※原作沿いですが展開はかなり変わっています。苦手な方はブラウザバックしてください。
その招待状は、日がある内に届けられた。
(「神が見捨てし仔の幻影」とは、また凝ったお名前の方ですね)
招待状を盗み見たセァラは少し悩んだが、結局彼らとは別の道を通って目的地に行くことにした。
(行き先が黄昏の館だというのが、少し気にはなりますが……
館に着くまでの間に、彼女はその場に呼ばれた探偵をリスト化して考え込んだ。
(……これほどの探偵を呼んで、何をなさるつもりなんでしょうね。黄昏の館を買い取った方は)
館が人手に渡ったことも、それを買った人間も。調べはついた。問題は、その人物が招待客の中にいることだ。
(まず間違いなく、死人は出るでしょうね。探偵が集まっているのですから、事件が解けないなんてことはないでしょうが……)
問題は誰が誰に殺されるか。セァラは館の裏口から忍び込んで、誰にも見つからないように館の中を見て回った。
(右を見ても左を見ても、隠しカメラだらけですね。この
セァラは人が居ないのを確認して裏口から出た。そのまま木々の裏側に身を隠し、彼女は館の入口を見張る。
(毛利さんのレンタカーがここに来なければ、放っておくだけで良いのですが……そういうわけにもいきませんか)
見覚えのある車が山道を登ってくるのが見えて、彼女は目を細めた。
(毛利さんと蘭さんとコナンくんと……千間探偵も乗っていますね。それに……あの毛利さんは、姿こそ同じですが別人です。おそらくは、怪盗キッドの変装でしょう)
館の前に小五郎の車が
(さて、ここからは私の技量次第というところですか)
木々の上を伝って、館の屋根に飛び移る。探偵たちが集まる前に見回って開けておいた窓から、彼女は館の中に入り込んだ。目を閉じて、息を吐く。
(隠しカメラの位置は把握済みです。それが繋げられている部屋も、彼らが訪れそうな部屋も……全て頭に入れていますから、後は探偵の方々に見つからないように動かなければなりませんね)
探偵たちが食堂に向かう。彼女は小部屋で服を着替えてから、隠れてその後を追った。食堂で、悪趣味な晩餐会が開かれている。
(この館からの脱出方法、ですか。そんなもの、私が
茂木という名の探偵は山の中を駆けずり回ると言っているが、セァラならそんなことをする必要もない。館の屋根に出て木々に飛び移れば、時間をかけずに麓に出られるのだから。ついでに言えば、離れ小島だったとしても同じ事だ。海を泳いで渡って、岸に着いてから警察を呼ぶだけでいい。彼女は生き残る力に特化していたから、どんな状況でも生存することができた。ただ、それは最後の手段だ。コナンと蘭を守るのが、彼女にとって最も優先すべきことである。
(……さて。殺されたのは大上探偵。殺した人間を探すのは彼らに任せて、私はコナンくんと蘭さんの近くにいましょうか)
探偵たちに見つからないように、気配を消して動き回る。その中で。
「ねー、白馬の兄ちゃんも気づいてるよね? 犯人……」
「ええ、勿論。槍田さんも、お分かりかと思いますが?」
「そうね。この子、流石は毛利探偵の所の子だわ。十円玉で犯人の目星をつけるなんて」
そんな会話が聞こえてきて、セァラは内心で舌を巻いた。
(流石、探偵を名乗るだけはありますね)
彼らの話を総合すると、犯人は千間探偵。館からの脱出方法を知っているのも、彼女だろうということだった。
「それでさ、ボクに考えがあるんだけど……」
コナンが白馬と槍田に耳打ちする。白馬が眉をひそめた。
「子供らしい発想ですね」
「あら、私は好きよ。それに面白そうじゃない」
槍田が笑って、コナンの頭を撫でる。コナンは笑顔で撫でられていた。
(……あの子、いったいどんな提案をしたんです……?)
千間と共に車で出ていった小五郎と茂木が戻ってくる。そして彼らは動き出した。その様子を見て、セァラは彼らの意図を察した。
(隠しカメラの前で、死んだフリをするつもりですね。これはまた思いきったことを……)
少し考えて、彼女は彼らの邪魔をしないように隠れ続けることにした。館からの脱出も、白馬が飛ばした鷹が彼の車にたどり着けば何とかなるだろう。
(つまり、私の力は必要ないということです)
彼女は屋根裏部屋に隠れて、千間を見張ることにした。探偵たちが次々と倒れていく。全て演技だと分かっているので気は楽だ。やがてコナンだけが残って、彼は隠しカメラを壊してパソコンに文字を打ち始めた。千間が隠れていた部屋から出て、食堂に向かって走っていく。
(惚れ惚れするような手際ですねぇ)
彼女は終始、笑みを浮かべて見守っていた。館の外壁が崩れる音が聞こえ始める。それを合図として、彼女は誰にも見られないように館から脱出した。