秋の天皇賞というのはなかなかに凄いレースらしい。勿論知ってはいたものの、実際に東京レース場は入口からして大渋滞だ。
私は学園から直接いけるのでこの混雑の中を歩く必要がないので、こうしてベンチに腰かけて気分よく眺めることができるのだ。まさしく通勤するサラリーマンをカフェに座って優雅に眺めるニートの図である。
哀れな観客たちは混みあって詰まった通路からこっちの内心も知らずに手を振ってくる。テキトーに手を振り返すだけで、全体から歓声が上がる。まるで水族館でこっちの手に反応して寄ってくる魚とかを見ている気分だ。
少し早くレース場に入りすぎたのでレースの準備を始めるまでは休憩だ。
何やら忙しそうにしているトレーナーさんを一旦置いて、コースの内側エリアに向かう。ここには昨年とあるウマ娘から勧められて以降、私が気に入っているお昼寝スポットがあるのだ。
その名もふわふわドーム。要するに丘のようになっている白いトランポリンなのだが、ここで横になるのが最高なのだ。ただし、夏は表面が熱くなりがちなのが難点で随分ご無沙汰だった。けれど、今日のような日にはちょうどいい塩梅だ。
しかし、以前のように入ろうとすると、なぜか係員さんに止められてしまった。
「小さい子向けなので」との事だが、私は子供だし背も小さいほうだと自負しているんだけどなぁ。粘ったもののレースで走る方は控室のほうでと言われてしまった。これは要するに「お前はレースでも走ってろ、この場所には来るんじゃねぇ」ということだろうか。
もしかして保護者同伴が必須だったりするのだろうか、こんなことならトレーナーさんを連れてきていればよかった。
それにしても、私がレースに出ることを一瞬で見抜かれるとはと思ったが、よく考えたら勝負服を着たままだった。
仕方がないので近くの芝生で寝ていると、キングちゃんとセイちゃん、それからグラスちゃんとエルちゃんまでやってきた。なんでも、トレーナーさんから依頼されて連れ戻しに来たらしい。よく見ると、そろそろ準備をしないといけない時間だ。
4人からの「負けたら許さない」との激励?の言葉に感謝を告げ、私は慌ててレースの準備に戻るのだった。
ハプニングがあったとはいえ今日の私は調子も万全。こうしてゲートの中にいる今も集中力は全く切れていない。トレーニングによってスタートダッシュも上手くなっているし、トレーナーさんの作戦通りスズカさんより前に行くのもそこまで大変ではないと思う。
そういえばレースもあと3回だし、走り終わったら1本ずつ 「ガコンッ」
うえ!?
やばいっ、出遅れた!!!!!
ワンテンポ遅れてゲートを飛び出した私がみたのはターフを疾走していく幾多の背中たちだった。
一番内側のスズカさんは当然逃げて前に行っているだろう。
スタート直後からあまり飛ばしすぎるとスタミナ切れが怖いと聞いたものの、ここで後ろにいても仕方がない。コーナーで内側に集まってきたバ群を外から一気に抜きにかかる。
大げさなくらいに外に回りこんだので少々ロスをしたものの、そのお陰で前が良く見える。
スズカさんは、今日はいつも以上に飛ばしている。
脚を使って強引に抜いていき、ステイ先輩も抜いていく。
レース中のステイ先輩はいつも以上にやばい雰囲気を感じる。隣を走っていると噛みつかれそうだ。
が、そうやって直線に入るころまでに巻き返したものの、スズカさんの背中はまだまだ先だ。もう一段速度を上げて追走するものの、スズカさんもそれに応じて速度を上げてくる。
そうなったらこっちも意地だ。
強引に加速してじりじりと距離を縮める。
直線の終わり、カーブに入る頃には視界に入るその背中は随分大きくなっていた。
このまま外から回りこんで一気に抜いてしまおうとするも、流石のスズカさんである。
多分いつもより大分速いペースで抜きつ抜かれつを繰り返してカーブを曲がっていく。
次の瞬間、私の世界はダービーで感じたような領域に飲み込まれ、世界は幸せに包まれた。
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ファンファーレに導かれて、今日の東京レース場は当然超満員です。
秋はここから始まる。GⅠ、天皇賞秋。芝2000mで争われます。
注目は当然、無敗の三冠のかかる菊花賞ではなくこのレースを取りに来たウィトルムペデス。そして前年の覇者、毎日王冠での雪辱を果たしにきたサイレンススズカ。誰もが夢見るこの場所での2人の逃げ比べ。
ゲート入りの段階から既に大歓声がコース全体を覆っています。
最高の舞台、最高のメンバーが揃いました。そしておそらく、最高のレースとなるでしょう。
ゲート入りは順調です。今、全てのウマ娘の態勢が整いました。
さあ、栄光のゴールは2000mの彼方。
秋の天皇賞が今、スタートしました。
ああっと、ウィトルムぺデス、ゲートを出るタイミングが合いません、少し立ち遅れました。5バ身ほど後ろからのレースになりました。ここから巻き返していけるのか。
先頭は早くもサイレンススズカです。内ラチに沿ってひと息で後続を突き放します。他はバラバラとなって、バ群は最初の2コーナーに向かいます。
おっと、ここでウィトルムぺデスは一気に前を伺う。
内に入ったバ群を一番後ろから外を回って躱していこうというところ。後ろからのレースではなく、前、前での積極策に打って出ました。末脚勝負は厳しいと見たのでしょうか。
第2コーナー回って先頭はサイレンススズカ。サイレンススズカがぐんぐんと快調に飛ばして行きます。
なんと9バ身ほど離れて2番手にファーサイドフェイク、外からはステイゴールド、今日は前目からレースを進めます。
そして、あっという間にここまで上がってきたウィトルムぺデス。外を通って2番手に上がろうというところ、早くも波乱が起きています天皇賞秋。
中団に控えるのはメジロブライト。天皇賞春秋連覇を狙うウマ娘はここにいます。
その外、エムテイハリケーンはここに控えています。
先頭、サイレンススズカが止まりません。逃げる逃げる。それをウィトルムぺデスが懸命に追いかける。ウィトルムぺデスと後続の差がぐんぐん広がります。
しかし、サイレンススズカ、ウィトルムぺデスから10バ身くらいのリードで先頭を引っ張ります。
大逃げウマ娘2人によるとんでもないレースが展開されています。場内大興奮、満員の客席がどよめいています。
ああっと、ウィトルムぺデスが踏み込んで一気にサイレンススズカの背中を追う。この走りで最後まで持つのでしょうか。
サイレンス逃げる、後ろからウィトルムぺデスが迫っていく。早くもその差は6バ身にまで縮まってきた。
もう2人だけのレースが展開されています。後続はここまで引いてようやく映りました。
後続もバ群が長くなってきました。3番手に上がってきたのはステイゴールド。メジロブライトは中団からジリっと押し上げた。
ウィトルムぺデスは何としても先頭を取る気なのか、ものすごい脚を使って前へと迫ります。秋の盾だけは絶対に渡すわけにはいかないサイレンススズカ。そして秋の盾こそ絶対に手に入れたいウィトルムペデス。
向正面から3コーナーに入る手前、ウィトルムぺデスさらに加速してサイレンススズカに並ぶ勢い。しかし、サイレンススズカも先頭は渡しません。
そして残り1000を通過は57秒1。
内、サイレンススズカ、外、ウィトルムぺデス。3コーナーでようやく捉えるか、それともサイレンススズカが突き放すのか。
内か外か、両者譲らないデッドヒート。後続とは20バ身近い差をつけています。この速さで果たしてゴールまで持つのでしょうか。
3コーナーから4コーナーへというところ。
800の標識を通過。
後ろから上がってこようとするのはファーサイドフェイク。それからステイゴールドというところ。メジロブライトは間に合うのか。
さあ、レースはここから第4コーナー、そして最後の直線の攻防に入っていきます。
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