ルーナside
東欧の小国に生まれた私は、8歳の時に紛争で両親を亡くした。
略奪に来た民兵に問答無用で殺され、地下の蔵に隠れていた私だけが生き残った。
奴等が去っていった後、私は車の荷台に紛れ込んで国境を越え、逃げ込んだ先の国で乞食をして生き延びてきた。
路上で他の孤児達と一緒に乞食をしていた私は、反政府組織の連中に奴隷として買われた。
ほんの少しだけ読み書きと英語ができたのが気に入られて、孤児達の中では一番高値で売買が成立したらしく、私達に乞食をやらせていた人身売買業者が目の色を変えていた。
反政府連中に買われた私は、昼間は悪事に加担させられて、夜は連中の
生まれて初めて男を知った時は、ただただ早く終わってほしいと願うばかりだった。
それでも中には臓器売買業者に買われた子供や、金持ちの玩具として買われて生きたままペットの餌にされた子供もいたぐらいだから、
父親のわからない子供を孕まされた事もあったが、それでも腹の中の子供と向き合っている時だけは辛い事を忘れられた。
親がクズでも、子供に罪は無い。
絶望しかない世界で、何の穢れもない我が子だけが唯一の希望だった。
だが、その子も産んだその日のうちに売り飛ばされた。
私は、せめて産まれた子供が心の優しい人に拾われる事を願う事しかできなかった。
« どうして…あんな事ひどい事するんですか…? »
子供を売り飛ばされた日、私は、私を奴隷として買い取った組織のボス…私の純潔を奪った男に、何で生まれたばかりの子供にまで酷い事ができるのかを尋ねた。
ソイツは、私の頬を掴んで、タバコの煙を顔に吹きかけながら言い放つ。
« あー…確かオマエの故郷には、ラム肉と潰したイモをパン生地で包んで揚げる郷土料理があったな。仔羊を食って生きてきたオマエらと、オマエらみてぇなクソガキを食いもんにしてるオレ達とで、一体何が違うってんだ?あ?言ってみろ。 »
« …………っ!! »
«
悔しくて、涙が止まらなかった。
この世界には、絶望しかない。
もし地獄というものがあるとするなら、この世界が既に地獄だ。
« いたぞ!!撃ち殺せ!! »
« ウチのシマに手ェ出してタダで済むと思うなよ!! »
私が奴等から解放されたのは、15歳の頃だった。
奴等が敵対勢力に皆殺しにされて、地下牢から密かに脱走した私だけが生き残った。
たまたま狙撃の才能があって、読み書きと計算もできたから、食っていくために軍隊に入る事にした。
入隊条件が18歳以上だったから、身分証を偽造して年齢を偽った。
まずは普通に歩兵として軍隊に所属して、17歳…表向きは20歳の時に、特殊部隊の入隊試験を受験した。
“ 君がウチの隊に女性初…しかも最年少で入隊したという新人だね。今日からは私が君の上官だ。よろしく。 ”
“ …はい。よろしくお願いします。 ”
特殊部隊の入隊試験に合格した私は、狙撃手として部隊に配属される事になった。
男性隊員と同じ訓練をこなして、メキメキ力をつけて、利用できるものは全部利用して昇進した。
だけど19歳の冬、私の人生を大きく変える出来事が起こった。
「あーっと…アーユーオーケイ?」
« …………どこだ…ここは…私は…死んだのか……? »
仕事で手痛い失敗をして生死の境を彷徨った私は、日本人の医者に命を救われた。
彼は、虫の息となった私を何度も励まし、生きる希望を与えてくれた。
後ろ暗い過去を持つ私を綺麗だと言ってくれた。
生まれて初めて、人を好きになった。
“ 今月末に日本に帰る事が決まってね。残念だけど、君とはここでお別れだ。 ”
“ ……私、あなたにまだ何も返せてない。私にできる事があったら何でも言って。 ”
“ だったら、一緒に日本に来てくれないか? ”
“ え? ”
“ 前に一度、日本がどんな国か見てみたいって言ってただろ?日本は平和な国だし、食べ物も美味しいし、きっと君も気にいると思うんだ。君の事、ちゃんと家族に紹介したいしね。 ”
“ それってつまり… ”
“ 僕と、結婚してくれないか。 ”
“ …………考えとく。 ”
プロポーズをされるのなんて、生まれて初めてだった。
私は、望んでもいいのなら、彼と一緒に生きたいと思った。
私が日常生活に戻る頃には、私を救ってくれた彼は、故郷へと帰っていった。
療養のための休暇を取った私は、彼と積もる話をしに、彼の故郷のシブヤを訪れた。
そこで私は、信じられないものを目の当たりにした。
« 何だ、これは…… »
女子供が普通に夜道を出歩いていて、落とした財布がそのまま戻ってくる異様な街。
ウチの国で売っていた高級なミネラルウォーターより上質な水が好きなだけ飲めて、庶民が一生口にできないような柔らかくて美味いパンが子供の小遣いで買える、まるで異世界のような国。
出会う人は皆、シャイだけど礼儀正しくて親切な人達ばかりだった。
私の故郷と同じ地球上にある国とは思えない。
日本は平和な国だと彼から聞いていたが、ここまで恵まれた国だとは思ってもみなかった。
安心と安全が保障された世界に、私は絶望した。
私が今まで生き延びてこられたのは、私は運が良かったんだと自分に言い聞かせてきたから。
こんなに暖かくて美しい世界があるなんて、知りたくなかった。
彼と一つになりたいと思ってた。
だが私と彼とでは、住む世界が違う。
共には、生きられない。
……帰ろう。
私のいるべき世界に。
彼の住む世界は、私には眩しすぎる。
ナリタに向かうタクシーを拾おうとした、その瞬間だった。
私が、空に上がる巨大な花火を見たのは。
――ミーンミンミーン…
« どこだ…ここは……? »
『今際の国』滞在1日目。
私は、わけのわからないまま『今際の国』を彷徨った。
しばらく歩いていると、運良くこの国に詳しい『ぷれいやぁ』達に出会う事ができて、この国の事を教えてもらった。
私は、カタコトの日本語でわからない事をその人達に質問した。
「『げぇむ』って何ですか?あなた達は、『くりあ』した…
「えーっと…
「…オーケー」
私が尋ねると、他の『ぷれいやぁ』の一人が日本語混じりのたどたどしい英語で答えてくれた。
要は、この国で生き延びる為には『びざ』が必要で、『びざ』は『げぇむ』を『くりあ』する事でしか手に入らない。
『げぇむ』を『くりあ』すると、その難易度に応じた日数の『びざ』が貰える、という事だった。
私が最初に参加した『げぇむ』の会場は、バッティングセンターだった。
ーーー
げぇむ 『せんぼんのっく』
難易度
ーーー
「『
「マジかよ…よりにもよって…」
「Spade?Nine?何ですかこれ?」
「えーっと…
「
私が質問すると、他の『ぷれいやぁ』が答えてくれた。
ーーー
『るうる』
・1000回『とうきゅう』を終えるまでに『げぇむ』会場から脱出できれば『げぇむくりあ』
ーーー
「えっ…『るうる』って…これだけ…?」
「『とうきゅう』…?投球の事か?」
「でも投球って、どこから…」
「…おい。あそこ…何か光らなかったか?」
そう言って『ぷれいやぁ』が指さしたのは、はるか東の空だった。
夜空の星のように何かが赤くキラッと光ったかと思うと、次の瞬間、強い光と共に凄まじい衝撃が全身に走った。
« う…うぅ…… »
気が狂いそうになる程の痛みで目を覚ました。
全身が痛くて、特に顔の下半分に激痛が走った。
痛む身体に鞭打って瓦礫から這い出て、破裂した水道管の真下にできた水溜りを覗くと、下顎が抉れて肉と骨が剥き出しになった自分の顔が映った。
他の『ぷれいやぁ』は、全員グチャグチャの肉塊になって死んでいた。
生き残ったのは、私だけだった。
私が混乱している間にも、何百もの弾丸が飛んでくる。
…SFの世界の兵器だと思ってた。
弾速マッハ7を誇り、200km先の標的まで弾丸を飛ばす事もできるという電磁兵器、レールガン。
そんなものを千発も撃ち込まれる『げぇむ』会場から脱出しろだなんて、冗談じゃない。
それでも私は、ボロボロになった身体を起こして、命からがら『げぇむ』会場から逃げ出した。
『
だけどその時の後遺症で、顎が思うように動かなくなり、喋るのが難しくなった。
……まあ、頑張れば短い単語くらいは喋れる程度には回復したけど。
その医者が英語を話せる人だったから、それ以降の『げぇむ』は彼と一緒に攻略したけど、彼は私が5回目に参加した『げぇむ』で命を落としてしまった。
『げぇむ』を生き延びる為に他に英語が話せる滞在者を探していた時、ヒミコに出会った。
最初は、助けるつもりなんかなかった。
だけど暴漢に襲われて泣いている彼女の姿が、かつての私に重なって、気がつけばライフルの引き金を引いて暴漢を撃ち殺していた。
私がそのまま去ろうとすると、ヒミコが私を英語で呼び止めた。
ヒミコは、幼い身でありながら初日で『
信じられない事に、ヒミコは英語だけじゃなく、今ではほとんど話者がいないはずの私の故郷の言葉を話す事ができた。
私は、ヒミコに出会えた事を、神様が起こしてくれた奇跡だと思った。
« はいこれ、プレゼント。これがあれば、喋るのに困らないでしょ? »
« ……ありがとう。 »
ヒミコは、私の為に補声器をプレゼントしてくれた。
ヒミコのおかげで、私は痛い思いをせずに話せるようになった。
それ以降、私はヒミコと一緒に『げぇむ』を『くりあ』した。
中には難易度の高い『
ヒミコがいてくれたから、どんな『げぇむ』だって楽勝だと思えた。
私にとっては、ヒミコがこの国での最高のパートナーだった。
私が『今際の国』に迷い込んでから90日目、『ねくすとすてぇじ』が始まった。
“ へぇ、外国人の滞在者か。珍しいな。あ、オレはケンゴ。んでこっちが、クオン、キサガタ、アシビ。よろしく! ”
“ ……ルーナよ。よろしく。 ”
私は、『
4人とは、ひょんな事から意気投合して、一緒に『げぇむ』を『くりあ』しようという話になった。
ヒミコ程じゃないけど頭が良くて語学堪能なケンゴがいたから、『げぇむ』に不安はなかった。
《これから『くいいん』チームと、皆さん『ぷれいやぁ』チームとで対戦をして頂きます》
機械音声がする方を振り向くと、対戦相手の女がモニターに映っていた。
『ようこそ。美しき肉体と躍動の『げぇむ』会場へ。私が『
『
『げぇむ』の『るうる』はこうだった。
参加者全員が背中にボタンを装着し、『くいいん』チームのターンでは『くいいん』チームのメンバーが『ぷれいやぁ』チームのメンバーを追いかけ、ボタンを押された参加者はそのターンで身体に高圧電流が流れて動けなくなり、次のターンでは『くいいん』チームの駒として『げぇむ』に参加しなければならない。
『ぷれいやぁ』チームのターンでは、その逆を行う。
ただし、『おうさま』にはその『るうる』は適用されず、ボタンを押されてもチームは変わらない。
これを16ターン繰り返し、最終的に人数が多い方のチームが『げぇむくりあ』、逆に人数が少ない方のチームは『おうさま』を含め全員『げぇむおおばぁ』。
「殺してもいいのか……?」
「あー…多分ダメじゃね?暴力は禁止されてねーみてーだけど」
アシビとケンゴがそんな話をしていた。
どうやら、この『げぇむ』では、暴力は禁止されていないらしいという事がわかった。
……流石に殺すのはアウトらしいが。
『げぇむ』が始まってすぐ、クオン達4人以外は全員『くいいん』側に引き込まれた。
元々『ぷれいやぁ』チームだった奴等は、『げぇむくりあ』を目指すどころか、わざと『くいいん』チームに捕まりに行った。
『くいいん』側につけば、『
私は、奴等が安全を手に入れる為の生贄。
『
日本語がわからない外国人なら今後の『げぇむ』で足を引っ張る可能性が高いから生贄にしても罪悪感が軽く済むし、そもそも『るうる』すら理解してなければ恨みを買う心配もない。
だけどクオン達だけは、『
“ 向こうの…チーム…行かなくて…いいの…? ”
“ この国じゃ、力のある奴が正義だ。オレらは同じ理念を持つアンタにつく。オレらの大将はルーナだけだぜ。 ”
“ 大将……? ”
いきなり『大将』と呼ばれた私は、動揺を隠せずにいた。
リーダーとかそういうのは、むしろケンゴやヒミコの方が向いてる気がする。
…でも、何でだろう。
悪い気はしない。
ケンゴは、配管の上であぐらをかきながら私に話しかける。
“ もう次で14ターン目ですぜ。どぉします、大将? ”
“ 狩るぞ。 ”
“ 他にご注文は? ”
“ ……好きにしろ。 ”
私が合図を送ると、クオン達は雄叫びを上げて散らばった。
私が『
『
あの女は、妨害をする私にキックボクシングの技を連発してきた。
元の世界では、その道のプロだったんだろうか。
私は、奴隷時代に叩き込まれた格闘術で応戦した。
一切の無駄を省き、合理性のみを突き詰めた近接格闘術『クラヴ・マガ』。
私は、『
「…何故、ケンゴを、狙う…?」
「あら。日本語喋れたのね。アンタ達には興味無いけど、あの男だけは私のチームに引き込むわ。あの男、私のタイプなの」
私が尋ねると、『
全てを聞き取る事はできなかったけど、多分女の目的が男漁りだって事は理解できた。
おかしくて、思わず笑い出した。
「クク…クハハッ、アハハハハハ!」
「何がおかしい…?」
私が腹を抱えて笑い出すと、『
私は、くつくつと喉を鳴らしながら、あえて日本語で挑発した。
「アイツ…アンタより、私とヤりたいってよ」
私は、右手の中指を立てて、左手の指で作った輪の中に右手の中指を入れながら『
私が下品なジェスチャーをしながら挑発すると、『
スピードもパワーも格段に上がったけど、挑発に乗せられて感情的になっているせいか、動きが格段に単純で読みやすくなった。
“ …必死だな。さっさとその椅子から退けよ、
私が笑うと、『
私はその拳を、あえて避けずに受けた。
避けるのは簡単だったけど、格の違いを見せつける為にわざと攻撃を受けた。
暴力が禁止されていなかったから、4人は他の『ぷれいやぁ』を血祭りに上げた。
ある奴は高いところから突き落として、ある奴はボディーブローを叩き込んで内臓を潰した。
私は別に気にしてはいなかったが、クオン達は他の連中が私を生贄にしようとした事に本気で苛立っていた。
『げぇむ』会場は、あっという間に『
……今思えば、指示を間違えたような気もしなくもない。
戦いを放棄して安全に生き延びるというのも、満更理がないわけでもない。
それを理解できないほど私も馬鹿じゃないし、否定もしない。
ただ、獲物に情けをかける死にたがりのライオンなどサバンナにはいない、それだけの事だ。
『げぇむ』が終わる頃には、『げぇむくりあ』した奴等が瀕死で、『げぇむおおばぁ』になった奴等が無傷という、混沌とした光景が出来上がった。
『
「何驚いてんの?元はといえばそっちが決めた『るうる』だろうが」
「オレ達はアンタが決めた『るうる』の中で真剣勝負をして勝っただけの事だ。潔く負けを認めて往生したらどうだ」
クオンとキサガタが言うと、『
「……確かに、その通りね。あなた達の方が、強かったって事だもの」
『
するとその時、『げぇむ』の結果を知らせるアナウンスが鳴り響く。
《それでは時間となりました。『くいいん』チームの皆さんは全員『げぇむおおばぁ』》
「『げぇむくりあ』のご褒美に、いい事を教えてあげる。全ての『げぇむ』を『くりあ』したら、『今際の国』の永住権を手に入れるかどうかの選択肢が与えられるの。私は前回の『ねくすとすてぇじ』を勝ち抜いて、この国に残る事を選んだ」
『
どうしてそんな事を教えるんだ…?
って聞きたいけど、何て言えばいいんだろう。
「どうしてそんな事を教えるんだ、ってウチの大将が言ってるぜ」
「あなたの方が、私より優秀な『
そう言って『
その直後、レーザーが『
そして他の脱落者の8人の頭にも、レーザーが降った。
生き残ったのは、私達5人と、他の『ぷれいやぁ』6人だけだった。
その中には、最初『くいいん』チームだった奴らもいた。
私達が生き残らせた『ぷれいやぁ』は、私達に恨み言を言ってくる。
「お前ら…何て事してくれたんだ…!!『くいいん』側につけば、オレ達は安全に生き残れたんだぞ…!!」
日本語はわからないが、私を憎んでいるというのは口調から伝わってくる。
多分、『
…うん、やっぱりバカだな、コイツら。
お前らが安全に生き残る為だけに、私が大人しく死んでやると本気で思ってたのか?
そう考えていると、キサガタがソイツらに反論する。
「じゃあお前らを死なせて、さっきの8人を生かしときゃ良かったか?」
「うっ…」
キサガタが言うと、他の6人が黙り込む。
「……別に、自分が生き残る為に人を裏切るのを悪いと言ってるわけじゃない…ただ、お前らはこの国で生き残るのに相応しくない……それだけの事だ」
アシビがそう言うと、私とケンゴは後ろに下がり、クオンがヒャハハっと笑って両手にマシンガンを構える。
すると他の6人は、ビクッと肩を跳ね上がらせて命乞いをする。
「ひぃっ…!た、助けてください!お願いしま…」
かろうじて命乞いの言葉を聴き取れた私は、ソイツらに英語で話しかける。
“ オマエ達は、今まで『おうさま』になった奴の命乞いに耳を貸した事があるか? ”
私が言うと、何人かの『ぷれいやぁ』がハッとする。
その直後、クオンのマシンガンの銃口が火を噴いた。
すると目の前にいた『ぷれいやぁ』6人が蜂の巣になる。
「ヒャハハハハハっ!!」
トリガーハッピーになったクオンは、既に他の『ぷれいやぁ』が死んでいるにもかかわらず、お構いなしに全弾撃ち尽くした。
「助けてやったぜ、この世界の理不尽から!オレらの仲間に、弱え奴はいらねーんだよバーカ!」
そう言ってクオンは、顔についた血を舐める。
私達は、炎を上げながら落ちていく『
私達が『げぇむ』を『くりあ』したのは、ちょうど日付が変わった瞬間だった。
すると既に『げぇむ』を『くりあ』して私を待っていたヒミコが話しかけてくる。
« あ、やっぱりあなたも『げぇむくりあ』したのね。誰倒した?私は『
« ……『
私とヒミコが話していると、ケンゴがヒミコに話しかける。
「へー、お嬢ちゃんが、ルーナが言ってたヒミコって子か。オレはケンゴ。んで後ろがクオン、キサガタ、アシビだ」
「キャハ、よろしく♪」
ヒミコは、すぐにケンゴ達と意気投合した。
それからヒミコとケンゴ達と一緒に過ごしていると、最後の『げぇむ』の『
《おめでとうございます。ただ今を持ちまして、
私達には、『今際の国』の国民になるかどうかの二択が与えられた。
もちろん、私の中ではどちらを選ぶかは決まっていた。
きっと、ヒミコやケンゴ達も同じだと思った。
「無論、ありがたく『手にする』わ」
ヒミコは、私の思った通り、永住権を手にした。
ヒミコが残るなら、私もここに残る。
« ……ヒミコがここに残るなら、私も、永住権を『手にする』。 »
「ははっ、大将なら手にすると思ってたぜ!オレももちろん『手にする』ぜ!!」
「オレもトーゼン、『手にする』ぜ!自分の力で死線を乗り越える快感を知っちまったら、もう元の世界になんか戻れねぇよ!」
「同感だぜクオン!そりゃあオメー、『手にする』しかねぇよな!!」
「………オレも…『手にする』、だ」
私達は全員、永住権を手にする選択をした。
この時、私はほんの少しだけ、安心したんだ。
…ああ、やっぱりだ。
私と彼とでは、住む世界が違ったんだ。
私には、この暗くて、冷たくて、陽の差さない世界が生きやすい。
これでもう、一生交わる事はない。
あの光を、もう見ずに済む。
私には眩しくて、速すぎて、手を伸ばす事さえかなわなかったあの光を。
« ねぇルーナ、どう?私がアンタ達の為に作った『げぇむ』は。 »
« …最高。 »
私が銃の手入れをしていると、ヒミコが話しかけてくるので、私はサムズアップをしながら答えた。
私が今やっている『げぇむ』は、ヒミコが作ってくれた『げぇむ』だ。
強い者にこそ価値がある。
私の理念を体現した、素晴らしい『げぇむ』だ。
『弱肉強食』。
それこそが、私の唯一にして絶対の『理念』だ。
ただ目の前の草を貪り食う事しか考えていない羊と、羊を殺す為の牙を研ぎ澄ましている狼とで、どちらが生き残るべきかなど考えるまでもない。
強い意志を持つ者にのみ、生き残るチャンスを与える。
それこそが、真の公平だ。
「ゆ、許してくれ…!!妻と子供だけでも…頼む、この通りだ!!」
私は、『今際の国』の国民になってから、幾多の命を奪ってきた。
家族を守る為に命乞いをしてきた奴の目の前で、その家族を撃ち殺した事もあった。
私のテリトリーに入ってきた『ぷれいやぁ』は、弱い奴から殺した。
「…っ、こんな事して…心は、痛まないのか…?」
女だろうと、子供だろうと、知った事か。
元々世界は残酷だったんだ。
そんな当たり前の事すら忘れ、平和に甘んじて、己の牙を研ぎ澄ます生き方をしてこなかったのが悪い。
オマエらが安全な食事を囲んで家族と談笑している時、私は大事な家族を奪われて、それでも生き延びる為に腐った残飯を食ってきた。
別に、私の苦しみを理解しろと言うつもりも、私の考えを押し付けるつもりもない。
ただ、意志の強さがものを言うこの世界では、オマエらより私の方がはるかに生きやすかった、それだけの事だ。
「な、何なんだお前は!?血も涙も無いのか!?」
血と涙…か。
« あるわけないだろ、そんなもの。 »
そう言って私は、引き金を引いて『ぷれいやぁ』を撃ち殺した。
血も涙も、とうの昔に枯れた。
私はもう、血の温もりも、人の心の温かさも感じない。
心が痛むわけないだろ。
私とオマエらでは、住む世界が違う。
オマエら弱者の価値観を、私に押し付けるな。
私は、大した覚悟も無いくせに文句だけは達者な奴が大嫌いだ。
己の力で困難を乗り越える気概も持たずして、やれ『助けろ』だの『チャンスをくれ』だの、喧しいにも程がある。
この世界で生き残っていいのは、理不尽に打ち勝つ強い意志を持つ者だけだ。
闘う意志さえ持たない軟弱者は、せめて私がひと思いに一撃で殺してやる。
私は、自分が生き残る為なら何だってしてきた。
だが私は、この殺し合いが永遠に続けばいいとは思わない。
…私は、待っているのかもしれない。
私という理不尽に打ち勝つ理念を持った強き者が、いつか私を殺しに来るのを。
『
♡J編にオリキャラを登場させるつもりなんですが、定員を増やすのと原作通り20人で進めるのとどちらがいいですか?
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人数増やす
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原作通り20人で進める