Hedgehog in Borderland   作:M.T.

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ごめんなさい。
ミスを見つけたので編集しました。


はあとのきんぐ(4)

ヘイジside

 

 『げぇむ』『おうさまげぇむ』。

 難易度『♡K(はあとのきんぐ)』。

 

 エントリー時に、参加者全員にタブレットが1台ずつ支給され、0〜13のうちのどれかの数字が個別の『なんばぁ』として割り振られた状態で『げぇむ』を開始する。

 制限時間は60分(ただし全員の投票が終了した場合は、その時点で投票時間終了)。

 タブレットに『おうさま』にしたい参加者に割り振られた『なんばぁ』を入力し、投票を行う。

 この際、実行したい『めいれい』をセットできる。

 

 制限時間経過後に、最も得票数の多かった参加者が『おうさま』となり、投票時間内にセットした『めいれい』が実行される。

 『おうさま』に『めいれい』された相手は『どれい』となり、次の『おうさま』を決める投票が終わるまでの間は『おうさま』の『めいれい』に従わなければならない。

 強制できる『めいれい』は、通常の『めいれい』と、『どれい』を強制的に『げぇむおおばぁ』にできる『しょけい』の2種類。

 

 『♡K(はあとのきんぐ)』を『しょけい』できれば、残った『ぷれいやぁ』は全員『げぇむくりあ』。

 『ぷれいやぁ』が全員殺されれば『げぇむおおばぁ』。

 

 『げぇむ』における禁止行為は2つ。

 『どれい』が『おうさま』の『めいれい』に従わなかった場合。

 他者を自力で投票できない状態にした場合。

 

 

 

 ようやくわかった。

 トドロキさん達にこれ以上『おうさま』を獲らせない方法も、『♡K(はあとのきんぐ)』の正体も、これ以上血を流さずに『げぇむ』を終わらせる方法も。

 俺は、『♡K(はあとのきんぐ)』を見つける為の『めいれい』をセットして、早速秘策を実行に移した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

アキモトside

 

 俺は、元の世界では不動産の営業職だった。

 営業成績は常にトップ。

 上司からも部下からも気に入られている人格者…という風に人が俺の事を見ているのは知っている。

 そう見られるように振る舞ってきたからな。

 

「ありがとうございます。おかげでいい物件が見つかりました」

 

「駅から近い割に自然が多いし、子供部屋の日当たりもいいし…すごく気に入りました」

 

「こちらこそ、そのように感じていただけて幸いです」

 

 まあ…こんな騒音が多くて空き巣に狙われやすい物件、俺なら絶対買わないけどな。

 『駅近で公園も近い』…聴こえはいいが、裏を返せば車の走行音や子供の声がうるさいって事だし、便利な物件ってのは空き巣にとっては格好の的だ。

 不動産の営業ってのは、質の悪い物件をいかに満足させて買わせるかだ。

 

 俺は、人心掌握の才能があると自分でも思う。

 その才能を、詐欺紛いの商売に使ってきた。

 別に、客に対して罪悪感を感じているわけじゃない。

 だが、俺の才能をもっと存分に活かせる場所があるんじゃないか、時々そう思う。

 

 俺の才能を活かせる場所は、他にあるはずだ。

 思い通りに人を操れて、好き放題生きられる、そんな場所が。

 

 

 

「一番に警戒すべきは…あの細眼の男ですか?」

 

「ああ。アイツが『♡K(はあとのきんぐ)』に違いない。だが、万が一という事もある。ローラーをかけて確実に『しょけい』するぞ」

 

「……どこまでも、あなたについていきます」

 

 俺は、『♡K(はあとのきんぐ)』に参加してから、すぐにトドロキの傘下についた。

 俺がトドロキに目をつけたのは、コイツが暴力での支配を望む独裁者だと踏んだからだ。

 この『げぇむ』では、いかに絶対的な力とカリスマで場を支配できる奴を味方につけるかで、生き残れるかどうかは決まる。

 俺は、トドロキの指示に従う忠実な駒のフリをして、奴との関係を悟られないように全員と平等にコンタクトを取った。

 

 正直な話、トドロキの事は一切信用しちゃいない。

 だがコイツに票を入れて他の陣営のメンバーを吊るしているうちは、その矛が俺に向く事はない。

 

 俺は、自分さえ生き残れればそれでいい。

 これまで、そうやって生きてきた。

 そしてこれからも……?

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

アヤカside

 

 私の元の世界での仕事は、高級クラブのホステスだった。

 水商売は嫌いじゃないし、お客様に喜んでもらえるのが、何よりのやりがいだった。

 たとえ仕事だとしても、人に愛してもらえると、私も人を愛したいって思えた。

 指名をもらうたびに、自分磨きをする気がわいてきた。

 

「今月のトップはアヤカちゃん。これで6ヶ月連続よ。すごいわ」

 

「ありがとうございます、ママ」

 

 私は、お客様に楽しんでもらえるように自分磨きをして、話術や教養を身につけて、正攻法で売り上げを伸ばしていった。

 他のホステスは、私に羨望や嫉妬の眼差しを向けるようになった。

 

「アヤカちゃんってホント欠点って欠点がないよねぇ」

 

「ホントホント!美人だし、努力家だし、頭も性格も良いし、話も面白いし…嫉妬する気すら起きないわ」

 

 周りのホステスは、私を『美人』、『頭がいい』、『話が面白い』なんて言っていたけど、別に私がすごいわけじゃない。

 可愛くなりたいから、人を愛して愛されたいから、努力をしただけ。

 

「でもさぁ…知ってる?アイツが前に働いてた店でさぁ…製薬会社の重役がアイツに入れ込みまくった挙句、多額の借金背負って自殺したって話」

 

「うわぁ〜エグっ」

 

「横領だの、自殺だの…アイツと関わるとロクな事が起こらないわよねぇ〜」

 

「身体売ってるんでしょ、きっと。ウチの店そういうのNGなのにねぇ」

 

「やっ…やめなよ〜…」

 

 職場のホステスは、私を尊敬してくれる子達がほとんどだったけど、中には私を妬んでくる子もいた。

 その子達は、私のいないところで私の陰口を叩いたり、私の事で根も葉もない噂を流したりしていた。

 

「やべっ…聞かれてた?」

 

「根も葉もない噂をしてる暇があったら、お客様に気に入ってもらえる努力をしたら?ここは愚痴や陰口を叩く場所じゃないのよ」

 

 私の事を愛してくれる人の数だけ、私の事を憎む人がいたのは知ってる。

 だけど私は、別にそれでもいいと思ってた。

 だって、妬ましいくらいに愛して愛されて、可愛く生きてるのが私だから。

 

 

 

「ヘイジ君、私は次のターンどうすればいいの…?」

 

 私は、『♡K(はあとのきんぐ)』に参加してから、ヘイジ君の仲間になった。

 私がヘイジ君の仲間になったのは、誰よりも優しくて、人の心がわかる人だと思ったから。

 これは持論だけど、この『げぇむ』で生き残れるのは、自分の命を懸けられるくらいに誰かを愛せる人だと思う。

 まさに『♡K(はあとのきんぐ)』に相応しい『げぇむ』。

 …私は、この『げぇむ』で生き残るのに相応しいのかな。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

メイside

 

 私は昔から、いつも損な役回りばかりさせられていたと思う。

 『社長令嬢』と言えば聴こえはいいけど、父は跡継ぎの兄ばかりを溺愛していて、女の私は召使いのような扱いを受けていた。

 会社のイメージアップの為に都合のいい時だけご機嫌取りをされて、ずっと搾取され続けてきた。

 家にも学校にも、居場所なんか無かった。

 

「鐘ヶ谷さんってさ。家が金持ちだからって調子に乗ってるよね」

 

「無視しない?」

 

 学生時代は、家が裕福だからって妬まれて、ほぼ毎日いじめを受けてきた。

 私は、家の事を自慢した事なんか一度も無かったのに。

 両親は私に興味がなかったから、助けてくれなかった。

 皆、私をいじめても親が干渉してこない事に気付いたのか、日に日にいじめはエスカレートしていった。

 

 一日でも早く自立したくて、必死に勉強して国立大学を出て、一流企業に就職した。

 仕事が楽しくなってきて、職場で恋人を見つけて、やっと幸せを掴んだと思った矢先、よりにもよって私の不幸の元凶の家族に、その幸せをブチ壊された。

 

「すまん、芽唯…父さん達を助けると思って、この話を請けてくれないか」

 

 父親の会社が倒産して、借金返済の為に勝手にお見合いをセッティングされた。

 要は私は、両親と兄が助かる為だけの生贄だった。

 断ってやろうかとも思ったけど、お見合い相手が、私が勤めていた会社の取引先の重役の御曹司だったから、断るに断れなかった。

 婚約していた彼氏とは無理矢理別れさせられて、結婚したら仕事を辞めて専業主婦になれって条件までつけられた。

 結局どこまで逃げても、家族の呪縛からは逃れられない。

 私の人生って、何だったんだろう。

 

 

 

「他の奴の言う事なんか聞かなくていい。君は君の、好きなように生きていいんだ」

 

「トカゲ様……」

 

 気付けば私は、トカゲ様に心酔していた。

 クソ野郎に犯された後、ヒヅルちゃんとアヤカさんは私に寄り添ってくれたし、ヘイジ君とミズキ君は私を仲間にしてくれた。

 だけど私の復讐心を受け入れてくれたのは、私の好きなように生きていいと言ってくれたのはトカゲ様だけだった。

 私は、ヘイジ君やミズキ君のような、綺麗な人間にはなれない。

 そんな私を、トカゲ様だけは否定せずに、同じ目線で見てくれた。

 私は、残りの命を、全てトカゲ様に捧げると決めた。

 

 

 

「一番に警戒すべきは…やはり、トドロキですか?」

 

「…そうだねぇ。彼は今まで、『げぇむくりあ』の邪魔しかしていない。彼が『♡K(はあとのきんぐ)』かもしれないから気をつけなよ」

 

 私は、クニエダさんやアカマツさんと一緒に、トカゲ様の仲間になった。

 気付けば、トカゲ様の陣営の生き残りは、トカゲ様と私だけになってしまった。

 だけど、それでも別にいい。

 私は、トカゲ様をこの『げぇむ』で生き残らせる。

 私の生きる理由は、それでいい。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

トカゲside

 

「立て!!泣けば許されると思っているのか!!」

 

 僕は、父親が嫌いだった。

 僕の父は検事で、仕事熱心な人だった。

 家の書斎には仕事に使う資料がズラリと並んでいたのを、よく覚えている。

 だけど父は、成績や作法に厳しかっただけじゃなく、僕のやる事なす事を頭ごなしに否定してきた。

 特に、僕が『将来お父さんの手伝いがしたい』って言ったら、怒鳴られて、引っ叩かれて、法律に興味を持つ事自体を否定された。

 叩かれて泣いたら、『男のくせに』って怒鳴られた。

 僕を見下した父の目が、大嫌いだった。

 

「あのね飛龍。お父さんは、ただただ不器用なだけなの。お父さんを許してあげて」

 

 母親の事は、もっと嫌いだった。

 母は、僕が叩かれる度に庇いはしたけど、母の口癖は決まって『お父さんを許してあげて』だった。

 僕を助けてくれる事はあっても、僕の味方になってくれた事は一度もなかった。

 僕は母のように、赦しを押し付ける人間が嫌いだ。

 復讐や報復を悪と決めつけて、人の憎悪を耳当たりのいい言葉で殺して、自己満足を正義と思い込む。

 『清濁合わせ呑む』という事を履き違え、人を無意識のうちに見下して、ハリボテの優しさを押し付ける偽善者。

 『優しさ』だって、一種のエゴだ。それも、最悪の部類の。

 

「お父さんとお母さんの言う事なんか聞かなくていい。飛龍は飛龍の、好きなように生きていいんだよ」

 

 唯一、僕の味方でいてくれる人がいた。

 僕の姉だ。

 姉さんは、美人で、聡明で、とても気立てのいい人だった。

 僕が父に理不尽に怒られる度に、父に抗議してくれた。

 姉さんだけは、僕を見下さなかった。

 僕の、父と母に対する憎しみを肯定してくれた。

 僕は、そんな姉さんの事が大好きだった。

 だけどあの人は、ある日突然僕の前からいなくなってしまった。

 

 両親と姉は、父に恨みを持つ人物によって惨殺された。

 僕が7歳の時だった。

 唯一、物置に隠れていた僕だけは助かった。

 

 僕は、家族が殺された事をきっかけに、法務技官になる事にした。

 犯人を、僕の家族の殺害に駆り立てた強い感情の濁流を、心理学の分野から解き明かしたいと思った。

 心理職は、僕の大好きだった姉さんの夢でもあった。

 僕の母のように無理矢理矯正しようとするんじゃなくて、相手の心理を徹底的に分析して、行動の原因を突き止める、それが僕の使命だ。

 

 

 

「メイさん。ここまで来たら、あとは『♡K(はあとのきんぐ)』を見つけるだけだ。一緒に生き残ろう」

 

「はい…トカゲ様」

 

 『♡K(はあとのきんぐ)』に参加してから、僕はメイさん、クニエダさん、アカマツさんを味方につけた。

 だけど結局は、残ったのは僕とメイさんだけになってしまった。

 僕がメイさんと組んだのは、彼女が僕の姉に似ていたからだ。

 彼女になら、僕の命を預けられると思った。

 まあ、最後は僕が生き残るけどね。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

トドロキside

 

 俺の元の世界での肩書きは、ヤクザの組長だった。

 人から恨まれる事ばかりやってきたから、命を狙われる事なんざ日常茶飯事だった。

 そのせいで、娘には嫌な思いばかりをさせてきた。

 

「おい。どこ行くんだ」

 

「うるさいわね、どこだっていいでしょ!?」

 

 俺には、今年で25になる娘がいた。

 女房は娘を産んですぐにポックリ逝っちまったから、俺にとっての縁者は娘だけだ。

 俺は、女房が最期に遺した宝を、大切に守り育ててきた。

 ウチの組の奴等も、俺の娘を本当の娘のように可愛がってくれた。

 

 だが俺は、アイツが本当に望んでいたものを与えてやる事はできなかった。

 娘は、高校を出てすぐに家を出て行った。

 

「ヤクザなんか大っ嫌い!!」

 

 それが、娘が家を出ていく直前、最後に俺に言った言葉だった。

 アイツがずっと望んでいて、俺がアイツに与えられなかったもの、それは普通の生活だ。

 俺がヤクザ者だってだけで、何の罪もない娘が、クラスメイトに無視されたり、対抗勢力の連中に狙われたりしてきた。

 『普通の家に生まれたかった』、それが娘の口癖だった。

 

 アイツは、俺の娘だって事がバレないように、家を出てすぐに整形して顔を変えた。

 その為にずっと前からバイトを掛け持ちして貯金をしてたと知った時は、アイツが本気だったって事にようやく気がついた。

 だが、顔と名前を変えても、対抗勢力の連中は性懲りもなく娘を狙ってきた。

 連中が娘の家を特定した事を知った俺は、連中を一人残らず捕まえて、拷問の末に殺した。

 俺はただ、娘が…亜弥が幸せに生きてくれれば、それだけでよかったんだ。

 

 

 

「とうとう…半分にまで減りましたね…」

 

「……そうだな」

 

 俺は、『♡K(はあとのきんぐ)』の『げぇむ』が始まってすぐに、アキモト、クロダ、サクマの三人を仲間にした。

 仲間を確保した俺は、『げぇむ』の中盤で殺戮を始めた。

 クロダがアキモトに殺されて、サクマが俺達を裏切って、俺の仲間はアキモトだけになった。

 『♡K(はあとのきんぐ)』じゃない奴が、7人も死んだ。

 それもこれも全部、俺の目的のためだ。

 協力や信頼なんざ、糞食らえだ。

 『♡K(はあとのきんぐ)』の参加者を全員殺して、俺だけが、最後まで生き残ってやる。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヘイジside

 

「ヘイジ…本当に、上手くいくよね?」

 

「ああ。今は、この作戦に賭けるしかない」

 

 ヒヅルが心配そうに俺の顔を覗き込むと、俺はぐっと拳を握りしめて答えた。

 やっと、わかったんだ。

 さっきのターンで『おうさま』を取れるはずのないトドロキさんが『おうさま』を取れた理由も、『♡K(はあとのきんぐ)』の正体も、この『げぇむ』を終わらせる方法も。

 皮肉にも、ミズキ君の死が、俺達に活路を与えた。

 

 俺は、作戦が上手くいく事を願いながら投票をした。

 『♡K(はあとのきんぐ)』なら既に目星はついてる。

 誰一人犠牲を出さずに最短で『♡K(はあとのきんぐ)』を吊る必勝法も、ちゃんとあったんだ。

 そこにさえ気づけば、『♡K(はあとのきんぐ)』は『今際の国』の『げぇむ』の中で一番簡単な『げぇむ』だった。

 だけど、『♡K(はあとのきんぐ)』は、人の心を弄んで壊す事に関しては超一流だ。

 奴の巧妙な手口が、この『げぇむ』を最高難易度の『げぇむ』たらしてめいたんだ。

 

 だがもう、これ以上奴の好きにはさせない。

 今度こそ、誰一人犠牲を出さずに『げぇむ』を『くりあ』するんだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 12ターン目の投票時間が終わり、『おうさま』を決める時間になる。

 全員が決められた位置に立ち、『おうさま』の発表を待つ。

 ちょうど時間になると、アイが口を開く。

 

『時間になりました。それでは、『おうさま』を発表します。今回の『おうさま』は、ヘイジ様』

 

「な…!?どうして、あなたが『おうさま』なんですか…!?」

 

「何かオレのタブレットが調子悪いみたいでよ。勝手に『おうさま』になっちまった。悪いな」

 

 アイが『おうさま』を発表すると、アキモトさんが目を見開いて驚く。

 俺はそんなアキモトさんに対し、さっきのターンでトドロキさんが言ったのと同じ言葉を返した。

 きっとアキモトさんは、今回もトドロキさんが『おうさま』を取ると思っていたんだろう。

 どうせ今回もトドロキさんは数でゴリ押ししてくるだろうと思ってたから、こっちも同じ事をさせてもらった。

 

 俺は、ヒヅルが持ってきてくれたミズキ君のタブレットを直して復活させた。

 ミズキ君のタブレットは、彼が死んだ後の3回分の投票の投票ボックスが表示されていた。

 この事からわかったのは、『げぇむおおばぁ』になった『ぷれいやぁ』のタブレットによる投票も有効だという事、そして時間内に投票しなかった場合は、投票権が剥奪されるわけじゃなくて、未使用の投票ボックスが貯まっていくという事だった。

 

 1つの投票ボックスで投票できるのは、1票まで。

 だけどミズキ君のタブレットには、3回分の投票ボックスがある。

 つまりこの投票で、3票を入れられるって事になる。

 

 トドロキさんがさっきの投票で使ったのは、おそらくクロダさんのタブレットだ。

 多分トドロキさんは、投票時間中以外はクロダさんのタブレットを預かっていたんだと思う。

 きっと最初はクロダさんの裏切りを防止する為にタブレットを質物にしていたんだろうけど、トドロキさんがタブレットを預かったままクロダさんが『げぇむおおばぁ』になって、トドロキさんの手元には2台のタブレットが残った。

 トドロキさんはその時に、『げぇむ』の裏『るうる』に気付いたんだ。

 トドロキさんは、必ず自分が『おうさま』になれるように、クロダさんのタブレットで投票をしていたんだ。

 

 俺は今回の投票で、トドロキさんが前回の投票でやったのと同じように、ミズキ君のタブレットを使って自分に3票入れて『おうさま』を獲得した。

 『おうさま』さえ取ってしまえば、あとは俺が見つけた必勝法を使って、『♡K(はあとのきんぐ)』を炙り出すだけだ。

 今回俺は、『♡K(はあとのきんぐ)』を確実に『しょけい』する為の、とっておきの『めいれい』をセットした。

 アイは、俺がセットした『めいれい』の内容を読み上げる。

 

『今回の『どれい』は────私です』

 

「!!?」

 

 アイが言うと、メイさんとアキモトさんが目を見開く。

 今回俺が『どれい』に選んだのは、アイだ。

 

「そんな、まさかゲームマスターを『どれい』にするなんて…!」

 

「可能なんですか…!?」

 

 メイさんとアキモトさんは、『♡K(はあとのきんぐ)』の代理で、この『げぇむ』のゲームマスターであるアイが『どれい』になったという事実に驚いていた。

 事実として、アイを『どれい』にする事は可能だった。

 アイは、『『おうさま』は、()()()()()()()()()()()1()()に1つだけ、『めいれい』をする事ができる』と言った。

 アイの言う『この場にいる全員のうち1人』には、アイ自身も含まれる。

 ずっと前から、アイが『この場にいる全員のうち1人』という言葉と、『参加者』という言葉を使い分けているのが気になってはいた。

 

 『なんばぁ』を割り振られていないアイは、『おうさま』になる事はできないし、『おうさま』がアイを『しょけい』する事もできない。

 だけど『おうさま』がセットできる『めいれい』は、2種類ある。

 普通の『めいれい』は、別に相手の『なんばぁ』を指定せずとも、効力を持たせられる。

 セットしたのが普通の『めいれい』なら、『おうさま』がアイを『どれい』にして『めいれい』を実行させる事もできたという事だ。

 

 だがもちろん、アイに『この『げぇむ』を終わらせろ』という『めいれい』をする事はできない。

 そんな事は、俺だってわかってる。

 絵札戦が『今際の国』の国民との命の奪り合いである以上、この『げぇむ』は『♡K(はあとのきんぐ)』か俺達『ぷれいやぁ』が死ぬまで終わらない。

 『この『げぇむ』を終わらせろ』という『めいれい』は、『『しょけい』以外で人を死に至らしめる『めいれい』は無効となる』という『るうる』に抵触する。

 だから、俺がアイに強制した『めいれい』は、別の『めいれい』だ。

 

『『めいれい』の内容は、『『♡K(はあとのきんぐ)』の『なんばぁ』を嘘偽りなく答えろ』です』

 

 アイが『めいれい』の内容を読み上げると、トドロキさんが僅かに目を見開く。

 アイはゲームマスターである以上、『♡K(はあとのきんぐ)』の『なんばぁ』を知らないわけがない。

 アイを『どれい』にして『♡K(はあとのきんぐ)』の『なんばぁ』を吐かせる事、これがこの『げぇむ』での唯一の必勝法だったんだ。

 この方法を1ターン目で見つけていれば、1ターン目の投票時間中に皆と信頼関係を築けていれば、誰一人犠牲を出さずに最短で『げぇむくりあ』できた。

 『正解』に辿り着くのに、随分と遠回りをしちまった。

 だけどこれでもう、誰も殺し合わずに『げぇむ』を『くりあ』できる。

 

『それでは、『めいれい』を実行します。『♡K(はあとのきんぐ)』様の『なんばぁ』は……『0』です』

 

「0……!!」

 

 0番…!!

 やっとわかった。

 『♡K(はあとのきんぐ)』の『なんばぁ』が。

 

『12ターン目の生存者は、7名中7名。それでは次のターンも、生かしたい人を慎重に選んで下さい』

 

 アイが、無機質な声で生存者を発表する。

 俺は、生き残った皆に、今一度呼びかけた。

 

「皆、聞いてくれ。このターンで皆で票を集めて次『おうさま』を取れば、『♡K(はあとのきんぐ)』を吊れる。オレを信じて投票してくれ」

 

 俺が呼びかけると、メイさんが反論してくる。

 

「あなたを信じろって…そんな事できるわけないでしょ?あなたが『♡K(はあとのきんぐ)』かもしれないのに。信用できるのはトカゲ様だけよ」

 

「誰が『♡K(はあとのきんぐ)』かなんてどうでもいい。だって、『♡K(はあとのきんぐ)』の『なんばぁ』はもうわかってるんだぞ。もうこれ以上、不毛な殺し合いをする必要は無いんだ」

 

 俺は、他の4人の心に訴えかけた。

 するとトカゲは、両手を挙げて笑顔を浮かべる。

 

「…OK、わかった。キミに協力しよう。だけどその前に、『♡K(はあとのきんぐ)』が誰かをハッキリさせておきたいよね?僕が知ってる限りにはなるけど、皆の『なんばぁ』を言って、皆の無実を晴らそうじゃないか♪」

 

 そう言ってトカゲは、メモ帳から紙を一枚ちぎって見せる。

 

「字、かわいいな」

 

 トカゲのメモを見たヒヅルは、どうでもいい事を指摘した。

 トカゲのメモには、女の子が書いたような丸っこくて可愛らしい手書きの字で、トドロキ陣営のメンバーの名前と、各メンバーの『なんばぁ』が書かれていた。

 

 

 

ーーー

 

トドロキ 10

クロダ 9

サクマ 3

 

ーーー

 

 

 

 トカゲのメモには、アキモトさんを除くトドロキ陣営の『なんばぁ』が書かれていた。

 

「ボクの『なんばぁ』も教えておこうか。ボクは『1』だよ♪」

 

「……『7』です」

 

 トカゲとメイさんは、トドロキ陣営の『なんばぁ』と、自分達の『なんばぁ』を教えた。

 

「オレは『12』……」

 

「『13』だ」

 

「『2』よ」

 

 ヒヅルと俺、そしてアヤカさんは、自分の『なんばぁ』を言った。

 するとメイさんが口を開く。

 

「やっぱりあなたが『♡K(はあとのきんぐ)』だったんですね。アキモトさん」

 

 メイさんは、アキモトさんに疑いの眼差しを向けていた。

 

「あなたの『なんばぁ』、『0』なんじゃないんですか?」

 

 メイさんは、アキモトさんが『♡K(はあとのきんぐ)』だと疑っていた。

 するとアキモトさんは、ため息をついて答える。

 

「……私じゃありませんよ。私の『なんばぁ』は、『0』ではありません」

 

「嘘をついても無駄です。消去法だとあなたしかいません」

 

「誰かが嘘をついているのかもしれないじゃないですか。それだけで私が『♡K(はあとのきんぐ)』だと決めつけられては困ります」

 

 メイさんがアキモトさんを疑うと、アキモトさんは疑念を俺達に向けた。

 確かに俺は、ずっとアキモトさんを一番怪しいと思っていた。

 おそらく、アキモトさんは、保身の為にあえて自分の『なんばぁ』を教えなかったんだ。

 自分が本当の『なんばぁ』を言えば、『♡K(はあとのきんぐ)』に殺されるのは目に見えているから。

 でも結果的に、全員の数字を確認し合った事で、皆はアキモトさんを『♡K(はあとのきんぐ)』だと思い込んだ。

 そう思わせる事こそが、『♡K(はあとのきんぐ)』の狙いなんだ。

 当のアキモトさんは、開き直ったようにため息をついて、トカゲとメイさんに言い放った。

 

「そんなに言うなら、このターンで『♡K(はあとのきんぐ)』を吊るしてみてはいかがです?私の言っている事が本当かどうか、わかるはずですから」

 

「言われなくても、そのつもりだけど」

 

「…いいんですか?最期の言葉を言わなくて」

 

「そう言うあなた達のどちらかが、『♡K(はあとのきんぐ)』なんじゃないんですか?『♡K(はあとのきんぐ)』は、心理戦のプロ…相手を洗脳して庇わせる事ができても、おかしくありません」

 

 アキモトさんが言うと、トカゲとメイさんは売り言葉に買い言葉と言わんばかりに挑発をする。

 するとアキモトさんは、メイさんに言い返した。

 トドロキ陣営とトカゲ陣営は、今まさに一触即発状態だ。

 誰が『♡K(はあとのきんぐ)』かを言い争っている二つの陣営を見て、アヤカさんが口を開く。 

 

「ちょっと、何これ…どうなってるの…!?もう『♡K(はあとのきんぐ)』の『なんばぁ』はわかってるのに…どうして皆、こんなにも『♡K(はあとのきんぐ)』の掌の上で踊る事ができるのよ…!?」

 

 アヤカさんは、互いに『♡K(はあとのきんぐ)』だと疑って火花を散らし合っているトカゲ陣営とトドロキ陣営を見て、困惑と絶望が入り混じったような表情を浮かべていた。

 アヤカさんの言う通り、このままじゃ『♡K(はあとのきんぐ)』の思う壺だ。

 俺は、互いに睨み合っている4人に向かって叫んだ。

 

「いい加減にしろ!」

 

 俺が叫ぶと、トドロキさん、アキモトさん、トカゲ、メイさんの4人が俺の方を見る。

 俺は、互いに疑い合っている4人に対して言った。

 

「もう争う必要なんかないのに…どうしてそうやってすぐに争うんだよ。誰が『♡K(はあとのきんぐ)』かなんて、今はどうだっていいんだ。この『げぇむ』は、『ぷれいやぁ』全員が信頼し合って協力しなきゃ、『くりあ』できない。自分が生き残る事だけを考えてちゃ、『♡K(はあとのきんぐ)』には勝てないんだよ」

 

 俺が言うと、さっきまで言い争っていた4人が黙り込む。

 4人の敵意が一瞬逸れた隙に、俺は4人の心に訴えかけた。

 

「今は、アンタらが無実の人達を散々『しょけい』してきた事を咎めるつもりはない。今からでも遅くない。頼むから…もうこれ以上、争わないでくれ」

 

 俺は、トカゲ陣営とトドロキ陣営の4人に向かって頭を下げた。

 するとトカゲは、ため息をついて、他の皆の気持ちを代弁するかのように言った。

 

「綺麗事は聞き飽きたよ。キミは『♡K(はあとのきんぐ)』が誰かなんてどうでもいいって言ったけど、『♡K(はあとのきんぐ)』がこの展開を想定してないわけがないよね?何か手を打ってくるかもしれないのに、どうやって疑うのをやめろっていうのさ?そんな事を言ってるキミが『♡K(はあとのきんぐ)』かもしれないよね?」

 

 トカゲは、飄々とした態度で俺に揺さぶりをかけてきた。

 トカゲが言うと、他の皆が俺に疑念の目を向けてくる。

 そうやって疑心暗鬼になる事が、『♡K(はあとのきんぐ)』の狙いだったんだ。

 だけど俺はもう、『♡K(はあとのきんぐ)』の思い通りになりたくない。

 

「……できる事なら、皆を混乱させるから黙っておきたかったけど…オレは、『♡K(はあとのきんぐ)』の正体を知っている」

 

 俺が言うと、全員が俺に注目する。

 あくまで俺の勘だけど、『♡K(はあとのきんぐ)』はコイツで間違いない。

 サクマさんが死ぬ間際に言おうとしていたのも、きっとコイツの名前だ。

 

「ヘイジ君…それ、本当なの…!?誰が『♡K(はあとのきんぐ)』なの!?」

 

 アヤカさんは、誰が『♡K(はあとのきんぐ)』なのかを俺に尋ねてくる。

 俺は、怪しい人物を指で差し、今まで罪のない人を殺してきた事への怒りを込めた眼差しを向けた。

 

 

 

 

 

「……お前だよ、アヤカ。それが本名かは知らないけどな」

 

 俺が言うと、アヤカさん…いや、アヤカは、冷や汗を垂らして目を見開く。

 だがその直後、口角を吊り上げて不敵な笑みを浮かべた。

 

 白山紋嘉。

 コイツが、『♡K(はあとのきんぐ)』の正体だ。

 

 

 

 『げぇむ』『おうさまげぇむ』

 

 難易度『♡K(はあとのきんぐ)

 

 13ターン目 残り7名

 

 

 

 

 




♡K(はあとのきんぐ)』生存者リスト

秋本(アキモト)政臣(まさおみ)(35)
178cmくらい。
営業マン。
冷静沈着で、一見良識的な人物に見えるが、実は打算的な性格。

鐘ヶ谷(かねがや)芽唯(メイ)(23)
160cmくらい(ヒール込み)。
OL。広告代理店勤務。
どこか幸が薄く、『げぇむ』では不運な目に遭いがち。
『なんばぁ』は『7』。

白山(しろやま)紋嘉(アヤカ)(27)
178cmくらい(ヒール込み)。
ホステス。
姉御肌で頭も切れる。

小鳥遊(たかなし)火鶴(ヒヅル)(13)
150cmくらい。
中学生。
最年少でありながら、クールで場慣れしている。
『なんばぁ』は『12』。

戸蔭(トカゲ)飛龍(ひりゅう)(20)
170cmくらい。
大学生。心理学専攻。
良くも悪くも自由人で、人に指図される事を嫌う。
『なんばぁ』は『1』。

等々力(トドロキ)玉堂(ぎょくどう)(56)
176cmくらい。
指定暴力団組長。
寡黙で近寄りがたく、参加者の中で最も謎に包まれている。
『なんばぁ』は『10』。

北句(ほっく)平治(ヘイジ)(23)
177cmくらい。
大学院生。
お人好しな性格。『げぇむ』ではリーダーシップを発揮している。
『なんばぁ』は『13』。

葛城(かつらぎ)(アイ)(22)
159cmくらい。
『今際の国』の国民で、『♡K(はあとのきんぐ)』の代理。
『げぇむ』の進行を担当している。

♡J編にオリキャラを登場させるつもりなんですが、定員を増やすのと原作通り20人で進めるのとどちらがいいですか?

  • 人数増やす
  • 原作通り20人で進める
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