感想や誤字訂正もありがたい限りです。
今日、私はついに素晴らしいアイテムを手に入れた。
それが、実施されているレースの一覧表だ。
何をバカなことをと思うかもしれない。そんなものはスマホでも見れるじゃないかと。
しかし、スマホで調べても一覧というのは中々見るのが大変だ。
レース場ごとのリストややたらと細かい字で書かれたもの、いずれにしろややこしくてたまったものではない。……多分。
それを綺麗に表にしてくれたのがこのアイテムなのだ。
おまけにトレーナーさんによって私が出れるものに印がついているので、レースに出るための条件だとかめんどくさいことを考えなくて良いのだ。
なんでそんなモノがついているのかというと、トレーナーさんの机に置いてあったからだ。
トレーナーさんは色々考えてレースを選んでいると言っていたが、種も仕掛けもこの紙を見ればどれに出たらいいかが大体わかるということだ。
というわけでトレーナーさんがどこかの記者さんと話している間にレースを調べてやろう。
最初に目につくのは皐月賞だ。
太文字で書いてあるしやっぱり凄いレースなんだろう。コースは中山レース場で2000mと少し長めな気がする。
日付を見るとなんと4月19日、一ヶ月も先なのか……
共同通信杯のときは泥だらけになったし、寒いしでレースよりトレーニングの方が楽だとか気の迷いで考えてしまったけど実際にはレースに出てた方が全然楽である。
流石にこの時期に雪とか降らないだろうし。
そういって候補を探すと……やっぱりあった、
皐月賞の2週間前にクリスタルカップというレースがある。
しかも、なんと1200mだけ走ればいいという。いつもの1600mより400m割引のレースらしい。多分40%くらい安くなってる。
中山レース場だし、なかなかよさそうなレースだ。
皐月賞の後を見ると、中山レース場は夏休みらしい。
私より早く夏休みを取るとは怪しからん野郎だ。
仕方がないので東京レース場の方をみるとダービーの文字が目に入る。
よく見るとその一週間前にもGⅠレース、オークスがあるな。たしかエアグルーヴさんが勝ったとか。
比べてみるとどちらも2400mという長めのレースで全く同じ条件だ。
うーん、不思議だ。なにか理由を聞いた気がするけど思い出せない。
まあ、多分ダービーに出るハズなのでその前を見ると
NHKマイルカップ、芝の1600m
というのがある。
距離も短めでよさそうだ。
という事はあと4回走ればほぼトレーニングを休んで夏休みに突入出来る。
そう考えると案外楽な気がしてきた!!
「んえーーー!?? ちょっとまってウィー!?!次は皐月賞って話だったと思うんだけど。なんでクリスタルカップ?それにこのレースって短距離なんだけど。」
「えー、ダメ?」
部屋に戻ってきたトレーナーさんに私特製のレースプランを見せた第一声は声にならない呻きだった。
どうもトレーナーさんは短距離のレースがお気に召さないようだ。
流石は鬼教官、短い距離でさぼろうという魂胆を見透かされていたのかもしれない。
その鬼に対抗するのは私のおねだり顔だ。あのキングちゃんにすら3回に1回は通じるこの力だが、最近のトレーナーさんには効きが今一つだ。
「いやいや、ダメってわけじゃないんだけど急にどうしたんだと思って。」
おっ、意外と効いているのかな。
「1か月もレースが無いと本番の感覚を忘れそうというか、なんか長いなぁと思って」
「あー、レースにもっと出たいのか。まあ確かにここ以外に出れそうなレースはないけど。」
テキトーな返しだったが、なにか腑に落ちた解釈をしているようだ。これだから頭いいひとは・・・私の分まで私の行動の理由を考えてくれるのだからありがたい。
「でもちょっと考えて欲しい。ウィーは一昨日にあれだけ走ってるし、これでまた2週間後に短距離なんか走ったら脚の負担が凄いことになっちゃうよ。確かに短距離は距離が短い分だけ負担が小さいって思うかもしれないが、その分速度が出るからウィーの場合実際の負担はむしろ大きくなることもある。
それに、ダービーは2400m、スタミナが足りていないと無理な走りをしたときに負けないにしても脚を無理に使うことになるかもしれない。いや、でも今でもスタミナは十分なのだろうか。距離適性も……。それに、もし菊花賞に出るとかになったらさらにスタミナを伸ばして……それに菊花賞だけど……登録……たしかに……………………
・・・・
それにNHKマイルカップも出るって……エル……
えっと、ウィー聞いてる?」
出たトレーナーさんの必殺高速詠唱だ。私の脳味噌の処理速度を上回っているので単語は聞こえても理解が進まない。いったいどうしたらこんな速度で単語が出てくるのだろう。
まあ、結局のところ何かしゃべりながら考えを纏めているだけなので、これが出ればごり押せば何とかなることが多い。意外と悪くない演出なのだ。
「走りたいの。お願い!」
トレーナーさんに抱き着きながら上を向いてKOだ。
我ながらすさまじい威力だ。
これですらたまに効かないことがあるのだから恐ろしい。
「ウマ娘の願いを叶えるのがトレーナーだったな。
分かった。分かった。
出られるように調整してみるからその目を止めてくれ。」
その後のゴリ押しによってこの4つのレースに出たら7月いっぱいの休息という言質を勝ち取った。
学期が始まる前だというのに私の夏休みに立ちはだかるのは残るところ試験のみである。なんと素晴らしいウマ娘生であろうか。
クリスタルカップは1200m、先週行われていた日経賞の2500mと比べて半分以下の距離しかない。ただ、困ったことにスタート地点まで歩かされるので意外にお得感は少ないと言えるかもしれない。
レースは終始2番手に付けて直線に入ったら抜くという戦法がトレーナーさんから与えられた。どのレースに出るかは私が決めたので、どう走るかはトレーナーさんが決めるということらしい。
絶対に暴走は止めてくれと言われたが、私を不良みたいにいうのはやめてほしい。そういうのはスズカさんの領分だし、よくエアグルーヴさんに追いかけられているのを見かける。
レースは波乱もなく進み、カーブから出たタイミングで先頭に、そのまま直線を走ればゴールまですぐだ。
掲示板にあるタイムは1:07.3ということで僅か1分ちょっとで私の仕事は終わり。
短距離というのはなんといいレースだろうか。
なお、なぜかトレーナーさんには怒られた。
そしてこのレースはこれだけではない。
このクリスタルカップにはヤマトリブロースちゃん、マチカネソレカラちゃんという何度か走ったことのあるウマ娘も出走していたので声をかけてみたのだ。
前回のスプリングステークスはレース後にハブられていて、大観衆を前にしてボッチ疑惑が持ち上がっていたのだが、今日の私をみればその疑惑は晴れたであろう。
向こうも私と走ったことを覚えていてくれたみたいだった。私のコミュニケーション能力も最近は著しい進歩を遂げているようだ。
すこし顔が強張っていたような気がするが、あと何回か話しかければそれも乗り越えられる気がする。
皐月賞が近づいてみんなそわそわしているかというと案外そうでもない。
スぺちゃんは最近、スズカさんとの練習が増えてうれしいようだ。いつも以上にスズカさんという単語が口から出てくる頻度が高い。
そのスズカさんはといえば皐月賞前日の名古屋の近くにある中京レース場で行われる小倉大賞典というレースに出るらしい。
セイウンスカイさん、もといセイちゃんは最近昼寝部屋には来ていない。
きっと他の昼寝場所を見つけたのだろう。キングちゃんたちとご飯を食べているときに何度か聞き出そうとしたが毎回煙に巻かれてしまう。
そのキングちゃんは、姿を消したセイちゃんの代わりに最近はかなりの頻度で旧理科室に現れる。
脚の調子を根掘り葉掘り聞かれたり、昔話が始まることもあれば、突然宣戦布告されたりする。ただし、そのすべてが膝枕の上でのことなのでなんとも締まりがない。
今日も私はキングちゃんの太ももを頬に感じながら眠るのだった。
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次回は皐月賞予定です。おそらく!!