ドン番外 ももいろ、めぶき   作:鳥鍋

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後編

 

『大合体!大合体!大合体!大合体!』

 

「やっぱり猫ちゃんってかわいいよね!」

「なんだよ、イヌもいいじゃねぇか」

 

オニシスターはイヌブラザーに不満の籠もったツッコミを入れられながらロボの脚になる。

 

「だが、見れば見るほどどんな生き物か分からないぞ」

「恥かかせた奴だけど、子供だから手加減した方がいいのかな?」

 

サルブラザーは相手が猫なのか狐なのか迷うが、キジブラザーのさらっと危ない発言は流す事にした。

 

『完成!ドン!オニタイジン!!よっ!銀河一!!』

 

───

 

「猫ちゃん相手は虎ですよ!」

「おい!勝手に決めるな!」

 

龍型のドンロボゴクウと虎型のドンロボボルトは追いかけっこをしながら合体シークエンスに突入する。

 

「また捕まえちゃうぞ!それっ!」

「やめろ!」

 

ドンロボゴクウはヒトツ鬼だけでなくドンロボボルトも捕まえる事に成功、檻に閉じ込め人型へと変わる。

 

『完成!虎龍攻神!』

 

「面倒だ……!」

「文句言わない」

「ウゥ……」

 

文句を垂れながら合体に成功し、ロボゴクウに意見を押し込められる事となった。

 

───

 

「にゃーん」

 

ヒトツ鬼ングこと百合園鬼ングは人型を取っていない。四足の身体に長い尻尾。それでいて狐面と猫の口元はそのまま。巨大といえども体高はロボ二体の膝までやっと届く程。そんな小さな相手が大きな相手に見下ろされたらどうなるか。

 

「にゃー!逃げろー!!」

「待て!」

「足速いなもう!」

 

三十六計逃げるにしかず。脳人レイヤーのビルとビルの間をすり抜け走り出す。走力はロボ達にも多少はあるが、地形からして追い続ける事は困難だ。

 

「ったく、先に行くぞ!」

「面白い!追いかけてみせろイヌブラザー!」

「イヌさんにも負けないぞ!」

 

ドンオニタイジンはイヌブラザーから順番に分離して、個別に小柄なヒトツ鬼ングを追い掛ける事にする。トップスピードのイヌブラザーロボタロウ、飛行するキジブラザーロボタロウがレースの首位に躍りだす。

 

「出ていいですよ危ない僕!」

「言われずとも!」

 

虎龍攻神も分離、四足で走るロボボルトと空飛ぶロボゴクウならば追跡に有利。どんどん百合園鬼ングと距離を詰めていく。競馬でいう所の3馬身までイヌブラザーが近づき噛みつこうとしたその時、近場のビルの屋上に飛び乗り方向転換。

 

「ぺろーん!」

 

キジブラザーにカメレオンめいた長い舌を伸ばし、気付くのに遅れた彼の体中に巻き付かせる。

 

「うわ、ベタベタする!」

「にゃー!」

 

そこから大ジャンプ、というより舌を縮めながら対象に近付く。シュルシュルと舌が引っ込みキジブラザーが自由になった頃、行動するには遅かった。

 

「ぐえ!」

 

百合園鬼ングは空中の彼を踏み台にしてさらにジャンプ、ロボボルトやその後ろのロボゴクウと高速ですれ違い、抜き去ってしまった。引き返して追い掛け直そうとしてもこのままでは繰り返しになってしまうだろう。

 

「春風メブキ!受け止めてやる!」

 

しかし着地点を計算でもしたのか、ドンロボタロウが単体で両腕を広げて受け止める構えを取っている。

 

「タロウさんの胸の中!優しく抱いて!」

 

百合園鬼ングは身体をずらす事なく正面からロボタロウに突っ込んだ。動物のじゃれ合いにしてはいささか比率が大きすぎるが、ロボタロウはがっちりと相手を掴む。

 

「そのまま俺に噛みつけ!力を吸い取るがいい!」

「タロウさんのを吸っていいの?カプッ!」

 

百合園鬼はよくわからないまま指示に従って、相手の肩からそんなに鋭くない牙を突き立てる。

 

「わっ!力がムクムク溢れてくる!いっぱいになりすぎて体の中でビクンビクンしてるよ!」

「もっとだ!あんたの限界までだ!!」

「もうお腹いっぱい……!」

「もっともっとだ!!」

 

百合園鬼は頭を抑えつけられて自由が利かない。嫌でもドンロボタロウの溢れ出るパワーを吸い取り続けて、体中から電流と火花が出始める。

 

「アバババ!漏れる!漏れちゃう!!」

「そのままだ!」

「もう無理……!にゃーん!!」

 

ジタバタと暴れても抜け出せない。そうしてタイムリミットが到達、電流と光が限界まで輝き、カッと瞬間的に膨らんで爆発。

 

「タロウ?!」

 

他のロボタロウ達が爆風と煙の中を覗き込み、その結果を戦々恐々と確認する。

 

「はーっはっはっはっはっ!!大勝利!」

 

そこには煙を吹き出しながらも扇子を掲げるロボタロウだけが残ったのであった。

 

───

 

「起きろ、お供達」

 

畳の間、そこに敷かれた布団から上半身を起こして桃井タロウは他の3人に呼びかける。

 

「ふぁ、片付いたな」

「結局いいとこ無しでしたよ!」

「いいじゃないですか、みほさんが絡むといいとこが無くなるんだから」

「ちょっとジロウさん!」

 

猿原邸、そこに布団を持ち込んだドンブラザーズ達は一度に眠ってヒトツ鬼の討伐を成功させた。タロウは不要と言わんばかりに枕を退かして今回のキーアイテム、ヒトツ鬼の枕絵を取り出す。その絵柄は邪気と無邪気を感じる化け物だったはずだ。しかし何故か、そこに描かれていたのは狐の耳が生え、シマエナガを袖で見えない手先に乗せた少女。

 

『遠い世界の私の妹を助けた事に感謝するよ、桃井タロウ』

 

幻聴か。そんな一言を聞いた瞬間、絵はどんどんと薄くなりただの白い紙に戻ってしまった。

 

「お供達、現実や夢の中で自由に動ける事も幸せなのか?」

「だと思いますよ僕は」

「無軌道で目的の無い自由では虚しくあるがな」

 

タロウの問に対し雉野は一般的な肯定を、猿原はただの自由では幸せとは限らないと答える。

 

「そうか……」

 

タロウは障子を開いて縁側に腰掛ける。陽の光は今日もあまねく世界を照らし出すのだった。

 

───

 

「はーっはっはっは!すごいすごい!こんなに動けて疲れないの、初めて!」

 

春風メブキの病室はお祭り状態である。入院服のままだが、小柄な体で飛んだり跳ねたり廊下を走ったり。看護師達に怒られるまではしゃぎ続け、医者も家族も大慌て。医学は敗北したかもしれないが、動ける体を手に入れてメブキは大勝利したのであった。

 

「あ、お兄ちゃん!私元気になったよ!よく覚えてないけど大きな桃に噛みついたら体が破裂した夢を見たの!そしたらね、今日の朝からとっても体が動くの!すごいエネルギーでも入ったのかな?」

 

家族は驚きながら、彼女の今まで見たことない表情に感動していた。

 

「お兄ちゃん、私ね、鬼頭はるかさんの漫画が読みたいの。今度買ってくれるかな?なんで漫画?……急に読みたくなっただけだよ。別に()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

しかし、そこからが不味かった。メブキは急に胸を押さえてベッドに倒れ伏す。「なんで?」と言いたげに過呼吸になってナースコールのボタンを押した。

 

───

 

「今日から入学式だね、大丈夫だよお兄ちゃん。変な所で嘘ついて死にかけないようにがんばるから!……お父さんやお母さんに言われた通りに自己紹介は自然な感じにするからね!行ってきます!」




百合園鬼
スキン/イマジナリーキツネ

病弱な少女、春風メブキから生まれた、百合園モデルのヒトツ鬼。「私のじゃない身体で他のみんなと遊びたい」という欲望を叶えようとする。
人を超えたエッチの鬼となり、夢の世界から人々をどんどん舐め取っていった。モンスター化するとういういしい様子でセイなる爆弾を投げ続け、相手を死刑にする。
むかしむかし、メブキはエッチなゲームで青春の未来を見たかったそうな……。

百合園鬼ング
スキン/ソフトキャット

倒された百合園鬼のパワーが脳人レイヤーに積み重なって生まれる、巨大な百合園モデルのヒトツ鬼ング。小春日和の猫の様にスピードと逃げ足を共有する、キャットスキルを得意とする。
ペロペロと舌で足などを舐めて、相手の体にシミを残してしまう。「百合園セイアギア」をドロップする。
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