多分次回か次々回で終わりです。
ヒヅルside
《制限時間になりました。ここで、『いす』に座れなかった方がおられます。その方は、『げぇむおおばぁ』》
森の奥で、レーザーが4本降り注いだ。
俺が殺そうとしたヒエンとスミレは…ギリギリのところで『いす』にタッチして、『げぇむおおばぁ』を免れた。
「いやぁ、今回はなかなか楽しかったよ。スミレが来てくれなかったら、ガチで死んでたからね」
「………クソ」
「それじゃあ、次のターンもヨロシク。ヒヅルちゃん♡」
ヒエンは、そう言ってケラケラと笑った。
能天気な笑い声が、俺を苛つかせた。
…にしても、何やってたんだよダイナの奴。
スミレを足止めしておくって話じゃなかったの…?
◆◆◆
ヘイジside
このターンを生き延びた俺達は、『ぽおる』に触れる為に教会に戻った。
俺とマヒルさんで、頭を怪我したクリハラさんを一緒に『ぽおる』まで運んだ。
クリハラさんは、イバラの襲撃を受けて怪我をした。
俺が、イバラを止められなかったせいで。
「すまない皆…『
「うるせぇ…こういうのは連帯責任だろうが。あの女を見縊って詰めの甘い作戦を立てちまったオレにも非がある」
マヒルさんが俺達の失態を謝ると、クリハラさんがフォローを入れる。
するとその時、アナウンスが鳴った。
《今回は、生存者が1名以下となったチームがございます。そのチームの皆さんは、『げぇむおおばぁ』。『げぇむくりあ』まで、残り3チーム》
今回のターンで1チーム丸ごと全滅し、残るは3チームとなった。
1チームを犠牲にしても、俺達は『
全員が決死の覚悟で挑んで…それでも、『
それ程までに、『
《7ターン目の生存者は、16名中12名》
俺達が『ぽおる』に触ると、アナウンスが今回の生存者を知らせる。
モニターには参加者の顔写真が表示されていたが、そのうち4人の顔写真が暗くなる。
『今際の国』の国民を総出で足止めしようとしたチームのメンバーだ。
《7ターン目は、爆破する『いす』が指定されませんでした。よって、今回は『いす』をランダムに爆破します。今回爆破される『いす』は、『6番』、『11番』、『17番』、『23番』、『30番』》
アナウンスが鳴った直後、俺が指定した『いす』が爆破され、森の奥で爆発音が鳴る。
今回は、『
これで残りの『いす』は、『1番』、『4番』、『10番』、『12番』、『13番』、『18番』、『20番』、『27番』、『29番』の9脚。
《それでは、8ターン目を開始します》
スタートと同時に、教会の鐘が鳴る。
◆◆◆
ヘイジside
8ターン目。
俺とヒヅル、マヒルさんとダイナでペアを組んで、残りの『いす』を探した。
さっきの分断作戦は、『ぷれいやぁ』が大勢いたからこそ成立した作戦だ。
さっきみたいに『
だったら今は、出来るだけ多くの『いす』を確保するしか、俺達が生き残る道はない。
怪我人のクリハラさんを走り回らせるわけにはいかないから、クリハラさんには『いす』の見張りをしてもらった。
『いす』と『きばくすいっち』を探している途中、ヒヅルが俺に声をかけてくる。
「ねぇヘイジ…そろそろ、話してくれてもいいんじゃないの?」
「……何がだ?」
「何が…って、ヘイジ、この『げぇむ』が始まってから、何かおかしいよ…?ずっとあの女のペースに振り回されてる。さっきのターンだってそうだよ…順調だった分断作戦が、あの女の逃走で全部狂った。ヘイジ、あの女に何を言われたの?」
「…………」
「…忘れたの?この『げぇむ』は、『
ヒヅルは、俺を心配して話しかけてくる。
ヒヅルの言う通りだ。
俺は、イバラの言葉に惑わされて、『げぇむ』に集中できていなかった。
このままだと、イバラには…『
いい加減、ガキみてぇに引きずってねぇで切り替えねぇと…
「……ごめん。オレ、どうかしてた。イバラが、ニーナと一緒に参加した『げぇむ』の『でぃいらぁ』だったんだ。オレ達を助けるフリをして、『今際の国』の国民としてオレ達の命を弄んでた。それがどうしても許せなかったんだ」
「因縁の相手…ってわけだね」
俺が言うと、ヒヅルが口を開く。
全てはあの女との出会いから始まった。
俺にとって、イバラは最初の『げぇむ』で俺の命を弄んだ…俺にとってはイバラは、この国での『原点』だ。
「もう、ガキみてぇにキレたりしねぇから…一緒に『げぇむ』を『くりあ』しよう」
「……うん」
俺が言うと、ヒヅルが髪を掻き上げながら頷く。
するとその時だ。
「あった、『いす』…!」
俺は誰も見つけていない『いす』を見つけて、『いす』を手に入れようとした。
だがその時、突然目の前にイバラが現れた。
イバラは、不敵な笑みを浮かべながら歩き出す。
「イバラハナエ…!!」
イバラは、微笑みながら、『いす』に向かって歩く。
コイツも、『いす』を押すのが狙いだ。
ただ普通に歩いているだけなのに、冷や汗が頬を伝う。
さっきのターンで、この女がいかに手強いかを思い知らされたからだ。
俺がイバラの威圧感に思わず足を止めた、その時だった。
「ヘイジ行って!!オレが時間を稼ぐ!!」
「えっ…!?」
「いいから行け!!この女がいるから迷うなら、オレがコイツを止める!!オレが、ヘイジを迷わせないから…!!生きて『げぇむ』を『くりあ』するんだろ!?」
ヒヅルは、イバラに飛びついて、そのままイバラを押し倒した。
ヒヅルがイバラを取り押さえてそのまま手首に力を入れると、ミシッと何かが軋む音が響く。
俺はヒヅルを信じて、『いす』を持ち去ろうとした。
だけど、その時だった。
――ゴキッ!!
「あ゛ぁああああああああ!!!」
ヒヅルの叫び声が、森の中に響き渡った。
「ヒヅル!!」
振り向くと、そこにはヒヅルを組み伏せたイバラがいた。
ヒヅルは、イバラに押さえつけられて、右肘を握られていた。
ヒヅルの右肘は、関節を外されて肘の骨が浮き出ていた。
「イバラお前…何してんだよ!?」
「肘の関節を外しただけよ。今から治療すればちゃんと綺麗に治るわ。あなた達が不相応な事考えるのがいけないのよ」
「ババァ…!!」
イバラが言うと、ヒヅルがイバラに暴言を吐く。
するとイバラは、ヒヅルの腕を強く引っ張った。
「っあ゛ぁっ!!」
「ヘイジ君、『いす』をこっちに寄越してね。じゃないと今度は彼女の腕を折っちゃうから」
「ダメ…ヘイジ…!!オレの事はいいから、早く『いす』を持って逃げて…!!」
イバラは、突き刺すような鋭い視線を俺に向けながら言った。
ヒヅルは、痛みに顔を歪めながらも、首を横に振る。
俺は…
望み通り、『いす』をイバラに差し出した。
「ヘイジ……」
俺が『いす』を差し出すと、ヒヅルが困惑の表情で俺を見る。
このままじゃ、俺達のチームが負けちまうって事はわかってる。
だけど、ヒヅルを見殺しにしてまで『いす』を持って逃げるなんて事、俺にはできなかった。
「あら。優しいのね」
「ヒヅルから離れろ」
俺が言うと、イバラは意外にもあっさりヒヅルを解放した。
イバラは、俺に冷たい視線を向けながら言い放つ。
「…そんなに彼女が大事なのね」
「ヒヅルは、ニーナを失って絶望していたオレを助けてくれた。この世界が絶望だけじゃないって事を教えてくれた…オレにとっての希望なんだ」
俺は、脂汗をかいて息を荒くしながら肘を押さえているヒヅルに駆け寄って応急処置をした。
するとイバラは、クスッと笑いながら俺に話しかける。
「希望、ねぇ…そうだ。ヘイジ君にいい事教えてあげましょうか」
イバラは、ずいっと俺に顔を寄せて口を開いた。
「あなた達が参加した『
…………。
…………。
…………。
「…………は?」
「アレは、ヘイジ君の為にわざわざ私がセッティングしたのよ。私が初めて出逢った頃のあなたは、この世界で生き残るにはあまりにも弱かったから、あなたが生き延びていずれ私のところに来るように仕向けたの。命懸けの試練を用意して、『ふぁあすとすてぇじ』を確実に勝ち残れる強い『ぷれいやぁ』を『げぇむ』会場に誘導して、あなたと
「な…んだよ…それ……」
「あなたは、私が創った物語の主人公。あなたのこの国での物語の始まりは、私。そして、その物語を終わらせるのも、この私」
………嘘だ。
俺がニーナと出会ったのも、次の『げぇむ』でニーナが死んだのも、ヒヅルやクリハラさんと出会ったのも…俺があの日出会った2人と一緒にこの『げぇむ』でイバラと殺し合いをする事さえも、全部…コイツが仕組んだ事だってのか…?
「ヘイジ!!こんな奴の言葉に惑わされるな!!一緒に『げぇむ』を『くりあ』しようって言ったのは、ヘイジでしょ!?」
イバラが俺を挑発する間にも、ヒヅルが俺に向かって叫ぶ。
俺は、イバラにどうしても聞きたい事がひとつだけあった。
「……イバラ。ひとつだけ聞かせろ。ニーナは…何で死ななきゃいけなかったんだ…?」
俺が尋ねると、イバラはクスッと笑ってから口を開く。
「決まってるじゃない…それが、あなたの物語だったからよ」
「は……?」
「彼女があの『げぇむ』を生き延びる未来もあったのかもしれない。だけどその未来ではきっとあなたは、いつか彼女諸共『げぇむ』で負けて死ぬ運命だった。挫折も、葛藤も、反骨心も、覚悟もないあなたでは、私を倒し得る英雄にはなり得なかった。あなたが私とここで出会って、物語がクライマックスを迎える為には、それ相応の何かを失わなければならなかった。彼女は、あなたが主人公になる為の尊い犠牲。英雄には、悲劇が必要でしょう?」
「ふざけるな!!」
俺は、『いす』にどっかりと腰を下ろしながら不敵に笑うイバラに向かって怒鳴りつけた。
『楽しかったから』だとか、『特に理由はない』だとか、そんな答えだったらどんなにマシだったか…!!
そんなくだらない理由で、コイツはニーナを殺したのか…!!
「何が『悲劇』だ…そんなくだらない事の為に、お前はニーナを…!」
「『そんなくだらない事の為に』……本当にそう思ってる?」
「何だと……?」
「あなたはこの国で、多くの人の心を動かし、その命を今へと繋げた。だけどそれは、ニーナさんを失った絶望を乗り越えたあなただからこそ成し得たのよ。ニーナさんが死ななければ、あなたはこの国の理不尽に抗おうと思わなかった。ヒヅルちゃんや『ビーチ』の人達の心を救う事もできなかった。誰も『
イバラは、鋭い視線を向けながら言った。
ニーナが死ななければ、俺はヒヅルやアグニ、ビーチの皆を救う事ができなかった。
『今際の国』の国民と戦おうだなんて思わなかった。
今まで出会った中で一番の強敵だった『
俺が、この国で出会った大切な人達に、ただ笑って前に進んで欲しいと願う事もなかった。
俺は、イバラの描いた物語の主人公に仕立て上げられた。
全ては、イバラが俺を殺す為に。
コイツが手間をかけて育てた
そんな事の為に、俺は……!!
「は、はは…はははは……」
「ヘイジ……?」
「……もういい、イバラ。お前がどういう奴なのかはよくわかったよ。だからもう、終わらせよう。
俺は、余裕そうに『いす』に座ってふんぞり返っているイバラの顔面を、力任せに殴りつけた。
地面に倒れ込んだイバラに馬乗りになって、顔面を何度も殴った。
イバラは、俺に殴られて顔を血に染めながらも余裕そうに笑った。
「ガハッ…!ゲホッ、いいのかしら…?私を暴力で殺せば、あなたも『げぇむおおばぁ』になるわよ」
「それがどうした。一番厄介なお前が死ねば、お前のチームの生き残りは子供3人。残りの『ぷれいやぁ』に勝機を残してやれる。オレは、お前を殺せればそれでいい」
そう言って俺は、イバラの顔面を殴りつけた。
俺は、このターンでイバラを殺せるなら、たとえ『げぇむおおばぁ』になっても構わない。
コイツが俺の人生を操って弄んでたっていうなら…コイツの描いた物語を、コイツ諸共地獄まで持って行ってやる。
何より、ニーナの…俺のたった一人の大切な恋人の仇だ。
「うあぁああああああああ!!!」
――ゴッ
俺は、イバラを殴り殺そうと、力任せに拳を振り抜いた。
だけどそこには、イバラの上に覆い被さったヒヅルがいた。
「ヒヅル……?」
「お願いだから…やめてヘイジ。ヘイジは、こんな事する人じゃないでしょ…?」
ヒヅルは、左頬を腫らして口から血を流していた。
嘘、だろ…?
俺が、ヒヅルを……
「ヒヅル…!!どうして…!?」
「こうでもしなきゃ、止まってくれない気がして…一緒に生きようって言ってくれたのは、ヘイジだよ…?なのにそのヘイジが、こんな事してどうするんだよ…」
ヒヅルは、口から流れ出た血を拭って口を開く。
ヒヅルは、顔を血まみれにして気を失っているイバラの方を振り向いて言った。
「こんな奴の言う事なんか、聞かなくていい。オレがあの日『げぇむ』でヘイジに出会ったのは、この女に操られたからじゃない。オレが、ヘイジと出会う為に、あの『げぇむ』会場を選んだの」
「ヒヅル…お前、何を言って…」
「そういう事にするんだよ!たとえこの女が全部仕組んだ事だったとしても、そんな事はどうだっていい!『理由』なんか、納得のいくように自分で作っちまえばいい!皆、必死に悩んで、それでも納得できるところを探して、自分の葛藤と折り合いをつけて生きてるんでしょ!?オレは、お前と生きる為にこの国に来て、お前に出会って、今ここで命を懸けてる!!」
ヒヅルは、俺の胸ぐらを掴んで叫んだ。
そこには、殺し合いに身を投じる事にしか生きる意味を見い出せなかった頃の、誰も踏み込ませなかった頃のアイツはいなかった。
「ヘイジが、オレの背負ってるものを背負わせてくれって言ったんだよ…?今度は、お前の背負ってるものを、オレが背負う番。ヘイジの事、理解りたいって思ってる…!だから教えて!お前は今、何の為にここで命懸けてんだ!!」
ヒヅルが、俺の心に訴えかけた。
………思い出した。
もし俺がこのままイバラへの憎しみに駆られて殴り殺していたら、ヒヅルとの約束を果たす事も、ニーナの事を思い出す事もできなくなっちまうところだった。
止まれたのは…ヒヅルが身体を張って俺を止めてくれたからだ。
ヒヅルが、憎しみのままに死に突き進もうとしていた俺を引き留めてくれた。
「オレは…ヒヅルと、この国で出会った大切な人達と、いつまでも笑い合っていたい…お前に、皆に、幸せになってほしい…!その為に、この国での殺し合いを全部終わらせたい…だからオレは今、ここにいる…!」
「……あの女に操られたからなんかじゃ、ないでしょ…?」
俺が本心を語ると、ヒヅルは俺に微笑みかける。
ふと、ヒヅルの腫れた頬が目に留まる。
俺が、感情に任せて殴った。
俺を憎しみから救い出してくれた、この世界で一番大切な仲間を。
「ヒヅル…ごめんな…オレのせいで…!!」
俺は、ヒヅルの小さな身体を抱きかかえて謝った。
するとヒヅルは、ふるふると首を横に振った。
「……違うよ、ヘイジ。言ってほしいのは、『ごめん』なんかじゃない」
ヒヅルは、涙で潤んだ声で俺に言った。
俺は、ヒヅルの頭を寄せて、額を合わせて言った。
「……ありがとな。オレを、引き留めてくれて」
「バカ…ちゃんと言えんじゃん」
俺がヒヅルの頭を撫でると、ヒヅルは涙を拭いながら微笑んだ。
すると、その時だった。
「ガハッ…ゲホッ……!!」
さっきまで俺がボコボコにしていたイバラが、咳き込んで血を吐きながら意識を取り戻した。
イバラは、身体中についた泥や木の葉を払いながら立ち上がる。
顔を散々殴られたというのに、イバラはまだピンピンしていた。
「感動してるとこ悪いけど…あなた達に残念なお知らせがあります。たった今、あなた達『ぷれいやぁ』の敗北が確定しました」
腕輪を確認したイバラは、八重歯を見せながら不気味な笑みを浮かべる。
俺達の負けが、確定しただと…?
何を根拠に、そんな事を……
「は…?何言ってんだよお前……」
「ヘイジ、ハッタリだよ。真に受けちゃダメ」
「ハッタリなんかじゃないわ。私の可愛い娘が、あなた達の『いす』を3つ爆破してくれた。残りの『ぷれいやぁ』は、誰も生き残らない。ここで死ぬのよ」
ヒヅルが言うと、イバラはハンッと鼻で笑いながらハンカチで顔を拭いた。
何なんだ…?
イバラのこの余裕の根拠は…
俺が状況を飲み込めずにいると、先に気付いたヒヅルがハッとした表情を浮かべる。
「アンタら……まさか…既に『
「ご名答♪」
ヒヅルが言うと、イバラが不敵な笑みを浮かべる。
まだ押されていない『きばくすいっち』を奴等が2つ以上見つけた時点で、俺達の負けは確定した。
何故ならこのターンで『きばくすいっち』を1つ押して、もう1つの『きばくすいっち』の近くに自分達の『いす』を置いてしまいさえすれば、あとは次のターンの開始と同時に『きばくすいっち』を押して『いす』に座ったまま動かないだけで奴等の勝ちは確定してしまうからだ。
例えば、このターンで奴等が『きばくすいっち』を押して、俺達の『いす』を3つ爆破したとする。
そうしたら、『ぷれいやぁ』サイドの『いす』は2脚、『
あと1つでも『いす』を爆破しちまえば、奴等の勝ちが確定しちまう。
そして当然『
『ぷれいやぁ』が大勢生き残っていた時に1人ずつ封じる作戦すら失敗したのに、少人数で4人全員をどうにかできるわけがない。
「あなた達は、ここまでよく頑張りました。それは認めるわ。だけど残念…『げぇむおおばぁ』よ」
……完敗だ。
俺達は既に、詰んでいたんだ。
「その『いす』はあげるわ。私達にはもう、必要のないものだもの♪」
そう言ってイバラは、『いす』を放り投げて去っていく。
イバラに投げ捨てられた『いす』だけが、そこに残った。
◇◇◇
「遅い。しかも、たったの一脚…?あなた…私とマヒルさんが必死に『いす』を確保してたって時に、何してたのよ」
「………」
「前回のターンで、私に使えないとか何だとか言ってたの、誰でしたっけ?」
俺達が『いす』を持って約束の場所に戻ると、ダイナがヒヅルを責めた。
ヒヅルは、チームの足を引っ張った事に責任を感じているのか、俯いて唇を噛み締める。
俺のせいでヒヅルが責められるのは、どうしても我慢ならなかった。
「……ヒヅルは悪くない。オレが、トラブルに巻き込んだんだ。だからヒヅルを責めないでやってくれ」
俺が言うと、ダイナはため息をつきながら『いす』に腰を下ろす。
俺達5人は、制限時間のタイマーが0になる前には、全員『いす』に着席した。
その直後、8ターン目終了のアナウンスが流れる。
《制限時間になりました。ここで、『いす』に座れなかった方がおられます。その方は、『げぇむおおばぁ』》
アナウンスが鳴ったかと思うと、空からレーザーが3本降り注ぐ。
『いす』に座れずに脱落した参加者が、レーザーで命を落としたんだ。
俺達は、『ぽおる』に触れに行く為に、一旦教会に戻った。
◇◇◇
教会には、『
つまり、今回脱落したのは、俺達の他に参加していたもう一つの『ぷれいやぁ』のチームって事になる。
俺達全員が教会に集まると、アナウンスが鳴った。
《今回は、生存者が1名以下となったチームがございます。そのチームの皆さんは、『げぇむおおばぁ』。『げぇむくりあ』まで、残り2チーム》
今回のターンで、俺達以外の『ぷれいやぁ』が全滅し、残り2チームとなった。
ここからは、俺達か『
《8ターン目の生存者は、12名中9名》
今回のターンの生存者を確認してから、俺達は『ぽおる』に触れる。
その直後、『いす』の爆破を知らせるアナウンスが放送される。
《ここで、8ターン目に『きばくすいっち』を押した方がおられます。今回爆破される『いす』は、『10番』、『12番』、『27番』》
「クソッ、オレ達のチームの『いす』……!」
「……『
「そうか…僕達のチームの負けは、確定したわけだね…」
俺が言うと、状況を理解したマヒルさんが頭に手を置く。
するとその時、『ぽおる』にもたれかかっていたダイナが、ため息をついて1人でフラフラと歩き出す。
「あー、もうやってらんないわ」
「おい、どこ行くんだよダイナ…?」
「どこに行くも何もないですよ。私、もうこのチームにいたくないので、好きにやらせてもらいますね」
そう言ってダイナは、ヒラヒラと手を振る。
するとクリハラさんが、ダイナを呼び止める。
「はぁ!?おい、お嬢ちゃん!アンタ、この状況わかってんの?このままだとオレ達、死ぬんだぞ?」
「わかってないのはあなた達の方でしょ?あなた達が使えないせいで、私達は『げぇむおおばぁ』に追い込まれたんですよ?ガバガバの策で私達を殺したクリハラさんに、戦闘しか能のない脳筋のヒヅルちゃんに、私怨でチームを巻き込んだ戦犯のヘイジ君。ちゃんとチームに貢献してたのは、マヒルさんくらいしかいないじゃないですか」
「ぅぐ…!」
「…………」
ダイナが俺達に対して辛辣な批判をすると、クリハラさんが顔を歪め、ヒヅルも俯いて唇を噛み締める。
俺達の間に最悪の空気が流れる中、流石にダイナの言い方に不満を覚えたマヒルさんが、ダイナに苦言を呈する。
「ダイナ、いくら何でもその言い方はないんじゃないのか?」
「だって事実でしょう?使えない人に使えないって言って何がいけないのでしょう?どうせ『げぇむおおばぁ』になるなら、最期くらい好きにさせて下さい」
そう言ってダイナは、1人で勝手に教会の中へと歩いていく。
『げぇむおおばぁ』が確定した途端、俺達のチームはバラバラになっちまった。
ダイナの言う通り、こうなったのは、イバラの挑発に乗ってチームを全滅に追い込んだ俺のせいだ。
「……ごめんなさい。オレがイバラの挑発に乗って、チームの足を引っ張ったせいで…」
俺が謝ると、クリハラさんは深いため息をつきながら頭をガシガシと掻き、ヒヅルは首を横に振る。
「ヘイジのミスはオレが取り返す。奴等の気を引いて、その隙に『いす』を奪えば…」
「無駄だっつってんのがわかんねぇのかバカ野郎!!」
ヒヅルが言うと、クリハラさんが怒鳴る。
クリハラさんは、ココアシガレットを咥えながら不機嫌そうに言った。
「アイツらは、残りのターンは固まって動かないつもりなんだろう?分断作戦すら失敗したのに、オレ達5人でアイツらをどうにかできるわけねぇだろ」
クリハラさんは、ダイナが入っていった教会の方を見た。
「チッ…4人か」
「………ごめんなさい」
クリハラさんが舌打ちをしながら言うと、ヒヅルが謝る。
俺達の脱落が確定した上に、ダイナが孤立しちまった。
「まさに、万策尽きたってヤツだな…」
「死を待つだけの時間っていうのは…こんなにも長く感じるものなんだね…」
クリハラさんが言うと、マヒルさんが呟く。
《それでは、9ターン目を開始します》
◆◆◆
イバラside
これで私達の勝ちが確定した。
ダイナさんがチームから孤立して、マヒル君チームの『ぷれいやぁ』はバラバラ。
これでマヒル君のチームの『いす』は残り2脚。
10ターン目にはマヒル君チームが脱落する。
「アイツらももう終わりね」
「思ったより呆気なかったね」
「ヒヅルちゃん達の悪足掻きが見られなくなると思うと…寂しくなるね」
…ありがとう、貞次。
あなたのおかげで、私達は『げぇむくりあ』できる。
「チェックメイト♪」
『げぇむ』『いすとり』
難易度『
9ターン目 残り9名