後半母視点です。
授業と授業の間の時間。いつものように机に突っ伏して寝ようとしていると、近くからなにやらレースについての会話っぽいものが流れてくる。
よくよく聞いているとダービーの話をしているようだ。
そしてその内容は誠に驚くべきことにダービーは運ゲーであるということだった。
慌てて調べてみたものの、ダービーは普通のレースのようだ。間違ってもアイテムがランダムで与えられるとか、くじで走る距離が決められるということもなさそうだ。
まあ、そういうレースもやってみたくないかと言ったらやってみたい。むしろただ走るのではなくてもう少しゲーム性があったほうがレースは楽しめるんじゃないだろうか。
それにしてもじゃあどうしてダービーは運ゲーと言われるのだろうか。
インターネット様に尋ねてみると何やらコースの分析とかレースの時期が何とかとかそれっぽいことが書いてあるがよく分からない。唯一分かったのは運ゲーというよりも勝つと運が良くなるレースらしいということだった。
それはそれで胡散臭い話だ。そんなものに頼らなくても、我々にはシラオキ様由来の加護があるのだ。そうだ、フクキタル様特製消しゴムの力を信じよう。信じる者は救われる。
でもちょっとでいいから、選択問題で正解引ける確率が上がらないかな…。
以前遊んでいた絶叫パワフルウマ娘を寮の部屋に置いていたのだが、いつのまにか同室のステイ先輩(こう呼べと命じられた、まさに暴君である)が勝手に遊んでいた。
それも、割とガッツリとだ。
私が寝ている間にも結構遊んでいたらしいが、よくこの音で起きなかったな私。
2つあるモードのうち、3年間トレーナーとしてウマ娘と二人三脚で成長するモードはたった3年間しかないことが気に入らなかったようで、もう一つのチームのトレーナーになるほうのモードで遊んでいる。
やりこむ前に飽きた私とは違い、かなり熱心にやっているようで自分の育て上げたチームでいかにスズカさんを倒すかに執心しているようだ。
というか、よく見たら私がスズカさんのチームにいる。そう驚いていたら、去年の年末までのレースがゲームに反映されるのだから当たり前だと返された。
なお、ちょうどステイ先輩のチームから皐月賞に出た娘がゲーム内の私に負けたところだったので現実の私のほうに文句がきた。なんでも、ここで負けるとスズカさんのチームに勢いがついて勝ちにくくなるらしい、知らんがな。
というかゲーム内の私は最後の直線でなにやらキラキラしたものを放出しながら走っている。
聞いてみると、なんと領域なるものらしい。そういえば昔聞いたことがある気がする。なんでもウマ娘の魂に刻まれた勝ちパターンと願いが具現化したものとか。なんともオカルト的である。
このゲームにそんな機能があったとは。チュートリアルを総スキップしたせいか全く気が付かなかったと呟いたらため息をつかれた。
それにしても領域とかいうのちょっとかっこいいし、今度のレースで何か出ないかやってみるか。私の勝ちパターンってやっぱり逃げなのだろうか?
うーん。スズカさんは前領域について尋ねたときにはいかに先頭の景色が素晴らしいかという先頭文学を聞かされた上に同意を求められたし、他に聞きやすいウマ娘といえば。
ということでステイ先輩に「先輩の領域ってどういうのですか?」と聞いてみたが返事は「それはゲーム会社に聞いてくれ」とのことだった。いやゲームの中じゃなくて実際の方でといってもやはり「ゲーム会社に聞いてくれ」とのこと。
どういうことだろう。
まあ、とりあえず次のダービーがほんの少しだけ楽しみだ。
スぺちゃんやキングちゃん、セイちゃんまでもダービーでの意気込みを語ってきたくらいだし、やっぱりダービーというのはなんかすごそうなレースなのだろう。
運ゲーだとかあやしげな言説が飛び交うのも納得だ。
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母視点
メイクデビュー以来、娘は勝ちに勝った。
OP、重賞、そして年末にはG1朝日杯に至るまで、レースに出てはその全てをちぎり捨てた。
あえて、小学生の頃と比べて劇的な進歩があるとすればきちんとウイニングライブをこなしていることだろうか。
一体どういう魔法かとトレーナーに尋ねたが、曰くほとんど練習しなくてもビデオを見たら大体覚えてしまうらしい。何それ、怖。
まあ、後に2着以下の練習をしなかったことがあると発覚したため、呆れながら叱ることになったのだが…
最初はクラシック有力候補だったのが、三冠の器、年末には無敗三冠を目指せると騒がれるまでになった。
気が早いなと思う一方で、全く否定できないのも確かだ。
そして、年が明けて最優秀ジュニアウマ娘への選出、会見の場に登壇した娘は堂々と無敗宣言。
おそらくなにか別のことでも考えながらの発言なのだろうが、同世代のみならず全てのウマ娘への明らかな宣戦布告である。
当然世間もネットもざわついた。多分トレセン学園もざわついた。知らぬは娘一人であろう。
が、それらを娘は全て黙らせた。
京成杯、共同通信杯、スプリングステークス、クリスタルカップ。
意味不明なレース選択でその全てを力でねじ伏せた。もしも、ということすら許さないそんなレース運びをしてみせた。
そして、GⅠ連戦となった皐月賞にNHKマイルカップ。
世代の有力ウマ娘に対して改めて地力の差を見せつけた。
12戦、12勝。9ヶ月で出れるだけレースに出てその全てを勝った娘はそろそろ伝説に脚を突っ込み始めている。というか両足突っ込んでいる。
ちなみに、そんな娘にレースにやたら出ている理由を聞くとレースで走ることの楽しさとか取ってつけたような理由を言い始めた。ものすごーく目が泳いでいたので問い詰めると、レースに出るとトレーニングが2週間休みになるかららしい。
なんという奴だと思ったが、どこか納得してしまってそれ以上は聞けなかった。
まあ、それでレースを走るならほっといても大丈夫か。
最後の懸念事項は遠征だ。
娘がこれまで走ったレースは全て東京か中山。夫は応援に行きやすくて良いなんて言っているが、まず間違いなく娘の希望だろう。
もともと長距離の移動を嫌っていたし、ましてやレースのための移動に抵抗しないはずがない。
やりかねない。宝塚記念ファン投票一位だけど出走しないとか、天皇賞春のかわりにOP特別に出るとか。
そして、目下最大の心配事は秋の菊花賞だ。
京都で長距離レース、あの子が嫌がる理由がてんこ盛りだ。流石に三冠というのは認識しているだろうし、勝たなくてもいいからせめて出走はするだろう。と思いたいが、一方で前日になってお腹が痛いとか縁起が悪いとかあからさまな理由でサボろうとする姿があまりにも容易に想像できてしまう。
念の為と思ってトレーナーに連絡すると、言葉を詰まらせて困り果てていた。なんでも、最初の契約の時に遠征はしないと約束したらしい。
そりゃ、トレーナーというのは担当ウマ娘の願いを叶える存在と言えばそうだが、あくまでも大人と子供という関係だ。サボり癖を直すのは教育の範疇だとは思う。もっとも私も失敗しているので、無理にやれというわけにもいかないが。
それに、娘の願いを叶え続けたらタダのニート養成コースになってしまう。というか今がすでにその気配があるぞ。なんだ、担当ウマ娘の好きな漫画を取り揃えてジュースとお菓子のストックを管理するって。
それにあれだけ懐いているんだから、お願いくらい聞きそうなものだ。
加えて、娘本人はそういう約束自体そろそろ忘れてそうな気がするが。
にしても、あそこまでトレーナーに懐くとは。
普段よっぽど甘やかされているに違いない...
評価、お気に入り、感想、ここすき等よろしくお願いします。誤字報告もいつもありがとうございます。
次くらいにダービーにすると思いますが、また投稿間隔が空くかもです。