Hedgehog in Borderland   作:M.T.

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くらぶのくいいん(2)

ヘイジside

 

 『げぇむ』『いすとり』。

 難易度『♣︎Q(くらぶのくいいん)』。

 

 参加者は、5人1組のチームを作る。

 制限時間は10分間。

 制限時間内に会場内に隠された『いす』を探し出し、着席する事ができれば、次のターンに進める。

 10分の間に、会場内に隠された『きばくすいっち』を最初に押した参加者は、指定した『いす』を爆破できる。

 『きばくすいっち』が押されなかった場合は、ランダムに『いす』が5つ爆破される。

 

 制限時間終了後は、必ず自分のチームの『ぽおる』に触れなければならない。

 『ぽおる』に触れなければ、次のターンで『いす』に着席できない。

 なお、『いす』を持ったまま『ぽおる』に触れる事は不可。

 

 生存者が1名以下になったチームは、その時点で『げぇむおおばぁ』。

 最後に残った1チームのみが『げぇむくりあ』。

 

 禁止事項は3つ。

 制限時間終了時点で、前回のターンと同じ『いす』に着席していた場合。

 腕輪を故意に外した場合。

 着席していない参加者を殺害・拘束等により自力で移動できない状態にした場合。

 

 

 

「準備時間…か」

 

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』ことイバラの『げぇむ』に参加した俺達は、5人でチームを組んだ。

 最後に残った1チームだけが生き残る…つまり俺達は、たった今運命共同体になったって事だ。

 

 

 

 真昼(マヒル)祐二(ゆうじ)

 旅人

 得意ジャンル 『♣︎(くらぶ)』(バランス型)

 

 

 

 北句(ほっく)平治(ヘイジ)

 大学院生

 得意ジャンル 『(はあと)』(心理型)

 

 

 

 小鳥遊(たかなし)火鶴(ヒヅル)

 中学生 総合格闘家

 得意ジャンル 『♠︎(すぺえど)』(肉体型)

 

 

 

 栗原(クリハラ)鳳正(ほうせい)

 闇医者

 得意ジャンル 『(だいや)』(知能型)

 

 

 

 大那(ダイナ)智秋(ちあき)

 風俗嬢(元AV女優)

 得意ジャンル 『(はあと)』(心理型)

 

 

 

「『げぇむ』会場の地図です。30分の間に頭に叩き込んでおいて下さいね」

 

 そう言ってイバラは、モニターに『げぇむ』会場の地図を表示した。

 『げぇむ』会場は、この教会の敷地内の森林公園だ。

 俺達5人は、教会の空き部屋に集まって作戦会議をした。

 ヒヅルとダイナは、空き部屋で何かをゴソゴソと漁っていた。

 

「さて…まずは『げぇむ』が始まってから、各自がどう動くかを決めておこうかい」

 

「『いす』を出来るだけ多く確保する『いす』重視の戦略を取るか、『きばくすいっち』を押す事を優先する『きばくすいっち』重視の戦略を取るか…それだけでも取れる行動の選択肢が変わってくるね」

 

 クリハラさんとマヒルさんが話し合っていると、教会の食糧庫にあった食糧を盗み食いしていたダイナが話に加わってくる。

 

「そんなの、決まってるじゃないですか。『きばくすいっち』を押しまくってジャンジャン『いす』を爆破しまくる。これしか私達が生き残る道はありません」

 

 ダイナが言うと、クリハラさんが呆れ返ったような表情を浮かべる。

 

「おいおい…お嬢ちゃん。話聞いてたか?『いす』に座れなきゃ『げぇむおおばぁ』なんだぞ?『きばくすいっち』を押したからって、敵に『いす』を取られちゃ意味ねーじゃねーか」

 

「『いす』をできるだけ多く確保して守りを固める…そんなのは誰でも思いつく。だからこそ『♣︎Q(くらぶのくいいん)』は、高確率で、呑気に『いす』を守ってられないくらいにオレ達のチームワークを掻き乱してくる。この『げぇむ』は、攻める度胸がないって思われたら終わりなんだよ」

 

 クリハラさんが言うと、医務室から薬品を調達してきたヒヅルが会話に加わってくる。

 

怪物(バケモン)には怪物(バケモン)をぶつけんだよ。ここをぶっ壊さなきゃ、アイツらには勝てないよ」

 

 ヒヅルは、自分の頭を指差しながら言った。

 

「そーでしょ、ヘイジ」

 

 ヒヅルは、俺の方を振り向いて同意を求める。

 怪物(バケモン)には怪物(バケモン)をぶつける…か。

 自分が怪物(バケモン)にならなきゃ、怪物(バケモン)には勝てない。

 今までの絵札戦は、全部そうだった。

 壊れろ。

 自分でも歯止めが効かないくらいに、ぶっ壊れちまえ。

 

「……悪い皆。『♣︎Q(くらぶのくいいん)』をぶっ倒す為に、死んでくれ」

 

 俺は、口角を上げながら言った。

 自分でも、最低な事を言ってるってわかってる。

 …それでも、仲間を守る事だけに捉われてちゃ、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』には勝てない。

 

「あはっ♪いいねそのイカレ具合。っしゃ、乗った!」

 

「悪いなんて思ってない。オレは、自分の足でここに来たから」

 

「そうでなきゃ面白くありませんよね」

 

「ヘイジ君…君、しばらく見ない間にだいぶ変わったね」

 

 俺が言うと、他の4人は迷わず俺に賛同した。

 マヒルさんは、オレ達のチームの作戦を話す。

 

「それじゃあ、最後に確認しておこう。僕達のチームの取る策は、『きばくすいっち』重視。…で、いいね?」

 

「『きばくすいっち』を押したら、とにかく何でもいいから迷わず『いす』を爆破する。最悪、オレ達のチームが見つけた『いす』でもいい。とにかく他のチームに考える時間は与えない」

 

「『いす』と『きばくすいっち』を探す係が3人、見つけた『いす』を守る係を2人決めようか」

 

「待てよ。『きばくすいっち』重視なんだろう?だったら『いす』を守る奴は1人でいい」

 

 マヒルさんが言うと、クリハラさんが口を開く。

 

「クリハラさん…」

 

「『いす』を守る役はオレがやる。オレはお前らみたいに飛んだり跳ねたり出来ねぇからよ。オレ様の頭脳にかかれば、『いす』を守るくらいは朝飯前だ。()()をぶっ壊すんだろう?」

 

 クリハラさんは、頭を指差しながら言った。

 

「やるからには勝つぞ!!」

 

 クリハラさんが拳を挙げながら言うと、俺達は拳を上げて互いに軽くぶつけ合った。

 その時に俺は、考えていた事をクリハラさんとマヒルさんに話す事にした。

 

「…クリハラさん、マヒルさん。オレ、ひとつ考えてる事があるんですけど…」

 

「何だ、言ってみろ」

 

 俺が言うと、クリハラさんが俺の方を振り向く。

 俺は、この『げぇむ』を攻略するのに必要な事を他の4人に話した。

 

「確かに…やってみる価値はありそうだね」

 

「そいじゃ、この準備時間中にやれる事はやっとくか」

 

 マヒルさんとクリハラさんは、俺の提案に賛成してくれた。

 俺達は、この『げぇむ』を『くりあ』する為に、30分という時間を有効に使った。

 ちょうど30分が経過すると、イバラがパチンと銀時計を閉じながら口を開く。

 

「時間です」

 

 俺達は、イバラに連れられて教会の外に出た。

 教会の裏には、石柱が5本立っていた。

 それぞれの石柱には、目印がついていて、どれが自分達の『ぽおる』かわかるようになっている。

 

 教会の裏の花壇には、色とりどりの花が咲いていた。

 特にバラは、白に黄色、オレンジ、ピンク、緑、薄紫と、いろんな色があった。

 花壇のバラを見た瞬間、俺はある違和感を覚えた。

 

「あれ…?」

 

 一瞬、違和感を覚えつつも、俺は特に深くは考えなかった。

 とりあえず俺達は、まず自分達のチームの『ぽおる』に触れた。

 すると腕輪の表示が、『待機中』からタイマーの表示に変わる。

 

《それでは、『げぇむすたあと』》

 

 『げぇむすたあと』と同時に、教会の鐘が鳴った。

 それと同時に、俺達は散り散りになって森の中を探した。

 早く『いす』と『きばくすいっち』を探さないと…!

 

 『いす』を探し始めて1分半が経った頃、腕輪から声が聴こえる。

 

『皆、『いす』1つ見つけたよ』

 

「マヒルさん…!」

 

 なるほど…

 腕輪が通信機器になってて、味方と通信できるようになってるのか…

 

「凄いですね、この短時間で…」

 

『伊達に元『ビーチ』No.3をやってないよ。それより、『いす』に一定距離近づくと腕輪が振動する仕組みになってるみたいだから、探す時は腕輪に注意するといい』

 

 えっ、イバラの奴、『るうる』説明の時そんな事一言も言ってなかったような…?

 『♡K(はあとのきんぐ)』の時みたいな『裏るうる』かよ…

 …まあいい、せっかく有益な情報を得られたんだ。

 マヒルさんには感謝しないとな…

 

 それからしばらく探していると、腕輪が振動した。

 この近くに『いす』があるって事か…

 俺は、腕輪の振動を頼りに、『いす』を探した。

 探し続けてようやく、『13』と書かれた『いす』を見つけた。

 

「あった、『いす』…」

 

 俺が『いす』を回収しようとした、その時だった。

 他の『ぷれいやぁ』が俺の目の前に現れて、『いす』を掻っ攫っていった。

 

「あっ…!」

 

 俺が『いす』を攫った『ぷれいやぁ』を追いかけようとしたその時、別の『ぷれいやぁ』が俺に殴りかかってくる。

 その隙に『いす』を攫った『ぷれいやぁ』は、器用に木の上に登って逃げた。

 

「ヒャハハハ、まんまとかかりやがった!」

 

「こっちだぜノロマちゃん!」

 

「お前ら…『いす』を餌にしたのか?」

 

「ご名答♡」

 

 俺が尋ねると、俺に殴りかかってきた奴がニヤニヤと笑って答える。

 

「オレ達の『いす』を見つけてノコノコ現れた他のチームの奴を袋叩きにする。そういう算段だ」

 

「覚えとけ、甘ちゃん。大事なのはチームワークだ」

 

「油断してる方がワリーんだよ!じゃあな!」

 

 そう言って2人は、走り去っていく。

 …確かに、アイツらの言う通りだ。

 この『げぇむ』は、チームワークが要だ。

 それに今のに関しては、完全に油断してた俺が悪い。

 『いす』を餌にするのだって、立派な作戦だ。

 アイツらを責めるのはお門違い……

 

 ……冷静になれ、俺。

 この『げぇむ』に勝つために一番大事な事は、アイツらに目にものを見せる事じゃない。

 俺達が倒さなきゃいけないのは、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』だ。

 こんな小物に、ムキになっちゃいけない。

 それよりも今は、『いす』を確保する事だけを考えないと。

 

「あった、『いす』…!」

 

 森を探し回って、俺はようやく『いす』を一つ見つけた。

 俺が『いす』を見つけると、ダイナが木の影から現れる。

 

「ヘイジ君、こっち」

 

 走ってきたのか息を切らしたダイナは、俺に手招きしてくる。

 俺は、ダイナのいるところまで行くと、敵チームの奴等が近くにいない事を確認してから、ダイナと一緒に移動した。

 俺とダイナは、『いす』を守ってくれているクリハラさんのところへ向かった。

 俺は、ダイナが自分の『いす』を持っていないのが気になった。

 

「お前、自分の『いす』は?」

 

「もう確保しました。今は、クリハラさんに預けてあります」

 

「そうか…」

 

 俺が尋ねると、ダイナが答える。

 さっきマヒルさんとクリハラさんは自分の分の『いす』を見つけたから、俺達のチームの『いす』は4つ。

 このターンを生き残るには、あと1つ確保しないといけない。

 

「じゃあ、オレの分の『いす』も確保しないとな」

 

「あなたが今持ってるそれは?」

 

「これはヒヅルの分の『いす』だ。オレの分はまだ見つけてないから、これから探すよ」

 

「まあ、紳士♡」

 

 俺が言うと、ダイナは目を輝かせてときめく。

 俺の発言が、ダイナの琴線に触れたんだろう。

 ダイナは、軽やかな動きで木の枝を掴むと、そのまま数メートル離れた場所へと着地した。

 

「それじゃ、私も探すの手伝いますよ。ヘイジ君には死んでほしくないので。残りの『いす』はどっちが先に見つけられるか、競争しましょ」

 

 そう言ってダイナは、俺に向かってウインクした。

 俺は、わかりやすい挑発をするダイナに応える。

 

「…望むところだ」

 

 俺とダイナは、どっちが先に『いす』を見つけられるか競争した。

 競争に意識が向いているからか、探してもなかなか見つからなかった『いす』は、1分もせずに見つかった。

 これで人数分の『いす』が揃った。

 あとは全員が『いす』に座るだけだ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヒヅルside

 

「あった……」

 

 俺は、森を探し回って、ようやく『きばくすいっち』を見つけた。

 

「あった…けど……」

 

 『きばくすいっち』があるのは、崖の下。

 ここからどうやって押しに行こう…

 そう考えていると、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームのユリアと、他のチームの『ぷれいやぁ』が、俺より先に『きばくすいっち』を押そうとする。

 

 …まずい。

 せっかく見つけた『きばくすいっち』を、奴等に押されるわけにはいかない。

 もう、行き方とか迷ってる場合じゃない。

 俺は、助走をつけて走ると、思いっきり崖から飛び降りた。

 

「やあああっ!!」

 

 崖から飛び降りた俺は、空中で体勢を整えて落下のスピードを落とし、そのまま『きばくすいっち』を踏んづけて押した。

 俺が『きばくすいっち』を押すと、ちょうど『きばくすいっち』を押そうとしていたユリアが驚く。

 

「嘘…!?何mあると思ってんのよ!?」

 

 崖から飛び降りて『きばくすいっち』を押した俺を見て、ユリアはわなわなと震えながら言った。

 ふと『きばくすいっち』を見ると、俺が押したスイッチは赤く光っていた。

 液晶画面がついて、数字がルーレットみたいに素速く変わったかと思うと、『3』で止まる。

 その下には、『いす』の番号を指定するボタンがあった。

 この『3』ってのは…『いす』を3つまで指定して爆破できるって事…?

 だったら……

 

「どけ!!」

 

 俺が爆破する『いす』の番号を指定しようとしたその時、俺より先に『きばくすいっち』の前まで辿り着いていた『ぷれいやぁ』が、俺を押しのけてきた。

 何なの、コイツ…

 

「ねえ、オレがボタン押したんだけど…」

 

「知るかよ!ボーッとしてんのが悪いんだ!そもそも、先に見つけたのはオレだぞ!!」

 

 は…?

 先に見つけたとか、関係あんの?

 ボタンを押して『いす』を選ぶ権利を手に入れたのは俺だって話をしてんだけど…

 

「へへっ、悪いなお嬢ちゃん。オレ達も、生き残るのに必死なんだよ」

 

 そう言ってソイツは、俺が操作しようとした液晶画面に触れようとする。

 するとその時、ユリアがソイツに向かって叫んだ。

 

「無駄よ!」

 

「あ?」

 

 男は、ユリアの忠告を無視して『きばくすいっち』に触れようとする。

 そしたら、男のつけていた腕輪から、激しく音と火花を立てて気を失う程の高圧電流が流れる。

 

「があああああっ!!!」

 

 電流を喰らった男は、全身に軽度の火傷を負ってのたうち回る。

 それを見たユリアは、ため息をついてから男を見下して言い放つ。

 

「…あーあ、だから無駄だって言ったのに。『きばくすいっち』は、最初に押した人以外が触ろうとすると、腕輪に高圧電流が流れるようになってるの。そうでなきゃ、『げぇむ』にならないでしょ?」

 

「クソ…が……」

 

 ユリアが男を見下して立ち去ると、男はゆっくりと立ち上がりながら、ユリアを恨めしそうに睨みつける。

 俺は、『るうる』違反をして自滅したソイツに向かって、ボソッと小声で言い放つ。

 

「だっさ」

 

 俺は、勝手に自滅したソイツに背中を向けて、『きばくすいっち』の液晶画面を操作する。

 えっと……『7』、『15』、『24』…っと。

 俺が『いす』を指定すると、指定した『いす』に爆弾マークが現れる。

 さて…と。

 そろそろ着席しに行かないと。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヘイジside

 

 ヒヅルが、『きばくすいっち』を押してくれた。

 全員分の『いす』も確保したし、これで1ターン目は大丈夫なはずだ。

 

「……ふぅ」

 

 俺達5人は、それぞれ自分の『いす』に座った。

 『いす』に座ると、腕輪の赤色のランプが緑色に変わる。

 

「着席が認められると、ランプの色が変わるんだね…」

 

「それなんだがよ。お前らが『いす』と『きばくすいっち』を探し回ってる間、オレとマヒルで色々実験しといたんだ。それで、わかった事がある」

 

 ヒヅルが腕輪を見ながら口を開くと、クリハラさんが俺達に話をした。

 クリハラさんが話してくれたのは、『いす』に関する詳しい『るうる』だった。

 まず、『着席』と認識されるのは、『いす』に両手の五指が触れた場合。

 10秒以上『いす』から離れると、着席が取り消される。

 2つの『いす』に触れた場合は、先に触れていた方の『いす』が着席判定になる。

 2人以上が『いす』に触れていた場合は、触れている面積が多い方が着席判定になる。

 

 俺が『るうる』を整理していると、ヒヅルが口を開く。

 

「ねぇ…そういえばさ。気になる事があったんだけどさ。さっき『きばくすいっち』を押した時、指定できる『いす』の番号が30まであったんだよね。これって、この会場に『いす』が30個あるって事だと思うんだけど…これっておかしくない?」

 

「確かに…椅子取りゲームって、普通は人数より椅子が少なくなるように配置するよな」

 

 椅子取りゲームなのに、人数より椅子の数が多いのはおかしい。

 あの女は、何の意味もなくこんな不自然な『るうる』にするような奴には思えない。

 …そもそも、人を弄んで楽しんでいるような奴が、何故『(はあと)』じゃなく『♣︎(くらぶ)』の『げぇむ』を担当しているんだ?

 奴をチーム戦の女王たらしめるものは、何だ…?

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』は…イバラは…一体何を()()()()()()()んだ…?

 

《制限時間になりました。1ターン目の生存者は、25名中25名》

 

 タイマーが0になると、アナウンスが鳴り響き、腕輪の表示が『待機中』に戻る。

 俺達は、自分達のチームの『いす』を隠してから、『ぽおる』を触りに教会の裏庭に戻った。

 1ターン目は、誰も死ななかった。

 …でも、問題はここからだ。

 

《ここで、1ターン目に『きばくすいっち』を押した方がおられます。今回爆破される『いす』は、『7番』、『15番』、『24番』》

 

 アナウンスが鳴った直後、森の奥で爆発音が聴こえる。

 ヒヅルが指定した『いす』が、爆破されたんだ。

 俺は、『いす』が爆破された瞬間、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームの子供達が反応したのを見逃さなかった。

 きっと、俺達が爆破した『いす』の中に、アイツらが手に入れた『いす』があったんだ。

 自分達のチームの『いす』を爆破されて、動揺するなというのは無理な話だ。

 

「順調…だよね?」

 

「ああ。次も、積極的に『きばくすいっち』を探していこう」

 

 ヒヅルが尋ねると、俺は頷いて答える。

 そろそろ、2ターン目が始まる。

 

《それでは、2ターン目を開始します》

 

 2ターン目の開始と同時に、鐘が鳴る。

 鐘の音を合図に、俺達は森の中へと駆け出した。

 2ターン目は、マヒルさんが『きばくすいっち』を押して、『いす』を2つ爆破してくれた。

 『いす』の隠し場所に集まった俺達は、ハイタッチをして喜んだ。

 

「っしゃあ!楽勝楽勝!」

 

 クリハラさんは、作戦がうまくいった事を喜んでいた。

 俺達のチームは、怖いくらいに順調に『げぇむ』を攻略していた。

 

「ちゃんと『いす』守っといてよ、クリハラさん。アンタの事は頼りにしてんだから」

 

「おうよ、任しとけ!」

 

 ヒヅルが周囲を警戒しながら言うと、クリハラさんがサムズアップをする。

 …だけど気味が悪いのは、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームだ。

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームはこの『げぇむ』は初めてだと言ってたけど、『げぇむ』自体はやり慣れてるはずだ。

 そんな奴等が、こうも簡単に俺達に抜け駆けされるものなのか…?

 2ターンも連続で何も仕掛けてこないとなると、流石に不安になってくるな…

 

《制限時間になりました。2ターン目の生存者は、25名中25名》

 

 制限時間が終わると、アナウンスが鳴り響く。

 俺達はこのターンも、『ぽおる』に触れる為に教会に戻った。

 『ぽおる』に触れると、腕輪に表示されていた『待機中』の表記が、タイマーの画面に変わる。

 

《ここで、2ターン目に『きばくすいっち』を押した方がおられます。今回爆破される『いす』は、『5番』『19番』》

 

 アナウンスが鳴った直後、森の奥で爆発音が聴こえる。

 マヒルさんが指定した『いす』が爆破されたんだ。

 

「これで『いす』はちょうど25個…」

 

「4ターン目からは、『いす』に座れずに脱落する人が確実に出てくるね…」

 

「あはっ、そうなったら『げぇむ』が面白くなりますね」

 

 ヒヅルとマヒルさんが神妙な面持ちで言うと、唯一ダイナだけは面白そうに言った。

 コイツ…この状況で何で『面白い』とか言えるんだ…?

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

スミレside

 

 私達は、3ターン目が始まる直前、『ぽおる』の前で話し合っていた。

 私達は、1ターン目で『いす』を一個爆破されちゃったから、あの後もう一個『いす』を探しに行った。

 1ターン目では、ユリアお姉ちゃんがあと少しのところで『きばくすいっち』を押せたはずだったんだけど、マヒルさんって人のチームにいるヒヅルちゃんって人に『きばくすいっち』を押されちゃったみたい。

 その事で、ヒエンお兄ちゃんが笑いながらユリアお姉ちゃんを笑いながら責めた。

 

「あーあ、向こうのチームにリードされちまったな。姉ちゃんが1ターン目で『きばくすいっち』を押し損ねるからだぜ」

 

「うるさいわね…あんな子供が崖の上から飛び降りてくるなんて、誰も思わないわよ」

 

 ヒエンお兄ちゃんがユリアお姉ちゃんを責めると、ユリアお姉ちゃんはため息をつく。

 ヒエンお兄ちゃんは、ユリアお姉ちゃんを責めてはいたけど、ケラケラ笑っていて、本気で責めてるわけじゃなくてユリアお姉ちゃんをからかってるだけだっていうのはすぐにわかった。

 ヒエンお兄ちゃん、昔からユリアお姉ちゃんに構ってもらいたいからって、イタズラばっかりしてたもんなぁ。

 ヒエンお兄ちゃんが笑いながらユリアお姉ちゃんをからかっていると、ヒナギクお兄ちゃんがヒエンお兄ちゃんに怒る。

 

「やめろヒエン。僕達の間に、争い事は無しだ。この国に迷い込んだ時から、そう約束していたはずだろう?」

 

「ははっ、悪かったよ。冗談だって。オレが本気で姉ちゃんを責めるわけないだろ?」

 

 ヒナギクお兄ちゃんが怒ると、ヒエンお兄ちゃんは笑いながら謝った。

 私は、さっきから聖書を読んでいるママのスカートの裾を掴んで話しかける。

 

「ねぇママ…あたし達、どうしたらいい?ママには、考えがあるんでしょ?」

 

 私が話しかけると、ママはパタン、と聖書を閉じた。

 そして何か考えがある様子で、クスッと笑った。

 

「……そうね。そろそろ…思い知らせてあげないとね。哀れな仔羊達に」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヘイジside

 

 3ターン目、俺のチームは引き続き『きばくすいっち』を探した。

 森の中を探し回る事3分弱、俺は『きばくすいっち』を見つけた。

 

「あった…!」

 

 俺が『きばくすいっち』を押そうとした、その時だった。

 

「ばあっ!」

 

「うわっ!?」

 

 突然、木の陰からスミレが現れて、俺を脅かしてきた。

 俺が驚いて思わず間抜けな声を上げた、その時だった。

 

「残念でした」

 

 岩の上からぴょんと飛び降りたヒナギクが、笑って『きばくすいっち』を押した。

 コイツら…いつの間に…!?

 

「イエーイ!」

 

 俺を脅かしたスミレは、笑顔でヒナギクとハイタッチをした。

 どうなってんだよ…

 人が通った痕跡なんか、どこにもなかったぞ…?

 コイツら、普通の子供じゃない…!

 

「驚いた?」

 

 突然後ろから声が聴こえて振り向くと、イバラが立っていた。

 イバラは、クスクス笑いながら俺に歩み寄る。

 

「すごいでしょ?何せ、()()()()()だもの…」

 

 イバラは、雨で地面がぬかるんでいるというのに、足音ひとつ立てずに笑顔で俺に歩み寄った。

 どう見ても動きにくそうなロングドレスにハイヒールのブーツで、軽やかな動きをしてやがる。

 コイツ…何者だ?

 

「…アンタ、本当は聖職者じゃなくて、殺し屋か何かなんじゃねーの」

 

「あはっ♪そう見える?」

 

 俺が尋ねると、イバラは無邪気に笑う。

 するとスミレがイバラに駆け寄り、ヒナギクもイバラに歩み寄った。

 

「ねえママ!あのね、お兄ちゃんが『きばくすいっち』押したんだよ!」

 

「スミレも手伝ってくれただろ」

 

「そう…2人とも頑張ったのね。すごいわ」

 

 スミレとヒナギクが言うと、イバラは2人の頭を撫でる。

 すると2人は、頬を緩ませて笑った。

 俺を出し抜いた後だというのに…俺達『ぷれいやぁ』を散々殺してきた『今際の国』の国民だというのに、無邪気に笑う姿は、本当にただの子供のようだ。

 

「じゃあね…()()

 

 イバラは、ハッキリと『譲治』、そう言った。

 譲治……?

 今、俺の方を見て言ったよな?

 

「譲治って…誰だ?」

 

 俺が言うと、イバラは僅かに目を見開いて口を開く。

 

「あら、そう言った?私が?」

 

 そう言ってイバラは、自分の子供2人を連れて去っていった。

 …って、早く『いす』に座らないと…!

 俺は、すぐにクリハラさんが守ってくれている『いす』に座りに行った。

 

「すみません…」

 

 『いす』に座った俺は、マヒルさんに謝った。

 今回のは、完全に俺のミスだ。

 

「気にする事はない。『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームが、僕達の有利を黙って見過ごすはずがない…そろそろ、仕掛けてくる頃だと思っていた。なのに、防げなかった。これは、僕達全員の責任だよ」

 

 マヒルさんは、ミスをした俺を庇ってくれた。

 俺達が、イバラ達に『きばくすいっち』を押されるのを防げなかったのは…単に俺達が油断していたからだ。

 あまりに緊張感のない『げぇむ』の雰囲気に呑まれて、忘れていたんだ。

 アイツらが、強敵だという事を。

 

《制限時間になりました。3ターン目の生存者は、25名中25名》

 

 このターンも、誰も死ななかった。

 俺達は、『ぽおる』に触れて腕輪のロックを解除した。

 

《3ターン目は、爆破する『いす』が指定されませんでした。よって、今回は『いす』をランダムに爆破します。今回爆破される『いす』は、『2番』、『9番』、『14番』、『21番』、『26番』》

 

 は……!?

 何で…

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームは、『きばくすいっち』を押したはずだろ…?

 自分のチームの『いす』が爆破されるかもしれないのに、何で…

 

「やられた…!」

 

 マヒルさんは、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームを見て冷や汗をかく。

 

「私達の『いす』も爆破されちゃいましたね」

 

「違う…問題はそこじゃない…!」

 

 ダイナが肩を落とすと、ヒヅルがモニターを睨みながら言う。

 俺達は、まだ気付いていなかったんだ。

 イバラの…奴等の本当の恐ろしさに。

 

 

 

 『げぇむ』『いすとり』

 

 難易度『♣︎Q(くらぶのくいいん)

 

 3ターン目 残り25名

 

 

 

 

 

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