他人が見る夢   作:9Q

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※原作の事件に関するネタバレがあります。ご注意ください。時系列はベルモット編の途中です。

※原作沿いですが展開はかなり変わっています。苦手な方はブラウザバックしてください。




















コナンと彼、あるいは彼女

陶芸教室の事件を解決した後に、コナンは阿笠博士に電話して「ミスター・セァラ」を調べてくれるように頼んだ。その結果が出たのは、コナンが葵屋旅館から帰ってきた後のことだった。

 

「彼女に関することは、そのほとんどが真偽不明の話ばかりじゃ。じゃが1つだけ、優作くんの事件ファイルの中に妙な記述が残っていたよ。ロスである事件を解決した帰りぎわ、優作くんと有希子さんが暴漢たちに襲われそうになった時、容疑者のうちの1人が暴漢たちと相対した。拳銃を構えた大勢の人間たちと戦っても、その人物は傷を負わず、2人を守り通してこう告げた。『私は(しょう)沙羅(さら)。容疑を晴らしていただいたお返しに、今日はお2人の護衛をいたしますね』と。その後、優作くんは彼に連絡する方法を独力で突き止めてコンタクトを取った。彼は穏やかな人物だったが、顔や体に触られることを極端に嫌っていたそうでな。おそらく人前に出る際は必ず変装しているのだろうということじゃった。何故そんなことをするのかと聞かれた彼は、笑ってこう返した。『それを突き止めるのが探偵の仕事ではありませんか?』とな」

 

「それで? 父さんは、その理由を突き止めたのか?」

 

「誰かに追われているというところまでは推測できたようじゃが、それが誰なのかは分からなかったそうじゃ。哀くんの話と合わせて考えるのなら、相手は君が追っている組織かもしれんが……」

 

「どっちにしても、本人を捕まえて聞くのが1番早いか。ありがとな、博士!」

 

「ああ。気をつけるんじゃぞ」

 

「わーってるって!」

 

コナンは電話を切って探偵事務所の外に出た。そして橋の欄干によじ登って、川に向かって飛び降りた。その体は空中で、右の岸から飛んできた人物に受け止められた。その人はコナンをキャッチして左の岸に着地する。コナンは笑ってその人を見上げた。

 

「やっぱり。お姉さん、ボクを守ろうとしてくれてるよね?」

 

初めて見る顔の女性。だが、その正体は分かっている。コナンは彼女の顔を引っ張ろうとした。彼女はその手を掴んで止めた。

 

「やっぱり、素顔は見られたくないんだね。どうして?」

 

「そういう決まりだからです」

 

彼女はコナンを抱えたまま、橋の下に移動して地面に腰を下ろした。

 

「それってミスター・セァラとしての決まり? 誰から教えてもらったの?」

 

「父です。先代のセァラだった父は、私に『嫌なら継がなくてもいい』と言いました。セァラは実体が無いようなものですから、いつでも捨てることができると。ですが私は継ぎたいと思ったので、今もセァラを名乗っています」

 

「どうしてボクを守ってくれるの? ……ううん、言い方を変えるね。誰に依頼されたの?」

 

コナンの目が鋭くなる。セァラは笑顔で告げた。

 

「それは言えません。守秘義務というものがありますから。それに、いつも君を守っているわけではありませんよ」

 

コナンは苦笑した。

 

(これ以上は聞いてもムダだな……)

 

身の上話ですら作り話のように聞こえる。実際、どこまでが本当かも分からない。子供相手でも油断せず、常に警戒している。

 

「じゃあ良いや。お話聞かせてくれてありがとね、お姉さん!」

 

コナンは彼女の腕の中から抜け出して、去ったフリをして物陰に隠れた。彼女はコナンが見えなくなるのを確認して背を向けた。その背に向かって、コナンが麻酔銃を打つ。彼女は振り向かずに、左手の指で飛んできた針を正確に掴み取った。そしてそれを投げ返す。

 

(……え?)

 

飛んできた針はコナンの真横を通り抜けて、地面に刺さった。コナンは針の行方を確かめてからすぐに彼女の方を見たが、既にそこに彼女の姿はなかった。

 

(マジか……ちょっと規格外すぎねえか?)

 

コナンは冷や汗を流しながら、その場を後にした。

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