ガラスの脚系TSナマケモノ娘   作:ヤキブタアゴニスト

70 / 73
Ifルート: 有馬記念2

 

キングヘイローがじりじりと坂の下りで前を伺います、大波乱となった有馬記念、やや速いペースで進みます。果たして今年のグランプリはどんな結末に向かうのでしょうか!

 

 

ああっと、来た来た来た。やはり来ました!!

 

ウィトルムペデスがなんと最後方から一気に加速してきます。これはやはり作戦なのか、先頭から一番後ろまで下がっていたウィトルムペデス、なんという走り。

向こう正面で一気に加速していきます。あっという間に、中団まで位置を戻しています。

 

しかし、先頭まではまだあります。

 

3コーナーで依然先頭はセイウンスカイ、リード3バ身。これにグラスワンダーが差を詰めてきます。さらに、じりっとエアグルーヴも上がってきた。久々マチカネフクキタル虎視眈々。菊花賞での切れ味を出せるか。天皇賞ウマ娘、メジロブライトも足を溜めている!!

 

ああっと、ウィトルムペデスは大外を回って、なんとバ群の外を大きく回りながらコーナーで位置取りを上げていきます。しかし、有馬記念の2500は未知の領域、このようなレース運びで果たして最後までスタミナがもつのでしょうか!

 

3、4コーナー中間を過ぎて、もう3、4番手にとりついていきましたウィトルムペデス。やはり、このウマ娘が強いのか。これがウィトルムペデスなのか。

 

前のリードがなくなってきた。先頭のセイウンスカイは4コーナーをどんな風に回るのか!

 

そして、後ろのウマ娘もそれを見て一斉に足を速めます。

 

残り400をきりました。中山の直線は短いぞ、ああ、最後の直線に向けて、一斉にウマ娘が広がっていきます。ウィトルムペデスは早くも先頭に立とうとしている。

 

あっと、なんと、一斉に前のウマ娘が速度を落としている!!

セイウンスカイは苦しくなった。グラスワンダーもスパートに移り切れない。エアグルーヴも伸びが悪い。第4コーナーから直線で内が詰まっている。

 

その間に、抜け出したウィトルムペデスが一気に加速していく。

 

メジロブライト前が開かないか。外に出したステイゴールドが懸命に前に進んでいく。

 

さあ、先頭は完全にウィトルムペデス。ウィトルムペデスが満を持して先頭に立ちました!!

 

残り200をきりました。

 

グラスワンダーも懸命に巻き返す。外からステイゴールドも足を延ばしてくる。

しかし、その差は埋まらない、変わらない、ウィトルムペデス、後続を振り切って独走、並ばせない、触れさせない、あっという間に置き去りにしていく!

 

さらに、伸びる。ぐんぐん伸びる。圧倒的な脚、他を寄せつけません。これがウィトルムペデスだ。どうだと言わんばかりのこの走り。

 

そして今、ゴールイン!!

 

今年最後のレースもやはりウィトルムペデス!!年末の大舞台でその強さを、疑いようのないかたちで証明してみせました!

 

 

 

 

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ウィトルムペデス視点

 

 

最近は東京レース場でしか走っていなかったからか、中山の直線の短さを少し忘れていた気がする。

 

最後の勢いのまま、まだ伸ばせるつもりで脚を回してしまって、気づけばゴール板を過ぎていた。むしろそのあとで、あ、と遅れて理解して、ようやく減速に入る。

 

呼吸がすこしだけ荒い気がする。やっぱり、2500mは長いし、何回も加速するのはちょっと疲れるかもしれない。

 

歓声が遅れて押し寄せてくる。さっきまで遠くにあったはずの音が、一気に近づいて、まとまった熱になって背中にぶつかってくる。

 

ゆっくりと足を止めて、振り返る。

 

レースが終わって世界に色が戻ってくる。さっきまで遠くにあった音や気配が、ゆっくりと輪郭を取り戻していく。

 

視界の端に、一瞬だけグラスちゃんの顔が見えた。その横を通り過ぎて、さらに奥を見る。

 

スタンドの手前にトレーナーさんの姿がすぐに見つかる。

 

思わず手を振って、そのまま走り出す。自然と足が前に出る。

 

トレーナーさんも、気づいて手を振り返してくれる。その仕草がやけに近く感じる。

 

目の前まで来て、トレーナーさんの胸に飛び込む。そして、ほとんど反射みたいに言葉が出た。どう伝えようかなんてことを考えることすら忘れていた。それだけ私は焦っていた。

 

「トレーナーさん、私……まだ引退したくないです!!」

 

少しだけ間があった。トレーナーさんは、ほんの一瞬だけ不思議そうな顔をして、それからすぐに小さくうなずく。

 

「もちろん…………ってウィー、まさか」

 

あまりにも自然な返事で、逆に拍子抜けするくらいだった。

 

でも、その次の瞬間だった。

 

トレーナーさんの視線が、私の脚に落ちる。すぐにしゃがみ込んで、足首や膝のあたりを確かめるように触り始めた。

 

そのまま半ば強引に立たされて、軽く歩かされる。感覚を確認するみたいに、何度か足を動かす。

 

「無理をしてないか?違和感は?」

 

次々に飛んでくる言葉に、まともに答えきれない。

 

「……一応動いてはいるな。走りのフォームに違和感もなかった…………少し熱をもっているか。一回ちゃんと見ないと」

 

結局、そのまま流れで医務室に連れていかれて、さらに検査へ。ライブの準備がどうとかいう話も聞こえたけど、トレーナーさんが即座に断っていた。

 

「今日はウイニングライブには参加できない。安静優先だ」

 

その一言で全部決まる。

 

検査の結果、大きな問題はなかった。ただし、かなりギリギリだったらしい。足首が少し熱くなっているようで、このまま無理していたらどこかで一気に壊れてもおかしくなかったみたいだ。

 

そんなふうに言われて、さすがに少しだけ背筋が冷える。怪我をすればリハビリというかなりきついトレーニングをしなくてはいけないようで、スズカさんを見ているととても私には耐えられそうにない。というか、走れなくてもいいからリハビリなしとかないのかな?

 

ということで、しばらくはレースどころか走ること自体も控えた方がいいみたいだ。大きな異常はないけれど、かなり際どい状態だったらしく、ここで無理をすれば次に響く可能性が高いらしい。

 

トレーナーさんは、いつもより少しだけ真面目な顔で、次もちゃんと全力で走れるようにする、と言ってくれた。その言い方は軽くなくて、きっと本気なんだと思う。少なくとも、しばらくは今まで通り一緒にいられるのだろうと、なんとなくそう思った。

 

それにしても、全力で走る、というのはどういう感覚なんだろう。言われてみると、今まで本当にそれをやったことがあったのか、自分でもよくわからない。なんとなく走って、なんとなくレースに出て、そのままここまで来てしまった気もする。

 

まあ、そのあたりは今すぐ考える必要もない。

 

とりあえず、しばらくは休みだ。走らなくていいし、トレーニングもない。負荷をかけないことが大事だと言われた以上、何もしないことが正解になる。

 

つまり、しばらくは休み!!!それにトレーナーさんが毎日マッサージだとかいろいろ世話してくれる。うん、こんなにいい環境はない。まるで夢みたいな気分!

 

 

 

 

 





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