???side
アグニ達が『
新宿区では、『
「落ちた…!!飛行船が落ちたわ!!」
「『
「……これで、『げぇむ』は後…いくつ残ってるんだ…!?」
◆◆◆
アンside
『ねくすとすてぇじ』4日目にクリハラ達と分かれた私達は、文京区のビルの中に身を隠していた。
「皆と分かれてから、もう3日か…私達、もうこれ以上『げぇむ』に参加しなくていいのかな…?」
「アタシら充分やったじゃん…初日に『
マシロがこのままここで隠れている事に疑問を呈すると、クロエが反論した。
「ええ。最後の知能戦、『
『
『
そう考えていると、イチローがバタバタと足音を立てて駆け込んでくる。
「オオイ!!お前らァ!!」
「キャア!!」
「何よ!?」
「お…落ちたぞッ!!『
昨日には、『
これで残ってるのは…『
◆◆◆
ヤバside
私は、高層ビルの最上階で、バンダと共にワインを飲み交わしながら、空に浮かんだ『
すると、『
奴がやったか…
「もうすぐだね…」
「ああ」
「これで…残す『げぇむ』は…」
「『
私とバンダは、全ての『げぇむ』を『くりあ』し『今際の国』の国民になるその瞬間を、静かに待ち侘びていた。
『
「あれ、まだここにいたんですか」
ダイナ。
『
もう1人の男から『
ダイナが『
どうも、『
「ヤってきましたよ〜『
「…遅かったね。昨日の日中に出て行ったはずだろう?」
「それが、7日目にならないと『すたあと』しない『げぇむ』だったので、ずっと待たされてたんですよ」
バンダがダイナに話しかけると、ダイナはソファーに座ってグラスにワインを注ぎながら話した。
…それにしても、協調性の欠片も無い異常者が、よりによって『
「フン。貴様のような異常者が、よく『
「日頃の行い♡」
私が尋ねると、ダイナはワインを飲み干してから答える。
日頃の行い…か。
よもや貴様のような女から、その言葉が聞けるとは思わなかったぞ。
◆◆◆
ヘイジside
俺は、ヒヅルと2人である場所に向かっていた。
ヒヅルのリュックがガシャガシャと行きとは違う音を立てていたので、俺はヒヅルに尋ねた。
「そのリュック、何が入ってんだ?」
「……救急セットと、水筒と…あと、『
「薬?」
「クリハラさんが、持たせてくれたんだ。痛み止めと、止血剤と、抗菌薬…あと、何だったけな…」
「傷の薬ばっかだな…」
「うん…『どうせお前ら怪我すんだろ』って……ちょうど2人分…」
さすがクリハラさん。
しっかりリスクマネジメントしてた…
「……着いたね」
「ああ」
俺達が向かったのは、ニーナの墓だ。
ニーナが『げぇむ』で致命傷を負って死んだ後、ヒヅルとクリハラさんが、ニーナの墓を作ってくれた。
もうすぐ全ての『げぇむ』が『くりあ』されるから、その前にニーナと話しておきたかった。
俺は、台風で崩れた石を積み直して、ニーナの墓に手を合わせた。
「ニーナ…ついさっき、『
俺は、ニーナの墓に向かって話しかけた。
するとヒヅルが、草むらから花を摘んで持ってきてくれた。
俺は、花をニーナの墓の前に供えた。
墓参りを終えた俺は、俺はクリハラさん達が向かったであろう、『
するとヒヅルが俺に話しかける。
「…本当に、いいの?お墓…もう行かなくて」
「ああ。いつまでも、未練にしがみつくのはやめた。ニーナとの思い出は、オレの中にあるから…オレが忘れない限り、ニーナは生きてる。そう思う事にした。だからもう、あそこには戻らなくていい」
「………そう」
俺が自分の胸に手を当てながら言うと、ヒヅルは少し間を置いてから、短く返事をした。
そういえば…ヒヅルは、どうしてニーナの墓を作るのを手伝ってくれたんだろう。
どうせ『借りを作るのが嫌だったから』とか言うんだろうけど、ヒヅルの本心を聞いておきたいと思った。
「…ヒヅル」
「何…?」
「お前は、馴れ合いなんかくだらないって言ってたよな。だったら何で、ニーナの墓を作ってくれたんだ?」
俺が尋ねると、ヒヅルは少し間を置いてから答える。
「…知ってた?お墓って、死んだ人の為じゃなくて、生きてる人の為に作るんだって」
「え…?」
「葬儀屋が葬儀をするのは、遺族からお金を貰う為。遺族が葬儀屋にお金を払うのは、大切な人を亡くした現実を受け入れる為。『死んだ人が安らかに眠れるように』…だなんてただの建前。死んだらどうなるかなんて誰にもわからないから、皆自分の都合のいいように解釈して、自分の心を守ろうとしてる。ほとんどの人は、自分の経験や理解の範囲外にある真実には関心を抱かない」
身も蓋もない…
お前、そういう事容赦なく言う奴だったか…?
「オレがあの人のお墓を作ったのは、お前の為ですらない。全部、自分の為。お前に貸しを作っておいて、後で返してもらおうと思っただけ。それ以上でも以下でもない。オレは、自分が得をする為だけに、ヘイジの大切な人をダシにした。だからクズなんだよ」
「ヒヅル…」
「オレは、ヘイジみたいに優しくないから、人に関心なんか抱けないし、自分の為にしか生きられない。でもお前との約束があったから、お前と生きたいと思えた。強くなりたいと思えた。それすら裏切られたら、もう何も信じられなくなっちゃうから…お前が死ぬの
そう言ってヒヅルは、悲しそうな表情を浮かべた。
それを見て、俺まで心が痛くなった。
ヒヅル…お前、自分の事をそんな風に思ってたのか…
ヒヅルは、クズなんかじゃない。
ニーナを失って何の生きる希望も見い出せなかった俺に、人の温かさを思い出させてくれた。
俺に生きる術を教えてくれた。
ヒヅルは、俺の希望だ。
俺もニーナも、ダシにされただなんて思ってない。
点数稼ぎだろうと、偽善だろうと、何だっていい。
あの日俺は、ヒヅルの優しさに救われた。
それだけで、充分なんだ。
俺は、ヒヅルの小さな身体を後ろから抱きしめた。
「幸せになるのに、資格なんか要らない。オレが、ヒヅルを幸せにしたいんだよ」
「ヘイジ…?」
「オレは、お前がいたから今日まで生きてこられた。お前が、ニーナを失った悲しみを乗り越えさせてくれたんだ。お前は、オレにとって、希望だから…自分の事を、クズだなんて…そんな悲しい事言うな」
「………優しすぎるよ、ヘイジは」
俺が言うと、ヒヅルは頬を緩ませながら俺の腕に手を添えた。
目の前の、たった1人の女の子を幸せにする。
それが、俺の生きる理由だ。
俺がヒヅルの身体を抱きしめていると、右脇のあたりに何か硬いものが挟まっている事に気がついた。
「あれ?何か硬いものが当たってる…」
「え…何…?下ネタ…?」
「違ぇよ」
俺が言うとヒヅルがドン引きするものだから、すぐにツッコミを入れた。
『硬いものが当たってる』発言だけで下ネタ判定は、いくら何でも理不尽すぎねぇか…?
俺は、ヒヅルの脇に挟まっていたものを引っ張り出した。
ヒヅルが懐にしまっていたのは、リボルバー式の拳銃だった。
「お前これ…まだ持ってたのか」
「…まぁ…ね。前持ってたナイフが折れちゃったから…これは、護身用」
「でもお前、銃は苦手だって言ってたろ?」
俺が尋ねると、ヒヅルは俺から銃を奪い返して、目を逸らしながら口を開く。
「……そうだけど…何も無いよりは、マシだと思って…」
「そっ…か」
ヒヅルは、拳銃を再び懐にしまいながら言った。
……そういえば、何か腹減ってきたな。
「…何か、腹減ったな」
「……そう、だね…次の『げぇむ』の前に、腹拵えする…?」
「いいなそれ。つってもこの台風じゃ、動物は見つからなくないか?」
「じゃあ今日も保存食か……そろそろ台風過ぎないかなぁ…早くお肉食べたい」
ヒヅルは、唇を尖らせながら言った。
そのリアクションが可愛かったから、俺は少しだけヒヅルをからかってやる事にした。
「台風が過ぎたら、サワガニ捕まえてカニ鍋でもするか?」
「カニ……」
俺が言うと、ヒヅルは露骨に嫌そうな顔をしながら、顔の前に両手を出して防御体勢を取る。
この前サワガニが足に登ってきたのを思い出したのかな…
「冗談だよ」
「………」
流石にちょっと可哀想になってきたから撤回すると、ヒヅルは若干ムスッとした表情を浮かべる。
…いや、ごめんって。
冗談だってば。
「ごめんってば。晴れたら馬刺し食わせてやるから、機嫌直せよ」
「やった」
俺が言うと、ヒヅルはあっさり機嫌を直した。
変わり身が早すぎるよ…
気がつくと、いつの間にか港区に着いた。
2人で手を繋いで喋りながら歩いていると、ちょうど人が2人歩いてくる。
「……やぁ」
1人はチシヤ、そしてもう1人はアリスだ。
先に声をかけたのは、チシヤだった。
「チ…シヤ…?それに、ヘイジとヒヅルも…」
「お前ら、生きてたのか…」
何というか、こうして2人と話すの、久しぶりだな。
アリスとは『ねくすとすてぇじ』初日にはぐれちまったし、チシヤに至っては『ビーチ』崩壊以降一度も会ってなかったからな…
色々あったけど、今はただ、2人と再会できた事が純粋に嬉しい。
「君達の事だから、生き延びてるとは思ってたよ。『ビーチ』…以来だね」
「ああ…そういえば、アンタには随分酷い目に…合わされたっけな…」
「ハハッ……そんな事もあったっけ」
アリスが言うと、チシヤが笑った。
チシヤがアリスを囮に使ったせいで、アリスが酷い目に遭わされたんだよな…
「…まだ、怒ってる?」
「いいや…………というより、今は自分の事でそれどころじゃねーのかもな…」
「そっ…か」
アリスが苦笑いを浮かべながら言うと、チシヤが俯く。
言っておくが俺は、もう怒ってはないけど許してもないからな。
でも、アリスがいいって言ってるなら…もう、いいか…
「…なんだか落ち着くよ。こうして知った人と話ができるのは…君達にまた会えて、嬉しいよ」
「アンタ…なんか、変わったな…」
「うん…何というか、棘がなくなった…?よね…」
チシヤが笑顔を浮かべると、アリスとヒヅルが言った。
チシヤの表情は、今までの人を見下したような冷たい笑顔じゃなくて、優しい笑顔だった。
ヒヅルがつられて笑うと、チシヤがヒヅルに話しかける。
「君こそ、なんか変わったんじゃない?」
「えっ?」
「ああ…一番変化大きいのは、お前かもな」
「オレ…?」
チシヤとアリスが言うと、ヒヅルは自分を指差しながら2人を交互に見る。
そして最後に俺の方を見て笑い出した。
「……オレか」
ヒヅルが笑うと、アリスとチシヤも笑った。
今までずっと一緒にいたから気づかなかったけど、言われてみれば、一番変化激しいかもな…
「アリス、誰にも話した事のないオレの話を聞いてくれないか?ヘイジ君とヒヅルちゃんも」
「…ああ」
「うん」
チシヤの話した事ない話…か。
そういえばチシヤの事、何も知らなかったな。
「…………オレは───
――ダァアアア…ン!!
「………え」
突然、銃声が鳴り響いた。
一瞬、理解が追いつかなかった。
気がつけば、チシヤが血を流して倒れていた。
「チシヤ!!」
俺は、すぐにチシヤに駆け寄って、腰に巻いていた上着でチシヤの傷を押さえて止血を試みた。
「………チ、チシ…ヤ…!?」
アリスは、倒れたチシヤを見て呆然と立ち尽くしていた。
クソッ…血が止まらない…!
『
俺は、ヒヅルに向かって叫んだ。
「ヒヅル、救急箱!!」
「………」
俺が叫んでも、ヒヅルは聴こえていないのか、呆然と立ち尽くしていた。
何突っ立ってんだよ?
というか、どこ見てんだよ…?
「どうした…?早くしろ!!」
「後ろ!!」
俺が急かすと、ヒヅルが叫びながら俺に飛びかかった。
その直後、銃声が鳴り響いた。
見ると、ヒヅルが右腕から血を流して眉間に皺を寄せていた。
「ヒヅル…!!」
「平気…掠っただけ……」
ヒヅルは、自分の腕を押さえて止血しながら、後ろを振り向いた。
「ぎゃ…はは…は…相変わらず、ゴキブリみてぇにすばしっこいなァ…おチビちゃん」
「っ……」
聴き覚えのある声が聴こえると、ヒヅルが警戒する。
さっきまでの穏やかな空気からは一変して、ピリついた空気が流れる。
「ようやく…この気持ちのぶつけどころが見つかったな…こんな所でまた会えるたァ…嬉しいぜェ…!!」
「ニラギ…!!」
そこには、ライフルを構えたニラギが立っていた。
ニラギは、今度はアリス目掛けてライフルを発砲する。
アリスは、咄嗟に車の陰に隠れて回避すると、ニラギを問い詰める。
「何の…つもりだ…!?テメェ…何でチシヤを…!?」
「ぎゃはは…ハグでもすりゃ良かったのか…?オレ達は…そんな仲でもねぇだろう…?殺し合おうぜ!!オレ達が再会してする事なんざ、それくらいしかねぇだろうがよ…!!」
アリスが尋ねると、ニラギが笑いながら答える。
その歪な笑顔を見て俺は、『ビーチ』に来て2日目にニラギが俺を殴ってきた事や、『まじょがり』の時にニラギがヒヅルを散々痛めつけた挙句殺そうとした事を思い出した。
アイツのした事は許せないけど、一緒に『げぇむ』に参加した時、ヒヅルを助けてくれたから、ちゃんと話せば分かり合えると思ってたのに…
なのに何で…何でこんな事するんだよ…!?
俺とヒヅルは、胸を撃たれたチシヤを連れて、車の陰に隠れた。
するとチシヤが、俺とヒヅルの腕の中で、血を吐きながら目を覚ました。
「……カハッ…」
「チシヤ!!」
「………ハハッ。急所は…わざと外したね…」
「ダメだ、今動いたら…!ちょっと待ってろ、ヒヅルのリュックに薬が…」
俺は、チシヤに応急処置をする為に、ヒヅルが背負っていたリュックから薬を取り出した。
やり方は、一通りクリハラさんに教えてもらった。
こっちが痛み止めで、こっちが止血剤…
「不意打ちで終わらせるはずねーだろ…さっさと起きろ、始めるぜ…!」
「く…そっ!!なんでテメェは…いつもそうなんだよニラギっ!!くそっ!!こんな時にこんな事をして…一体何がどーなるってんだよ!!オレ達は、同じ『ぷれいやぁ』同士なんだぞ!」
「そうだよ…オレ達、一緒に『
「うるせぇんだよ!!」
アリスと俺がニラギを説得しようとすると、ニラギが俺に向かって怒鳴る。
「おい保護者…テメェはお呼びじゃねぇ…用があんのは、そこのクソガキだけなんだよ…!吼えるしか能が無ぇなら、とっとと消えろ…!!何なら…今すぐ死ぬか?」
そう言ってニラギは、俺達が隠れている車へとライフルを向けてくる。
するとヒヅルが、車の陰から身を乗り出した。
「……やめて」
ヒヅルは、ニラギにリボルバー式の拳銃の銃口を向けた。
ヒヅルがニラギを睨むと、ニラギが笑い出した。
「ひゃは…ひゃはは!」
ニラギは、大袈裟に笑い出したかと思うと、急に冷静になって語り始めた。
「…思えば、オレ達は…似た者同士なのかもしんねーなァ…社会に適応できねぇはみ出し者で…いつも
ニラギが言うと、ヒヅルは眉間に皺を寄せる。
ニラギは、いきなり咳き込んで血を吐いた。
あの重傷で『げぇむ』を2つも『くりあ』したんだから、当然の結果だ。
…もう、永くはないんだろう。
「悪ぃが、オレにはもう…『ねくすとすてぇじ』だの、『げぇむくりあ』だの…そんなもんを気にする時間は…残っちゃいねーんだよ…だからいいじゃねーか。
付き合うわけねーだろ…!!
とりあえず今は、ここから逃げる事だけを考えないと…
チシヤとヒヅルを連れて、ライフルを持ったニラギから逃げ切れるか…!?
「ヒヅル、撃つなよ。反撃したら、無駄にアイツを楽しませるだけだ」
「………わかってる」
俺が言うと、ヒヅルが銃を下ろした。
アリスは、タイミングを窺って、離れた場所に隠れた俺達と合流しようとした。
だけど、その時だった。
――ダァンッ!!
銃弾が、アリスの行く手を阻んだ。
見ると、チシヤがアリスにハンドガンの銃口を向けていた。
チシヤの握っていたハンドガンの銃口からは、煙が出ていた。
「チシヤ…何やってんだお前…!!」
「面白いじゃん…君も乗りなよ」
チシヤは、俺達の方を振り向いたアリスに声をかけた。
「君と彼はオレに恨みがあるはずだ。この場でそれを晴らせばいい…どうせ行く当ても無かったんだ…付き合うよ♪」
「チシヤ…」
何で…
何でだよ…
もう『げぇむくりあ』は目の前だってのに…
何で、ここに来て『ぷれいやぁ』同士で殺し合わなきゃいけねぇんだよ…!?
「………ねぇ。ヘイジ。思い出した…今となってはどうでも良すぎて、すっかり忘れてたけど…オレ、コイツらを全員、一度は裏切ったんだった」
「ヒヅル…?」
「武闘派連中とグルになってアリスを吊し上げて、チシヤの脱走をクリハラのオッサンに
ヒヅルは、再び銃を握ってあの日の真相を語った。
何で、そんな事を…今言うんだよ…!?
「ずっと、人を騙し続ける人生だった…元の世界でも、この『今際の国』に来てからも…そのクソみたいな生き方が、オレを今日この日まで生かしてくれた…オレは、自分が幸せになる為なら、たとえ世界中の人間が不幸になっても構わない」
そう言ってヒヅルは、拳銃を構えた。
何で、ヒヅルまで、こんな殺し合いに乗っちまうんだよ…!?
「いい…ねぇ、ぎゃはは…『今際の国』らしくなってきたじゃねーか…さしずめコイツは『えきしびじょんげぇむ』…『ばとるろいやる』ってとこか?」
ニラギが笑うと、チシヤとヒヅルが拳銃を構える。
その直後、ニラギとチシヤが撃ち合いを始めた。
「ひゃ…はは…楽しいねぇ…こういうのを待ってたんだよ…!!テメェらも隠れてねぇで、もっと派手に撃ち合おうぜェェ!!この強風だ!!弾なんざそう簡単に当たらねぇよ!!」
「なんだよ…けっこー元気じゃん…」
「チシヤ…何でだよ…!?」
軽自動車のルーフの上で高笑いするニラギを見て、チシヤが弱々しく笑っていた。
何で、こんな無駄な殺し合いに乗ったりなんかしたんだよ…!?
「彼の悩みは高尚すぎた…オレには…こういうのがお似合いだよね…」
そう言ってチシヤは、排莢しながら自分を嘲るように笑った。
何で、どいつもこいつも、止まってくれねぇんだよ…
「何で、こうなっちまうんだよ…こんなの、何の意味もねぇじゃねぇか…!止める事は…できねぇのかな……」
俺は、ヒヅルの腕の傷を縛りながら言った。
そんな中、ヒヅルは、リボルバーの残りの弾数を確認してからこの広場の地形と他の2人の位置を把握し、ボソッと言った。
「ニューナンブM60……」
ヒヅルは、銃のシリンダーを元に戻し、風向きを確認しながら言った。
「………この強風じゃ、当たらない…か……うん、いい事聞いた」
「ヒヅル……?」
「知ってる…?日本の警察の拳銃って、弱く作られてるんだって…射程が短かったり…装弾数が少なかったり……ライフルとピストル相手じゃ、分が悪すぎる……だったら…太刀打ちする方法は、ひとつしかないよね……」
ヒヅル、何言ってんだよ…
お前まさか…!!
「ヒヅル!!」
ヒヅルは、拳銃を構えたまま、車の陰から飛び出して走り出した。
まずはニラギが、飛び出したヒヅル目掛けて1発撃った。
ニラギの撃った弾が、ヒヅルの首に掠る。
それでもヒヅルは、怯む事なく突き進んだ。
ニラギとチシヤが銃の撃ち合いをしている間にも、ヒヅルは目に留まらぬ速さで駆け抜ける。
2人の撃った弾が全身に掠って、血を撒き散らしながらも、ヒヅルはブレーキを踏むどころか迷わずアクセルを踏んだ。
「ひゃは、いいねぇ…そう来なくっちゃ」
ヒヅルは、ニラギが乗っている車のルーフに飛び乗びかかる。
ニラギがライフルを構えて笑うと、ヒヅルは回し蹴りを放った。
ヒヅルの放った蹴りは、『ガシャァン!!』と大きな音を立ててルーフを凹ませ、窓ガラスを粉々に割った。
「この…クソガキ…!!」
ヒヅルがルーフを蹴りで凹ませると、その衝撃でニラギがよろける。
ヒヅルはその隙に、ニラギに飛びかかった。
ヒヅルは、そのままニラギをルーフの上に組み伏せた。
「ガハッ…!!」
ルーフに強く背中を打ちつけたニラギは、血を吐いて激しく咳き込んだ。
ニラギがルーフの上で仰向けに倒れ込むと、ヒヅルがすかさずニラギに馬乗りになる。
ヒヅルは、右手でニラギの首を絞め、左手に握ったリボルバーの銃口を眉間に突きつけた。
まずい…
ヒヅルの奴、ニラギを殺してこのゲームを終わらせるつもりだ。
「やめろヒヅル!!」
俺は咄嗟に、ヒヅルに向かって叫んだ。
だがヒヅルは、聞く耳を持たずに引き金を引こうとした。
俺がヒヅルを止めようと飛び出した、その時だった。
――ダァンッ!!
「…………カハッ」
ニラギに馬乗りになっていたヒヅルが、大量の血を吐いた。
ヒヅルの背中からは、じわっと血が溢れ出ていた。
見ると、ニラギが、ヒヅルの腹にライフルを突きつけていた。
ヒヅルの左手からこぼれた拳銃が、草むらの中に落ちた。
「………あーあ。『げぇむおおばぁ』だな」
ニラギが言うと、ヒヅルはその場で力無く倒れた。
「ヒヅル!!」
何で…
何でヒヅルが撃たれてんだよ。
さっきまで、あんなに元気だったのに。
あんなに楽しく話してたのに。
一緒に生きるって、約束したのに…
何で…!!
「ニラギ、テメェ…!!何でこんな事すんだよ!?」
アリスは、ヒヅルを撃ったニラギに向かって叫んだ。
するとニラギが、ライフルを排莢しながら笑う。
「ひゃは…言っただろ?これは『げぇむ』だってよ…脱落者が1人出ちまったが、仕切り直して───」
「っあ゛あ゛あ゛っ!!」
ニラギが再び銃を構えたその時、ヒヅルが血を吐きながらニラギに殴りかかった。
ヒヅルがニラギを殴ると、ニラギはライフルのグリップでヒヅルを殴り返した。
頭に重い一撃を喰らったヒヅルは、ルーフから突き飛ばされて、近くの車の窓に身体を打ちつけた。
ヒヅルは、車体に血の痕をつけながら、地面に転げ落ちた。
「ぎゃはは…!何だよ…まだまだ元気じゃねーか…『ばとるろいやる』は続行だなァ…」
そう言ってニラギは、地面に倒れ込んだヒヅルをもう一度撃とうとする。
すると車の陰に隠れていたチシヤが、ニラギ目掛けて発砲する。
「チシヤ…!」
「今のうちに逃げるなり、彼女を助けるなり…好きにしなよ……彼、
そう言ってチシヤは、地面に倒れ込んだヒヅルと、車の上で高笑いしているニラギを一瞥した。
ヒヅルは、ニラギに撃たれた腹と腕だけじゃなく、頭からも出血していた。
「っ……」
俺は車の隙間を縫ってヒヅルのもとへ駆けつけた。
見ると、ヒヅルは、血を流しながら這いずっていた。
2人は、俺とヒヅルそっちのけで、また撃ち合いを始めた。
くそっ…結局、こうなっちまうのかよ…!
「よせよニラギ!!もうやめろッ!!こんな事したって、何になるってんだよォ!!テメェの自暴自棄に、他人を巻き込むんじゃねーよッ!!」
車の陰に隠れていたアリスは、ニラギに向かって叫んだ。
するとニラギは、アリスが隠れていた車へと飛び移ってライフルを構える。
「自暴自棄だァ…?そうでもねーよ!オレはオレの好きなように、やりたいようにやってるだけだ!!」
そう言ってニラギがアリスを狙おうとすると、アリスは咄嗟に近くのトラックの下に隠れた。
ニラギは、アリスとチシヤ、そしてヒヅルに向かって言い放った。
「テメェらだってそうだろう?口を開けば、オレは!オレは!!オレ達はいつも、
ヒヅルは、唇を噛み締めながら、地面に生えた草を握りしめていた。
俺は、ニラギに何も言い返せなかった。
俺も、そうだったから。
人の為だと言っておきながら、結局相手の事なんて何もわかっちゃいなかった。
だから、佳奈に見限られた。
ニーナを死なせちまった。
大勢の人に、迷惑をかけ続けてきた。
ヒヅルが撃たれたのだって、俺がニーナの墓参りに行きたいって言ったからだ。
俺のわがままになんか付き合わなきゃ、ヒヅルが撃たれる事はなかったんだ。
俺は……
「…確かに、そうかもな…」
「アリス…?」
「オレ達みたいなポンコツは…ここで殺し合ってんのがお似合いなのかもな…」
そう言ってアリスが、トラックの下から出てくる。
「ようやく…その気になったかよ…」
「………だから……ここで、変わらなきゃ…」
アリスは、その場で立ち上がって、ニラギの方を向いて笑った。
「ハハ…カッコ悪ぃな、オレ…………ニラギ、ありがとな。やっぱ
そう言ってアリスは、車のボンネットの上にショットガンを置いた。
「…オレは、乗らない。オレはこの引き金を、自分だけの為には引かねぇ…!!」
決心したアリスは、無意味な殺し合いを放棄した。
するとさっきまで撃ち合いをしていたチシヤも銃を下ろし、車にもたれかかって立ち上がろうとしていたヒヅルはその場で膝をついた。
「なーんか…シラケちまったよな…………どーすんだよ…?この空気…………オレにはもう…テメェらしかいねぇと思ってたのによォ…」
ニラギは、一人寂しそうに言った。
もう誰も、ニラギの誘いには乗らなかった。
俺の目には、ニラギが、一人になるのに怯えているように見えた。
「ガフッ…」
「ヒヅル!」
地面に膝をついたヒヅルが、激しく咳き込んだ。
早く治療しないと…!
俺は、着ていたシャツを破いて、ヒヅルの傷口を止血した。
リュックに入っていた薬を取り出そうとした、その時だった。
どこからか、足音が聴こえた。
「………君…は…」
車にもたれかかっていたチシヤが、口を開く。
そこには、ウサギが立っていた。
「あ…なた達…何…してるの…!?」
「ウサギ…!?何で…ここに!?」
「何でって…帰りが遅いから、心配で…さっきのは…やっぱり銃声…?まさか……あなた達…!」
全てを察したウサギは、俺達の方を見た。
ふと、俺と目が合ったウサギは、俺の腕の中にいるヒヅルに目をやった。
「ヒヅル…!!」
満身創痍のヒヅルを見たウサギが、俺達のもとへ駆け寄った。
ウサギが駆けつけると、ヒヅルはウサギに向かって何かを叫んだ。
「ガハッ……!!…が………げ、ろ゛ぉ゛……!!」
「ヒヅル、しっかりして!!」
ヒヅルは、血を吐きながら、濁った声を上げた。
ヒヅルの叫び声は、ウサギには届かなかった。
「………ぎゃ…はは…そう…か…テメェか…そういや…テメェがいたんだっけか…テメェがいるから…アイツはいつまでたっても
「ウサギっ…!!逃げろォッ!!」
ニラギは、ウサギにライフルの銃口を向ける。
いち早く気付いたアリスが、ウサギに向かって叫んだ。
「テメェが…消えれば…オレ達はまた、同族に戻れるんだ…もう…1人は嫌だ…」
「くっ…!!」
ニラギが目に涙を浮かべながら銃の引き金を引こうとすると、アリスは咄嗟にボンネットの上に置いたショットガンを構える。
「ウサギっ…!!」
ニラギとアリスが、同時に銃を構えた。
その直後だった。
――ガアァ…ン!!
――ダァーーーン!!
2つの銃声が、同時に鳴り響いた。
アリスの撃ったショットガンの散弾が、ニラギに命中した。
「ぎゃっ…は……は…」
ニラギは、車のルーフから転げ落ちて仰向けに地面に倒れ込んだ。
「…………………………………ウ…サ…ギ…?」
ニラギを撃ったアリスは、呆然としていた。
だがその直後、ハッとして俺達の方を振り向いた。
「ウサギっ!!」
アリスは、ヒヅルのもとへ駆け寄ったウサギに目をやった。
「嘘……で、しょ……」
俺の腕の中にいたヒヅルが、咳き込みながらも声を漏らす。
俺の目の前には、地面に座り込んだウサギがいた。
そしてウサギの前には、彼女を庇う形で、チシヤが立っていた。
チシヤの腹からは、血が滲み出ていた。
「チ…シヤ…!?なん…で…あなたが…!?」
自分を庇ったチシヤを目の当たりにして、ウサギが目を見開く。
チシヤは、フッと笑みを浮かべたかと思うと、その場に仰向けに倒れ込んだ。
「チシヤっ!!」
「チシヤーーーーーっ!!」