チシヤside
真面目に生きてる人間が、バカに見えた。
人の命になんか、興味を持てなかった。
医大に入って1年目、俺はつまらない講義を単位の為だけに受講していた。
「おい、お前」
講義が終わった後、俺は栗原教授に話しかけられた。
小言を言われると思って素通りしようとすると、教授はため息をついて俺に向かって言い放った。
「そこのお前だよ。岡田教授の講義、つまんなそーな顔で話聴きやがってよぉ。さてはお前、教授の事嫌いだろ。怒らねーから正直に言ってみ?ん?」
栗原教授は、白衣のポケットに手を突っ込んで俺の顔を横から覗き込んできた。
説教をされるのかと思った。
俺は、面倒臭いと思いつつも、何故だか教授に本当の事を話していた。
「…あの教授、話つまらないんですよ。教え方がやたら非効率的で、小難しい言葉ばかり並べてるせいで要点がわかりづらい。ああいう利口ぶってるバカの話は、真面目に聞くだけ時間の無駄だと思いません?」
今思えば、俺らしくない気まぐれだった。
そんな事を教授に愚痴ったところで、何にもならない。
むしろ、説教が余計に長くなるだけだというのに。
だけど、教授の反応は、俺の予想とは真逆だった。
「いっしょ!!」
教授は、急に上機嫌になって俺に話しかけてきた。
「いやぁ〜、あのジジィ、話わかりにくくてつまんねーよなぁ!アイツ、昔オレの大学にいたんだけどさ。オレも同じ事思ったもんだよ。はっはは、お前とは気ィ合いそうな気がするわ!」
栗原教授は、入学したばかりの俺に、馴れ馴れしく接してきた。
俺と同じ目線で接してきたのは、この人が初めてだった。
「奢ってやるから、この後メシ付き合えよ。オレがあのジジィの講義のサボり方教えてやる」
栗原教授は、子供みたいに無邪気な笑顔を浮かべながら言った。
若くして数々の高難度手術を成功させた天才。
その天才が、嫌いな教授の話題をきっかけに、まるで旧知の親友同士かのように新入生の俺に話しかけてきた。
何故だか教授の話は、聞いていて退屈しなかった。
「後輩君、この機会だからさ。ウチの研究室来いよ。ジジババ共の長ったらしい話聞いてるだけじゃ退屈だろう?この世界で長生きする気があるなら、今のうちに作れる『縁』は作っといた方がいいだろうしな」
別に、行かなくても良かった。
研究には興味無いし、一方的に馴れ馴れしく話しかけてきたオッサンと仲良くなる義理なんか無かった。
「オレ、何でこんなとこ来ちゃったかなぁ」
仲良くなる義理なんか無いはずだったのに、気がつけば俺は栗原教授の研究室に来ていた。
するとボサボサの髪を無造作にまとめた薬品臭い女が俺を出迎えた。
「ちーっす。ウチ、
俺を出迎えたのは、教授の妹だった。
この兄にしてこの妹、そう思った。
ワキガの兄と薬品臭い妹…まあ正直言って、近寄りたくはなかったよね。
「あ、そうだ。苣屋クンさぁ、麻雀打てる?」
「ルールは何となく知ってますが、やった事は…」
「じゃあウチが教えるから、やり方覚えたら付き合ってよ。こんなストレスばっかの環境にいるんだから、息抜きは必要だべ?」
そう言って先輩は、無邪気な笑顔を浮かべた。
「ウチ、すげー強ぇけどな。言っとくけど、すげー強ぇよ。だってウチの知り合いにあの、日本で5番目に強ぇ先輩いるもん。先輩!麻雀!5番目に強ぇ先輩いるもん!」
俺は弥子先輩に麻雀を教わって、教授や先輩と麻雀を打つのが楽しみの一つになっていた。
俺が教えてもらったのは、関西ルールだった。
弥子先輩に麻雀を教えた先輩が関西人だとかで、麻雀といえば関西ルールだと言っていた。
何回かやったらコツを掴んで、教授には勝てるようになったけど、結局先輩には一度も勝てなかった。
弥子先輩は、机に齧りついて研究に没頭してるか、机に突っ伏して寝てるか、ほとんどそのどちらかだった。
髪はボサボサに伸びきっていて、目には濃い隈がついていて、服にはいつも薬品の臭いが染み付いていた。
そのせいか、周りからは『魔女』って呼ばれていた。
「すげぇよな、弥子先輩」
「実習が終わった後も、1日も休まずに研究室に籠って研究に没頭してるんだぜ」
「おかげで『魔女』って呼ばれてるけど」
先輩は、近寄りづらい見た目とキツい臭いとは裏腹に、真面目で面倒見がいい人だって評判だった。
俺は、何でそんなに毎日研究に没頭してるのかを、先輩に尋ねた事があった。
「人を救う為にがむしゃらに頑張ってる姿が、カッコいいと思ったんだ」
「栗原教授が…ですか?」
「そ。ウチさ…鳳正が天才だから、いっつも比べられてさ。そんで何もかも嫌になって、グレてた時期もあったんだよね。けど、ウチが不良同士の抗争で半殺しにされそうになった時、鳳正が来たんだよ。弱っちいくせに、ガチの不良相手に啖呵切ってさ。親にすら見限られたウチを、アイツは命懸けで守ってくれた」
先輩は、コーヒーを淹れながら話した。
正直、先輩が昔不良だった話は意外と思わなかったし、どうでも良かった。
「その後家帰って手当てしてくれたんだけどさ、アイツの書斎見てビビったよ。難しそうな医学書とかノートとか大量に置いてあったんだけどさ、それ全部手垢でボロッボロになってんの。それ見て、わかったんだ。鳳正が偉業を成し遂げてきたのは、天才だからじゃない。誰よりも、人を救う為に努力してるからなんだって。だからウチ、決めたんだ。遅かったかもしれないけど、アイツみたいに、人の為に生きようって。そっからは悪さをやめて、必死に勉強してこの大学入ったんだ。今は、一人でも多くの人を救う為に、ウチにできる事を全力でやって生きてる」
薄いインスタントコーヒーを一口飲んでから、先輩はいつになく真剣な表情で言った。
先輩の話を聞いていて、わかった事がある。
俺も、教授や先輩のように、人の命を救う為にがむしゃらに生きてみたい…
……なんて事を、これっぽっちも思わなかった。
自分を犠牲にしてまでそんなくだらない事に必死になるなんて、馬鹿みたいに思えた。
だけどどうしてか、先輩の目を見ていると、そんな俺の本心を見透かして嗤っているように見えて、何となく不気味だった。
「なぁ〜、シュンタロォ〜。ウチとセックスしよーぜ」
「嫌です。先輩、臭いので」
「はぁー?何だテメェ、人を臭いで判断すんなし」
「いや、アンタ本当に臭いですよ。その服、もう何日も洗濯してないでしょ。あとアンタ、寝不足のせいで5、6歳は老けて見えるんですよ」
「おっほぉ、テメェ後輩の分際で先輩にえらい口利くじゃねーの。決めた。ウチ、オシャレして誰よりも可愛くなってやる。せいぜい発情すんなよ?」
弥子先輩は、何故か俺によく絡んできた。
兄の栗原教授に似て馴れ馴れしくて、ふざけてるくせに自分の理想に一途で、不器用な人
価値観も、生き方も、何もかもが噛み合わない俺に対しても、嫌な顔をせずに向き合ってくれた。
俺は、そんな先輩の事が苦手だった。
「シュンタロ〜、コンビニ行くついでにさ〜、ウチと結婚しよーぜ。ゼッテー幸せにすっからよ」
「他当たって下さい」
「即答かよ〜!お前はホント可愛くねーな、シュンタロー…けど、お前が本当はいい奴だって事、ウチは知ってるよ」
この人が俺の何を知ってるっていうんだか。
そんな言葉、真に受ける方がどうかしてる。
馬鹿馬鹿しい。
人の事なんかわからないし、わかりたくもない。
「別に、人に興味なんか無くていいんじゃねーの?モテたいだけのオレでも医者になれたんだから。ただ…
教授は、人に興味を持てない俺に対してアドバイスをしてきた。
あの人は、普段はおちゃらけているくせに、人にものを教える時だけは真剣な表情で芯食った事を言う人だった。
「…何ですか?先生にとって、命懸けで守りたいものって」
「……さぁな。お互い、見つかるといいな。命を懸けてでも守りたいと思える、『何か』が」
俺は、教授の価値観にだけは、到底共感できなかった。
だけどあの人の事は、尊敬できる数少ない相手だと思っていた。
あの日までは。
あれは、俺が『今際の国』に迷い込む2年前の事だった。
栗原教授が、医療事故の責任を取らされて医師免許を剥奪された。
調べてみたら、その事故は、教授がするはずのないミスだった。
栗原教授は、強い正義感を持った人だった。
医師会のお偉い方々にとってあの人は、医療業界に革命を起こし得る逸材であると同時に、自分達の地位を脅かしかねない邪魔な存在でもあった。
あの人は、嵌められたんだ。
教授だけじゃない。
あの事故をきっかけに、弥子先輩までもが壊れた。
あの人は、兄が嵌められたショックからか、それとも兄の冤罪で自分まで白い目で見られる事に耐えかねたのか、自宅のアパートの階段から飛び降りた。
辛うじて命は取り留めたものの、病院に搬送された時点で意識不明の重体だったらしい。
薄暗い病室で、痩せ細った身体にチューブを繋がれて、いつ消えるかもわからない命を繋ぎ留められている。
今も、あの人の意識は戻らない。
一人でも多くの人の命を救う医者になるんだって息巻いてた結果がこのザマだ。
教授とは、それから一切連絡を取っていない。
…というか、向こうから一方的に音信不通になった。
兄妹揃って、真面目に生きて破滅した。
俺は、あんなくだらない生き方だけはしない。
真面目に生きてる奴なんか、ただのバカだ。
「後輩君…君はなぜ、平気でいられるんだ…?オレは……心が折れずには、いられなかった…」
『今際の国』に来て一月経とうとしていた頃、何の因果か栗原教授に出会った。
教授は、すっかり頬が痩け、老け込んで、大学にいた頃の面影はどこにもなかった。
知らない人間に50代と言っても信じてしまいそうな程の老け方だった。
上司に嵌められて医師免許を剥奪され、それが原因で妹が昏睡状態に陥って、余程心労が祟ったんだろう。
先生は医師会の闇に失望し、もう信用を取り戻す気力も残っていなかった。
俺はこの4年間で、学んだ事がある。
それはこの兄妹が、今まで出会った人間の中でダントツのバカだという事だ。
頭が良すぎるから、世の中の矛盾を、理不尽を見過ごせなかった。
真面目すぎるから、利口な生き方ができなかった。
優しすぎるから、心が保たなかった。
先生は、元の世界で医者に失望したくせに、『げぇむ』で致命傷を負った滞在者を治療していた。
元の世界でも、あの人はそうだった。
どうせすぐに死ぬ奴だろうと、凶悪犯だろうと、自分を犠牲にしてまで救ける人だった。
だから摩り切れた。
それなのに、懲りずにどうでもいい奴を救けた。
俺には、理解できなかった。
あの人の、泥臭くて頭の悪い生き方を。
◆◆◆
クリハラside
俺には、12歳離れた妹がいた。
アイツは…弥子は、自分が俺と比べられる事に、ずっと苦しんでいた。
苦痛の原因の俺が手を差し伸べたら、余計に弥子を苦しめると思ったから、アイツが本当に辛い時、何もしてやれなかった。
けどアイツが輩にボコボコにされてた時だけは、兄貴として、アイツを守ってやらなきゃと思った。
弥子が変わったのは、その日からだった。
アイツが俺のような医者になるって言い出した時は、夢を見てるんじゃないかと思った。
俺は、精一杯アイツの夢を応援した。
アイツが医大に合格した時も、国試に合格した時も、思いつく限りの祝福をして、知り合い皆に自慢をして回った。
俺にとって弥子は、世界でたった一人の、自慢の妹だった。
アイツは…俺さえいなければ、幸せになれるはずだったんだ。
俺がやってもない罪で裁判にかけられていた時、弥子がアパートの階段から落ちて重傷を負った。
噂じゃ、俺が医師会のジジィ共に嵌められたショックや、俺のせいで周りから冷たい目を向けられて積もりに積もった心労で、飛び降り自殺を図ったんじゃないかって話だった。
図太いアイツが自殺をするなんてにわかに信じられなかったが、タイミングを考えれば辻褄は合う。
俺が、アイツの心を殺した。
俺はずっと、アイツを応援したつもりになって、アイツの心を殺し続けてた。
「ねぇ…別れるって、どういう事…!?アンタまさか…私達の事、迷惑だって思ってる…!?」
「……そうじゃねぇよ」
「だったら、お願いだから考え直してよ…!私にできる事があったら何でもするから!」
「違うんだよ…お前達は何も悪くない…これは、オレ個人の問題なんだ…頼むよ…お前達を巻き込みたくない。わかるだろ…?」
俺はある日、妻に離婚を申し出た。
妻には猛反対されたが、俺と一緒にいる事で娘がどんな目に遭うかを時間をかけて話したら、最後には離婚に応じてくれた。
「パパ……」
「夏凰…ごめんな…パパはもう、家には帰れないんだ。これからはママの言う事をよく聞いて、いい子にするんだぞ」
「なんで!?やだよ…なんでパパ行っちゃうの!?行っちゃやだ!!」
「……ごめんな…本当にごめん…」
「やぁだぁああ!!なお、いい子にするから!!悪いとこ全部直すから!!もう本もお菓子も買ってって言わないから!!行かないで…パパ行かないで!!」
俺は、泣き喚く娘に背を向けて、逃げるように家から出て行った。
妻も娘も、俺には勿体ないくらいに出来た奴等だった。
だからこそ、一緒にはいられなかった。
俺が離婚したのは、マスゴミ共の追及から妻と娘を守る為でもあったが、もう一つの理由があった。
離婚して妻や娘との繋がりを完全に絶った俺は、犯罪組織に闇医者として雇われた。
俺が闇医者になったのは、昏睡状態になった妹を治す為だ。
合法的な手段に頼ってちゃ、弥子は治せない。
正規の医者なんか、頼りにならないし信用できない。
かと言って、今の俺には、技術も、知識も、金も、何もかもが足りなかった。
だから薬物の取引や臓器売買に加担して必要な設備と資金をかき集め、失敗しようが誰も困らない凶悪犯を、弥子に施す手術の実験台にした。
「弥子…お前の事は、兄ちゃんが絶対治してやるからな。どんな手を使ったとしても……」
散々手を汚した。
俺は死んだら、きっと地獄に堕ちる。
そんな事は、どうだっていい。
元はといえば、アイツは俺のせいで苦しんだんだ。
弥子が助かるなら、たとえ死刑になっても構わない。
アイツを救う為なら、俺は悪魔にだってなってやる。
だがどれだけ悪事に手を染めても、弥子を救う方法は見つからなかった。
人を救う為に人を壊す自己矛盾が、俺の目を次第に曇らせていった。
何の為に生きているのか、わからなくなった。
俺は結局…何がしたかったんだっけ。
「ここか…」
文京区の最高裁判所に来た俺は、その上に浮かんでいる『
『
だから『
だが『
「…………」
会場には、まだ誰も来ていない。
俺が『
何故だか、足が竦んで動かなかった。
今更、『げぇむ』で負けて死ぬリスクなんて怖くねぇ。
だったら何故、足が動かない…?
「…ははっ」
…そう、か……
俺は、自分の為だけに、人を殺すのが怖いんだ。
アユミの時は、他の奴等が全員死ぬって知らなかったから、全力で挑めた。
ヒミコの時も、アン達を助ける為に、ヒミコを殺す事を選んだ。
だけど『
俺にはまだ、他の4人を犠牲にしてまで生き残れる程、自分の命に価値を見い出せそうにない。
俺とした事が、情けねぇ。
命の天秤を前にして、ビビり散らかしてやがる。
こんな状態で挑んだって勝てそうもねぇし、皆に迷惑をかけるだけだ。
俺は、深くため息をついてから、『げぇむ』会場に背を向けた。
……俺はまだまだ、『
◆◆◆
『ぷれいやぁ』side
『げぇむ』『まあじゃん』
難易度『
2着以下は『げぇむおおばぁ』。
・半荘戦
・25000点スタート
・完全先付け(食いタン、後付けなし)
・ダブロン、トリプルロンあり
・裏ドラ、カンドラ、カン裏ドラあり
・赤ドラあり(マンズ×1、ピンズ×2、ソーズ×1)
・パオあり
・南場は親がノーテンでも連荘
・ツモ平和なし
・フリテンリーチ、見逃しは流局後チョンボ
・同巡ツモ和了なし
・オーラスの親の和了やめあり
・ぶっとびあり(持ち点が0以下で終了)
・1000点未満はリーチをかけられない(リーチをかけて持ち点が0の場合、流局後全員テンパイならぶっとび)
俺は今、『
『
俺の右隣に座っている『
『
暴力団代打ち
フリーで鳴らした程度じゃ、『
ただでさえ格が違うのに、関西ルールが俺達関東人を余計にやりづらくしてる。
オレの生き残る道はもうない…
だったらせめて、現状
俺は、左隣に座る金髪の男に目を向けた。
この男は、55100点を獲得していて、現状
しかしこの男…『
何者なんだ…!?
◆◆◆
アモンside
ワテは、牌山から牌を一枚引いて、引いた牌を見た。
ほーか、ここが入ってきてくれよるか…
マンガン確定やが、
高目
高目の直撃でも、逆転
「勝負は、下駄を履くまでわからへん…これやから、
「立直や」
ワテは、
ワテが立直すると、右隣の『ぷれいやぁ』が涙目になりよる。
えらい分かりやすい奴っちゃなぁ。
10巡目。
ドラは切れへんし、勝負に出て振り込めば、一発でワテの逆転勝ちとあらば、1着目の兄サンの一手は、無難に現物での…
ベタ降り…!
兄サンは、
これでこの局、ワテがツモ
「安全思考の合理主義者かいな。リスクをとれんとバクチには勝てまへんで」
一発ツモは、なしかいな。
残り7巡。
急ぐ事はおまへん。
11巡目。
兄サンは、迷わず
今度は一転して、ド本命の当たり牌やと…?
裏ドラが乗ればハネマン直撃で逆転…
けども、もし裏が乗らへんだら逆転には届かず『げぇむ』終了。
まだ残りの山に
確率から考えても、ここは見逃して8
これで
大した痛手にはならしまへん。
ワテは、牌山から牌を一枚引いた。
ワテが引いたんは、
ほれ、来たがな。
これで高目ツモ……
……いや、『同巡ツモ
…ワテに有利なはずの
ほーか、ほんなら次巡でよろし。
次巡でツモれば問題あらしまへん。
12巡目。
兄サンは、またしても
「あれ?もしかしてさっきから、これが当たり牌だったりするの?だったらさっき
…ほう…か……これが…
これが、狙いやったんでっか…
ワテは、牌山から牌を一枚引いた。
今度は
また、
今後ワテがどんだけ
『同巡ツモ
ワテは、引いた
その後も兄サンは、ワテの
そしてワテのツモが最後になる17巡目。
「この巡で…アンタのツモは最後だね」
そう言うて兄サンは、
これ…で、7連続
…認めまひょ。
兄サンが一流の
せやかて兄サンの手もノーテン。
この勝負、一本場で次に持ち越すだけでっせ。
ワテが
ソイツは、現状最下位の『ぷれいやぁ』やった。
「あ…出た…それ…ロンです…国士無双…32000点です…」
……………。
……………。
……あ?
今、何を言うた?
「……あ゛?国士?」
裏返された牌は、全部
「オドレがここで32000点を
《『げぇむ』が終了しました》
「せやのに……役満…やと?オ…オドレ…」
アナウンスが鳴り響き、床がピシッと割れる。
何でや…
コイツ…コイツ…!!
《2着以下の方は全員、『げぇむおおばぁ』》
「どこで運使っとんじゃあああああ!!!」
――ガコッ!!
◆◆◆
チシヤside
《
床が抜けて、俺以外の参加者3人は、奈落の底に落ちていった。
俺は、『
裏ドラは、
「裏ドラは…
俺は、手の中で牌を転がしながら、奈落の底に落ちていった『
「所詮は安全思考の合理主義者か。リスクをとれなきゃ
――あはぁ、相変わらず弱っちいね。シュンタロー♪
…つまらなかったな。
命懸けの勝負だったというのに、栗原先生や弥子先輩との缶コーヒーを賭けた緩い勝負の方がよっぽど面白かった。
俺が初心者だったとはいえ、結局先輩にだけは、一度も勝てなかった。
あの出来事のせいで、俺が先輩に勝つ事は永遠に叶わなくなった。
『今際の国』の国民との対人戦っていうくらいだから、もう少し楽しめると思ったんだけどね。
どうせなら
「ここにも…面白い奴はいなかったね。やっぱり…行ってみようか。彼の元へ♪」
俺は、卓上に並べられた麻雀牌を倒してから、『げぇむ』会場を去っていった。
◇◇◇
俺が次に向かったのは、文京区の最高裁判所…『
俺が『げぇむ』会場に向かうと、既に会場の前に3人集まっていた。
スーツを着た男と、レインコートを着たジーサンと、派手な格好の女の3人だ。
てっきり、先生が来てるものかと思ってたけど…来てないんだね。
「数字を1つ、言うてみい」
「何…?」
「何桁でもええ、好きな整数を1つ言えと言うとるんじゃ」
「…9517。我々が元の世界に最後にいた日の日経平均株価だ」
「307×31……9517=307×31。2以上の全ての整数は、有限個の素数の積で表す事ができるんじゃ。『
「お!ケーサンならアタイも得意だぜ!つってもトイチだけだけど。あー、つまり年利365%ね。きゃは」
3人が集まって話しているところへ、俺が一歩前に近づいた。
すると他の3人が、俺の方を見る。
「これで4人じゃな」
「おーっと、その前に!アンタ、何してた人?何できる人?アンキ?ケーサン?今からやんのは知能戦のテッペン、『
女は、俺を指差して言った。
少なくとも君よりはやれる事多いと思うよ、と言いたいところだったけど、やめておいた。
「んー、つい今し方、『
「は?何それ?チョースベってんですけどっ!?」
「威勢が良いのう…雨脚がも強くなってきた事じゃし、行こうかの」
俺が言うと、女が呆れ、ジーサンが笑った。
もう1人の男は、俺の発言に特に反応せずに先に『げぇむ』会場へ向かった。
その途中、俺に何ができるかを尋ねた女が俺を一瞥してから言った。
「アタシ、てっきり医者のオジサンが来ると思ってたんだけどな」
「医者…?」
「『
「…ほう、計算でワシと張り合える奴がまだこの国におったとはな。ワシもソヤツに会ってみたかったわい」
……へぇ。
彼女、『げぇむ』で先生に会ってたんだ。
この世界も、案外狭いもんだね。
俺は傘を閉じ、他の3人と一緒に裁判所に入った。
裁判所の中は薄暗く、冷たく重い空気が漂っていた。
一番奥の部屋へ進むと、巨大な天秤が設置された席が5つ、環状に設置されていた。
出入り口から一番遠い席には、見知った男が座っていた。
「やっぱり、アンタだったんだね。
『
国際弁護士
『ねくすとすてぇじ』開催6日目
『げぇむ』 残り4種
『ぷれいやぁ』 残り95人
『
平均値にかける0.8が、『ぷれいやぁ』が『げぇむくりあ』する確率だと考えれば、クズリューに対して『ぷれいやぁ』が4人で挑む事に意味があるのかなって思ったので。
あとは単純に、追加ルールが思いつかなかったっていうのもありますが。
クリハラおじさんの妹は、『
♢6のババァといいクイナといいダイモンさんといい、チシヤにはクセのある女性しか寄ってこない呪いでもかかってるんでしょうか。