ガラスの脚系TSナマケモノ娘   作:ヤキブタアゴニスト

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今回は短めで母視点です。


閑話1

私の娘、ウィトルムペデスはまぎれもない天才だ。

  

小学生になるより以前、幼少期のころから単純な身体能力は高い方だと思っていたが、周りのウマ娘以外の子との比較のせいだと思っていた。親バカの自覚もあった。

 

おかしいと思ったのは6歳の時だ。買い物から帰ってきたら娘が夫を担いで走り回っていたのだ。

夫はウマ娘というのはこういうものだと思っていたようだが、私の子供のころと比較したら明らかにおかしい。おそるべき体幹と筋力である。

 

 

 

 

決定打となったのが小学校の運動会だった。ウマ娘の身体能力でヒトと競うのは危ないので、ある程度の年齢になると運動会の種目としてウマ娘用の短距離レースが行われるのだ。

スタートライン上でいかにも面倒くさいなあといった表情の娘を見て真面目に走るのかと心配していたが、それはいい意味で裏切られた。

 

スタートを切ったとたん、トゥインクルシリーズにでているウマ娘かと思うほどの綺麗なフォームと爆発的な加速で全てを置き去りにしたのだ。けり上げる土の量からは普段のだらけぐあいからは信じられないほどのパワーを感じることができ、レース後に息が乱れていない様子からはスタミナ面の強さをも予期させる。

 

周囲の人は単に速いとだけ思っているが、まがりなりにもトレセン学園に通っていた私には分かる。これは大変な才能を授かってしまったと。

 

 

その才能に反して娘はグーたらしていた。

現役時代、脚を壊すほど練習に打ち込んでなんとかオープンに届いた程度の私からはなんとももどかしく思えた。もっとも、私はそのせいで脚の怪我から引退しているので猛練習が正しいというわけではないのだが。

 

私の期待感に対して全く以て走ることに興味を持たない娘、そしてその才能を理解せず単なる親バカで褒める夫。どうしようかと考えた結果が娯楽で釣るという結論になったのは当時の私の悩みの深さ故であったと思う。

 

娘は自分の脚で走ることに特に興味を持ってはいないようだったが、休日に夫と対戦ゲームで遊んでいたりすることから競い合うことは嫌いではないのだろうと考えたのだ。

大会に出て勝ったり負けたりすればレースの世界の楽しさを知るだろうと。そのためならば、最初のうちはレースをしたらいくらかお小遣いを上げることは結果として娘にとって良いことになるだろうと。

 

トレセン学園を目指すなら前提となるような地域のクラブでトレーニングしたわけでもない、大した名門でもなく専属のコーチもいない。はっきり言って舐めているとしか言えない状態ではあるものの、この娘ならなんとかなるのではという気持ちは確かにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、蓋を開ければ蹂躙であった。

 

レースの距離や対戦相手、天候やコースの状況。そんなものは一切関係なく娘は全てに勝った。勝ってしまった。

 

終盤まで先頭の子に追従し、最後の100 mで抜いてあっという間に置き去りにした。来るレース来るレースこれを繰り返した。地域で有望視されている娘、名門クラブで力を付けてきた娘、私でも名前を知っているようなレースの名家出身の娘。彼女たちの挑戦を娘は容易く跳ね返した。いや、娘にそんな意識はなかったに違いない。

 

娘にとってレースとは勝ち負けがつくゲームではなく作業のようであったのだろう。時折レースの話題を振ってみたが、何度も一緒に走れば名前は覚えるもののそれ以上の感想は持ち合わせていないようだった。

 

私は頭を抱えた。そして相変わらず餌を用意しなければ大会に出ようとしない。

 

いつしか大会の優勝でもらった図書カードで週刊少年誌を買うことを覚えた。

なお、同封されているメダルや賞状は段ボール箱に纏めて入れられているのを発見し、以後私の寝室に飾っている。ちなみに、同封されていると書いたのは空気の読めない娘が大会途中で帰り、表彰式に残らなかったために後日郵送されてきたせいだ。

 

新作ゲームが発売されず、欲しいものがないときには全く大会に出ずに家に引きこもる。このせいで一時、娘は病弱なのではという説がささやかれていたようだ。それを聞いたときは笑うのを我慢するのが大変だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園への入学が近づくにつれて、我が家の周りも俄かに騒がしくなってくる。

最初は地域で有名なウマ娘といった程度であったが、勝ちを重ねていき他の有望株すらも完封する様子から注目度がどんどん上がっていった。大会成績からトレセン学園への推薦入学が決まると、今度はトレセン学園のトレーナーまでもが大会に視察にくることすらあった。

 

肝心な娘は大物なのか単に鈍感なのか特に気にするそぶりを見せない。いつも買ってる週刊少年誌の隣で売っている注目のウマ娘特集に自分のことが載っているのだが、気がつかないものなのだろうか。

 

物憂げな表情でどんな相手も退ける実力者、孤高の天才、ゴール直前での爆発するような末脚。周りのウマ娘がまるで見えないガラスの壁で阻まれたような錯覚さえ覚えるラストスパート。そんな表現とともに数々の写真が紙面を飾っていた。

 

当然周囲は中央、府中のトレセン学園に進学すると思っている。私もそうであればと願った。

 

そしてもっと意外なことに娘本人もその気のようだ。ああ見えて意外にレースを楽しんでいたのだろうか……普段の様子からはあんまりそういう風には見えなかったような……でもあの理事長相手にもしっかり意思を伝えていたので大丈夫だと信じたい。

 

 

 

 

 

 

 




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そのうち掲示板形式もいれるかも。


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