ガラスの脚系TSナマケモノ娘   作:ヤキブタアゴニスト

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注意:本日2話目です。前話未読の方はそちらから先にどうぞ。


ジャパンカップ2

後ろのウマ娘は来ないのか。

あーっと、ウィトルムぺデス、さらに一気に加速。

残り500を切ってまだこんな足を残していたのか、後ろを突き放していく。

 

2番手エルコンドルパサーが前に抜け出すが、その差は開く一方。

 

完全なる独走状態に入った。このウマ娘には世界すら狭すぎるのか。ウィトルムぺデスだ、ウィトルムぺデスだ。全く脚色は衰えない。むしろさらにぐんぐん加速していく。これほどか、これほどまでに圧倒的なのか。

 

スタンドからは大きな拍手。

 

あまりにも大きなリードを保ったまま坂を上っていく。

 

残り200を切った。

 

ウィトルムぺデス先頭。ウィトルムペデス先頭。まだ速くなる、どこまでいくのか。

 

後ろからは誰も来ない、来れない、来させない。差はますます広がっていく。

 

世界よ、これが、これがウィトルムぺデスだ。衝撃の走りで今ゴールイン!

 

 

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ウィトルムペデス視点

 

 

あっという間に時は過ぎ、ジャパンカップ当日になってしまった。

けたたましく鳴り響く目覚ましの音で目が覚めて着替えに向かう。

なんと言うかいつもより調子がいい気がする。ステイ先輩にも元気そうだと言われたので間違いないだろう。

 

レース場ではなぜかキングちゃんに手を引かれていたので昼寝が出来なかったのだが、今日はいつもより気分がいいし昼寝する程眠くも無かったしまあいいか。

何となくレースを眺めているとあっという間にレースの時間になっていた。

 

トレーナーさんの最終チェックを受けて準備完了、パドックへ。

そういえば、今日は海外からすごいウマ娘が来るはず......なんだけど見渡してもそれっぽいウマ娘はいなかった。

 

何人かのウマ娘が英語を話していたがそのくらいで、私が期待していたような珍ウマ娘の姿はそこには無かった。

まあ、私は英語とかわかんないので何か面白いことを言っていたのかもしれないが。

なお、エルちゃんは楽しそうに英語で話していた。うーん、なんかかっこいいな。

なんか話しかけられるのが怖いし、出来るだけ距離を取っておこう。

 

 

 

トレーナーさんからの指示はいつも通りの大逃げ。他に大逃げをしそうなウマ娘もいないので自分のペースで走っていいとのこと。他にも聞いた気がするけど多分忘れた。

 

 

 

 

 

外国のウマ娘だろうとなんだろうと、ゲートに入ってしまえばやることは走るだけである。見た感じ一輪車に乗っていそうなウマ娘もいなかったし...

スタートはうまく出来たと思う。少なくとも出遅れたということは無いだろう。とりあえずは前に他のウマ娘の姿は見えない。

 

とりあえず内側に入りながら踏み込む力を強めて前に出ていく。すぐに私の目にはコースの芝以外のものが入らなくなる。

 

あとはコースの内側にピッタリ寄ってぐるりと一周まわるだけ。だけとはいうもののやっぱり長いな。似たようなことをダービーの時も思ったけど……

 

 

 

最初のコーナーを過ぎて……なんかいつもよりペースが遅い気がする。リードは取れているもののもう少し加速しておこう。

 

その後も私の細やかなペースの調整のおかげでちゃんとリードを取れていると思う。振り返ったわけではないが、足音が結構遠くに聞こえるので大丈夫だろう。

 

まあ、ペース調整って言ってもなんかちょっと遅いなと思ったらちょっと加速するくらいなんだけどね。

 

うーん、やっぱり調子が良いのかいつもより疲れも少ない気がする。それか、スタミナトレーニングのおかげなのかな。

足音も近づいてこないのにもう最後の直線まで来てしまった。そういえば、今日のレースは領域に入れていないなぁ。最後にもう一回くらい入っておきたいんだけど。

 

まあ、今日はいつもより元気があるし思いっきり最高速で走ってみよう。有記念でレコードを出す為の訓練とでも考えればいいかな。

 

一歩ごとに前の一歩を超えるように、脚をさらに強く地面に叩きつける。そのたびに両脚に伝わる衝撃は増していき、身体が弾けるように前へと押し出される。

加速する度に、芝と土が私の蹴りの力で宙へと舞い、まるで精密に組み上げられた機械のように脚が滑らかに回転し続ける。空気を切り裂き、風圧さえも追い風に変えるように、私は進む。

 

ゴールまであと200メートルのハロン棒が視界に入るが、始めてしまった加速はもう誰にも、私自身にも止められない。スタンドにいる観客たちの姿が流れ去る速度は増し、喧騒の音も遠のいていく。視界の中で残るのは真っすぐに伸びる緑の道だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま私はゴールする……はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールを過ぎた瞬間、私の右脚からあり得ない音が響いた。

バキリ、と耳を裂くような音と同時に、激痛が全身を貫き、容赦なく身体を支配する。痛みで視界が歪み、思わずバランスを崩した私は、左側に大きく傾いた。

 

そのまま内ラチに叩きつけられたとき、衝撃が体中に波のように広がる。無理やり前に出そうとした次の一歩で、今度は左脚に鋭い痛みが突き刺さった。脚が自分のものではないかのように重く感じる。

 

 

殺し切れない速度のままふらつく足取りで数歩進んだところでバランスを崩し、私は地面へと叩きつけられた。冷たい芝の感触が頬に伝わった瞬間、意識が闇に引きずり込まれるように消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ました時に見たのは泣きはらした両親とトレーナーさんの顔だった。それを認識した次に襲い掛かってくるのが全身から感じる痛みだった。

 

記憶を辿ってみると、どうやら私は盛大にレースでこけたらしい。この痛みはこけたときに全身を打ち付けたせいなのかな。レースとはいえ、ただ真っすぐな芝の上を走っているだけで転ぶとは我ながら全く困ったものである。

 

それにしても、レースで速度が出ていたせいなのか、随分長い間気絶していたようだ。窓から見える景色は既に真っ暗だ。

 

そこまで考えたところで、ようやく両親やトレーナーさんが落ち着き始め、横にいたお医者さんが今の私の状態を説明してくれた。

 

曰く、私は走っている途中にその速度に耐えられず脚の骨が砕けてしまったらしい。なんでも最初に右の足首あたりにある幾つかの骨が粉砕骨折を起こし、その周辺のいくつかの靱帯が切れたのだとか。さらに、膝のなんちゃら靱帯も損傷を受けているのだとか。そして、無理な体勢で突いた左脚も先っぽの方の骨をつなぐ靱帯が切れたり、なんとかいう腱が炎症を起こしかけているのだとか。

 

 

 

聞いていてなんかグロい感じがしてきた。というかレースで脚の骨って砕けるんだ。ボクシングとかアメフトとかは骨とか折れる覚悟でやるって聞いたことがあったけど、まさかウマ娘のレースもそうだったとは。怖すぎないか。

 

 

どのくらいで治るのか聞いてみたら、まだ検査とかを進めないと分からないとの前置きの上で、最低でも歩くのにも数か月はかかるらしい。そして、非常に言いにくいのですが、とまた一旦ためを作ったあとで放たれたのは、おそらく二度とレースでは走れないという言葉だった。

 

 

 

 

 

いや、走らないよ。どっちみち有記念で引退しようと思ってたんだし、まあタイミングが良かったといえば良かったのかな。

 

とか考えていたら脚が痛くなってきた。どうやら麻酔が切れつつあるらしい。

うーん、良くはないか。引退はしたかったけどこんな痛い目に遭いたくはなかったよ。

 

そして、トレーナーさんは泣き出すのやめてよ。泣きたいのはこっちだよ、イテテテ。

 

 

 

まあ、手は動くわけだし、しばらくはベッドの上でゲーム三昧しますかね。

 








高評価、お気に入り、感想、ここすき等よろしくお願いします。誤字訂正もありがたいです。








お読みいただきありがとうございます。次回で本編自体は最終話にする予定です。その後はifとか他視点等々と細々と追加していこうと考えています。
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