次は皆様お待ちかね(?)、はあとのじゃっく編です。
チエside
『げぇむ』『さあかす』。
難易度『
参加者は、『ぷれいやぁ』チームと『
コースは、一周約1km。
コースには試練が設置されており、参加者は必ずどれかの試練に参加する。
レースはリレー形式で、『ぷれいやぁ』は担当する試練の1つ前の試練が設置されたステージで待機する。
前の走者が試練を『くりあ』した場合のみ、次の走者が前に進む事ができる。
全ての試練を突破してコースを完走し、先にスタート地点に戻ってきたチームの参加者は全員『げぇむくりあ』。
ゴールを先越されたチームの参加者は全員『げぇむおおばぁ』。
『げぇむ』における禁止行為は3つ。
参加者がコースアウトした場合。
試練における『るうる』を違反した場合。
相手のチームの参加者を殺害した場合。
「『
「今はとにかく、急いで最後の試練に参加しないと…!」
ヤヨイさん達が第四の試練を突破した直後、車に乗り込んでいた私達はすぐに第四の試練のパーキングを出発した。
『
早く追いかけて、最後の試練で巻き返さないと…
《第五の試練『まじっく』。この試練では、代表者1名が脱出マジックに挑戦し、残りの4名は脱出に挑戦する代表者のアシスタントをします。準備の制限時間は、『るうる』説明終了後の1時間。見事脱出に成功する事ができれば、第五の試練は『くりあ』》
最後の試練は、脱出マジックに必要なセットが置かれているステージだった。
脱出のトリックは何通りか用意されていて、その中から一つを選んで脱出する、という試練みたい。
私達は、セットやステージを注意深く確認して、どのやり方で脱出するのがいいかを皆で話し合った。
一方で、『
「巻き返さなきゃいけない事を考えたら…この方法の方がいいかもしれませんね」
「脱出役は誰がやりますか…?」
脱出マジックに慣れているであろう『
体力面を考えるなら男性のウオズミさんが適任だけど、狭いところを通るのは小柄な人の方が有利だし、拘束を解くのは手先が器用な人の方が有利よね…
どのトリックを、誰がやるのが一番早いかを考えないと…
私達が考えていると、ずっとステージの床を眺めていたハルト君が口を開く。
「……僕がやる」
ハルト君が言うと、皆がハルト君の方を振り向く。
「ダメよ、いくら何でも危険だわ!」
「そうよ、もし脱出できなかったら…」
トードさんとイーダさんは、ハルト君が脱出役をやるのを反対した。
失敗したら死ぬかもしれない試練にこんな小さい子が挑戦するなんて、いくら何でも危険すぎる。
するとハルト君は、床を指差して言った。
「これ…僕なら、通れると思う」
◆◆◆
ワスベside
「また先生の部屋に勝手に入ったの?」
「だって、雀晴が探検しようってゆうから…オレとシュウ君は無理矢理…」
「なっ、譲治だって賛成してただろ!?」
「ふふっ、しょうがないわね。あとで私も一緒に怒られてあげる。それより、おやつ持ってきたから皆で一緒に食べよ?」
僕達5人は、全員児童養護施設で育った。
特に僕は同い年のレーザンと一番仲が良くて、もう一人の譲治って友達と三人で連んで遊んだりイタズラしたりしてた。
譲治には花江さんっていう歳の離れたお姉さんがいて、僕達にも本当の姉弟みたいに接してくれた。
花江さんと譲治が出て行った後も、新しく子供達が入ってきた。
ハンナとキマダラは、花江さん達が出て行った後に入ってきた新顔だった。
そういうところに来るって時点で皆訳ありの子供ばかりで、花江さんに出会う前の僕やレーザンみたいに、暗い目をしていた。
僕は、花江さんがしてくれたみたいに、暗い目をした子供達の目に光を灯してやりたかった。
だから僕はある日、レーザンに提案をした。
「サーカス?」
「ああ。ボクの器用さとお前の運動神経があれば、きっといいものにできると思うんだ!付き合ってくれるか?」
「いや、お前…二人でサーカスって、無理だろ。やる事色々あるんだからよ。演目も一つや二つじゃ寂しいだろ?」
「それは〜…」
僕がいうと、レーザンは呆れた表情を浮かべる。
するとその時、僕達の話を聞いていたハンナとキマダラが声をかけてくる。
「あの…アタシ達も、一緒にやってもいい…?」
僕は、レーザン、ハンナ、キマダラの3人と一緒にサーカス団を結成する事にした。
血の滲むような努力を重ねて、路上でパフォーマンスをして、日に日に着実にファンを増やした。
最初は無名だったけど、活動を始めて2年が経つ頃には都内じゃそこそこ有名なサーカス団になって、入団希望者も増えた。
そしてその頃、僕達は新しく施設に入ってきたエマをサーカス団に迎え入れた。
エマは父親から毎日暴行を受けていて、父親が逮捕されて身寄りがいなくなったから施設に送られたそうだ。
曲芸の才能があったエマは、入団してすぐに一軍メンバー入りして、大勢のファンを獲得した。
エマだけじゃなく、施設の子供達が、笑顔を見せるようになった。
僕は、人生に絶望していた皆の目に光を灯せたのが何よりも嬉しかった。
だけどある日、僕達の幸せを容赦なく壊す出来事が起こった。
『今際の国』に迷い込む一ヶ月前、エマの父親が釈放されて、エマを取り返しにきたのだ。
エマも僕達も全力で拒否したけど、実の父親ってだけの理由で、施設側はエマを父親のもとへ帰した。
その事に我慢ならなくなったレーザンは、エマを守る為に彼女の父親をナイフで刺し殺した。
僕達サーカス団の一軍メンバーは、死体をノコギリでバラバラにして、人が立ち寄らない山奥に捨てた。
だけどエマの父親の死はすぐに知れ渡り、警察は躍起になって殺人犯を探した。
あの日から『今際の国』に迷い込むまでの一ヶ月、僕達は警察から逃げ回る日々を送っていた。
「だんだん捜索範囲が狭まってる…捕まるのも時間の問題だわ…」
「ごめん皆…オレがアイツを殺したから、こんな事に…」
「何言うてんねん。レーザンの兄貴が殺らんかったら、ワイが殺っとったわ。ワイらの大事な仲間を傷つけるクズは死んで当然やろ?」
「今の日本の法律じゃ、奴を警察に突き出したところで厳罰を与える事はできない。ああするしかなかったんだ」
僕達は、エマの父親を殺したレーザンを誰も責めなかった。
レーザンが奴を殺さなくたって、結果は同じだ。
その時は、僕が奴を殺してた。
日本の法律は、犯罪者に甘い。
奴がまた逮捕されたとしても、すぐに釈放されて同じ事を繰り返すだけだ。
エマを奴から助ける為には、殺すしかなかったんだ。
「ボク達、もうサーカスできないのかな…そんなのやだよ…!」
泣きじゃくるエマの背中を、僕達4人で撫でた。
この手を血で汚した僕達はもう、この国で一緒にサーカスを続けていく事はできない。
きっと他の4人も全員、僕と同じ事を思った。
いっその事、どこか知らない国に行きたい。
その願いは、天に届いた。
届いてしまった。
『今際の国』に迷い込んだ僕達は、初日の『げぇむ』を5人で『くりあ』した。
最初の『げぇむ』は、『
僕達は、全員で協力して何とか『げぇむ』を『くりあ』して生き残ってきた。
中には人を殺さなきゃいけない『げぇむ』もあったけど、まだ子供のエマの手だけは汚させないように、僕達4人が率先して汚れ役を引き受けた。
『ねくすとすてぇじ』が開催されたのは、『今際の国』に迷い込んで60日目の事だった。
僕達は、5人で『
『げぇむ』の内容は『あみだくじ』、天井から吊るされたロープを登って『ぷれいやぁ』が一人でもゴールに辿り着けたら『げぇむくりあ』、『
僕達はサーカスをやっていたおかげで全員難なくゴール付近にまで辿り着いたけど、あと少しのところで『
『今際の国』の国民に振り落とされて殺されると思った、その瞬間だった。
エマがロープを飛び移り、国民を足蹴にして振り落としたのは。
エマに蹴落とされた国民は、頭にレーザーが貫通して死んだ。
『げぇむ』に参加して初めて、エマが明確な殺意を持って、自分の意思で人を殺した。
「今までずっと、兄ちゃん達に守られてばっかだった…でももう、弱いままでいたくない…!今度はボクが、兄ちゃん達を守る番だ!!」
そう言ってエマは、綱渡りで培った身体能力を活かして、『今際の国』の国民を次々とロープから蹴落とした。
エマのおかげで、僕は一番乗りに『あみだくじ』をゴールし、『
『
《おめでとうございます。ただ今を持ちまして、
「どうする…?」
僕達は、全員で顔を見合わせた。
するとエマが、最初に口を開いた。
「ボクは…永住権を『手にする』」
「エマ…!」
「もし『永住権』を放棄する事が、『死ぬ』って事だとしたら…?せっかく『げぇむ』を全部『くりあ』したのに、それが無駄になるなんて、ボクは嫌だ」
エマは、『永住権』を放棄したら、『びざ』が切れた人達のように殺処分されるのではないかと考えていた。
ボクはその時、真逆の可能性を思い浮かべていた。
だけどそれを打ち消すように、エマが続けた。
「万が一!万が一だよ?『永住権』を放棄するって事が元の世界に戻れるって事だったとしても、ボクはそうならない事を望んでるのかもしれない」
「え…?」
「万が一元の世界に戻れたとしても、どうせボク達、警察に追われる身だし…だったらこの国に残って、皆でまたサーカスやろうよ…!」
エマは、目に涙を浮かべて、精一杯の笑顔を浮かべながら言った。
するとキマダラ、レーザン、ハンナの三人は、安堵の表情を浮かべた。
「あー、良かったぁ!エマが『永住権』を放棄してしもたら、どないしよかと!」
「オレも、正直ヒヤっとしたぜ」
「やっぱりアタシ達、考える事は一緒ね」
「安心しろ、エマ。ボク達は皆、気持ちはひとつだ。皆一緒なら、何も怖くないよ」
僕は、エマの肩に手を置いて言った。
僕達は皆、気持ちはエマと同じだった。
「オレは『手にする』ぞ!」
「アタシも、『手にする』わ」
「ワイもや!『手にする』で!」
「ボクは…いや、ボク達は、永住権を『手にする』!」
僕達は全員、『永住権』を手にする事を選んだ。
大好きな仲間と、この国で永遠にサーカスをする為に。
「サーカス?」
「はい。ボク達は、一番大事にしてきたサーカスを『げぇむ』にしたいと思ってるんですけど、ボク達だけ『るうる』を先に知ってたら不公平でしょ?だから『げぇむ』の内容は、花江さんに考えてもらって、『げぇむ』当日まではボク達に内緒にしててほしいんです。これだけは、花江さんにしか頼めませんから!」
僕は、『
僕の姉代わりだった花江さんも、奇しくもこの国に残って『今際の国』の国民に成り代わっていた。
僕とレーザンに、本当の姉のように接してくれたお人好しの女性。
僕の、初恋の人。
「…わかったわ。サーカスをテーマにした『げぇむ』を作ればいいのね。ところで、雀晴君。そろそろ聞かせてもらえるかしら?あなた達の『理想』を」
「理想?」
「そうよ。あなた達の『げぇむ』を作る上で、一番大事な事でしょう?」
花江さんは、菜園でトマトの剪定をしながら僕に尋ねる。
僕は、少し考えてから花江さんの質問に答えた。
「ボク達が一番大事にしているものは、『絆』です。『ねくすとすてぇじ』は対人戦だって花江さんは言いましたけど、『
「雀晴君らしいわね」
「…それから、ボク達の理想はもう一つあるんです」
「もう一つ?」
僕は花江さんに、自分の理想を話した。
すると花江さんは、クスリと微笑んだ。
「…とっても素敵」
花江さんは、僕達の為だけにとっておきの試練を作ってくれた。
『
僕は、仲間との絆を信じて、今回の『げぇむ』も生き抜いてやる。
少しでも永く、大好きなサーカスを、大好きな皆と続ける為に。
◇◇◇
そして現在。
僕達は、脱出マジックの段取りの確認を終えた。
向こうのチームも段取りの確認を終えたら、お互い脱出ショーのスタートだ。
最後の試練だけは、両チームが同時に試練をスタートしなきゃいけない。
それだと不公平に見えるかもしれないけど、先に到着したたチームは、その分準備に長く時間を割く事ができるという利点がある。
向こうのチームより先にこの試練のステージに到着した僕らは、向こうのチームより念入りに練習を重ねる事ができた。
…それにしても、花江さんもなかなかに粋な計らいをするなぁ。
僕にとって一番思い入れのある脱出マジックを、最後の試練にするなんて。
この試練を用意してくれた花江さんには、感謝しないと。
「そっちは準備終わったかな?それじゃ、始めようか!」
僕の合図と同時に、BGMが鳴り響く。
僕と向こうのチームの代表者が、同時に前に出る。
…おっと、向こうのチームの代表者は子供か。
正直ちょっとやりづらいなぁ。
まぁでも、これは命を懸けた真剣勝負だ。
子供が相手だからって手加減してやる気はない。
「ねぇキミ、お名前なんて言うの?」
「……ハルト」
「そっか、ハルト君か。お互い頑張ろうぜ!」
僕は、対戦者のハルト君にウィンクをした。
「それじゃ、まずはボクの手足をこの枷で拘束しておくれよ。キミ達のは、ボクの仲間がやるから」
そう言って僕が前に出ると、男性とメガネの中年女性が前に出て、僕の手足を枷で拘束した。
一方で、ハンナとエマも、ハルト君の手足をロープで拘束した。
僕は、ずっと気になっていた事を『ぷれいやぁ』の皆に尋ねる。
「ひとついいかい?この『げぇむ』では、相手チームへの妨害は禁止されていない。ボク達を妨害する機会は、いくらでもあったはずだよね。妨害すれば楽に勝てたはずなのに、それをしなかったのはどうしてなのかな?」
僕が尋ねると、僕と歳が近いであろう女の子が僕の質問に答える。
正直、その答えには驚いた。
今までの『げぇむ』では、そんな事を言う人なんて、一人もいなかったから。
「……そっか、それじゃあ始めようか!世紀の脱出ショーを!!」
そう言って僕は、ピョンピョン飛び跳ねて箱の中に入る。
『ぷれいやぁ』チームも、女の子と小太りの中年女性が、ハルト君が箱の中に入るのを手伝い、箱を閉めて外から南京錠をかけた。
レーザンも、箱を閉めて外から南京錠をかける。
それと同時に、僕は手枷と足枷を素早く外した。
実はこの手枷と足枷は知恵の輪のような構造をしていて、コツさえ知ってれば簡単に外れるようになっている。
手足が自由になった後は、箱の裏から脱出して、事前に打ち合わせしたルートを通ってゴールを目指す。
ここまで、練習より早くこなす事ができた。
素人の腕じゃ、僕より先にステージから脱出する事なんて、できるはずが───
「な……!?」
最短で試練を『くりあ』した僕は、信じられないものを目の当たりにする。
ハルト君が、僕より先にステージから脱出して、残り約20mのコースを走っていた。
何でだ!?
プロの僕達と違って、向こうは素人だ。
おまけに『ぷれいやぁ』チームは、僕達より準備時間が短かったはず。
なのに、どうしてハルト君が、僕より先に試練を『くりあ』しているんだ…!?
――なぁ、この抜け穴、通れへんかな?
――うーん、ボクでも無理そう。
――よしワスベ、関節外せ!
――ちょっとレーザン!団長を何だと思ってんの!?
「……あ」
思い出した。
僕達の体格じゃ通れないから、真っ先に除外した抜け道があったんだった。
まさかあの抜け道が、逆転の鍵だったっていうのか…!?
――それから、ボク達の理想はもう一つあるんです。
――もう一つ?
――ボク達は決して、弱者を見捨てない。ボク達のサーカス団は、施設の子供達を笑顔にする為に皆で企画したのが始まりなんです。だからボク達の『げぇむ』は、弱者を見捨てない心の優しい人が『くりあ』できる『げぇむ』でありたい。
――…とっても素敵。
だから、子供や華奢な年寄りだけが通れる抜け穴を、最短の脱出ルートにしたのか…!
さすが花江さん、ちゃんと僕の要望に応えてくれてた。
「ハルト君、急いで!」
『ぷれいやぁ』チームは、5人揃ってスタート地点に向かって走っていた。
ゴール地点への道は、細くて不安定な橋を渡らなきゃならない。
僕がステージから脱出すると、先に待機していた他の4人が声をかける。
「ワスベ、こっちだ!!」
「ああ…!」
僕達5人は、一斉に橋を渡った。
一見筋力や体力のある男の方が有利に見えるけど、体重が軽ければ軽いほど足場の揺れが小さく済むから、さっきの脱出マジックの時みたいに体格の小さい人の方が有利って事になる。
だけどサーカスでバランス能力を鍛えられている僕達5人からすれば、揺れの大きさなんて誤差の範囲でしかない。
そのまま僕達が『ぷれいやぁ』チームを追い抜こうとした、その時だった。
「あっ…!!」
ハルト君が、橋から足を滑らせて落ちてしまった。
その時、さっきの女の子が、咄嗟にハルト君の腕を掴んで下に落下するのを阻止した。
「ハルト君!!」
「う、うぅ……」
女の子は、そのままハルト君を引き上げようとするけど、その時強風が吹きつけ、自分まで落ちそうになってしまう。
すると他の3人が、女の子の身体を支えて引き上げようとした。
「引っ張り上げます!しっかり耐えて!!」
「ダメっ…風が強すぎる…!!」
僕は、ハルト君を引き上げようとする『ぷれいやぁ』達を見て、思わず足を止めた。
この『げぇむ』は、一番最初にゴールした人がいるチームが『げぇむくりあ』扱いになる。
つまり、一人でもゴールすれば、『ぷれいやぁ』は皆『くりあ』できる。
全員を生かす事を考えるなら、子供一人に構って全員が足を止めてる場合じゃない。
なのにあの人達は、たった一人の子供を助ける為に足を止めた。
この時僕は、さっき女の子に言った言葉を思い出した。
――妨害すれば楽に勝てたはずなのに、それをしなかったのはどうしてなのかな?
僕は、どうして『ぷれいやぁ』チームが僕達を妨害しないのかを尋ねた。
僕達が『ぷれいやぁ』チームを妨害しないのは、別に邪魔しなくても勝てる自信があるし、何より僕達はこの『げぇむ』に強い思い入れがあるからだ。
だけど『ぷれいやぁ』チームは違う。
僕達を妨害しない理由がない。
――『
正直、驚いた。
この国にまだ、こんなに気高く美しい心を持った人がいたなんて。
今までの『ぷれいやぁ』は、生き残りたいからって積極的に僕達を妨害して自滅した奴等ばかりだったから。
ここで心の優しい人達を置いて『げぇむくりあ』したって、誰も僕を認めない。
そう思った僕は、来た道を戻った。
「兄ちゃん、どうしたの?」
「ごめん皆。ボク、ちょっと忘れ物しちゃった」
そう言って僕が来た道を戻ろうとすると、皆が一緒についてきた。
「何や兄貴、水臭いで!」
「オレらも付き合うぜ!」
「皆…」
本当に…僕が言うのも何だけど、揃いも揃ってバカしかいないなぁ。
でも愛してるぜ、皆。
◆◆◆
チエside
私は、今にも落ちそうなハルト君の右腕を、両手で掴んでいた。
橋から落ちた私の身体を、他の3人が引っ張ってくれている。
側から見れば、バカな事をしていると思う。
それでも私は、たとえそれで道連れになったとしても、ハルト君を見捨てたくない。
「絶対、助けるから…!」
私は、何とかハルト君を引っ張り上げようとする。
だけど腕の力に限界が来て、ハルト君が滑り落ちそうになった、その時だった。
私とハルト君の腕にワイヤーが巻き付けられて、ハルト君はワイヤーで吊るされた。
ふと上を見上げると、『
「引っ張り上げる!!その手を離すんじゃねぇぞ!!」
『
私は、残りの腕の力を振り絞って、ハルト君を引っ張り上げた。
私のチームの皆と『
だけどその直後、橋を支えていた支柱のネジが外れる。
流石に10人分の重さには耐えきれないんだ…!
「まずい、橋が崩れる…!」
「走れ!!振り返るな!!」
私達は、橋が崩れる前に全速力で走った。
何とか全員橋の崩落に巻き込まれずに済んだ。
だけど全員が橋を渡り終わった、その瞬間だった。
崩れた橋を支えていた鉄骨が、『
先に気付いた他の仲間が、エマに向かって叫ぶ。
「「エマ!!!」」
他の仲間が叫ぶと、エマは後ろを振り向く。
私は咄嗟に、エマを突き飛ばした。
その直後、支えを失った鉄骨が倒れた。
「大丈夫…!?」
私に突き飛ばされたエマは、呆然としていた。
橋が崩落した時に飛んできた部品が頭に当たって、意識が朦朧とする。
それでも、前に進まないと…!
「ボクを見殺しにしておけば、楽に『げぇむくりあ』できたかもしれないのに…どうして助けたの…?」
「私は、もう誰も傷つけ合わずに『げぇむ』を『くりあ』したいの…!『今際の国』の国民だからって、見殺しにするのは違うでしょ…!?」
私は、誰かを見捨てて生き延びるくらいなら、たとえ裏切られて殺されちゃったとしても、困ってる人を助けたい。
それが、『
それが私の生き方だから。
「レーザン、エマに肩貸してやれ」
「ワスベ…!?」
頭が痛い。
視界が歪んで、うまく立てない。
それでも、最後まで前に…!!
私が意識を失う寸前、最後に見たのは、私に駆け寄る『
◆◆◆
ワスベside
「よいしょっと…」
僕は、エマを庇って頭を怪我した女の子…チエちゃんを背負って、ゴールへと走り出した。
僕が走り出すと、『ぷれいやぁ』チームも『
ここでチエちゃんを見捨てれば、僕達は確実に生き残れた。
だけど、エマを助けてくれた彼女を見捨てて『げぇむくりあ』したって、皆は僕を許さないだろう。
僕は、チェッカーフラッグが立ったスタート地点の門に向かって、チエちゃんを背負ったまま身を投げ出した。
ゴールテープを切ったのは、チエちゃんの腕だった。
《ここで、スタート地点に帰還した参加者がおられます。1着でスタート地点に戻られた参加者は、チエ様。よって、『ぷれいやぁ』チームの勝利》
僕とチエちゃんが一緒にゴールすると、合成音声が勝敗を伝える。
勝利の女神は、『ぷれいやぁ』達に微笑んだ。
「勝った…のか…!?オレ達、勝ったのか!?」
勝利を知らされた『ぷれいやぁ』達は、顔を見合わせる。
『げぇむおおばぁ』が確定した僕は、チエちゃんをベンチに降ろして応急処置をしてから、4人に向かって微笑む。
「あーあ、負けちゃった。ごめん皆」
僕がチエちゃんを助けたから、他の4人まで巻き添えを喰らった。
僕は、僕のわがままに付き合わせてしまった4人に謝った。
すると4人は、いつも通りの笑顔で口を開く。
「何アホな事言うてんねん、そないな事気にしとらんわ!」
「兄ちゃんは、今までずっとボク達を助けてくれたじゃんか!」
「兄さんが謝る事なんて何もないわ。アタシが兄さんの立場なら、同じ事をしてたと思うから」
「それに、こんなに気のいい奴らと戦えたんだ、何も思い残す事はねぇさ」
ははっ、皆ならそう言うと思ってたよ。
やっぱり僕達、『病気』なのかもね。
僕達は、5人で輪になって、互いに抱き合った。
すると『ぷれいやぁ』の一人が話しかけてくる。
「どうして…オレ達を助けてくれたんですか…?」
「今までの『ぷれいやぁ』達は、自分が生き残る為に他人を蹴落としたり、失敗を人のせいにする奴等ばかりだった。初めてだったんだよ、こんなにも美しい心を持った人達に出会えたのは。理想に生きている人達を蹴落として『げぇむくりあ』したって、きっと誰もボクを認めない。要は惚れちゃったのさ。こんな理不尽な世界の中でも気高くあろうとする、キミ達の生き様に」
僕は、『ぷれいやぁ』達を指差しながら答えた。
僕達は皆、気高くて優しいこの人達になら殺されてもいいと本気で思えてしまった。
敗因はきっと、そこなんだろうね。
「オレの仲間が言ってました。アンタ達『今際の国』の国民は、元々オレ達と同じ『ぷれいやぁ』で、全部の『げぇむ』を『くりあ』して、この国に留まる事を選んだ人達なんじゃないかって。もしそうなら…どうしてよりにもよって…誰よりも気のいいアンタ達が、『今際の国』の国民になったんだ!?」
「ボクはただ、大好きな仲間とまた一緒にサーカスがしたかった。それだけだよ」
『ぷれいやぁ』の一人が言うと、僕はお茶を濁した。
僕達の犯した罪は、全部僕達が地獄へ持っていく。
その時ふと、ベンチに休ませておいたチエさんが目に留まる。
「…あ、そうだ。このタワーの近くの商業施設に病院が入ってるから。薬も器具も、好きなだけ持っていくといい」
本来、僕が『ぷれいやぁ』にそんな事を教える義理はない。
今まで散々『ぷれいやぁ』の命を奪ってきた事への贖罪、なんてつもりは微塵もない。
ただ、最期に僕達に綺麗なものを見せてくれた皆には、できるだけ長生きして欲しいから。
《敗北した『
「これで終わりか…でもまあ、案外悪くない人生だったわね」
「せやなぁ!今までホンマありがとうな、皆」
「ボク、また皆とサーカスができて良かった」
「オレもだぜ。お前らと一緒だったから、今まで楽しくやってこれたんだ」
ハンナ、キマダラ、エマ、レーザンの4人は、顔を見合わせて笑っていた。
僕のわがままに最期まで付き合ってくれた、底抜けのバカでお人好しの奴等。
そんな奴等だからこそ、皆と一緒ならたとえ地獄に堕ちたっていいと思えたんだ。
「ねぇ皆、もし地獄でまた会えたら…その時は、ボクと一緒にサーカスをしてくれるかい?」
「うん!」
「おう!」
「ああ!」
「もちろん!」
僕が尋ねると、皆は笑顔で頷いた。
もう、余計な言葉はいらない。
きっとすぐに会える、そんな気がするから。
もしまた会えたら、僕達は永遠に一緒だ。
レーザン、ハンナ、キマダラ、エマ。
愛してるぜ、皆。
――ピィン!!
――ズッ…
――ピィン、ピィン、ピィン、ピィン…
◆◆◆
ネズミside
『
5人は、糸が切れた操り人形のように、その場に倒れた。
《『ぷれいやぁ』チーム、『げぇむくりあ』》
タワーの上に浮かんでいた飛行船から吊り下げられていた幕の表示が、『
その直後、『
「終わったね…」
「うん…」
絵札戦で初めて、『ぷれいやぁ』側から一人も犠牲者を出さずに『げぇむくりあ』した。
だけど俺達は、この期に及んで『ぷれいやぁ』を助けるような、仲間想いで心の優しい5人を殺して生き延びた。
これが本当に正しい事なのかはわからない。
でも俺達は、どんなに醜態を晒してでも生きなきゃいけない気がする。
俺達を生かして死んでいった、ワスベ達の為にも。
───今際の国滞在?日目
残り滞在可能日数
根津見護人 25日
弥生美兎 26日
『ねくすとすてぇじ』開催3日目
『げぇむ』 残り7種
『ぷれいやぁ』 残り170人