原作キャラ及び、今際の路のアリスのキャラの過去の捏造があります。
アヤカside
俺は、昔から可愛いものが好きだった。
テレビに映るキラキラしたアイドルの女の子達に憧れた子供時代だった。
汚いものばかりを見てきたから、余計に可愛いものに惹かれたんだと思う。
父親は、ただでさえ多額の借金を背負っているのに、借金を返すどころかさらに借金を重ねてギャンブルや風俗につぎ込むようなクズ野郎だったから、物心ついた時から俺の家は貧乏だった。
母親も母親で、借金してホストやブランド品、あとは怪しい壺やら石やらにお金を注ぎ込むような女だったから、2日や3日まともな食事が出てこない事なんて当たり前だった。
毎日のように借金を取り立てに来る業者の連中には、サンドバッグのように扱われ、ストレスの捌け口にされた。
両親は二人とも、俺を守ってくれる気なんか一ミリもなかった。
あんな地獄みたいな家にいつまでもいたくなかったから、学費と生活費を稼ぐ為に年齢を偽ってアルバイトを掛け持ちして、中学卒業と同時に家を出た。
父親にも母親にも愛されなかったから、誰かを愛し愛されたいとずっと思ってた。
俺も、アイドルの女の子達みたいに可愛くてキラキラした人生を送りたいと思ってた。
別に女になりたい願望があるわけじゃないし、男の自分を気に入ってはいる。
ただ、女物の服装や髪型の方が可愛いものが多いから、女装が好きなだけ。
だけど、俺の価値観は世間からは到底受け入れられない。
そんな事は俺もわかってる。
だから普段は普通のフリをして、知り合いがいないところでだけ可愛い服を着て、可愛いメイクをして、お気に入りのハーフツインのウィッグを被った。
それでそれなりに幸せに生きられると思ってた。
あの日までは。
「ぎゃ!!」
大学の先輩にキャンパス裏に呼び出された俺は、体格の大きい先輩二人に羽交締めにされて、リーダー格の先輩に顔を殴られた。
殴られた拍子にメガネが落ち、先輩が俺のメガネを踏みつけて割った。
「ギャハハハ!!おい聞いたか!?『ぎゃ!!』だってよ!!」
「アハハハ、アキヨシちゃ〜ん!!カワイイお顔に傷がついちゃったねぇ〜!!」
「便所の水おいしいよ〜?ほら飲〜め、飲〜め!」
殴られてボロボロになった俺を、先輩達が笑った。
大学に進学してすぐ、俺は素行の悪い先輩達に目をつけられていじめられた。
毎日のように暴力や暴言を浴びせられ、私物を壊された。
俺が履修してる講義やバイト先は全部先輩達に把握されてたから、逃げようにも逃げられなかった。
「何で…オレにばっかりこんな事するんですか…」
俺が尋ねると、先輩の一人が携帯の画面を見せてきた。
「ダチがよぉ。おもしれーブログ見つけたんだがよぉ。
『秋葉原でメチャクチャカワイイメイドさん発見(*´台`*)
萌え萌えキュンいただきました(#`ε´#ゞ
ちなみにこの子男の子です!Σ(・□・;)』
だってよ。これ写ってんの、お前だろ」
そう言って先輩が見せてきた画面には、俺が秋葉原のメイド喫茶でバイトをしていた時に、客と一緒に撮った写真が写っていた。
先輩は、俺の腹を蹴りながら罵倒してきた。
「何が『萌え萌えキュン』だ!!キッショ!!」
「男のくせにメイド喫茶でバイトしやがって、キモチワリーんだよオカマ野郎!!」
「つーか何だ皇紋嘉って。オカマのくせに無駄にイカツい名前してんじゃねーぞコラ!!」
「あ゛ぁっ!!」
先輩達が、寄ってたかって俺を蹴ったり踏みつけたりしてきた。
「何で、オレばっかり…こんな目に…」
俺は、先輩達から散々『オカマ』だの『キモイ』だのと罵られてきた。
俺の価値観は、世間からは受け入れられない。
そんな事は、痛いほどわかってる。
だからこそ、友達に迷惑をかけないように、友達がいないところでだけ女装をして、友達の前では普通を装ってきた。
なのに何で、こんな目に遭わなきゃならないんだ。
俺の人生は、結局どこまでいこうと地獄だ。
「酷い目に遭わされたのね…立てる?」
「ミラ先輩……」
俺がいつものようにガラの悪い先輩達に絡まれてボロボロになっていると、俺と同じ学科の先輩が声をかけてきた。
加納未来先輩。
今まで全く接点は無かったけど、俺の通っていた大学では有名人だったから、顔と名前だけは知っていた。
「ねぇあなた、ウチの研究室に来ない?」
「え…?」
「あなたのような優秀な子が、こんなところで燻っているなんて勿体ないわ。私達は、心理療法をテーマに研究をしてるの。興味があったらいつでもいらっしゃい」
ミラ先輩は、俺を研究室に誘ってくれた。
俺は、迷わず彼女が所属している研究室の見学に行った。
憧れの先輩が俺を誘ってくれたのが嬉しかったのもあるけど、俺自身が心理療法に興味があったからだ。
「あっ、あの…っ、加納未来先輩の紹介で研究室見学に来ました。学部1年の皇紋嘉です」
「よーう、お前が例の女装男子か」
俺が研究室に行くと、早速、ミラ先輩の弟のガモン先輩が気さくに話しかけてきた。
「あ…ぅ……」
ガラの悪い先輩達のせいで、俺の女装癖は大学中に知れ渡っていた。
自分でも、顔が熱くなるのを感じた。
俺が恥ずかしがっていると、ガモン先輩が笑う。
「なぁに、恥ずかしがるこたぁねぇよ。ここに来る奴は大体頭のネジ何本か飛んでっからよ。オレは加納我文。で、こっちが同期の…」
「松下苑治だ。よろしく」
「よろしくお願いします…あの、これは今何をしてるんですか?」
俺は、研究室でやっていた研究内容を、ガモン先輩とエンジ先輩に尋ねた。
するとガモン先輩が俺の質問に答えた。
「あぁ、催眠療法の実技演習だ。どうだ?お前もやってみるか?」
「え…でもオレ、催眠術とかやった事ないんですけど…」
「やり方はオレが教えてやる。荷物置いてそこに座れ」
「は、はい…」
エンジ先輩は、研究室に来たばかりの俺に催眠のかけ方を教えてくれた。
やり方を覚えた俺は、先輩方に促されるまま、実験に協力してくれている他学部の生徒に催眠をかけた。
最初に試したのは、身体が動かなくなる催眠術だった。
俺は被験者の生徒の目を見つめて、『俺が瞬きをすると石像になる』と暗示をかけながら、深く息を吐いてゆっくりと目を閉じる。
被験者の潜在意識に語りかけながら、自分の意識をも無意識の底に堕とし込んでいく。
俺が、ばち、と目を開いたその瞬間、さっきまでリラックスして気さくに話しかけてきた被験者が固まった。
瞬きや呼吸すらも止まっている被験者を見て、先輩方も言葉を失う。
俺が再び瞬きをすると催眠が解け、被験者は緊張が解けたように息を荒げた。
「おいおい、大丈夫か〜?」
被験者が肩で息をしていると、ガモン先輩が被験者の背中をさすった。
被験者の呼吸が落ち着いてくると、ミラ先輩が被験者に話しかける。
「催眠にかかったら身体の変化を正しく報告するよう伝えていたはずだけど」
「す、すみません…声、出そうと思っても出なくて…本当に、石像みたいに身体ガチガチになっちゃって…」
俺が『石像になる』と思っただけで、相手の身体がガチガチに固まって、瞬きも、声も、呼吸すらも止まった。
人が、俺の思い通りになった。
俺にこんな才能があったなんて、知らなかった。
「はは……すごい…オレでも、こんな事できるんだ…!」
この力があれば、思い通りの自分になれるかもしれない。
俺は、催眠術の基礎を教えてくれたエンジ先輩に詰め寄った。
「先輩!あの…催眠って、自分にかける事ってできるんですか?」
俺が質問すると、エンジ先輩はポカンとした表情を浮かべた。
俺は、自分がいきなりわけのわからない事を言ってしまった事に気付いて、自分でも赤面していくのがわかる。
「…すみません。オレ、女装癖が原因でいじめられてて…そのせいだけじゃないかもしれないですけど…だから、催眠の力で少しでも強く生きられたらなって…え、っと…すみません…変な事言いました…」
「できるかも何も、お前さっきやってただろ。瞬きでトランス状態になるやつ」
「あれは…オレ、緊張した時とかにあれやると少し落ち着くんです。先輩が『リラックスした状態でやれ』って言うからやってみたんですけど…えっ、あれで良かったんですか…?」
俺が恥ずかしさのあまり語尾を窄めながら言うと、エンジ先輩が『何言ってんだコイツ』とでも言わんばかりの表情を浮かべながら言った。
俺は、昔から人より緊張しやすくて、人の視線や仕草が気になりすぎてうまく喋れなくなる事が多かった。
でもそんな時、さっきみたいにゆっくり瞬きをしながら頭の中を無にすると、嘘のように緊張がすぅっと消えていくから、緊張した時は必ずあれをするようになった。
俺は、無自覚で自己催眠をして緊張を解いていたんだ。
それを知った時、俺は救われた気がした。
俺には、なりたい自分になる才能があった。
この才能を磨けば、好きに生きられるかもしれない。
俺に居場所があるとすればここだと、俺の直感が言っていた。
「あの…っ、オレ、明日もここに来ていいですか!?」
「アキヨシ君が気に入ったのなら、毎日来てもいいのよ」
ミラ先輩が言うと、俺は思わず笑みを溢した。
その日から俺は、毎日研究室に入り浸って、心理療法の勉強をしたり、ミラ先輩達の研究を手伝ったりした。
研究室の教授も、毎日ここで勉強している俺を大層気に入ってくれて、まだ1年の俺を正式に研究室に配属してくれた。
心理学の知識を身につけるうちに、自分に自信がついてきて、大学では封印してきたオシャレに挑戦できるようになった。
ネイルをして行ったらミラ先輩が『カワイイ』と言ってくれたから、俺はもう自分を封印するのをやめた。
鏡を見ると、いつもの自分が映る。
七三のミディアムヘアーに、ストレスで隈ができた目元に、黒縁メガネ。
人に迷惑をかけないように、好きな生き方を封印した自分。
鏡を見る度に、忌々しい記憶が蘇り、泣きたくもないのに涙が溢れる。
溢れる涙を拭う事もせずに、少し伸びた髪をバリカンで剃った。
頭を丸めた後は、頭の中に次々と浮かんでくる俺を苦しめてきた奴らの顔を塗り潰すように、パキッとしたカーマインのルージュを唇に引いた。
――うるせぇんだよクソガキ!!テメェのせいでゲーム失敗したじゃねぇか!!
――何が『萌え萌えキュン』だ!!キッショ!!
――キモチワリーんだよオカマ野郎!!
ふざけるな。
誰がお前らなんかに屈するものか。
誰よりも可愛くなって、誰もが羨ましいと思うくらいに、好きな自分になってやる。
俺は、スキンケアや食事管理、姿勢の矯正なんかの、可愛くなる為の努力をした。
ガラの悪い輩に屈せずに済むように、筋トレも始めた。
初めて女装をして大学に通うと決めた日、明るいキャラメル色のロングのウィッグを被って、お気に入りのメイクをして、フリルのブラウスとミニスカートを身につけて、ピンヒールのストラップシューズを履いた。
自信を持って堂々と歩いたら、道ゆく誰もが振り向いた。
好きな格好で学校に来るようになってから、皆が俺に声をかけてくるようになった。
アイツらみたいに『オカマ』だの『キモイ』だの罵ってくる奴がいると思ってたけど、堂々としてたら案外皆受け入れてくれるものだって事がわかった。
自分で言うのも何だけど、俺は下手な女子より可愛いと思う。
だって、そう思われるように努力してきたから。
俺のファンクラブなんてのもできて、俺が何も言わなくても、ファンの子達が俺のやりたいと思った事を先回りしてやってくれた。
俺に居場所をくれたミラ先輩達や、俺を受け入れてくれたファンの子達には感謝しかなかった。
「ありがとう。みんな、大好きよ♡」
俺がばち、と瞬きをしてから振り向いて微笑むと、皆ぼぅっとした顔をして俺を見てきた。
俺は、俺を好きでいてくれる皆が好き。
人を愛して愛されるって、なんて幸せなんだろう。
俺は、可愛いんだ。
どんな短所も、磨けば長所に変わる。
人前で緊張しやすいって事は、裏を返せば、他人から受け取る情報量が人より多いという事。
流されやすいって事は、
人の心を読み取って、相手が魅力を感じる特徴を捉えて、そうなれるように自己暗示をかける。
あとは相手の心の奥底に好意を自然に溶け込ませれば、相手も自ずとそれに応えてくれる。
『魅了』、それが俺の得意とする支配の手段。
「…ッハハ、見たか姉貴!!アイツはガチモンの
「ええ。素晴らしいわ…私の目に狂いはなかったようね」
俺が人を支配する才能を開花させてからは、ガモン先輩とミラ先輩は俺の事をより一層気に入ってくれた。
俺自身を、というよりは、俺の才能に対する好奇心だろうけど、それでも憧れの先輩方に認められた気がして嬉しかった。
「アキヨシ君、また可愛くなったわね。私、今のあなたの方が好きよ」
「…ミラ先輩。最近何だか世界が輝いて見えるんです。先輩方には、本当に感謝しています。アタシを変えてくださって、ありがとうございます!」
ミラ先輩は、まるで歳の離れた姉のように俺に接してくれた。
俺の…いや、
◇◇◇
「今月のトップはアヤカちゃん。これで6ヶ月連続よ。すごいわ」
「ありがとうございます、ママ」
お酒が飲める年齢になってからは、水商売のアルバイトを始めた。
最初は、ガモン先輩の紹介がきっかけだった。
ガモン先輩が、女装ホステスの求人があるクラブを紹介してくれて、その日からはその店で働いた。
お金を稼いで奨学金を返さなきゃいけないっていうのもあったけど、それ以上に、この才能を活かせる居場所が欲しかった。
自分を変えてから人にたくさん愛されてきた私は、与えられた愛情を、他の誰かに与えたいと思うようになった。
かつて親から愛情を与えられなかった私のように、ほんの少しでも誰かに優しくされたいと思っている、誰かに。
最初は子供の頃の憧れだったアイドルになりたかったけど、私自身それで食べていけるほど歌もダンスも上手くないし、声変わりしてから声質が安定しなくなったから、アイドルの夢は割とすぐに諦めた。
元々、水商売は嫌いじゃなかった。
お酒にはかなり強い体質だったし、人を魅了する才能を持ってる私にとっては、クラブのホステスはまさに天職だった。
そして何より、私が愛情を与えた分だけ、お客様に愛してもらえるのが何よりのやりがいだった。
博士号を取得して心理学者になってからも、昼は犯罪心理学の講義を担当する非常勤講師として、夜は高級クラブのホステスとして働いていた。
源氏名は、下の名前の『紋嘉』の読み方を変えて『アヤカ』にした。
私は、お客様に楽しんでもらえるように自分磨きをして、話術や教養を身につけて、正攻法で売り上げを伸ばしていった。
私は、銀座の高級クラブで店始まって以来の売り上げを叩き出し、No.1ホステスの座を手にして、ついにはお水のオネエ業界の頂点に君臨した。
私が心理学者とホステス、両方の視点から書いた実践的な心理学の本は100万部売れた。
まさに絵に描いたようなサクセスストーリー。
お客様に楽しんでもらえて、私も楽しめて、とても幸せだと思ってた。
あの日までは。
「キャアアアアアアッ!!!」
「あ、アヤカちゃん大丈夫!?」
ある日の事、私が過去に接客した人の奥さんが、ナイフを持って私に切りかかってきた事があった。
幸い黒服がすぐに取り押さえてくれたおかげで致命傷は負わずに済んだけど、腕を切りつけられて10針縫う怪我を負った。
「アンタがアヤカね!?ウチの旦那が、『アヤカちゃんを本気に好きになってしまったから別れてくれ』って離婚届突きつけてきたんだけど!!よくも人の家庭をメチャクチャにしてくれたわね!!」
その人は、私のせいで夫から離婚しろと迫られたから私に責任を取れと言ってきた。
私には、人を魅了する才能があった。
私はその才能を活かして、No.1ホステスの座を手にした。
だけどそのせいで、私に特別な感情を抱いてしまった人が大勢いた事は否めない。
一流のホストやホステスは、決して客を見下さない。
何度も通ってもらう為には、客と信頼関係を築く事が必要不可欠だからだ。
私にお水のイロハを叩き込んでくれたママが言っていた言葉だ。
私は、客に楽しんでもらえるように、愛情を持って客に接してきた。
だけど私が客に向けるのはあくまで、客とホステスという関係の中だけで成り立つ愛情。
嫌な事を忘れて楽しんでほしいとか、心の穴を埋めてあげたいとか、そういった類の…言うなれば、『博愛』。
でも中には、私に恋愛感情を向けてくる客もいた。
「何なのよアンタ、まさか私の夫と寝たの!?男のくせに!!本当に気持ち悪い!!」
誤解のないように言っておくと、私は客に恋愛感情を抱いた事は一度もないし、ましてや枕営業をした事なんか一度もない。
むしろ私に客とホステス以上の関係を求めてくるような客は、適度に突き放して私への執着心を制御してきた。
一度客の一人が私への執着を拗らせて本気で殺そうとしてきた事があって、その時はガチでやばいと思ったから、催眠療法を使って執着心を薄れさせた。
それでも、一度抱いてしまった歪んだ執着は、私の人心誘導技術を持ってしても、完全に消し去る事はできなかった。
「……ごめんなさいママ。アタシ、もう今月で辞めます」
「アヤカちゃん…あなたがいなくなっちゃうのは寂しいけど、今までよく働いてくれたわ」
この店は、私の売り上げでもっていたようなものだった。
私がいなくなる事で、店に迷惑をかけるのが心苦しくて、なかなか辞める決心がつかなかった。
そして何より、私は、私に居場所をくれたママが大好きだった。
だけどこの先の事を考えれば、私はもうこれ以上この店にはいられなかった。
私がクラブを去る日、ママは私を抱きしめて、別れの言葉を送ってくれた。
「大丈夫よ。この前の事なら、アヤカちゃんは何も悪くない。もしつらい事があったら、いつでもアタシに相談しにきていいのよ」
「…ありがとうございます」
横領、自殺、傷害、殺人事件…
一人や二人なら、ただ一言、『ソイツらがやばい奴らだった』で片付けられたかもしれない。
だけど私への執着に取り憑かれて人生を狂わされた人は、何十人もいた。
……流石に3桁はいないよね?
ミラ先輩とガモン先輩、そしてエンジ先輩が開花させてくれた私の才能は、次第に悪い方向に成長していった。
私の持つ『魅了』は、私自身が制御できない程に、人を執着させて狂わせていく。
私は、人を惹きつけるこの才能は、人を幸せにする力だと思ってた。
でも、違ってた。
この才能は、人の心を弄んで壊す力だった。
「はは…何よこれ…アタシ、全然カワイくないじゃない」
鏡を見ると、私の顔は、涙で化粧が崩れてグシャグシャになっていた。
まるで、自分の才能に振り回された私自身の人生を表しているようだった。
こんなの、全然可愛くない。
そもそも、『可愛い』って何だっけ。
…もういいや。
疲れた。
全部終わりにしよう。
ビルの屋上に立った私は、お気に入りのピンヒールのストラップシューズを脱いで、柵に手をかけた。
そのまま飛び降りようとした、その瞬間だった。
私が、空に上がる巨大な花火を見たのは。
――ミーンミンミーン…
「何だよこれ…どうなってんだよ…!?」
『今際の国』滞在1日目。
私は、気付けば『今際の国』に迷い込んで、訳もわからず『げぇむ』に参加していた。
ーーー
げぇむ 『ぱんどらのはこ』
難易度
ーーー
私が初めて参加したのは、制限時間に達すると罠が発動する棺と安全な棺の2種類を見極めて、棺の中に入って生き残り続けるという『げぇむ』だった。
どうせ元の世界で自殺するはずだった私は、この『げぇむ』で死ぬつもりだった。
だけど『
皮肉にも、生きたいと願った他の参加者が全滅し、死にたいと願った私だけが生き残った。
「何だよ……このターンで死ぬつもりだったのによ…オレだけ生き残っちまったじゃねぇかよ…」
どうやら神様は、よっぽど私を苦しめてから殺したいらしい。
散々人を狂わせてきた私には、楽に死ぬ事なんて許されていない。
どうせ簡単には手放せない命なら、もう少しだけ、この世界で足掻いてみようと思った。
私がアイと出会ったのは、ちょうど1週間後に参加した『
アイは、その日『今際の国』に迷い込んだばかりの初参加者だった。
30人以上が参加した『げぇむ』で、私とアイだけが生き残った。
アイは、『げぇむ』会場の片隅で膝を抱えて怯えていた。
仕事柄人の闇を散々見てきた私は、アイもまた闇を抱えている子だとすぐに見抜いた。
人を傷つけるだけだと思っていたこの才能を、この子を生かす為にもう一度使おうと思った。
「ねぇアンタ…行く宛が無いならアタシと一緒に来ない?」
「え……?」
私は、ばち、と瞬きをしながら、アイに手を差し伸べた。
するとアイの視線は、私の瞳の中に吸い込まれていく。
「生きる理由が無いなら、アタシがアンタの生きる理由になるわ。アタシと、お友達になりましょう」
私が言うと、アイは涙を拭って私の手を取った。
私は、アイと一緒にこの世界を生き延びた。
アイが居れば、私は何も怖くなかった。
私とアイは、その後イバラちゃんと、彼女の子供達に出会った。
イバラちゃんとはひょんな事から意気投合して、三人で女子会をする仲になった。
私達がイバラちゃんとすっかり仲良くなった頃、私は学生時代に催眠術を教えてくれたエンジ先輩に出会った。
初めての『げぇむ』で右眼を失った先輩を見捨てるわけにはいかないと思って、『げぇむ』会場の帰りに医学をかじっているイバラちゃんのところに連れて行ったっけ。
あの時は、この世界も思いの外狭いんだなって思ったわね。
『ねくすとすてぇじ』が始まったのは、私が『今際の国』に来て80日目の事だった。
「ぷ…ぷ……プリン」
「んー…ンゴロンゴロ保全地域?」
「いつまで続けんだこのしりとり」
「え〜…だってこの『げぇむ』、もう飽きちゃったんだもん。これで『
「『もん』じゃねぇよ敬語使え。…まあ、オレも半分同意見だがな」
私は、アイとエンジ先輩の二人と一緒に『
『げぇむ』の内容は、『らびりんす』。
障害物を避けながら制限時間内に迷宮から脱出し、外にいる『
せっかくの絵札戦だから思う存分楽しもうと思って、何も考えずにあえて
何か途中で飽きちゃったから、三人で談笑しながらしりとりしたりトッポ食べたりして退屈を紛らわせてたけど。
ってヤダ、これってもう修学旅行のノリよね?
「案外大した事ありませんでしたね」
「同感だわ。ガオガオ吠えて、可愛かったわぁ、大きい飼い猫ちゃん。…あ、二人ともトッポいる?」
「ば、馬鹿な…オレの用意した地獄の関門をあんなにあっさり…」
私達三人がスタートから5分で出口に到達すると、『
地獄……
あれが地獄…かぁ。
お遊戯の間違いじゃなくって?
「あれが地獄ですって?…ッアッハハハハハ!!あなた…随分と幸せな人生送ってたのね。羨ましいわぁ」
私は、咥えたトッポをパキッと折りながら『
ふふふ、怯えちゃってカワイイわぁ。
きっと元の世界では、それなりに権威を持った人物だったのでしょうけれど…自分は危険を冒さずに高みの見物決め込んで見下してる時点で論外だわ。
「確かに…人を支配する手段として恐怖は有効だけれど、暴力や権威でしか恐怖を植え付けられないのなら、それはもう支配者でも何でもないわ」
「な、何が言いてぇんだテメェら…」
「人を恐怖で支配する方法は色々あるけど…アタシがお手本見せてあげる。いいか?こうやるんだよ」
私は、ドスのきいた地声を放つと、
するとあら不思議、『
情けない事に、失禁までし始めた。
「あ…ああああ…」
私がゆっくり歩み寄ると、『
ただの虚仮威しにすら怯えちゃって、カワイイわね。
私を女だと思って舐め腐ってたのが手に取るようにわかるわ。
「あらあら。すっかり怯えちゃって、カワイイわね。でもそんなんじゃ、最後まで保たないわよ?」
「ひっ、ひっ…!」
私は、『
「あなた、顔は割とアタシ好みなのよねぇ。天国見せてあげるわ。イイ声上げて号きなさい♡」
そう言って私がスキニーパンツのチャックを下ろすと、『
「まっ、待て!オレにそっちの趣味はない!おい、後ろの二人も黙って見てねぇでコイツ止めろ!た、頼む、助けてくれ!いやだ、やめっ……あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!痛゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
『
お楽しみ中の私達を尻目に、先輩が口を開く。
「……大した趣味だな」
「アヤカさん…ズルいです。ソイツばっかり」
「マジかよ…ったく」
私達を見てアイが頬を染めながら自分の胸と股に手を伸ばすと、先輩は呆れた様子で部屋を出ていった。
その後もちょっと
というか、『げぇむ』で死んだどの『ぷれいやぁ』よりも大きい悲鳴を上げてたのは、流石に私もちょっと引いたわよ。
「ひぐっ…えぐっ…ごべんなざい…おでがおろがでぢだ…じっでるごどぜんぶはなぢまぢだ…もうゆるぢで…だずげで…」
私達は『
『
「じゃあ、救けてあげる。この世界の恐怖と絶望から」
そう言って私は笑顔を浮かべながら、手に持っていたコンクリートブロックで、『
人なんか殴り慣れてなかったから、思いの外殺すのに時間がかかった。
顔や手に返り血がつくのも気にせずに何度もコンクリートブロックで殴り続け、制限時間1分前にとうとう『
というかもう、頭の原型なかったけど。
「先輩、殺りましたよ!」
「…お前が敵じゃなくてホント良かったよ」
私が血のついたコンクリートブロックを見せながら満面の笑みを浮かべると、先輩が顔を引き攣らせる。
『
全ての絵札の『げぇむ』が『くりあ』されたのは、『ねくすとすてぇじ』が始まって8日目の事だった。
《おめでとうございます。ただ今を持ちまして、
「勿論、オレは『手にする』ぜ。こんなご機嫌な『
「先輩も物好きですね。でもまぁ、アタシも『手にする』わ。とってもカワイイものが見られそうだし♪」
「私も…アヤカさんがそれを望むのなら、永住権を『手にします』」
一緒に『
エンジ先輩は、新たな『
他の皆はそれぞれ自分が倒した絵札を担当したけど、ちょうど『
「アイ…アンタどうしたのそれ」
私が『
♡のKの絵札のタトゥー。
別に私が頼んだわけでもないのに、勝手に入れてきた。
「アヤカさんが『
「アンタそれ…自分で入れたの?」
「いけませんでしたか?」
アイは、きょとんとした表情を浮かべて言った。
何も言ってないのに、こんな形で愛情表現してくるなんて…
いいっ!!
アイちゃん、アナタとってもカワイイわ!!
「いいわ、アナタ最高よ」
「アヤカさん…」
私がたまらずアイを抱きしめると、アイが満更でもなさそうに破顔する。
こうなったらもう、アイとお揃いにするしかなくない?
「じゃあアタシも思い切ってペアルックにしちゃおうかしら」
「どこに入れるんですか?」
私が言うと、アイが尋ねる。
私は、唇をペロリと舐めてから答えた。
「ヒミツ♡」
私は『げぇむ』の準備を終えてから、まず一番支配者としての適性がありそうなトドロキ君とお友達になった。
彼の娘の亜弥ちゃんに変装して少しずつ警戒心を解いてあげたら、トドロキ君は私が何も指示を出さなくても、勝手にクロダ君とサクマちゃんを支配して自分の手駒にした。
私は次に、アキモト君に声をかけた。
「ねぇ。絶対に『
私は、『『
それは、私とトドロキ君に協力して、他の『ぷれいやぁ』が『げぇむくりあ』するのを妨害する事だった。
嘘はついてない。
誰も『げぇむくりあ』できずに全員ここで『げぇむおおばぁ』になれば、『
私の話を聞いたアキモト君は、すっかりその気になって、私のお友達になってくれた。
私は、今度はメイちゃんとクニエダ君、それからアカマツ君とお友達になった。
メイちゃんは、ショーゴ君に乱暴されてボロボロになった心に寄り添ってあげたら、すぐに私のお友達になってくれた。
クニエダ君とアカマツ君は、メイちゃんの事でショーゴ君を危険人物扱いしてたから、『ショーゴ君をやっつけるの手伝ってあげる』って言ったら、私のお友達になってくれた。
アカマツ君がクロダ君を吊るように仕掛けたのも私…
というよりは、私のカワイイお友達のメイちゃんが仕組んだ事だったわ。
トドロキ陣営に不信感を抱いたメイちゃんが、アカマツ君とグルになってトドロキ陣営を潰そうとした。
私は、トドロキ君にその事を話した。
そうしたらトドロキ君は、アカマツ君に投票してクロダ君を殺した。
私が直接手を下さなくても、トドロキ君とメイちゃんは、勝手に『ぷれいやぁ』同士の殺し合いを加速させてくれた。
そして今、『げぇむ』がクライマックスを迎えている。
私は、この国に来て、この才能で人を幸せにする事ができた。
最愛の人に出会わせてくれたこの国が、どんな世界よりも愛おしい。
私は大好きなこの世界を、大好きなアイと一緒に生きていく。
この先何が待ち受けていたとしても、この子と一緒なら乗り越えていける。
好きに恋して、好きに愛して、私とアイは、誰よりも、何よりも可愛く生きるの。
それを邪魔する奴は、誰であろうと返り討ちにしてやる。
最後は必ず、愛が勝つのよ。
先代の『
キューマ達が陥落させた先代の『
今後も、ドラマ版オリジナル『げぇむ』は、今の絵札の主が『くりあ』した『げぇむ』として登場すると思います。
♡J編にオリキャラを登場させるつもりなんですが、定員を増やすのと原作通り20人で進めるのとどちらがいいですか?
-
人数増やす
-
原作通り20人で進める