※原作沿いですが展開はかなり変わっています。苦手な方はブラウザバックしてください。
陶芸教室の事件を解決した後に、コナンは阿笠博士に電話して「ミスター・セァラ」を調べてくれるように頼んだ。その結果が出たのは、コナンが葵屋旅館から帰ってきた後のことだった。
「彼女に関することは、そのほとんどが真偽不明の話ばかりじゃ。じゃが1つだけ、優作くんの事件ファイルの中に妙な記述が残っていたよ。ロスである事件を解決した帰りぎわ、優作くんと有希子さんが暴漢たちに襲われそうになった時、容疑者のうちの1人が暴漢たちと相対した。拳銃を構えた大勢の人間たちと戦っても、その人物は傷を負わず、2人を守り通してこう告げた。『私は
「それで? 父さんは、その理由を突き止めたのか?」
「誰かに追われているというところまでは推測できたようじゃが、それが誰なのかは分からなかったそうじゃ。哀くんの話と合わせて考えるのなら、相手は君が追っている組織かもしれんが……」
「どっちにしても、本人を捕まえて聞くのが1番早いか。ありがとな、博士!」
「ああ。気をつけるんじゃぞ」
「わーってるって!」
コナンは電話を切って探偵事務所の外に出た。そして橋の欄干によじ登って、川に向かって飛び降りた。その体は空中で、右の岸から飛んできた人物に受け止められた。その人はコナンをキャッチして左の岸に着地する。コナンは笑ってその人を見上げた。
「やっぱり。お姉さん、ボクを守ろうとしてくれてるよね?」
初めて見る顔の女性。だが、その正体は分かっている。コナンは彼女の顔を引っ張ろうとした。彼女はその手を掴んで止めた。
「やっぱり、素顔は見られたくないんだね。どうして?」
「そういう決まりだからです」
彼女はコナンを抱えたまま、橋の下に移動して地面に腰を下ろした。
「それってミスター・セァラとしての決まり? 誰から教えてもらったの?」
「父です。先代のセァラだった父は、私に『嫌なら継がなくてもいい』と言いました。セァラは実体が無いようなものですから、いつでも捨てることができると。ですが私は継ぎたいと思ったので、今もセァラを名乗っています」
「どうしてボクを守ってくれるの? ……ううん、言い方を変えるね。誰に依頼されたの?」
コナンの目が鋭くなる。セァラは笑顔で告げた。
「それは言えません。守秘義務というものがありますから。それに、いつも君を守っているわけではありませんよ」
コナンは苦笑した。
(これ以上は聞いてもムダだな……)
身の上話ですら作り話のように聞こえる。実際、どこまでが本当かも分からない。子供相手でも油断せず、常に警戒している。
「じゃあ良いや。お話聞かせてくれてありがとね、お姉さん!」
コナンは彼女の腕の中から抜け出して、去ったフリをして物陰に隠れた。彼女はコナンが見えなくなるのを確認して背を向けた。その背に向かって、コナンが麻酔銃を打つ。彼女は振り向かずに、左手の指で飛んできた針を正確に掴み取った。そしてそれを投げ返す。
(……え?)
飛んできた針はコナンの真横を通り抜けて、地面に刺さった。コナンは針の行方を確かめてからすぐに彼女の方を見たが、既にそこに彼女の姿はなかった。
(マジか……ちょっと規格外すぎねえか?)
コナンは冷や汗を流しながら、その場を後にした。