Hedgehog in Borderland   作:M.T.

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くらぶのくいいん(3)

ヘイジside

 

《3ターン目は、爆破する『いす』が指定されませんでした。よって、今回は『いす』をランダムに爆破します。今回爆破される『いす』は、『2番』、『9番』、『14番』、『21番』、『26番』》

 

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームは、『きばくすいっち』を押したのに、爆破する『いす』の番号を指定しなかった。

 これでわかった事がある。

 『きばくすいっち』を押しても、『いす』を指定しない事もできる。

 自分のチームの『いす』が爆破される可能性だってあったのに、一気に『いす』の数を減らしにかかるなんて…

 アイツら、イカレてやがる…!!

 

 イバラ達が一気に『いす』を爆破したから、これで残りの『いす』は20個。

 次のターンで、最低でも5人の死者が出る。

 どこかのチームが脱落するって事もあり得る。

 

「…この『げぇむ』ってさ。参加するチームが取れる戦略って、攻撃型の戦略か、守備型の戦略か、どっちかだと思ってたけど…このターンでハッキリした。『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームは、謂わば究極の攻撃型。味方の損害を顧みず、他のチームから強引に『いす』を奪う。それが奴等のやり方だよ」

 

「まるで特攻隊だな」

 

 ヒヅルが言うと、クリハラさんが呆れ返る。

 そう…か。

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームは、自分のチームの『いす』が爆破されようがされまいが、どっちでも良かったんだ。

 何故ならアイツらには、他のチームから『いす』を奪える自信があるから。

 

「ま…どっちにしろ、次のターンからは敵のチームから『いす』を奪う必要がある。敵の動きをよーく見とけ。じゃねーと死ぬぜ」

 

「やっと『げぇむ』っぽくなってきましたね♪」

 

 クリハラさんがココアシガレットを咥えながら言うと、ダイナが面白そうに笑う。

 

《それでは、4ターン目を開始します》

 

 スタートと同時に、教会の鐘が鳴る。

 俺達は、顔を見合わせて頷くと、同時に森へと駆け出した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

『ぷれいやぁ』A side

 

「クソッ、クソックソッ…!!何なんだ!!」

 

 やられた…!!

 奴等、とうとう『いす』をランダムに爆破しやがった…!!

 自分のチームの『いす』が爆破されるかもしれねぇのにランダムに『いす』を爆破するなんざ、イカレてんのか…!?

 

「おい、これどうすりゃいいんだよ…!?」

 

「他のチームから『いす』をぶん奪るしかねぇだろ!お前はちゃんと『いす』守ってろよ」

 

「お、おう…」

 

 俺は、『いす』の守りを仲間に任せて、『いす』を探しに行った。

 もう『きばくすいっち』とか探してる場合じゃねぇ…!

 今はとにかく、『いす』を探さねぇと…!!

 

「あっ…」

 

 俺は、『いす』を探してる途中で、『きばくすいっち』を見つけた。

 だが『きばくすいっち』は、俺が最初にハメた男が先に押した。

 クソッ、どうなってんだあのチーム…!?

 2ターンも連続で『きばくすいっち』を押しやがって…

 奴等が噂の猛者『ぷれいやぁ』なのか…?

 って、早く『いす』を探さねぇと…

 

『うわああああああっ!!!』

 

 俺が『いす』を探していると、通信機から悲鳴が聴こえた。

 『いす』の守りを任せていた奴の悲鳴だ。

 ったく、何してんだアイツら…?

 

 嫌な予感がした俺は、急いで『いす』の隠し場所に戻った。

 …焦るんじゃねぇ。

 絶対に見つからねぇ場所に隠したんだ。

 この『いす』さえあれば、俺だけでも生き残れ……

 

「『いす』が…無い…!?」

 

 俺が『いす』を探しに行くと、隠しておいたはずの『いす』がなくなっていた。

 嘘だろ…!?

 そんなはずは…!!

 

「無い、無い、無い…!!クソッ、オレの『いす』が…!!」

 

 いくら探しても、俺が隠した『いす』はどこにもなかった。

 クソッ、誰かが俺の『いす』を盗みやがったんだ…!!

 けど、何で…!?

 『いす』は、絶対に見つからねぇ場所に隠した。

 誰かに『いす』を隠すところを見られてたわけでもあるまいし…

 

 クソッ、クソックソッ!!

 誰が盗みやがった!?

 絶対許さねぇ、ぶっ殺してやる…!!

 

「誰だァ、オレの『いす』盗りやがったのは!?出てこい、ぶっ殺してやる!!」

 

 俺が叫んだ、その時だった。

 ガサガサッと風の音とは違う物音が聴こえたから振り向いてみると、他のチームの奴等が俺の『いす』を運び出してやがった。

 クソッ…アイツらか。

 俺の『いす』を盗みやがったのは。

 

「おい、何してんだテメェら」

 

「ひっ、ひぃっ…!」

 

 俺が睨みつけると、ソイツらは悲鳴を上げて後退りした。

 バァカ、1人も逃がすかよ。

 大人しく『いす』を渡すまで半殺しにしてやる。

 俺がバカ共を捕まえようとしたその瞬間、いきなり木の上から女のガキが出てきて、俺に踵落としを仕掛けてきた。

 俺の行く手を阻んだメスガキは、俺の『いす』を盗みやがったバカ2人に声をかけた。

 

「行って!」

 

「は、はい…!!」

 

 メスガキが叫ぶと、2人は『いす』を抱えて走り去った。

 コイツら…何のつもりだ?

 メスガキとあの2人は、敵同士のはずだろ?

 俺の見間違いじゃなけりゃ、今コイツらが協力し合ったように見えたんだが…?

 

「おい。テメェ、何別のチームの奴助けてんだ」

 

「悪い?別に『るうる』違反じゃないよね?」

 

 メスガキは、ポケットに両手を突っ込んだまま、爪先でトントンと地面を蹴る。

 

「ちょっと反則っぽいけど、これも作戦のうちだから。アンタらにはここで脱落してもらう」

 

 そう言ってメスガキは、俺の後頭部に蹴りを入れてくる。

 そのまま後頭部を掴んで地面に叩きつけてきやがった。

 

「な…に、しやがる…この、クソガキがァ!!」

 

 俺は、いきなり頭を蹴りつけてきやがったクソガキの頭を殴りつけた。

 クソガキは、仰け反って仰向けに倒れ込む。

 倒れたガキの頭からは、ドロっと赤いものが流れた。

 

 殺し…てねぇよな?

 クソッ、手間かけさせやがって。

 

 俺は、倒れたガキの身体をチラッと見る。

 いい脚してやがる。

 ガキのくせに巨乳ぶら下げやがって。

 おまけに上玉ときた。

 こんな『るうる』じゃなけりゃ、さっさと『くりあ』してからヤろうと思ってたのによ。

 このターンで死んじまうんじゃ、しょうがねぇよな。

 悪く思うなよ、クソガキ。

 俺が他のチームから『いす』を奪いに行こうとした、その時だった。

 

 もう一度ガキの方を振り向くと、さっきまで地面に仰向けに伸びていたガキがいなくなっていた。

 いない…?

 どこ行きやがった…!?

 

「ぐふっ…!?」

 

 俺がガキを探していたその時、股間に衝撃が走り、耐え難い激痛が爪先から頭の天辺まで電撃のように走った。

 そして次の瞬間には、腹に鈍痛と衝撃が走る。

 数メートル吹っ飛ばされた俺は、背中を木の幹に勢いよく叩きつけられる。

 な、にが…起こっ…た……!?

 

「あ〜…痛かった」

 

 俺が血と胃液をぶち撒けながら顔を上げると、そこには、頭から血を流しながら笑うガキがいた。

 コイツ…俺の攻撃がまるで効いてねぇ…だと…!?

 このガキ、何かがおかしい…

 

「それじゃ、これからアンタらのお仲間の『いす』奪いに行くから。仲間を助けたかったら、オレを追いかけなきゃね」

 

 そう言ってガキは、木の枝の上に登って去っていった。

 …そう…か……

 このガキ…()()()()()()()()()()んだ…

 格の違いを見せつける為…俺の心を確実に壊す為に…

 

 生き残れるのは、1チームだけ。

 だからアイツらは、最初のターゲットに俺達のチームを選んで、叩き潰しに来たんだ。

 …けど、わからねぇのは、あのガキが他のチームの奴等を助けた事だ。

 最後に生き残れるのは1チームだけなのに、何で他のチームを助けやがった…?

 いや、そもそも、何で俺のチームを最初のターゲットに選びやがったんだ…!?

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

『ぷれいやぁ』B side

 

「うわああああああっ!!!」

 

 嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ…!!

 これは悪夢だ…!!

 

 散々ボコボコに殴られた俺達は、俺を追いかけてくるチビの女2人から逃げていた。

 俺のチームの『いす』を盗みやがった弱小チームを叩き潰そうとしたら、いきなり他のチームの女2人が現れて、女2人に呆気なくコテンパンにやられた。

 俺達を追いかけてきたのは、ショートヘアーの女のガキと、猫みてぇな髪型をしたチビの女だった。

 

 何で…!?

 何がどうなってやがる…!?

 何で他のチームの奴が、雑魚チームを助けたんだ…!?

 何であんな頭の悪そうな女2人から、俺らが逃げ回ってんだ…!?

 

 嫌だ、嫌だ嫌だ…!!

 死にたくない…!!

 逃げねぇと、アイツらに殺される……!!

 

 しばらく逃げていると、誰も守ってない『いす』が2つあるのに気がついた。

 あの『いす』を手に入れさえすれば俺達は助かる、そう思った次の瞬間だった。

 

 

 

 ――ズドッ

 

 

 

「「!!?」」

 

 いきなり足元の地面がなくなって、身体が宙に浮くような感覚を覚えたかと思うと、次の瞬間には地面に落ちていた。

 

 な…んだ…!?

 何が、起こった…!?

 

 ふと周囲を見渡すと、俺達2人は深い穴に落ちていた。

 

「な…んだこりゃあ…!?」

 

「落とし穴かよ…クソッ…『♣︎Q(くらぶのくいいん)』か…!?」

 

 こんなところに落とし穴があったのかよ…!!

 クソッ、誰がこんなしょうもねぇマネしやがった…!?

 俺達が混乱していると、穴の上から声が聴こえる。

 

「チッ、何だテメェらか。『♣︎Q(くらぶのくいいん)』用に掘った穴だったのによ」

 

 何とか穴から這い上がって見上げると、メガネをかけたオッサンが、『いす』に座って俺達を見下していた。

 コイツら…まさか……

 俺達を嵌めやがったのか…!?

 

「クソッ…テメェら…オレ達をハメやがったのか…!?」

 

 俺がいうと、俺を落とし穴に嵌めたチームの奴等は、俺の言葉を肯定する代わりに鋭い視線を向けてくる。

 俺達の近くで『いす』に座っていた男は、俺達を見下して言い放つ。

 

「何でお前らのチームが真っ先に狙われたかわかるか?」

 

 何で俺らのチームが真っ先に狙われたか、だと…!?

 そんなの、わかるかよ…

 

「お前ら、オレ達が作戦タイム中に何を言ったか覚えてるか?」

 

 作戦タイム中にコイツらが言った言葉…だと…?

 コイツらが、俺達に何か言ったか…?

 

 

 

 ――まずは『ぷれいやぁ』同士協力して『♣︎Q(くらぶのくいいん)』を倒しませんか?生き残る1チームを決めるのは、先に『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームを脱落させてからでもいいはずだ。

 

 

 

「あ………」

 

 そうだ、思い出した。

 コイツらは、作戦タイム中に俺達に協力を持ちかけてきたチームだ。

 

「他の2チームは、オレ達の要求を快く飲んでくれたよ。『♣︎(くらぶ)』は協力プレーが必須の『げぇむ』…それは、生き残り枠が限られてる『げぇむ』でも例外じゃない。だからオレ達のチームは、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』という共通の敵を倒す為に同盟を組んだんだ」

 

「オレらが持ちかけた交換条件はこうだ。『同盟を組んだチーム同士での『いす』の奪い合いはしない』、『オレらが見つけた『いす』の番号を教える』…『だから同盟を組んだチームの誰かが『きばくすいっち』を押したら、同盟を組んだチームの『いす』は爆破するな』」

 

 背の高い男が言うと、メガネのオッサンも『いす』に座ったまま脚を組んで言った。

 背の高い男は、膝の上で手を組みながら口を開く。

 

「お前らのチームは、絶対にやっちゃいけない事をした。お前らは、()()()を完全に怒らせた。『♣︎Q(くらぶのくいいん)』の前に、まずはお前らが消えろ」

 

「『♣︎(くらぶ)』の『げぇむ』は、人と協力できねぇ奴から死んでいく。大事なのはチームワークだ。テメェらが言った言葉だぜ?」

 

 背の高い男とメガネのオッサンは、俺達を見下しながら言った。

 クソッ…

 俺らがコイツらを裏切ったから死ねってか…?

 はは、ははは…

 ふざっけんな…!!

 

「はは…だからオレらに死ねってか…?ふざっけんな…だったらテメェらが死ね!!」

 

 俺は、『いす』に座った2人に向かって飛びかかった。

 するとその時、さっき俺を追いかけてきやがった猫女が木の上から現れて、『いす』を俺の顔面に思いっきりフルスイングしてきやがった。

 

「ガァッ!!」

 

 顔を『いす』で殴りつけられた俺は、そのまま地面に倒れ込む。

 『いす』に座った背の高い男は、俺を『いす』で殴ってきた猫女の方を振り向く。

 

「ダイナ」

 

「えーっとぉ、確か『『いす』を武器にしちゃいけない』って『るうる』はありませんでしたよね?」

 

 男が話しかけると、猫女がヘラヘラ笑った。

 何だコイツら…

 イカレてやがる…

 

 ふと腕時計を見ると、残り時間が10秒を切っていた。

 クソッ…

 嫌だ、嫌だ嫌だ…!!

 俺はまだ、死にたくねぇよ…!!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

『ぷれいやぁ』C side

 

 クソッ、クソクソクソ…!!

 何なんだ…!?

 何でここに来て、他のチームの奴等がグルになって俺らを脱落させにかかってんだよ…!?

 

 いや、でも待てよ…?

 俺らの『いす』が2つここにあるって事は、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームの奴等はまだ人数分『いす』を確保できてねぇって事だ。

 このターンで『いす』を死守すりゃあ、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームから脱落者が2人出る。

 他の3人には悪いが、俺達だけでもこのターンを生き残りさえすれば、『げぇむくりあ』できる可能性もゼロじゃない。

 後の事は、このターンを凌いでから考えりゃあいい。

 

「おい…このターン、何がなんでもこの『いす』だけは死守するぞ…!!」

 

「ああ、そうだな…」

 

 俺達は、『いす』の守りを固める為にバリケードを作った。

 だけど、その瞬間だった。

 

「お取り込み中失礼しま〜す」

 

 いきなり、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』と、その連れのメガネのガキが現れた。

 な…!?

 コイツら、俺らの『いす』を盗みに来やがったのか…!!

 つーか、何でここがわかった…!?

 

「な…!!テメェら…!!どうやってここが…」

 

「焦るこたぁねぇ、この『いす』さえ死守すれば…!!」

 

 っ、そうだよ…

 『いす』に座りさえすりゃあ、俺らは生き残れる。

 俺らが『いす』に腰を下ろそうとした、その瞬間だった。

 メガネのガキが、何かを手に持って突進してきやがった。

 ソイツは、葉に泥がついた木の枝を振り回して、俺らの顔面に泥を飛ばしてきやがった。

 

「うわ、汚ねっ!?」

 

 クソッ、痛え…!!

 目に泥が入った…!!

 

 目に泥が入った痛みに怯んだ瞬間、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』が、ものすごい力で強引に俺の『いす』を奪い取ってきやがった。

 俺らが死守してた2つの『いす』を一瞬で両方奪った『♣︎Q(くらぶのくいいん)』は、仲間のメガネのガキに片方の『いす』を投げつけた。

 

「ユリア!」

 

 俺が手を伸ばすよりも先に、メガネのガキが投げられた『いす』を掴んだ。

 ガキと『♣︎Q(くらぶのくいいん)』は、そのまま俺達から奪い取った『いす』に着席した。

 

「テメェら…」

 

「ごめんなさいね。他のチームが、何だか面白い事やってたものだから…便乗させてもらっちゃった♡」

 

 俺が『♣︎Q(くらぶのくいいん)』を睨むと、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』は悪びれずに笑った。

 残り時間は、あと10秒…

 早く、『いす』を取り返さねぇと…!!

 俺達が『♣︎Q(くらぶのくいいん)』とメガネのガキに飛びついた、その瞬間だった。

 

「あ……」

 

 制限時間のタイマーが、0になった。

 終わっ……た………

 

《制限時間になりました。ここで、『いす』に座れなかった方がおられます。その方は、『げぇむおおばぁ』》

 

 

 

 ――ピィン!!

 

 ――ズッ…

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヘイジside

 

《制限時間になりました。ここで、『いす』に座れなかった方がおられます。その方は、『げぇむおおばぁ』》

 

 アナウンスが鳴った直後、森のどこかでレーザーが5本降り注ぐ。

 俺達のチームは、誰も死ななかった。

 だけどこのターンで、一気に5人死んだ。

 1ターン目に俺達を嵌めて殺そうとしたチームの連中だ。

 

《今回は、生存者が1名以下となったチームがございます。そのチームの皆さんは、『げぇむおおばぁ』。『げぇむくりあ』まで、残り4チーム》

 

 このターンで、1チーム丸ごと脱落した。

 これで、生き残ってるのは残り4チーム。

 アイツらは『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームを倒すのに邪魔になると判断したから真っ先に脱落させたが、この『げぇむ』は、協力してくれる『ぷれいやぁ』が減れば減るほど不利になる。

 次のターンで、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームのメンバーを1人でも削らないと…

 そう考えつつ、俺達は教会に戻って『ぽおる』に触れた。

 

《4ターン目の生存者は、25名中20名》

 

 俺達が『ぽおる』に触ると、アナウンスが今回の生存者を知らせる。

 モニターには参加者の顔写真が表示されていたが、そのうち5人の顔写真が暗くなる。

 全員、俺が最初に脱落させたチームのメンバーだ。

 

《ここで、4ターン目に『きばくすいっち』を押した方がおられます。今回爆破される『いす』は、『22番』》

 

 アナウンスが鳴った直後、俺が指定した『いす』が爆破され、森の奥で爆発音が鳴る。

 今回爆破したのは、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームの『いす』だ。

 マヒルさんとヒヅルが、他のチームの動向を探って、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームの『いす』の番号を、わかってる範囲で教えてくれた。

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームは、次のターンはきっと、『ぷれいやぁ』チームの『いす』を奪いに来る。

 皆が『いす』を奪われて殺されないように、俺達で『いす』を死守しないと…

 

《それでは、5ターン目を開始します》

 

 5ターン目の開始と同時に、教会の鐘が鳴る。

 俺達は、一斉に森に向かって駆け出した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ヒエンside

 

「き、来た、来たぞオイ!」

 

「おいおい逃げんなよ!『いす』寄越せよ!」

 

 『げぇむ』が始まると、俺は他の『ぷれいやぁ』達を追いかけ回した。

 さっきの爆破で俺らの『いす』が2個なくなっちまったから、あと2個『ぷれいやぁ』達から奪わなきゃいけなくなった。

 どーやら『ぷれいやぁ』共は3チームで徒党を組んで俺らを真っ先に脱落させようとしてるみたいだけど…

 

 そういうの、嫌いじゃねーわ。

 俄然、面白くなってきた♪

 

「よっと!」

 

 俺が、『いす』を持ってる奴に飛びかかろうとした、その時だった。

 

「ふっ!!」

 

 猛者『ぷれいやぁ』のチームの女の子が、俺に飛び蹴りを仕掛けてきた。

 俺は咄嗟に飛び蹴りをガードしたけど、思いの外蹴りが重くて数メートル吹っ飛ばされた。

 俺が『ぷれいやぁ』を追いかけようとすると、女の子が俺の前に立ち塞がった。

 

「行って!」

 

「は、はい…!」

 

 女の子が他の『ぷれいやぁ』に声をかけると、『ぷれいやぁ』達は『いす』を抱えて逃げた。

 あーあ、逃げられちゃった。

 今すぐ追いかけたいとこだけど…この子がいるんだよねぇ。

 

 俺は、女の子に向かって回し蹴りを放った。

 女の子は、俺の蹴りを軽くいなすと、容赦なく何度も蹴りを放ってくる。

 

「うわっ」

 

 俺が咄嗟に木の枝から木の枝へ飛び移ると、女の子はすかさず俺を追いかけてきた。

 俺とその子は、不安定な木の上で逃げたり追いかけたりしながら、タイマンのバトルを繰り広げた。

 すげぇな。

 こんな小柄な女の子が、俺の動きについてくるなんて。

 俺は、キックを放ってくる女の子に声をかける。

 

「キミ、カワイイ顔してやるじゃん。オレの動きについてくるなんて」

 

「どーも」

 

「名前は?」

 

「…ヒヅル。小鳥遊火鶴」

 

「ふーん、ヒヅルちゃんか。歳いくつ?」

 

「13」

 

「へー、オレと同い年じゃん」

 

 マジかよ。

 オッパイ大きいし、てっきり歳上だと思ってた。

 ふーんそっか、俺と同い年なんだ。

 俺と互角に闘り合える、俺と同い年の女の子。

 …もうそれってさ、運命じゃね?

 

「ねぇヒヅルちゃん。オレさ、結構タイプだわ。『げぇむ』終わったら、オレと付き合わねー?」

 

「………えっ」

 

 俺が告ると、ヒヅルちゃんはきょとんとした表情を浮かべる。

 心なしか、ヒヅルちゃんの蹴りが弱くなった気がする。

 

「って、そっか。1チームしか生き残れない『るうる』だから無理かー。あ、だったら今付き合っちゃう?」

 

 俺が笑いながら言うと、ヒヅルちゃんは俺に向かって殴りかかってきた。

 うわっ、容赦ねぇなオイ。

 俺はその拳を、正面から受け止めた。

 

「…動揺を誘おうとしてる?」

 

「あはっ、だとしたらオレって意外と策士じゃん♪せっかくのデートなんだし、もっと楽しもうよ」

 

 俺は、ヒヅルちゃんの攻撃を避けながら笑った。

 俺、結構本気なんだけどなぁ。

 俺でも命がかかった状況で冗談なんか言わねーし。

 なんて思っていると、ヒヅルちゃんは、俺に攻撃を仕掛けながら話しかけてくる。

 

「ところでさ…国民のアンタにひとつ聞きたい事があるんだけど」

 

「何?言ってごらん?」

 

「『他者を自力で移動できない状態にした場合』って、殺す以外に例えばどういうケースが当てはまるわけ?他には木の幹に縛りつけたり、両足複雑骨折させたりしたらダメとかは流石にわかるんだけどさ。じゃあ例えば『きばくすいっち』を押そうとした時の感電は?感電すると筋肉が収縮して、数十秒は自力で動けない状態になるわけだけど…意図的に他人に『きばくすいっち』に触らせて感電させるのは、『るうる』違反になるのかな?」

 

「安心しなよ。そのケースは『るうる』違反にならないから。もっとも、制限時間終了時まで自力で動けない状態が続いてた場合は、『るうる』違反で『げぇむおおばぁ』になっちゃうけど」

 

「じゃあ、制限時間終了までに自力で動ける状態になってれば、『るうる』違反にはならないと…そう解釈していいわけだ?」

 

「うーん、まあそうなるね」

 

「よかった。それ聞いて安心した」

 

 そう言ってヒヅルちゃんは、俺を思いっきり蹴り飛ばしてきた。

 俺が木から落ちてよろめいた瞬間、木にぶら下がったヒヅルちゃんが、俺の首を太腿で挟んで絞めてきた。

 

「がっ…!?」

 

「さっきの告白の返事だけど…やっぱないわ。生憎、アンタみたいに軽い男は好みじゃないの」

 

 ヒヅルちゃんは、両手で木にぶら下がったまま、俺の首を絞める。

 このまま俺を絞め落とす気か…!!

 

「ひどいなぁ…オレ、そんなに軽くないんだけど。まあでも、女の子の脚で絞められてオチんなら本望だぜ。こんな事言ったらママに怒られそうだけど」

 

 俺が言うと、ヒヅルちゃんはさらに俺の首をきつく絞めてくる。

 うわ、すげぇ力。

 ヤバいこれ、冗談抜きでオチる…!

 俺が流石に危機感を覚えた、その時だった。

 『いす』が近くにある時とは違う、別の振動が俺の手首を揺らした。

 

 ああ、良かった。

 どうやらママが成功したみたいだ。

 じゃあもう、俺の役目はもう終わりだね。

 俺は、首を絞めてくるヒヅルちゃんの足首を、捻る勢いで思いっきり掴んだ。

 

「っ痛…!!」

 

 俺がヒヅルちゃんの足首を掴むと、ヒヅルちゃんは痛がって拘束を緩める。

 俺はヒヅルちゃんの脚から抜け出して、そのまま地面に着地した。

 俺は、ヒヅルちゃんの方を振り向いて、笑顔で手を振る。

 

「ごめんねヒヅルちゃん。オレ、行かなきゃ。デートの続きはまた今度ね」

 

「誰がするか。死ね!」

 

 俺が立ち去ると、ヒヅルちゃんが罵倒してくる。

 俺はそのまま全速力で逃げて、『いす』を守ってくれてる兄ちゃんとスミレのところに戻った。

 

 …それにしても、ヒヅルちゃん可愛かったな。

 見た目はもちろん、俺の動きについてくるところとか、敵に対して容赦ないところとか。

 この国に来る前は、何してたのかな。

 どうせこの『げぇむ』でどっちかが死んじゃうんだし、せっかくならもっとヒヅルちゃんの事知りたいな。

 …って、俺、『げぇむ』中なのにさっきからヒヅルちゃんの事ばっか考えてるじゃん。

 これが恋…なのかな?

 

 あはっ。

 俺、ますますヒヅルちゃんの事好きになっちゃったじゃん♪

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

マヒルside

 

 僕は、他のチームの『ぷれいやぁ』と協力して、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームの動きを警戒しつつ、『きばくすいっち』を探していた。

 

「こっちにもありませんでした!」

 

「こっちにも…!」

 

「引き続き手分けして探そう」

 

「「はい…!」」

 

 僕は、他のチームの『ぷれいやぁ』に指示を出して、『げぇむ』会場の森林を注意深く探した。

 敵のチームの1人は、ヒヅルちゃんが足止めしてくれている。

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームの残りの『いす』の番号は、既に把握してる。

 このターンで『きばくすいっち』を押す事ができれば、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームの戦力を一気に減らせる。

 

 …考えろ、『きばくすいっち』を隠してありそうな場所…!

 観察力や予測能力は、旅で散々培ってきたはずだろう?

 

 僕が心当たりのある場所を探しに行こうとした、その時だった。

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームの女の子、ユリアが僕の行く手を阻んだ。

 

「あなたは『ぷれいやぁ』達の中でもかなり優秀だからね。まずはあなたから消えてもらう」

 

「この『げぇむ』は…いつから鬼ごっこになったんだい?」

 

 僕が呆れたように笑ったその直後、ユリアが僕の方へと走ってくる。

 身の危険を感じた僕は、追いかけてくるユリアから逃げた。

 この『げぇむ』の禁止事項に、『他人を自力で移動できない状態にする事』というものがあった。

 裏を返せば、自力で歩行できさえすれば何をしてもいいという事だ。

 今ここで彼女に捕まれば、それこそ『げぇむくりあ』が困難になる。

 

 …それにしても、足が速いな……

 それだけじゃない。

 獲物の追い詰め方を熟知している。

 彼女は……いや、()()()は、何かがおかしい。

 ヘイジ君が3ターン目で『きばくすいっち』を押された時もそうだった。

 かつて『ねくすとすてぇじ』を勝ち抜いた『ぷれいやぁ』だから強いのは当然だと思っていたが…彼女達には、『元『ぷれいやぁ』』の一言だけじゃ言い表せない秘密があるように思えてならない。

 

 僕は、ユリアの注意を逸らしつつ、逃げながら『きばくすいっち』を探した。

 フェイントを交えつつ逃げていると、とうとう撒いたのか、ユリアが追いかけてこなくなった。

 諦めたのか……?

 

 僕は、急に追いかけてこなくなったユリアの気味悪さに胸騒ぎを覚えつつも、『きばくすいっち』に手を伸ばそうとした。

 その時だった。

 突然ユリアが現れて、僕の前に立ち塞がったのは。

 

「やっぱり、あなた達の動きをマークしといて正解だったわ」

 

 ユリアは、平然と僕の前に現れて『きばくすいっち』を横取りした。

 ……信じられない。

 あれだけ僕を追い回した後だというのに、彼女はほとんど息を切らしていない。

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームの中では体力が少ない方に見える彼女でさえ、ほとんど体力を消耗せずに僕を出し抜いてきた。

 これが、『今際の国』の国民のレベル……

 

「君は…いや、君達は…何者なんだい?」

 

「答える義理はない」

 

 僕が尋ねると、ユリアは冷淡に返事をしてから『きばくすいっち』を押した。

 

「残念でした」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

『ぷれいやぁ』D side

 

 俺達は、『いす』の周りにバリケードを作って、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』チームの動きを警戒していた。

 するとその時だ。

 カサッと、一瞬木の葉が揺れる音が聴こえたのは。

 

「お、おい…」

 

「どうかした?」

 

「今、後ろで物音がしなかったか?」

 

「風か何かじゃねーの?兄ちゃんは心配性だなぁ」

 

 俺の言葉に弟が笑いながら返した、その直後だった。

 

 

 

「ご機嫌よう♪」

 

 『♣︎Q(くらぶのくいいん)』が、俺達の前に現れたのは。

 コイツ…いつの間に背後に…!?

 しかも丸腰で…1人……だと……!?

 

「1人、だと…!?」

 

「何しに来やがった…!?」

 

 俺達は、咄嗟に武器を構えて『♣︎Q(くらぶのくいいん)』を警戒した。

 敵は丸腰の女1人だ。

 こんな動きにくそうな服着た女1人に、一体何ができるってんだ…!?

 俺達が身を寄せ合って警戒すると、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』は無表情で歩み寄った。

 そして…

 

「ふふ…アハハハッ!!」

 

 突然、鈴を転がすような声で高笑いした。

 コイツ…何がおかしい…!?

 俺達が武器を構えて『♣︎Q(くらぶのくいいん)』を睨むと、『♣︎Q(くらぶのくいいん)』は余裕そうに口を開く。

 

「『何しに来た』…か。当然、勝ちに来たのよ」

 

 

 

 

 『げぇむ』『いすとり』

 

 難易度『♣︎Q(くらぶのくいいん)

 

 5ターン目 残り20名

 

 

 

 

 

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