覇者ローテ
ハシャローテ
覇者ローテとは、競馬ファン用語の一つ。春はクラシック3冠路線を進み、秋は菊花賞ではなく天皇賞秋に進む3歳競走馬の出走ローテーションを指す。
覇者ローテの名称は98年のクラシックを圧倒的な力で蹂躙して覇者と称されたウィトルムペデスが走ったことに由来する。
□覇者ローテ
覇者ローテと言われるものには使用者によって多少の差異はあるものの最も一般的なものは以下のローテーションである。
GⅠ 皐月賞
GⅠ NHKマイルカップ
GⅠ ダービー
GⅡ 毎日王冠
GⅠ 天皇賞秋
ただし、これらすべてに出走する馬はほぼ皆無なためメディア等では皐月賞、ダービーの後に天皇賞秋に向かうローテーションを覇者ローテと称する場合も多い。また、毎日王冠を除くパターンで語られることもある。
皐月賞からダービーまでの路線は3歳芝路線の牡馬が春に出られるGⅠレースを並べた形であり、いわゆるマツクニローテと呼ばれるものを含んでいる。秋についてもマイルから中距離適性の馬が使うことの多いレースであり、距離適性から菊花賞に進まない3歳馬としては珍しくない。ダービーの距離が2400mとやや長いものの、他の4レースは1600mから2000mに集中しておりマイルから中距離適性のある馬にとっては、菊花賞よりも問題なく走れる距離のレースといえる。
こう書くとあたかも一般的な路線と思われがちだが、はじめからこのローテーションを走り切ろうと考える陣営は存在しない。従って、これら全てに勝利した馬はウィトルムペデスただ一頭であり、今後も存在しないと考えられる。
□覇者ローテ
覇者ローテを構成する5つのレースのうち4つがGⅠレースであり、残りの毎日王冠もGⅡながら有力馬が集まりやすいいわゆるスーパーGⅡになることも多い。そして、毎日王冠と天皇賞秋は古馬との闘いになる点でも単純に各レースでの勝利の難易度が極めて高い。
また、春の時点で皐月賞に必要な早熟性、ダービーに必要なタフさ、そして秋には古馬戦線とやりあえる成長性と異なる特性が求められるという点でも困難である。すなわち春の段階で世代の頂点に立ち、秋には世代代表として古馬に挑む必要がある。
そして、何より皐月賞を勝ってダービーが狙える馬がNHKマイルカップに出走し、春に変則三冠を成し遂げた馬が菊花賞を取らずに天皇賞秋に進むというのはよほどの事情がない限り考えにくい。
これは種牡馬価値を考えても、翌年以降もチャンスがある上に距離適性は既に示している天皇賞秋と、勝てば三冠とマイルから長距離までの適性を示せる菊花賞では後者の優先度が極めて高いためである。また、菊花賞前に毎日王冠への出走は距離延長の面から考えにくいため、秋初戦の段階で菊花賞を断念しているという条件も加わる。
さらにハイレベルなレースを連続で出走することによる身体面への負担も非常に大きく、春のGⅠ三連戦の時点で消耗が激しい場合が多い。
これらのことから、ダービーで距離適性が原因で敗れて菊花賞に進まずに天皇賞秋に進むのが現実的な路線完遂であり、実際に全てを勝利する馬が出てこない理由であると言える。
□ウィトルムペデスの場合
| 1998/03/22 | 中山 | GⅡ | スプリングステークス | 1人 | 1着 | 芝1800m |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1998/04/05 | 中山 | GⅢ | クリスタルカップ | 1人 | 1着 | 芝1200m |
| 1998/04/19 | 中山 | GⅠ | 皐月賞 | 1人 | 1着 | 芝2000m |
| 1998/05/17 | 東京 | GⅠ | NHKマイルカップ | 1人 | 1着 | 芝1600m |
| 1998/06/07 | 東京 | GⅠ | 東京優駿 | 1人 | 1着 | 芝2400m |
| 1998/09/13 | 中山 | GⅢ | 京成杯オータムハンデ | 1人 | 1着 | 芝1600m |
| 1998/10/11 | 東京 | GⅡ | 毎日王冠 | 2人 | 1着 | 芝1800m |
| 1998/11/01 | 東京 | GⅠ | 天皇賞秋 | 1人 | 1着 | 芝2000m |
| 1998/11/29 | 東京 | GⅠ | ジャパンカップ | 1人 | 1着 | 芝2400m |
覇者ローテの創始者であり、当然ながら唯一全てのレースに勝利した馬である。なお、実際のローテーションは皐月賞の前にスプリングステークスとクリスタルカップを走っており、さらに京成杯オータムハンデも走っている。ウィトルムペデスと言えばジャパンカップが最も有名ではあるが、この路線の完全制覇も競馬界のラスボスと言われる所以である。
ウィトルムペデスは2歳時点で既に6連勝とクラシック戦線の主役として期待されており、皐月賞からダービーへの出走は既定路線であった。しかし、レース以外での調教拒否や引き運動ですら嫌がることからレースを増やして感覚を失わないようにする必要があり、結果として過密路線に進むことになった。しかし、ダービーでの途中失速等から連戦による疲労は目に見えない形で蓄積されていたと思われており、馬が自己管理していたという説も根強い。
秋も当初は菊花賞へのルートが考えられていたものの、輸送での消耗があまりに激しすぎたため東京もしくは中山でのレースでローテーションを組むことになった結果が天皇賞秋へ出走であった。特に、無敗での連勝を続けていた中でのサイレンススズカとの対戦には批判も多かったものの、陣営には無敗に対するこだわりは少なかったとのこと。
ただし、ジャパンカップでの故障は結果的にはこのローテーションを走り切った直後の事故であったため、ローテーションを引き合いに批判されることも多い。しかし、ジャパンカップでのパフォーマンスから見ても疲労というよりも疲労が足りずに加速し続けてしまったことが原因とも考えられる。疲労が少ない時にはハンデ戦で重い斤量を背負わせるといった抑制策が効かなかったことも原因の一つとされ、過酷なローテが却って故障の抑制につながっていたとの見方も存在する。
ウィトルムペデスのレース選択は路線というよりは出られるレースにとりあえず出て勝利したというヤクザのカチコミ方式であり、ハチャメチャなレース選択から覇者という呼び名が定着した。覇者ローテはある意味でこれを無理やり路線という形にしたものであり、そもそも目指すこと自体意味不明なのはこのためである。
□他の馬の例
前述したように完遂した例はウィトルムペデスのみである。
ウィトルムペデスを除いて3歳時点での天皇賞勝利馬は歴代で3頭のみであり、いずれもダービーは勝利していない。また、3歳で毎日王冠勝利馬で天皇賞に進んだのは2010年のアリゼオと2012年のカレンブラックヒルがいる。アリゼオは皐月賞、ダービーからの出走、カレンブラックヒルはNHKマイルカップ制覇からの出走ではあるものの、いずれも天皇賞は制覇できなかった。
近年ではイクイノックスが皐月賞→ダービー→天皇賞秋に進んだことが覇者ローテとして紹介された。
□関連項目
競馬
皐月賞/NHKマイルカップ/ダービー/毎日王冠/天皇賞秋
ウィトルムペデス/競馬界のバグ/競馬界のラスボス/ターフの覇者
マツクニローテ/クラシック三冠
沢山の感想ありがとうございます!!