乾いた秋の日差しに照らされて、今日は東西共にとんでもないことになっています。
異例の7人という少人数で行われる毎日王冠。しかし、決して、決してレベルが低いわけではありません。むしろその逆、精鋭揃いのメンバーが集まりました。
その中においても中心になるのはやはりこの2人でしょう。
何者をも寄せ付けない究極の逃げウマ娘。影をも踏ませぬ異次元の逃亡者、2枠2番サイレンススズカ。
覇者の名乗りを上げてから全てのレースを力でねじ伏せて一切の異議を許しません。クラシック覇者、7枠7番ウィトルムぺデス。
逃げと逃げ、最速と最強の激突。
そして、それに異議を唱えに来たのがエルコンドルパサー、そして復帰戦となるグラスワンダーというところです。
15万人を超える観客が集まりました東京レース場、レースが始まる前から場内大歓声です。しかし、ここにいるウマ娘たちはこの大歓声にびくともしません。
誰もが歓声を背負って勝つ覚悟を持ってここにきました。
枠入りは順調に進んでいます。
もう小細工はありません。力と力、速さと速さのぶつかり合い。府中の1800mでの真っ向勝負。最後に一番外ウィトルムペデスがゲートに収まりました。
今、スタートしました。
グラスワンダーが少し出遅れたか、しかしすぐに持ち直します。すっと落ち着いて位置取りを狙います。ウィトルムペデスはいいスタートを決めています。
綺麗な芝を踏み越えて、先頭はやはり行きます、サイレンススズカ。当然です。そして外からウィトルムぺデスも前に出ます。今日も行きます。サイレンススズカがいてもお構いなしの逃げの姿勢。
サイレンススズカとウィトルムペデスの大逃げ対決になりそうです。
前に出た2人。内、サイレンススズカ、外からウィトルムぺデス。さあ逃げ同士、ハナをどっちが奪うのか。
3番手に前を伺うエルコンドルパサー。外目黄色いゼッケンはハヤテランニング。
その後ろエムテイハリケーンが追走。その外からは復帰戦のグラスワンダーは早くも盛り返している。
おおっと、行った行った。直線のうちに早くも脚を使ってサイレンススズカが主導権を奪いました。ウィトルムぺデスはそれを見るようにやや外目でレースを進めています。サイレンススズカをぴったりマークしてのレース。
サイレンススズカはさらに加速。しかし、ウィトルムペデスもサイレンススズカにリードを取らせません。外半バ身についてサイレンススズカの加速にぴったりついて行きます。
どんどん引きはがして後続とは既に7バ身、8バ身離れて3コーナー入口に入っていきます。
最初の800mは45.4、45.4のハイペースで飛ばしている。サイレンススズカは、ウィトルムペデスはもつのか、このペースで本当にもつのか。
2番手、ハヤテランニング、その外からエルコンドルパサー。そして、さらに外からグラスワンダーが早めに上がってくる。
ここが仕掛けどころか。それともまだ脚を溜めるのか。
さあ、前に迫るかグラスワンダー。しかし、前も飛ばしている。ぴったりとマークしているのはウィトルムペデス。
大ケヤキを抜けて依然先頭はサイレンススズカ。
サイレンススズカが差を広げようとするも、それを許さないウィトルムペデス。猛追するグラスワンダー。エルコンドルパサーも上がっていく。
まだ先頭は並んでいる。4コーナーに入って先頭との差は5バ身あるかというところ。
ウィトルムペデスはハナを取ろうと前に出るが決して許さないサイレンススズカ。
クラシックの覇者か、シニアの王者か。
意地と意地、プライドとプライドのぶつかり合い。
しかし、そこに後続の5人も一気に詰め寄ってきたーー!
さあ、最後の直線、目を離せない真っ向勝負。
外目から前を狙うグラスワンダー、エルコンドルパサーも差を詰めに行く。
府中の大歓声を浴びて、先頭の2人は並んだままリード依然4バ身から5バ身。
ああっと、ウィトルムペデスが勝負に出た。踏み込んで前に押し出していく。
凄い脚だ。凄い脚だ。一気に加速したーー!
まだこれを隠していたのか!!
あっという間に先頭を取った。サイレンススズカも負けじと加速する。
後ろからのグラスワンダーは伸びが苦しいか。ハヤテランニングも内をついて上がってくる。エルコンドルパサーは外に出ながら脚を伸ばすが差が縮まらない。
坂を上る!
ウィトルムペデス、先頭逃げる逃げる。差を広げていく。
サイレンススズカが食らいつくが、苦しいか。じりじりと引き離されていく。
後ろは苦しいレースになっている。
残り200を切った。
サイレンススズカ意地の加速。
しかし、ウィトルムペデスだ。ウィトルムペデスだ。なんと差を広げていく。
こんなウマ娘がいていいのか。
3番手はエルコンドルパサーだが間に合いそうにない。
勝ったのはウィトルムペデスーー!王冠は一つたりとも譲らない。
なんと、この府中の場でサイレンススズカを下しました。
サイレンススズカは2着。
とんでもないレースになりました。
見事な逃げ切り勝ち、ウィトルムペデス。秋の戦いに向けて覇道を行くウィトルムペデスに恐れるものなし。
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ウィトルムペデス視点
毎日王冠のレースはダービーの時か、はたまたそれ以上に沢山のお客さんが入っているようだ。まあ、どっちにしろ5万でも10万でも沢山以上のことは良くわからないが、歓声の大きさで何となく分かる。
そして、今日のレースはスズカさんが1番人気、私が2番人気だそうだ。
流石はスズカさん、人気者だなぁ。私の鋭い分析眼によると独特の天然ボケと走っているときのギャップがファンに受けているんだと思う。
作戦についてはあれだけ悩んでいたトレーナーさんだったが、結論は至ってシンプル。
4コーナーまでスズカさんについていき、直線入って坂の前に加速して抜けというものだった。
いや、あんなに考えてこれかい。まあ、覚えやすいからいいけどね。
ゲートの隣はグラスちゃんだったが、ゲートに入る前はじっと私の方を見ながら何か呟いていて物凄く恐かった。
なにか呪いを掛けられているかと思ったが、グラスちゃんに限ってそれはないだろう。グラスちゃんなら直接切りかかってくるはずだ。
レースが始まると、スズカさんが前に出ていく。
流石はスズカさんでグイグイと前に行ってくれるので、何も考えずに後ろに付けているだけでスイスイ進んでいく。
自分で先頭を走らなくていいのって意外と楽なのかもしれない。時々加速したり、ペースを落としたりするスズカさんにくっ付いて走るのだが、先頭を行くウマ娘というのはこうしてペースをコントロールするものなのだろう。
だけど、直線からカーブに入ると事情が変わってくる。
グラスちゃんが物凄い勢いで後ろから迫ってくるのだ。
私も少しレースに慣れたようで以前ほどは恐くはなくなったものの、背中にじりじりとプレッシャーを感じる。
それに押されて少し前に出ると、スズカさんもそれだけ前に出る。それを繰り返して私もスズカさんも少しずつペースが上がっていく。しかし、芝が綺麗で走りやすいのと、スズカさんが風を除けてくれるので意外とスタミナを使わずに走れている気がする。
それでも、直線に入る頃には後ろからグラスちゃんやエルちゃん、他のウマ娘も結構迫ってきている。
だけど、後は真っすぐ走ればいいだけだ。
そこまで疲れている感じもしない。
もう、いろんな事は考えなくていい。
数歩走れば視界には芝だけが映る。
大きく踏み込んで空気をかき分け、私は一気にゴールへと飛び込んだ。
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間に合ったぜ、明日は現地参戦してきます。
勿論、取材のためですとも。ええ、ほんとに。