ヘイジside
『それでは8ターン目を開始します。次のターンも、生かしたい人を慎重に選んで下さい』
皆が放心している中、アイの無機質な声が響き渡る。
せっかく仲良くなったルキヤさんを失ったアヤカさんは、嗚咽を漏らして泣いていた。
俺がアヤカさんに歩み寄ると、アヤカさんはギリっと拳を握りしめながらボソッと呟く。
「…ちゃんと皆が私に投票してくれていれば、トドロキが1位を獲得するなんてあり得なかった」
そう言ってアヤカさんは、顔を上げると、俺達を睨みつける。
「……いるんでしょ、裏切り者が」
アヤカさんがそう言った、その直後だった。
「あはははっ、やっと気づいたの!?」
サクマさんが、どっと笑い出す。
さらにメイさんまで、ため息をついてから口を開く。
「あーあ、流石にバレちゃったか。上手くやれてたと思ったんですけどね」
そう言ってサクマさんとメイさんは、俺達のグループから去っていく。
サクマさんはトドロキの、メイさんはトカゲの隣に立った。
「さ、サクマさん…メイさん…どうして…!?」
ミズキ君は、俺達を裏切った二人に、信じられないとでも言いたげな目を向けた。
するとサクマさんは、クスッと笑って言った。
「ごめんなさい。私、本当は
サクマさんがそう言うと、アキモトさんとクロダさんもトドロキさんの隣に立つ。
サクマさんだけじゃない。
アキモトさんとクロダさんも、トドロキさんと組んでいたんだ。
今思えば、アキモトさんが全員に満遍なくコンタクトを取っていたのも、カモフラージュだったんだ。
あえてトドロキさんとは真逆の行動を取る事で、トドロキさんと組んでる事を悟らせない為の…!
「ありがとう、メイさん」
「はい…
トカゲが言うと、メイさんは頬を染めてトカゲの左腕に両腕を絡ませ、トカゲの左腕に身体を密着させ、トカゲの肩に頬を擦り寄せた。
メイさんは、完全にトカゲに心酔していた。
そしてアカマツさんも、トカゲの隣に立った。
ミズキ君は、俺達を裏切ったメイさんを問い詰める。
「メイさん…どうして…アヤカさんとヒヅルちゃんに優しくしてもらったあなたが、どうして僕達を裏切るんですか!?」
「…そうね。確かにアヤカさんとヒヅルちゃんには良くしてもらったわ。だけど二人は、私の復讐を肯定しようとはしなかった。私の復讐を否定しなかったのは…私に居場所を与えてくれたのは、トカゲ様だけよ」
そう言ってメイさんは、恍惚とした表情でトカゲを見る。
とんだ盲点だった。
まさか2ターン目の時点で、メイさんが既にトカゲと組んでいたなんて…
「ごめんねミズキ君。メイはもう、トカゲ様の
メイさんは、トカゲと腕を組んで言った。
ヒヅルは、トドロキさんについたサクマさんと、トカゲについたメイさんを睨みながら口を開く。
「アンタらがトドロキとトカゲについたからって、1位を奪えるわけじゃない。……まさか…!」
この時ヒヅルは、ある可能性に気がついた。
俺が想定していた、最悪のシナリオ。
「アンタら二人、グルだったの…?」
ヒヅルは、トカゲとトドロキさんを睨みながら言った。
するとトカゲは、トドロキと肩を組んで目を細める。
「まぁ、そういう事♪これで7対5だけど…どうする?」
トドロキさんと並び立ったトカゲは、挑発的な笑みを浮かべる。
…最悪だ。
よりによって、二つの陣営が手を組んじまうなんて…!
「哀れだわぁ…私達がスパイとも知らずに信じ込んじゃって」
「私の『おうさま』はトカゲ様だけです。トカゲ様…私のような者がトカゲ様の為に尽くす事ができて、メイはとても幸せです」
サクマさんは俺達を見下したように笑い、メイさんは恍惚とした表情を浮かべながらトカゲの左腕に胸を押し当て、トカゲの肩に頬擦りをする。
そんな二人を、アヤカさんが軽蔑の眼差しで睨む。
「アンタ達絶対に許さないから」
アヤカさんがトドロキさんとトカゲについた5人を軽蔑すると、アカマツさんとクロダさんは気まずそうにアヤカさんから目を逸らした。
◇◇◇
不穏な空気が流れる中、8ターン目が始まった。
結局俺のグループに残ったのは、ヒヅル、アヤカさん、ミズキ君、クニエダさんの4人だけだ。
「トドロキが『
「……最悪。こんなの、『げぇむ』として成立してさえいないわ。アイツは、自分が『
ヒヅルとアヤカさんは、絶望の表情を浮かべながら言った。
クニエダさんは、大量の冷や汗をかいて俺達に助けを求めてくる。
「ど、どど…どうすれば…!?」
「っ…」
クニエダさんが俺達に助けを求めると、ヒヅルはギリっと歯を食いしばって駆け出した。
するとアヤカさんがヒヅルを呼び止める。
「ちょっとどこ行くの!?」
「トドロキの取り巻きを説得してくる」
「無理よ。アイツらは、望んでトドロキについたのよ?今更あたし達の説得に耳を貸すはずがない」
「それでも…っ、何もせずに終わりたくなんかない!!」
アヤカさんが半ば平和的に『げぇむくりあ』するのを諦めていると、ヒヅルは拳を握りしめながら叫んだ。
すると、ミズキ君がハッとした表情を浮かべて言う。
「そ、そうだ!トドロキさんが『
ミズキ君が言うと、ヒヅルは僅かに目を見開く。
ヒヅルは、早速アキモトさんとクロダさんを説得しに行った。
トドロキさんは、ちょうどトイレに行っていて、今いるのはアキモトさんとクロダさん、そしてサクマさんだけだ。
ミズキ君も、ヒヅルに続いて二人を説得しようとした。
だけど…
「嫌です」
アキモトさんは、二人の説得をハッキリと断った。
「はっ、話しかけんじゃねーよ!」
クロダさんは、二人の話を聞こうともしなかった。
「トドロキは、無実のルキヤを吊った。アイツが『
「簡単な話ですよ。死にたくないからです」
ヒヅルが尋ねると、アキモトさんが答える。
「トドロキさんは、私の『なんばぁ』を知っています。ここでグループを裏切ってあなた方につけば、私が制裁されるんですよ。それに私は今、一番おいしいポジションにいるんです。狩る側にまわってあなた方を吊るしていけば、少なくとも私は生き残れる。このポジションを手放してまで、あなた達につくと思いますか?」
「ハッキリ言ってオレらは、『
アキモトさんとクロダさんは、自分が生き残る為に、トドロキさんに従い続けるつもりだった。
ミズキ君は、根気よく二人を説得しようとした。
「お願いします、話だけでも聞いてください!!僕達は、これ以上誰も傷つけずに『げぇむ』を『くりあ』したいんです!!皆で信頼し合えば、『くりあ』できない『げぇむ』じゃないんですよ!!」
「うるさいわね!!しつこいのよアンタ達!!」
ミズキ君がアキモトさんとクロダさんを説得しようとすると、サクマさんが怒鳴りつける。
「皆で信頼し合えば『げぇむくりあ』できる、ですって?何寝ぼけた事言ってるの?『
サクマさんは、ミズキ君に向かって怒鳴りつけた。
…確かに『
でも、だからこそ、互いに疑心暗鬼になって裏切り合っちまったら、『
俺は、ふぅっとため息をついてから、二人に声をかける。
「…アンタら、本当にそれでいいのか?」
「あ?」
「トドロキについていけば、本当に生かしてもらえると思ってるのか?アンタらは今、奴が『おうさま』を獲る為に生かされてるだけだ。断言する。オレ達が全滅しても『げぇむ』が終わらなきゃ、奴は必ずアンタらを『しょけい』してくる」
「なっ…!!」
俺が声をかけると、クロダさんは目を見開く。
この人…本当に自分さえ生き残れればいいと思ってたんだな。
「そうやって自分だけが助かる為に奴に従っている限り、アンタらは生き残れないぞ」
「うっ…」
「今からでも遅くない。お互いに信頼し合って、一緒に『げぇむ』を『くりあ』しよう。この手を取ってくれれば、オレ達が必ずアンタらを生かす」
俺が手を差し伸べながら言うと、クロダさんは唇を噛み締めて俯く。
すると、その時だった。
「うるせぇぞ」
俺の後ろから、地を這うような声が聴こえてきた。
ちょうど、トイレに行っていたトドロキさんが戻ってきたんだ。
「オレにコイツらを生かす気がねぇだと?言いがかりはやめてもらおうか。そっちこそ、『信頼』だとか『協力』だとか綺麗な言葉使って、コイツらを油断させて殺そうとしてるんじゃねぇのか?」
トドロキさんは、俺を睨みながら言った。
するとヒヅルとミズキ君が前に出て反論した。
「そんな事ない…ヘイジは、『げぇむくりあ』する為に最善を尽くそうとしてる」
「そうですよ!!実際、ヘイジさんが『おうさま』になった時は誰も死ななかったじゃないですか!!」
ヒヅルとミズキ君が反論した、その時だった。
「あ?」
トドロキさんは、殺気を放ちながら鋭い目つきを向ける。
「テメェらは何もわかっちゃいねぇ。この『げぇむ』はな、正攻法で勝てるような『げぇむ』じゃねぇんだよ。オレなら、コイツらを生かしてやれる。仲間1人守れねぇテメェらと違ってな。お前らもそう思うだろ?」
「は、はい…!」
「トドロキ様の仰せのままに」
トドロキさんが言うと、クロダさんとアキモトさんが賛同する。
特にクロダさんは、すっかりトドロキさんに懐柔されていた。
トドロキさんはおそらく、元の世界では暴力団の組長か何かだったんだろう。
「テメェもどうだ?オレについた方が賢明だぜ?ん?」
「アンタなんかには死んでもつかないわ」
アヤカさんは、トドロキさんを睨みながら言った。
結局このターンは、誰も俺達の味方になってくれなかった。
クニエダさんは、膝をついて絶望の表情を浮かべていた。
「終わりだ…!私達はこのまま、『しょけい』されるのを待つしかないんだ…!」
終わり……か。
俺は、サクマさんとメイさんに俺の『なんばぁ』を教えちまった。
もし今回もトドロキさんに『おうさま』を取られたら、次に吊られるのは俺かもしれない。
そうなったら、ヒヅルを守ってやれる奴がいなくなっちまう。
…いや、ひとりだけいたな。
「……ミズキ君。これは君にしか頼めない事だ。オレは、メイさんとサクマさんに『なんばぁ』を教えちまった。もしかしたらこのターンで『しょけい』されるのは、オレかもしれない。もしそうなったら…オレの代わりに、ヒヅルの事を守ってやってくれ。ヒヅルは、オレにとって希望なんだ。どうしても、幸せになってほしいんだよ。頼む」
「何を言ってるんですか…!?僕がもう一度皆を説得してきます!今度こそ、犠牲を出さずに『
「……そうだな。悪い」
ミズキ君に喝を入れられた俺は、俯いてぽつりと声を漏らした。
するとその時、ヒヅルが戻ってくる。
「……お待たせ」
「ヒヅルちゃん、遅かったね。どこ行ってたの?」
「ちょっと、ね…」
ミズキ君が尋ねると、ヒヅルはふいっと顔を逸らす。
会話のテンポが合わないヒヅルにミズキ君が少し困っていると、アヤカさんが口を開く。
「で、もう一回説得はするんでしょ?」
「アヤカさん…」
「無駄だってわかってても、足掻き続ける…そういうのアタシ、嫌いじゃないから。これ以上アイツらの好きにさせるのも癪だし」
そう言ってアヤカさんは、ひと足先に動いた。
俺達も、アヤカさんに続けて皆を説得しに行った。
だけど二度目も、皆説得に応じてはくれなかった。
◇◇◇
8ターン目の投票時間が終わり、『おうさま』を決める時間になる。
全員が決められた位置に立ち、『おうさま』の発表を待つ。
ちょうど時間になると、アイが口を開く。
『時間になりました。それでは、『おうさま』を発表します。今回の『おうさま』は、トドロキ様』
「くっ……」
クソッ…
やっぱりこうなっちまうのかよ…!
『今回の『どれい』は、クニエダ様。『めいれい』の内容は…『しょけい』』
「………は?」
『しょけい』を発表されたクニエダさんは、目を見開いてブツブツと何かを呟く。
「な、なな…何故だ…!?何故だァアアアッ!!?」
クニエダさんは、取り乱した様子でトドロキさんに向かって叫んだ。
「おかしいだろう!?
クニエダさんは、自分を吊るしてきたトドロキさんに抗議をした。
するとトドロキさんは、悪びれずに答える。
「あ?何言ってやがんだ。誰が『
トドロキさんが言い放つと、クニエダさんは絶望の表情を浮かべる。
そんな中、無情にもアナウンスが鳴り響く。
《ここで、『しょけい』の対象となった参加者がおられます。その参加者は……『げぇむおおばぁ』》
「クニエダさん…!」
「う…うああ…あああああ…!」
クニエダさんは、絶望のあまりその場で崩れ落ちた。
アイは、泣き崩れるクニエダさんを床の穴に落とした。
今回も、残虐な『しょけい』が執行された。
『『しょけい』が執行されました。8ターン目の生存者は、12名中11名。それでは次のターンも、生かしたい人を慎重に選んで下さい』
「あらあら、これで7対4になっちゃったわねぇ」
「アンタ達…!!」
サクマさんがクスクスと笑うと、アヤカさんがサクマさんを睨みつける。
クニエダさんも、『
また一人、仲間を失ってしまった。
コイツら…本気でこのまま俺達が全滅するまで『しょけい』を続ける気か…!?
「………」
「ヘイジ……」
ダメだ…もう、何の手も思い浮かばない。
俺が甘かった。
人を信じさせるって事が、こんなにも難しい事だなんて思わなかった。
「…ごめん、ヒヅル。オレが、巻き込んだ」
俺が謝ると、ヒヅルは俺の手の上にそっと自分の手を重ねた。
「巻き込まれたなんて思ってない。オレが、ヘイジについてきたの。これは生かしたい人を決める『げぇむ』なんでしょ?オレは、何があってもヘイジを生かすから」
ヒヅルは、震える手で俺の手を握りしめた。
俺は、小動物のようなヒヅルの身体を抱きしめた。
俺がヒヅルを抱きしめると、ヒヅルは俺の背中に両手を回して俺の胸に顔を埋めた。
今だけは、ヒヅルの優しさだけが、俺にとっての希望だ。
次に『しょけい』されるのは、きっと俺だ。
死ぬのは、心が壊れそうになるぐらい怖い。
だけど、ヒヅルが側にいてくれる、それだけでまだ耐えられる。
俺は、ヒヅルが生き残ってさえくれればそれでいい。
◇◇◇
9ターン目の投票時間が終わり、『おうさま』を決める時間になる。
全員が決められた位置に立ち、『おうさま』の発表を待つ。
ちょうど時間になると、アイが口を開く。
『時間になりました。それでは、『おうさま』を発表します。今回の『おうさま』は、アカマツ様』
………え?
今回はアカマツさんが…?
『今回の『どれい』は、クロダ様。『めいれい』の内容は…『しょけい』』
「は…!?」
『しょけい』を告げられたクロダさんは、大きく目を見開く。
「ウソ、ウソだ…こんなのウソだぁああああああっ!!!」
クロダさんは、取り乱した様子で叫んだ。
正直、俺も信じられないでいる。
どうしてアカマツさんが、仲間のはずのクロダさんを『しょけい』するんだよ…!?
「お、おかしいだろ!!何でオレなんだよ!?」
「え…?だ、だって、9番の奴を『しょけい』すれば殺し合いが止まるって話じゃ…あ、あれ…?」
「は……?」
アカマツさんが混乱した様子で言うと、クロダさんが呆気に取られる。
後ろにいたトカゲは、冷めた目つきでアカマツさんとクロダさんを見ていた。
その時、無情にも『げぇむおおばぁ』を知らせるアナウンスが鳴り響く。
《ここで、『しょけい』の対象となった参加者がおられます。その参加者は……『げぇむおおばぁ』》
「う…うあああ…い、いやだ…いやだいやだいやだいやだいやだああああああああ!!!」
『げぇむおおばぁ』を告げられたクロダさんは、泣きながらメインルームから逃げ出した。
だけど、その直後だった。
「ぐああああああああああっ!!!」
突然、クロダさんがその場に倒れてもがき苦しむ。
クロダさんは、今まで『しょけい』された皆と同じように、全身に水膨れができて蒸気を放っていた。
「な、何で…!?まだ処刑場に入ってないのに…!!」
「あら、処刑場から逃げれば生き残れるとでも思っていらしたのですか?逃げたり他の参加者を身代わりにしたりすれば、自分は助かるだろうと考えていらっしゃる愚か者に忠告しておきますが、『しょけい』に使われているマイクロ波レーザーは、この『げぇむ』会場内の全ての場所が射程範囲内です。『げぇむおおばぁ』になった時点で、その参加者の脳波がキャッチされ、対象者にのみレーザーが照射されます。処刑場は、あくまで対象者に効率よくレーザーを照射する為のもの。専用の部屋で死んでいただいた方が、死体の後始末が楽に済みますしね」
サクマさんが尋ねると、アイが淡々とした口調で答える。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
クロダさんは、膨れ上がった皮膚が破れて全身から血を流しながらもがき苦しんだ。
そんなクロダさんを見て、アイは無表情で言った。
「むしろ処刑場に入っていただかないと、レーザーの出力が弱まる分、余計に長い時間苦しむ事になるんですが…って、聞いてませんか」
「あぎぃぃぃぃっ…がぁあああ…!!」
レーザーを照射されたクロダさんは、そのまま『げぇむ』会場の外へと這いずって逃げ出した。
その瞬間、クロダさんは赤いレーザーで撃ち抜かれて絶命した。
会場の外で殺されたクロダさんを見て、アイは呆れたようにため息をつく。
「後始末が面倒なので、出来れば自分の足で処刑場に入って欲しかったのですが」
そう呟いたアイは、マイクを再び握る。
『『しょけい』が執行されました。9ターン目の生存者は、11名中10名。それでは次のターンも、生かしたい人を慎重に選んで下さい』
レーザーで頭を撃ち抜かれて死んだクロダさんを見て、ミズキ君は絶望の表情を浮かべる。
「な…何だよこれ……何なんだよぉっ…!!」
「ミズキ…」
「僕、人の心ってもっと綺麗なものだと思ってた…こんなの…っ、あんまりじゃないか…!!」
「ミズキ君!!」
ミズキ君は、走ってどこかへと去っていった。
俺とヒヅル、そしてアヤカさんは、去っていくミズキ君を追いかけた。
ミズキ君がシャワールームに駆け込むのが見えた俺は、ミズキ君を追う形でシャワールームに駆けつけた。
だけど、一足遅かった。
「ごめんなさい…ヘイジさん…ヒヅルちゃん…アヤカさん……僕はもう、心が…保たなかった……!!」
ミズキ君の啜り泣く声が聴こえたかと思うと、その直後、ザシュ、と刃物で肉を刺すような音が聴こえた。
「ミズキく───
俺がドアを無理矢理開けると、そこには、手にナイフを握って、首から大量の血を流して息絶えているミズキ君がいた。
「うあ…ああああ…!!」
チクショウ…俺のせいだ…!!
俺が、殺戮を止められなかったから。
俺はニーナを死なせた日から、何も成長していない。
大事な仲間の心を救えなかった。
「ヘイジ!!」
「ヘイジ君、どうしたの!?」
「見るな!!!」
ヒヅルとアヤカさんが駆けつけてくると、俺は二人に背を向けたまま叫んだ。
俺が叫ぶと、二人は何かを察したのか、それ以上近づこうとはしなかった。
「……そっか」
「ウソでしょ…!?ミズキ君…どうして…!」
ヒヅルは一言呟いて俯き、アヤカさんは啜り泣いた。
また一人、仲間を失ってしまった。
いつまで…こんな事続ければいいんだ。
◆◆◆
???side
薄暗い男子トイレの廊下に、二つの声がこだまする。
一人はトドロキ、そしてもう一人はトカゲだ。
トドロキは、手を洗っているトカゲに話しかける。
「おい。さっきの『しょけい』、何のつもりだ?テメェの仲間のバカが、オレの仲間を吊りやがった。テメェら、オレを裏切りやがったな?」
トドロキが灰皿に火のついた葉巻を押し付けながら尋ねると、トカゲは高級感のあるシルクのハンカチで手を拭きながら答える。
「何のつもりって…元はといえばそっちが売った喧嘩だろ?」
「あ?オレがいつ喧嘩を売ったってんだ?」
「とぼけるなよ。アンタが8ターン目で殺した男、ボクの仲間だったんだよ。それにボクは、今回アカマツさんには投票してない。なのに何でアカマツさんが『おうさま』になってたのかな?アカマツさんがクロダさんを吊った事といい、アンタが何か吹き込んだんじゃないのか?」
「…………」
「確かに、人は人の生き方を強制できるほど偉くはない。だけど、協力して『
トカゲは、ハンカチをパンッと払って綺麗に伸ばしてから、器用な手つきで畳んでポケットにしまいながら答えた。
するとトドロキは、吐息がかかりそうな距離までトカゲに近づき、地を這うような声で威圧する。
「おいガキ。あんまり大人を舐めるなよ」
トドロキは、正面からトカゲを睨みながら言った。
するとトカゲは、珍しく真顔でトドロキを睨み返しながら言い放つ。
「そっちこそ、あまり人を見下すなよ。もういい大人なんだから」
トカゲは、低い声でトドロキに圧をかけた。
だがその直後、いつもの飄々とした笑顔に戻ると、降参の意を示すかのように両手を挙げる。
「まあでも、ボクもこれ以上くだらない喧嘩を続ける程バカじゃないんでね。お互い死人は一人ずつ。ここは痛み分けといこうじゃないか♪」
トカゲは、目を細めて笑顔を浮かべながらトドロキに提案する。
するとトドロキは、新たな葉巻に火をつけながら返事をする。
「いいだろう」
トドロキは、返事をしてからトイレを出る。
トドロキが去った後、トカゲは自分のタブレットで投票をした。
◇◇◇
その後、サクマがソワソワした様子でトイレから出てくると、トカゲが声をかける。
「ねぇ」
トカゲが声をかけると、サクマがビクッと肩を跳ね上がらせて振り向く。
「随分と落ち着かない様子だね。何か心配事でもあるの?」
「………別に、何もないわよ」
トカゲが話しかけると、サクマはトカゲから目を逸らした。
するとトカゲは、サクマの図星を突く。
「キミさ、本当はトドロキの事、信用してないんでしょ」
「…………」
「このままトドロキに従ってていいの?アイツ、他の『ぷれいやぁ』を皆殺しにするつもりだよ。もちろん、キミの事もね。何も、ボクに投票してくれとは言わない。キミがトドロキに投票しなければ、このターンで奴が『おうさま』になる事はない。奴を止めるなら、今しかないんじゃない?」
「……………」
トカゲが言うと、サクマは俯いて黙り込む。
サクマは、震える手で投票をした。
トカゲはそんなサクマを見て、目を細めて笑う。
◆◆◆
ヘイジside
10ターン目の投票時間が終わり、『おうさま』を決める時間になる。
全員が決められた位置に立ち、『おうさま』の発表を待つ。
ちょうど時間になると、アイが口を開く。
『時間になりました。それでは、『おうさま』を発表します。今回の『おうさま』は、トドロキ様』
『おうさま』が発表されると、トカゲは笑顔を浮かべつつも面白くなさそうに舌打ちをする。
……やっぱりか。
ミズキ君を失って、俺達の票は3票になった。
トカゲとトドロキの協力関係は、クロダさんが『しょけい』された時点で既に解消されている。
今この場にあるチームは、俺とヒヅルとアヤカさんからなる陣営、トカゲとメイさんとアカマツさんからなるトカゲ陣営、トドロキさんとアキモトさんとサクマさんからなるトドロキ陣営の3チームだ。
本来なら陣営のリーダーに3票ずつ入って同票になって『おうさま』が生まれないはずなのに、今『おうさま』が発生しているのは、『
『今回の『どれい』は、アカマツ様。『めいれい』の内容は…『しょけい』』
「は…!?どうなってんだよこれ…!?何でオレなんだよ!?」
アカマツさんは、困惑の表情を浮かべてトドロキさんを見る。
するとトドロキさんは、悪びれずに言った。
「あー、悪い悪い。手が滑っちまった」
トドロキさんが言うと、アカマツさんは絶望の表情を浮かべる。
その時、『げぇむおおばぁ』を告げるアナウンスが鳴り響く。
《ここで、『しょけい』の対象となった参加者がおられます。その参加者は……『げぇむおおばぁ』》
「いやだ…いやだぁああああ!!!誰か…誰か助けてくれぇえええ!!!」
アカマツさんが絶望の表情を浮かべて泣き喚く中、アイは無表情でアカマツさんを処刑場に突き落とした。
また一人、残虐な方法で『しょけい』されていく。
…また、救えなかった。
『『しょけい』が執行されました。10ターン目の生存者は、10名中8名。それでは次のターンも、生かしたい人を慎重に選んで下さい』
ミズキ君とアカマツさんが死んでも、『げぇむ』は終わらなかった。
ミズキ君とアカマツさんは、『
無実の人が、6人も死んだ。
これ以上犠牲を出す前に、トドロキさんから『おうさま』を奪い返して、『
誰が『
怪しいのは、『
もし俺が『
…いや、でもその推理でもまだ詰めが甘い気がする。
『
アイは、『
そもそも一つの絵札につき絵札の主が一人とは限らない。
『
考えろ…俺が『
「殺される…!次は絶対私の番だわ…!」
サクマさんは、泣きながら俺達のもとに駆けつけてきた。
「お願い!!私をチームに入れて!!このままだと、アイツらに殺される…!!」
サクマさんは、膝をついて両手を組みながら、チームに入れてくれと泣いて頼んできた。
さっきは俺達を嘲笑っていたサクマさんが懇願してくるのを見て、ヒヅルとアヤカさんが軽蔑の眼差しを向ける。
「…アンタ、自分が何言ってるかわかってる…?」
「あたしさ、アンタの事は絶対許さないって言ったばっかだよね」
ヒヅルとアヤカさんは、サクマさんを仲間にするのを嫌がった。
…確かに、サクマさんの裏切りのせいで、多くの血が流れた。
アヤカさんが仲良くしていたルキヤさんも、サクマさんのせいでトドロキさんに殺された。
だけど今は、争ってる場合じゃない。
「…もう、やめよう。二人とも。これ以上殺し合いをしなくて済むなら、オレはそれでいい。サクマさん。今度こそ、オレ達を信じて投票してくれますか?」
「信じる!!信じるから!!お願い、私を助けて!!」
俺が言うと、サクマさんは助けてくれと懇願しながらも、今度は俺達に協力すると約束してくれた。
今回は、話し合いの結果、サクマさんを『おうさま』にする事にした。
サクマさんの『なんばぁ』は、『3』だ。
「サクマ…さんに4票入ったわ。これでアイツらが『おうさま』を取る事はない」
「じゃ、じゃあ私は助かるのね!?そうよね!?」
アヤカさんが言うと、サクマさんは何度も俺達に確認してくる。
普通に考えれば、今回はサクマさんが『おうさま』になるはず。
…だけど、何だろう。
まだ何か、見落としてる気がする…
◇◇◇
11ターン目の投票時間が終わり、『おうさま』を決める時間になる。
全員が決められた位置に立ち、『おうさま』の発表を待つ。
ちょうど時間になると、アイが口を開く。
『時間になりました。それでは、『おうさま』を発表します。今回の『おうさま』は、トドロキ様』
まただ…
また、トドロキさんが『おうさま』…
何でだ…!?
「ウソ…ウソウソウソウソウソ!!?何で!?どうなってるのよこれ!?」
サクマさんは、混乱するあまり声を荒げていた。
俺達は、誰もこの結果を信じられずにいる。
俺、ヒヅル、アヤカさん、サクマさんの4人はサクマさんに投票したから、サクマさんは半数の4票を獲得する。
トドロキ陣営とトカゲ陣営が結託したって、同票になって『おうさま』は発生しないはず。
俺と同じ事を思ったのか、ヒヅルがトドロキさんを問い詰める。
「ちょっと待って…仮にアンタがトカゲとグルだったとしても、お互い4票ずつになって『おうさま』は発生しないはず。なのにどうしてトドロキが『おうさま』になってるの…?」
「あー、何かオレのタブレットが調子悪いみたいでよ。勝手に『おうさま』になっちまった。悪いな」
ヒヅルが問い詰めると、トドロキさんが悪びれずに言った。
絶対嘘だ。
票に何か細工をした…そうとしか考えられない。
『今回の『どれい』は、サクマ様。『めいれい』の内容は…『しょけい』』
「……………」
「……終わった」
アイが『めいれい』の内容を発表すると、サクマさんは絶望のあまり言葉を失い、アヤカさんも俯いてポツリと呟いた。
無情にも、『げぇむおおばぁ』を知らせるアナウンスが鳴り響く。
《ここで、『しょけい』の対象となった参加者がおられます。その参加者は……『げぇむおおばぁ』》
「は…ははは………裏切られる前に裏切らなくちゃ生き残れない…か…確かにその通りね…」
『げぇむおおばぁ』が確定して自棄になったのか、サクマさんは笑っていた。
「…いいわ。どうせ死ぬなら、タダでは死なない。どうせ誰も信じないと思って黙ってたけど、『
サクマさんが何かを言おうとした、その瞬間だった。
アイが、サクマさんの喉にナイフを突き立てる。
「ぁ…が……!!」
サクマさんの喉にナイフを突き立てて口封じをしたアイは、そのまま処刑場にサクマさんを突き落とした。
サクマさんが言おうとした言葉は、俺達には届かなかった。
「死人に口なし、です」
アイは、無表情のまま口の前で人差し指を立てて言った。
今回も、無慈悲にも『しょけい』が執行される。
『『しょけい』が執行されました。11ターン目の生存者は、8名中7名。それでは次のターンも、生かしたい人を慎重に選んで下さい』
また、『
…完全に、俺のミスだ。
もっと俺が、他の『ぷれいやぁ』に注意を向けていれば。
もっと時間をかけて、皆と信頼関係を築けていれば。
殺戮が起きるのを、止めていれば。
「クソッ…クソ、クソクソクソ…!!」
「ヘイジ…」
俺が頭を掻きむしっていると、ヒヅルが心配そうに俺に話しかけてくる。
「これ…どうしたらいいと思う?」
そう言ってヒヅルが見せてきたのは、血まみれのタブレットだった。
ヒヅルのじゃない。
どうしたんだ、これ…?
「……ヒヅル。そのタブレット、どうしたんだ?」
「これ…ミズキの。ミズキは、他の皆と違って『しょけい』じゃなかったから…何かの役に立つかもしれないと思って、タブレットを回収しておいたの……ヘイジ、こういう機械とか強かったよね?何とか使えるようにできない?」
ミズキ君の…
…………。
………………!!
…そう、か……
そういう事だったのか…。
「っハハ…ハハハハハ、アハハハハハハ!!!」
「ど、どうしたの…?」
俺が思わず笑い出すと、ヒヅルが俺を心配する。
「…そうか、そういう事かよ」
「ヘイジ…何かわかったの?」
「ああ…全部わかったよ。…もう、終わらせよう。この『げぇむ』を」
全部わかった。
奴等にこれ以上『おうさま』を獲らせない方法も、『
…もう、終わらせよう。
これ以上、皆の死を無駄にしない為にも。
『げぇむ』『おうさまげぇむ』
難易度『
12ターン目 残り7名
『
178cmくらい。
営業マン。
冷静沈着で、一見良識的な人物に見えるが、実は打算的な性格。
160cmくらい(ヒール込み)。
OL。広告代理店勤務。
どこか幸が薄く、『げぇむ』では不運な目に遭いがち。
178cmくらい(ヒール込み)。
ホステス。
姉御肌で頭も切れる。
『なんばぁ』は『2』。
150cmくらい。
中学生。
最年少でありながら、クールで場慣れしている。
170cmくらい。
大学生。心理学専攻。
良くも悪くも自由人で、人に指図される事を嫌う。
『なんばぁ』は『1』。
176cmくらい。
指定暴力団組長。
寡黙で近寄りがたく、参加者の中で最も謎に包まれている。
177cmくらい。
大学院生。
お人好しな性格。『げぇむ』ではリーダーシップを発揮している。
『なんばぁ』は『13』。
159cmくらい。
『今際の国』の国民で、『
『げぇむ』の進行を担当している。
♡J編にオリキャラを登場させるつもりなんですが、定員を増やすのと原作通り20人で進めるのとどちらがいいですか?
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人数増やす
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原作通り20人で進める