい』はショーゴ様。『めいれい』の内容は…『しょけい』』
「!!?」
『しょけい』だと…!?
最悪だ…
よりによって、メイさんが『しょけい』をセットしていたなんて…
『しょけい』を『めいれい』されたショーゴは、メイさんに詰め寄って声を荒げる。
「おい…おいおいおい!!何してくれちゃってんだァ!?オレが『
ショーゴは、メイさんを指さして怒鳴りつけた。
するとメイさんは、ふぅっとため息をついて口を開く。
「別に、アンタが『
メイさんは、殺意のこもった目でショーゴを睨みつけた。
するとショーゴは、目を見開いて激昂する。
「こんの…クソアマァアアアアア!!!」
逆上したショーゴは、メイさんを殴ろうとする。
自分の行いのせいで『しょけい』の対象に選ばれたのに、何なんだコイツ…
ショーゴの拳がメイさんに振り下ろされそうになったその瞬間、レーザーがショーゴの右腕を貫通し、ショーゴの腕をごっそりと切断した。
「ギャアアアアアアアアッ!!!」
右腕を切断されたショーゴは、右腕の断面から血を噴き出して悲鳴を上げる。
いきなり右腕を斬り落とされたショーゴを見て、皆が混乱する。
「な、何よこれ…!?」
「『るうる』違反。『しょけい』の対象者になった『どれい』は、『おうさま』に対する如何なる反逆も認められない。ま、当然の報いだよね♪」
「………フン」
他の皆が青ざめる中、トカゲとトドロキさんだけは、表情ひとつ変えなかった。
ショーゴは、痛みのあまりその場でうずくまる。
「ぅぐ…ぢぐじょぉ…いでぇ、いでぇよぉ…!!」
《ここで、『しょけい』の対象となった参加者がおられます》
「た、頼む…『めいれい』を取り消してくれ!!さっきの事なら謝るから!!何でもするから、助けてくれぇえええ!!!」
ショーゴは、泣き喚きながらメイさんに助けを求めた。
メイさんは、そんなショーゴをゴミを見るような眼差しで見下ろしながら、一言言い放った。
「地獄に堕ちろ、クソ野郎」
メイさんに見放されたショーゴは、絶望の表情を浮かべる。
無情にも、ショーゴの脱落を知らせる機械音声が鳴り響く。
事実上の死刑宣告だ。
《その参加者は……『げぇむおおばぁ』》
「いやだ…いやだいやだいやだいやだ…いやだあああああああああ!!!」
『げぇむおおばぁ』を告げられたショーゴは、絶望の表情を浮かべて泣き喚く。
すると、その直後だった。
俺達のいるメインルームの床が開く。
いつの間にかショーゴの後ろに立っていたアイは、床の穴の中にショーゴを突き落とした。
ショーゴが穴の下に突き落とされると、床の穴がひとりでに閉まる。
「な、なんだ…!?」
「何が始まるの…!?」
残された俺達は、不安を募らせながらショーゴが落ちた穴のあった場所を眺めていた。
しばらくすると、メインルームのモニターが点き、下の階の様子を記録した映像が映る。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!も゛う゛こ゛ろ゛し゛て゛!!!こ゛ろ゛し゛て゛く゛れ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』
「ひぃっ!!?」
「な、何なんだよこれ!?」
そこに映っていたのは、地獄という表現すら生ぬるい凄惨な光景だった。
部屋の中は暖色の光で照らされていて、熱気がこもっているのか、映像が陽炎で歪んでいた。
ショーゴは、全身の穴という穴から血を噴き出し、眼球が白く濁り、全身から湯気を上げていた。
「な…何だよこれ…何が起きてんだよ…!?」
「特殊な電磁波で全身の水分が加熱されてるんだろうね。言うなれば、人間電子レンジってとこ?全身の水分が沸騰する痛みは、想像を絶するだろうねぇ」
クロダさんが困惑していると、トカゲが面白そうに映像を眺めながら発言する。
すると、その時だった。
『ぉごっ』
――バグォォォン!!!
まるで電子レンジで温められた卵のように、ショーゴの身体が突然内側から破裂した。
沸騰した血と肉塊が、部屋中に飛び散る。
その直後、部屋のどこかから『チンッ』と電子レンジのような音が聴こえてきた。
『ふぁあすとすてぇじ』の『げぇむ』なんか生ぬるく思える程の…まるで、人間の悪意を凝縮して煮詰めたような処刑方法。
『
『しょけい』って…こんな方法で殺されんのかよ…!?
「いやああああ!!!もういやあああああ!!!」
「何なんだよこれぇええ!!?」
「マジかよ…『しょけい』って、こんな殺され方すんのかよ!?」
「もう帰してよおおおおおお!!!」
何なんだよ、この地獄絵図は。
何で、こんな事になっちまったんだ…!?
「最期までクズだったねぇ、彼♪どう?復讐を果たした気分は」
「どうかしらね…何だか虚しくなった気がする……だけどこれで、今日を生き延びられる」
唯一映像を面白がって見ていたトカゲがメイさんに尋ねると、メイさんは映像を見ながらボソッと呟く。
憎い相手に復讐を果たしたメイさんは、歪な笑みを浮かべていた。
『『しょけい』が執行されました。2ターン目の生存者は、14名中13名。それでは次のターンも、生かしたい人を慎重に選んで下さい』
アイの無機質な声と皆の悲鳴が、メインルームに響き渡る。
俺が言葉を失っていると、ヒヅルが心配そうに声をかけてくる。
「ヘイジ…」
……甘かった。
裏をかいて実は一番簡単な『げぇむ』なんじゃないか、数時間前まではそう思っていた自分がいた。
そんな半端な覚悟で、この『げぇむ』に挑んじゃいけなかったんだ。
『
これが、『
『げぇむ』『おうさまげぇむ』
難易度『
2ターン目 残り13名
『
ラジオDJ。
深く考える性格ではなく、『げぇむ』では基本ガヤに回るタイプ。
営業マン。
冷静沈着で、参加者の中では比較的良識的な人物。
OL。広告代理店勤務。
どこか幸が薄く、『げぇむ』では不運な目に遭いがち。
サラリーマン。
参加者の中では最年長だが、気弱で主体性に欠ける。
工場勤務。
人間不信気味で、どこか皮肉っぽい性格。
専業主婦(元ジャーナリスト)。
何でもかんでもメモを取るのが癖。
ホステス。
姉御肌で頭も切れる。
フリーター。
粗暴で低俗な人物で、他の参加者から危険視されている。
大学生。心理学専攻。
良くも悪くも自由人で、人に指図される事を嫌う。
指定暴力団組長。
寡黙で近寄りがたく、参加者の中で最も謎に包まれている。
パチンコ店勤務。
短気だが、どこか憎めない人物。
高校1年生。
ヘイジに似てお人好しな性格で、正義感が強い。
『今際の国』の国民で、『
『げぇむ』の進行を担当している。
♡J編にオリキャラを登場させるつもりなんですが、定員を増やすのと原作通り20人で進めるのとどちらがいいですか?
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人数増やす
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原作通り20人で進める